- 任意整理後に2回以上滞納すると一括返済を請求される可能性が高い
- 任意整理後に払えなくなっても、再度の債務整理による解決方法はある
- 任意整理後の返済が苦しくても闇金に手を出してはいけない
- 任意整理後に払えなくなったら弁護士・司法書士への相談が有効である
任意整理をすると毎月の返済額を減らすことができますが、任意整理後に収入が減少したり、やむを得ない出費が増加したりして、返済が苦しくなることもあるでしょう。
しかし、任意整理後の滞納を放置することは禁物です。最悪の場合は債権者に法的措置をとられて財産を差し押さえられることがあります。
任意整理後に払えない状態に陥った場合でも、解決できる方法はあります。「もう打つ手がない」と考えてしまうかもしれませんが、状況に応じて適切に対処すれば解決の可能性が高まります。
この記事では、任意整理後に滞納するとどうなるのか、払えなくてもやってはいけないこと、そして状況に応じた解決方法についてわかりやすく解説します。
任意整理後の返済を滞納するとどうなる?
任意整理後は、債権者と交わした和解書に記載されているとおりに返済していく必要があります。
その返済を滞納した場合にどうなるかを知るには、まず和解書の記載を確認してください。
ほとんどのケースでは、返済を「2回以上」怠ると期限の利益を失う旨が記載されているはずです。以下では、これを前提として解説していきます。
しかし、中には返済を1回でも怠ると期限の利益を失う旨が記載されているケースもあります。その場合は、1回滞納した時点で以下の解説でいうところの「2回以上」滞納した場合と同じ状況となることにご注意ください。
1回だけの滞納なら督促を受けるだけ|ただし遅延損害金は発生する
任意整理後の返済を1回でも滞納すると、債権者から督促を受ける可能性が高いです。
ただし、この段階では「いつ支払えますか」「早めにお支払いください」などと催促されるだけで、いきなり裁判を起こされたりすることはほとんどありません。また、1回の滞納ではまだ期限の利益を喪失していないので、残りの借金を一括返済することは不要です。
なお、1回だけの滞納であっても、滞納期間に対応する遅延損害金の支払いを請求される可能性があるのでご注意ください。
2回以上の滞納は一括返済の請求を受ける
滞納が2回以上になると、督促を受けるだけでなく残りの借金について一括で返済するように請求されてしまいます。なぜなら、期限の利益を失うからです。
期限の利益とは、返済期限がくるまでは返済しなくてよいという債務者にとっての利益のことです。
分割払いで和解した場合は、毎月の返済日に所定の金額を支払えば残りはまだ支払わなくてよいという利益が与えられています。
期限の利益を失うと分割払いが認められなくなり、ただちに残りの借金を一括で返済しなければならない状態になるのです。
なお、必ずしも2回連続で滞納した場合に限らず、「滞納額が2回分の返済額に達したとき」などにも、期限の利益を失うとされている場合があります。
どのような場合に期限の利益を失うかについては、任意整理に関する和解書の定めに従いますので、和解書の記載はしっかりと確認してください。
最終的には裁判・差し押さえを受ける
一括返済の請求を受けても支払えない場合には、債権者が支払督促や民事訴訟といった裁判手続きをとってきます。
支払督促が送達されてきた場合、債務者は2週間以内に異議申立てを行わなければ、債権者は「仮執行宣言付支払督促」の申立てが可能となります。裁判所によって仮執行宣言付支払督促が発せられると、債権者は強制執行を申し立てることができるようになります。
民事訴訟を提起された場合、裁判所の法廷で債権の存否などが争われます。債権者の言い分を認める判決が確定すると、債権者は強制執行を申し立てることが可能となります。
強制執行を申し立てられると、債務者の給料や預金口座などの財産が差し押さえられます。こうなると、生活費を賄えなくなる、家族や職場に借金のことを知られてしまうなど、さまざまなデメリットが生じるおそれがあります。
いつ裁判を起こしてくるかは債権者によって異なりますが、放置していると必ず裁判を起こされ、差し押さえを受けると考えておくべきです。
任意整理後の返済を滞納してしまう原因
任意整理をして借金問題を解決したはずなのに、返済を滞納してしまうのはなぜなのでしょうか。
その原因によって対処法も変わってきますので、ご自身が任意整理後の返済を滞納してしまった原因をしっかりと確認しておきましょう。
突発的な事情が生じた
誰しも、生活していると突発的な事情で出費が増えることはあり得ます。
- 家族の急病で医療費がかかった
- 冠婚葬祭が重なった
- 自動車や家電が故障して多額の費用を要した
その他にもさまざまな事情が考えられます。
任意整理を行う際には、「これくらいなら何とか返済していけるだろう」という大雑把な想定の下に返済条件を設定していることが多いものです。
その状況で突発的に出費が増えてしまうと、返済できなくなってしまうことがあります。
収入が低下した
人の収入は一定ではありません。何らかの事情により、任意整理をした当時よりも収入が低下してしまうこともあるものです。
- 勤務先の業績低下により給料が減らされた
- 病気や怪我のために働けなくなった
- リストラされて転職したが給料が下がった
任意整理で和解したときに見込んでいただけの収入が得られなくなると、返済が滞ってしまう可能性が高いです。
和解内容が厳しいものだった
債務者の返済能力に比べて、任意整理での和解内容が厳しいものであった場合には、和解後の返済が苦しくなる可能性が高いです。
- 将来利息を全部カットしてもらえなかった
- 短期の返済期間(3年以内など)が設定された
将来利息を全部カットしてもらい、5年(60回払い)とすれば余裕を持って返済可能な場合でも、債権者が譲らず、上記のような条件で無理に和解している方も少なくありません。
任意整理を弁護士や司法書士に依頼せず、自分で債権者と交渉した場合にこのようなことが起こりがちです。
任意整理をすることに無理があった
任意整理では将来利息や遅延損害金をカットしてもらえるケースが多いですが、元金は原則として全額返済する必要があります。そのため、借金総額が大きい場合は任意整理で解決することは難しいです。
例えば、借金総額(元金)が500万円の場合は、任意整理しても元金がカットされない場合、毎月の返済額は5年返済の場合で8万4,000円ほどは必要です。
家計にそれだけの余裕がないにもかかわらず「何とか頑張って返済していく」と考えて和解する人もいます。
しかし、結果的に返済を継続できないという場合は、そもそも任意整理で解決することに無理があったということです。
任意整理後に今月だけ払えないときの対処法
任意整理後に滞納を1回してしまったけれど、来月以降はきちんと支払える場合には、債権者に事情を説明した上でそのまま返済を継続すれば、大きな問題になることは少ないです。
ただし、あと1回滞納すると一括返済を請求されてしまうので、もう後がない状態となります。
今後は決して返済が遅れないように注意するとともに、家計を切り詰めるなどして、できる限り早めに滞納を解消するように努めましょう。
任意整理後に継続して払えなくなったときの対処法
来月以降も払えそうにない場合や、すでに2回以上滞納してしまった場合は、以下の対処が必要となります。
再和解をする
まずは、債権者に連絡して事情を伝え、返済内容を変更した上で、再度和解をすることが考えられます。一括返済の請求を受けた場合でも、再和解が成立すれば再び分割払いを認めてもらえます。
債権者としても裁判をして債務者の財産を差し押さえるためには手間とコストがかかりますので、誠意をもって交渉すれば再和解に応じてくれる可能性があります。
ただし、一度約束を破っていますので、和解条件は厳しくなる傾向にあります。債権者にもよりますが、再和解では以下の条件が付けられることが多いことに注意が必要です。
- 今後は1回でも滞納すると一括返済とする
- 返済期限の延長には応じない
- 高率の遅延損害金が設定される
追加介入を検討する
再和解をしても返済が苦しい場合には、「追加介入」をすることで解決できる可能性があります。追加介入とは、任意整理をする債権者を追加することをいいます。
最初に任意整理をした際に「車を手放したくない」「保証人に迷惑をかけたくない」などの理由で除外していた債権者がある場合は、その債権者とも任意整理をすることで毎月の返済総額を減らせる可能性があります。
個人再生に切り替える
再和解や追加介入で解決できない場合は、他の債務整理に切り替える必要があります。安定収入がある場合は、まず個人再生への切り替えを検討してみるとよいでしょう。
個人再生とは、裁判所を通して借金を大幅に減額してもらうことが可能な債務整理の方法です。借金総額が最大10分の1にまで減額され(減額幅は債務総額によって異なります)、減額後の借金を原則3年(例外的に5年となる場合あり)で分割返済します。
裁判所を介する強制的な手続きですので、債権者が任意整理の再和解に応じない場合でも、一定の要件を満たせば個人再生によって返済の負担を大幅に軽減させることが可能です。
ただし個人再生の場合、原則としてすべての債権者を対象とする必要があります。
- 車を手放したくない
- 保証人に迷惑をかけたくない
任意整理とは異なり、上記のような希望は通らないことに注意が必要です。
自己破産に切り替える
個人再生でも解決が難しい場合には、最終手段として自己破産への切り替えを検討しましょう。
自己破産は、裁判所を通してすべての借金の返済義務を免除(免責)してもらうことが可能な債務整理の方法です。
個人再生とは異なり、無収入の方や定職に就いていない方も利用できます。
自己破産は、個人再生の場合と同様に、すべての債権者を対象とする必要があります。その他にも以下のデメリットがありますので、事前に確認しておきましょう。
- 高価な財産は処分される
- 借金で浪費やギャンブルをしたなど一定の事由がある場合には、免責が認められないことがある
- 手続き中は一部の資格や職業に制限がかかる
任意整理後の滞納金を払えなくてもやってはいけないこと
任意整理後に滞納してしまい、払えない状態となっても、してはいけないことがいくつかあります。
上記のように解決方法はあるのですから、自暴自棄となって以下のようなことをしてはいけません。
債権者からの督促を無視する
滞納したときに、債権者からの督促を無視しても何も解決しません。無視し続けていると、早期に裁判・差し押さえの手続きをとられることもあります。
督促を受けたら、気が重くても債権者に連絡して事情を話しましょう。債権者は貸したお金を回収することを目的としていますが、債務者を追い詰めたいわけではありません。
誠意をもって対応すれば、多少の期間は返済を待ってくれることや、再和解に応じてくれることもあります。
闇金に手を出す
任意整理後の滞納を解消するために闇金から借りる人もいますが、絶対に闇金には手を出さないようにしてください。
闇金からお金を借りると、法外な利息の支払を要求されます。任意整理の返済ができない状態で、それに加えて法外な利息を支払うことは不可能でしょう。
支払えなければ脅迫的な取り立てや悪質な嫌がらせが始まります。自分だけでなく家族や親族、友人・知人・職場などにまで嫌がらせが及びますので、家庭生活や社会生活が破壊されてしまうおそれもあります。
なお、闇金からの借金については、最高裁の判例上返済不要とされていますので、取り立てに応じる前に弁護士へご相談ください。
夜逃げや自殺を考える
借金の時効を期待して夜逃げを考える人もいますが、債権者も時効が成立しないように手を打ってきますので、夜逃げは有効な方法ではありません。住民票を移さないまま夜逃げをすると、長期間にわたって苦しい生活を強いられることも知っておきましょう。
自殺を考えるのは、もってのほかです。合法的な解決方法があるのですから、借金で自殺を考える必要は何一つありません。家族や友人など残された人たちが深く哀しむだけの結末となります。
任意整理後に払えなくなったら弁護士・司法書士に相談を
任意整理後の返済が苦しくなったら、弁護士または司法書士に相談することを強くおすすめします。
任意整理を依頼した弁護士・司法書士に再度相談するのもよいですし、別の弁護士・司法書士に相談しても構いません。
「一度任意整理をしたのに払えなくなったら、もう打つ手がない」「もう弁護士・司法書士には話しにくい」このように考えてしまう人も多いですが、そんなことは一切ありません。
多くの弁護士・司法書士は、債務者の借金問題が完全に解決するまでサポートしてくれます。
任意整理後に払えなくなった問題を弁護士・司法書士に相談・依頼することで得られる主なメリットは、以下のとおりです。
- 最適な解決方法がわかる
- 受任通知の送付により督促が止まる
- 債務整理の複雑な手続きをすべて任せられる
- 再和解では、より有利な条件を引き出すことが期待できる
- 個人再生や自己破産の手続きをスムーズに進められる
まとめ
任意整理後に払えなくなると、任意整理前よりも深刻な精神状態に追い込まれてしまう人も少なくありません。
しかし、解決方法はあります。精神的に追い込まれたときにこそ、弁護士・司法書士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。解決方法がわかるだけでも精神的な負担が軽減されるはずです。
弁護士・司法書士のサポートを受けて、借金問題の解決を目指しましょう。