- イオンカードは任意整理に協力的である
- 過払い金返還請求にも協力的に対応してくれる
- 任意整理後はイオンカードが使えなくなることに注意が必要
- 有利な和解をするには専門家に依頼するのが得策
イオンカードは、イオンモールやイオンタウンなどで有名なイオングループが発行しているクレジットカードです。イオンの系列店での買い物に利用するとポイントが貯まりやすい上に、割引セールなどの特典も受けられるので、主婦などを中心に人気の高いカードです。
普段使いしている方が多いだけに、イオンカードを使いすぎて支払いが苦しくなったときに任意整理ができるのかが気になる方も少なくないことでしょう。
結論からいうと、イオンカードも他のクレジットカードと同じように任意整理できます。ただし、任意整理をする前に注意しておくべきポイントもいくつかあります。
そこで今回は、イオンカードの任意整理における最近の和解傾向や、注意しておくべきデメリットなどを分かりやすく解説します。
イオンカードとは
まずは、イオンカードとはどのようなクレジットカードなのかを確認しておきましょう。
イオンカードの特徴
イオンカードも通常のクレジットカードですが、他のクレジットカードとは異なる特徴として以下の3点を挙げることができます。
- WAON一体型のカードがある
- カードの種類が非常に豊富にある
- リボ払いの最低返済額が低い
WAONとは、イオングループが提供する電子マネーのことです。WAON一体型のカードに事前にチャージ(入金)することにより、プリペイドカードとして利用することも可能です。
リボ払いの最低返済額は、ほとんどのクレジットカードで毎月最低3,000円以上とされていますが、イオンカードでは毎月2,000円から利用できます。この点は便利な面もありますが、毎月返済しても元金がなかなか減らず、手数料もかかるため、気がつけば利用残高が大きく膨らんでしまう危険性があります。
リボ払いを利用したために返済が苦しくなるケースは多いので、計画的に利用することが大切です。
イオンカードの種類
イオンカードには、非常に豊富な種類があります。スタンダードなカードは、以下の2種類です。
- イオンカード
- イオンカードセレクト
この他にも提携カードが数多くあります。以下にご紹介するのは、ほんの一例です。
- イオンJMBカード
- コスモ・ザ・カード・オーパス
- マルエツカード
- トイザらス・ベビーザらス・カード
- ツルハドラッグカード
「イオン」という名称がついていないカードも少なくありません。これらのカードを任意整理する場合、交渉相手はすべて「イオン」となります。
イオンカードの会社情報
イオンカードは、イオングループに属する「イオンクレジットサービス株式会社」が発行しています。同社の基本情報は、以下のとおりです。
会社名 | イオンクレジットサービス株式会社 |
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創業時期 | 2012年11月29日 |
本社所在地 | 東京都千代田区神田錦町3丁目22番地 テラススクエア |
会員数 | 約2,940万人 |
会員の男女比率 | 男性36%:女性64% |
沿革 | 1981年 日本クレジットサービスを設立 (現イオンフィナンシャルサービス) 1988年~ JCB、UC、VISA、マスターカードと提携 1994年 イオンクレジットサービス株式会社に社名変更 2000年 イオンカードの発行を開始 |
主な関連会社 |
|
イオンカードを任意整理するときの交渉相手は「イオンクレジットサービス株式会社」となります。ただし、本記事では同社のことを「イオンカード」ど呼ぶこととして解説を続けます。
イオンカードは任意整理できる?最近の和解傾向は?
イオンカードも、他のクレジットカードと同じように任意整理できます。任意整理に成功できるかどうかは、債権者がどこまで和解に協力してくれるかにかかっています。ここでは、イオンカードとの任意整理における最近の和解傾向をご紹介します。
交渉には協力的
イオンカードは、任意整理の交渉には基本的に協力的です。無理な条件を押しつけてくることもありませんし、早期に裁判を起こしてくることもほとんどありません。
数多くある貸金業者やクレジットカード会社の中でも、イオンカードは交渉しやすい債権者といえます。
将来利息は全額カット
和解後の利息(将来利息)については、基本的に全額免除してもらえます。
ただし、カードで大きな金額を利用してから間もない場合や、それから一度も返済していないような場合には、将来利息を一部請求される可能性があります。
遅延損害金は請求される可能性あり
和解が成立するまでに発生した遅延損害金については、イオンカードでも請求される可能性があります。
近年では、ほとんどの債権者が遅延損害金の免除には応じなくなっているので、この点はやむを得ないと考えるべきでしょう。
返済期間は原則5年まで
和解後の返済期間は、原則として5年(60回払い)までとなります。残高が大きい場合など、事情によっては6年(72回払い)まで応じてもらえることもあります。
近年では、返済期間は3年(36回払い)までしか応じない債権者も出てきていることを考えると、イオンカードは返済期間についても柔軟に対応してくれるといえます。
イオンカードの過払い金返還請求への対応
イオンカードは、前身の「日本クレジットサービス」の時代からクレジットカードを発行していました。2000年に「イオンカード」の発行を始めてからも2007年3月までは、25.6%以上という高金利でキャッシングサービスをしていました。
利息制限法の上限を超える金利で貸し付けていたため、2007年3月よりも前からイオンカードでキャッシングを利用していた人は過払い金が発生している可能性があります。
ここでは、イオンカードの過払い金返還請求への対応状況をご紹介します。
交渉には協力的
イオンカードは、過払い金返還請求に対しても良心的に対応しています。
昨今では、経営難等を理由として過払い金の返還を渋る貸金業者やクレジットカード会社も少なくありません。それに対して、イオングループは流通系の大企業なので経営は安定しています。
そのため、過払い金の返還に応じる余裕があり、良心的な対応が可能となっていると考えられます。
ショッピング枠からは過払い金は発生しない
イオンカードに限りませんが、クレジットカードのショッピング枠からは過払い金が発生しないことにご注意ください。
ショッピングで分割払いやリボ払いを利用した場合には、利息制限法ではなく割賦販売法という法律が適用され、違法金利の問題が発生しないため、過払い金は発生しないのです。
クレジットカードによる取引で過払い金が発生するのは、キャッシングのみです。
任意交渉での返還率は7~9割程度
イオンカードに過払い金返還請求をした場合、任意交渉で返還される金額は、過払い金満額の7~9割程度が平均的となっています。
本人が自分で交渉した場合には、7~8割が上限となるケースが多いようです。しかし、弁護士または司法書士に依頼して交渉した場合は8~9割の返還を受けることも可能となっています。
全額を取り戻すには裁判が必要
もっとも、イオンカードも任意交渉で過払い金満額を返還するケースはあまりないようです。
そのため、全額を取り戻すためには裁判をすることが必要となります。裁判で勝訴した場合には、過払い金発生時から年5%の利息を付けて回収することも可能です。
イオンカードとの任意整理で注意すべきデメリット
任意整理の交渉でも過払い金返還請求に対しても良心的に対応してくれるイオンカードですが、任意整理をする以上は避けられないデメリットもあります。イオンカードと任意整理をするなら、以下の点に注意しなければなりません。
和解するまでの期間が比較的長い
イオンカードとの任意整理では、他社に比べて和解成立までに要する期間が長くなる傾向があります。
3ヶ月程度で和解できるケースは稀で、和解が成立するまでに半年以上かかるケースも少なくありません。多くの場合は、受任通知書を送付してから取引履歴が届き、イオンカードの担当者が決まるまでに3ヶ月程度がかかってしまいます。その後の交渉においても、担当者の反応は遅れがちです。
債権者の中には、受任通知を送付してから2~3ヶ月以内の和解を要求し、和解が成立しなければ裁判を起こしてくるところもあることを考えると、イオンカードの対応はスローペースと言わざるを得ません。
ただ、和解が成立するまでは返済する必要がありません。債務者は、その間に貯金をしたり、転職や副業を始めるなどして増収を図ることも可能です。
ブラックリストに登録される
イオンカードに限りませんが、任意整理をするとブラックリストに登録されてしまいます。
ブラックリストとは、信用情報機関に事故情報が登録された状態のことをいいます。事故情報が登録されると、その後は新たな借り入れやクレジットカードの利用ができなくなります。
ただし、任意整理で残った債務を完済してから5年が経過すると、事故情報は削除されます。その後は、再び借り入れやクレジットカードの利用ができるようになります。
公共料金等の引き落としができなくなる
公共料金等の支払いにクレジットカードを利用している場合は、任意整理をするとその引き落としも停止されます。
放置していると、公共料金等の滞納が発生してしまいます。任意整理をする前に支払い方法を口座引き落としや振り込みなどに変更しておきましょう。
貯めていたポイントが無効になる
任意整理をすると、その時点でイオンカードは強制解約となります。それまで貯めていたポイントは無効となってしまいます。
WAONポイントを貯めて日々の買い物に利用している人も多いことでしょう。ポイントを無駄にしないためには、任意整理をする前に消費するか、特典と交換しておきましょう。
イオングループのカードやローンは利用できなくなる
完済後5年が経過するとクレジットカードの作成やローンの利用ができるようになりますが、イオングループのカードやローンはその後も利用できません。
信用情報機関に登録された事故情報が削除されても、イオンカードの社内に登録された事故情報は残り続けるからです。そのため、イオンのクレジットカードに関連する特典はずっと受けられないようになります。
イオンカードを買い物に活用していた人などにとっては痛手となりますので、ご注意ください。ただし、WAONポイントや電子マネーとしてのWAONは任意整理後も利用できます。
イオンカードとの任意整理が失敗しやすいケース
任意整理の交渉には協力的なイオンカードですが、それでも手続きに失敗するケースはあります。失敗しやすいのは、以下の3つのケースです。
他にも借り入れがある
イオンカードとの和解が円満に成立したとしても、他社から多額の借り入れがある場合は、全体として任意整理に失敗する可能性が高くなります。
任意整理では元金は減額できないため、成功させるためには相応の収入が必要となります。借金総額がいくらまでなら任意整理に成功するかは収入次第ですが、一般的に200万~300万円を超えると、任意整理で解決することは難しくなる可能性が高まってくるといえます。
家族の協力が得られない
任意整理をすると、通常は3年~5年にわたって返済を継続しなければなりません。多くの場合、その間は家計を改善することが必要となり、そのために家族の協力を得ることが重要となってきます。
しかし、家族に内緒で任意整理をしようとすると、返済に対する家族の協力が得られにくくなる可能性があります。特に、主婦の方で自由に使える金額が限られている場合は注意が必要です。
自分で交渉をする
任意整理で適切な和解をするためには、専門的な知識を駆使して、債権者と対等に交渉しなければなりません。弁護士や司法書士といった専門家に依頼せず、債務者が自分で交渉した場合には、不利な和解案を押しつけられやすいものです。
他社の場合はもちろんのこと、イオンカードとの任意整理においても、このような傾向があることは否定できません。
イオンカードとの任意整理が難しいときの対処法
どうしてもイオンカードとの任意整理が難しい場合は、他の債務整理を検討する必要があります。具体的には、以下のいずれかの手続きを検討することになるでしょう。
- 個人再生
- 自己破産
個人再生をすれば、借金総額が原則5分の1(最大10分の1)にまで減額されますので、返済の負担が大幅に軽くなります。任意整理で返済できないケースでも、個人再生なら返済できる可能性が高いです。
自己破産をすれば、すべての借金の返済義務を免除してもらうことが可能です。
任意整理で払いきれないほど多額の借金を抱えた場合は、個人再生または自己破産を検討した方が良いといえます。
イオンカードとの任意整理を弁護士・司法書士に依頼するメリット
任意整理をするには、専門的な知識と交渉力が要求されますので、イオンカードと任意整理をするためには弁護士または司法書士に依頼することが得策です。
専門家に依頼することで、以下のメリットが得られます。
- 利息引き直し計算により正確な借金額を計算してもらえる
- イオンカード(および他の債権者)との交渉を代行してもらえる
- 有利な条件での和解が期待できる
- 過払い金が発生している場合は、返還請求手続きも代行してもらえる
もし、任意整理が難しい場合でも、専門家に相談すれば最適な解決方法を提案してもらうことができます。返済が苦しい場合には、弁護士・司法書士にご相談の上、適切な手続きを依頼することが不可欠といえるでしょう。
まとめ
イオンカードは、任意整理の交渉には協力的な債権者です。イオンカードだけなら、利用残高が100万円を超えることはあまりないでしょうから、任意整理で解決できる可能性が高いといえます。
しかし、他社からも多額の借り入れがある場合や、収入が十分でない場合には、任意整理に失敗するおそれもあります。
イオンカードへの返済が苦しいと感じたら、早めに弁護士・司法書士の力を借りて解決してしまいましょう。