- 債務整理は結婚自体には影響しない
- ローンが組めないなど結婚生活に制限はかかる
- 債務整理は配偶者に打ち明けるのがおすすめ
債務整理をする方の中には、結婚を控えた方や、すでに配偶者を持っているという方も一定数います。そういった状況では、「債務整理をしたら結婚にどんな影響があるのだろうか」という不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、債務整理が結婚に及ぼす影響、そして借金がバレないようにする方法について詳しく説明します。
債務整理していても結婚はできる
債務整理をしていても、結婚は問題なくすることができます。債務整理をしたという理由だけで結婚が許されなくなるような法律は存在しないのです。
住民票や戸籍にも債務整理をしたという情報が記載されることはありません。ですから、結婚するかどうかは、当事者の意思だけで決めることができます。
しかし、その後の結婚生活や配偶者との関係には少なからず影響がありますので配偶者の理解を得ることが重要になります。
債務整理が結婚生活へ及ぼす影響
債務整理による直接的な影響はないにしても、全くデメリットがないわけではありません。結婚生活において様々な制限がかかることがあります。
借金返済により家計に負担がかかる
債務整理の中でも任意整理か個人再生を選択すると、およそ5年間で、返済計画に従って残った債務を返済しなければなりません。すなわち、この期間は毎月一定額を借金の返済に当てないといけないため、金銭的に家計を圧迫する可能性があります。
例えば、新婚生活が始まったばかりで新しい家具を揃える必要があっても、全てを買うことはできないかもしれません。子供の養育費にまとまったお金が必要だとしても、十分な額を準備してあげられないかもしれません。
生活のあちこちに借金返済の重荷が深くのしかかり、厳しい負担を強いられることになります。
ブラックリストに載る
債務整理をすると、その情報が「事故情報」として信用情報機関に登録されます。この状態のことを「ブラックリストに載る」といいます。
「結婚して苗字が変われば、自分の情報は参照できなくなるのではないか」「債務整理したことはバレないのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、たとえ苗字が変わっても信用情報(ブラックリスト)は辿られて、把握されます。
具体的には、車や住宅ローンなど、何らかの契約の申請をする際に申告する旧姓や、運転免許証の番号といった情報を元に、「ブラック」であることは簡単にバレるのです。
通常、信用取引(いわゆる料金後払い取引のこと)や貸金業を業務としている金融機関やクレジットカード会社は、審査の際に顧客の信用情報をチェックするために信用情報機関を参照します。ですから、ブラックリストに掲載されていると、そのような会社と契約を結ぶことが難しくなります。
ブラックリストに載ることによる支障
債務整理をしてブラックリストに載ると5年~7年の間は次のようなことができなくなります。
- ①クレジットカードを発行すること
- ②各種ローン(自動車ローン・住宅ローン・カードローン)を組むこと
- ③貸金業者から借り入れをすること
- ④奨学金の保証人になること
- ⑤他人の連帯保証人になること
ただし、債務整理した人がブラックになったからと言って、その配偶者までブラックになるわけではなく、配偶者の信用情報への影響はありません。
ですから、夫婦のうち債務整理をしていない方の名義を使えば、クレジットカードを発行することや各種ローンを組むことは可能です。
債務整理が結婚相手の財産に与える直接的な影響はない|「夫婦別産制」
たとえ債務整理(任意整理・個人再生)をしても、結婚相手の財産に直接的に影響することはありません。なぜなら、夫婦間における財産の所有には「夫婦別産制」という私法上の原則が適用されるからです。
この原則は、夫婦それぞれの財産はあくまで個別に所有し、互いに連帯責任を追わないというものです。ですから、例えば夫が一人で抱える債務(借金)を妻が支払う義務はありません。
そして、債務が発生する元である金銭消費貸借契約は、その当事者間でしか効力を持たないので、債務者の配偶者に督促が来ることはないのです。
また、自己破産をした場合には、そもそも債務が全てなくなるので、配偶者への直接的な影響を心配することはありません。
債務整理をしたことが配偶者に通知されることはない
債務整理をしようと考えている方の中には、「結婚相手に債務整理をしたことを知られたくない」「バレては困る」という方も多いと思います。
結論から言うと、債務整理をしたことが結婚相手に直接バレることはありません。もし債務整理をしても、依頼した弁護士や手続きを行う裁判所から配偶者に直接知らされることはなく、本人にしか通知は届きません。
債務整理の中でも任意整理が最もバレにくい
いくつかある債務整理の方法の中で、バレにくいと言えるのが任意整理です。それには次のような理由があります。
- ①裁判所を介さない = 裁判所に出向く必要がないためバレにくい
- ②ブラックリスト解除までの時間が短い = 任意整理はおよそ5年、個人再生・自己破産はおよそ7年
- ③国の広報誌である官報に掲載されない = 闇金からのダイレクトメールが来ない
債務整理がバレると困る方は任意整理を選択することをおすすめします。
債務整理をしたことが配偶者にバレてしまうケース
債務整理をしたことが裁判所や債権者から配偶者に知らされることはありません。しかし様々な生活シーンを通じて結婚相手にバレることはあります。
各種ローンを組むとき
結婚相手に債務整理をしていることや借金を抱えていることを伝えていない場合、夫婦間で話が進んでマイホームやマイカーを購入しようという雰囲気になるかもしれません。
そうでなくても、クレジットカードの発行がどうしても必要になることがあるかもしれません。そういった場合に、ローンを組むのを渋っていると、何かやましいことがあるのかと不審に思われてしまい、バレる可能性があります。
このような形で結婚相手にバレるのを防ぐためには、できるだけローンを組むのを避けるようにすることが一番ですが、他の回避方法もあります。
1つ目は、債務整理をしていない配偶者にローンの名義人になってもらうことです。そのための理由づけはなんとか取り繕う必要がありますが、自分名義を使うことを回避すれば債務整理の事実もバレません。
2つ目は、クレジットカードの代わりにデビットカードを利用することです。デビットカードは銀行口座と紐づけられており、口座残高からの引き落としという形で支払いを行うので、基本的に審査に落ちることはありません。ですから、デビットカードを使用していれば債務整理の事実もバレないでしょう。
探偵が結婚調査をした場合
探偵(興信所)とは、私的な事情に関する調査を行い、依頼者に報告することを業務とする調査会社です。結婚しようとする人の中には、結婚前の段階で秘密裏に結婚相手の素行や財産関係のデータを把握しておこうと考える人もいます。
相手はプロの探偵です。あらゆる手段を使って結婚相手の保有財産やブラックの履歴を突き止めます。探偵に調査されれば債務整理がバレることは回避できないでしょう。
債権者からの通知・督促があるとき
債権者からの通知が直接配偶者に届くことはありませんが、自分に対する督促状や連絡書は関係なく届きます。そのため、配偶者と同居していれば、それらの書類が配偶者の目に入ってしまうことは避けられないでしょう。
また、一緒に過ごしているときに債権者から電話がかかってきたような場合には、その電話の相手が誰なのか不審がられることもあるかもしれません。
債務整理したことは離婚事由にならない
債務整理をしていることが結婚相手にバレたくない大きな理由の一つとして、「債務整理がバレると離婚されてしまうのではないか」という懸念を持っている方もいるかと思います。
でも実は、債務整理をしているということだけで離婚されてしまうことはありません。というのも、民法で定められている離婚事由のなかに「債務整理をしていること」は含まれないと考えられているからです。ですから、結婚相手から一方的に離婚されることは基本的にないといえます。
ただし、債務整理がバレてしまうことで夫婦関係が不和になり、結果的に離婚につながってしまう危険は残っています。例えば、どちらかが浮気をしたり、互いに扶養する義務を果たさなくなったりしたら、離婚事由に該当します。
また、夫婦仲が悪化して協議離婚をするということも考えられます。こういった事態を避けたいなら、できるだけ債務整理の事実を隠し通すことも選択肢の一つでしょう。
債務整理を配偶者に打ち明けるというやり方
債務整理を隠しながら結婚生活を送ることは、それ自体負担が大きくストレスの溜まる日々になってしまいます。憧れていた幸せな結婚生活を得ることができなくなってしまうかもしれません。
ブラックリストの影響が消えるまでの7年間を無事に隠し通せれば良いですが、嘘というものは、ふとしたことでバレるものです。
ですから、配偶者の理解が得られそうならば、誠意を持って正直に全てを打ち明けるやり方を選択するべきです。打ち明けようとも打ち明けなかろうとも、債務整理の事実は変わりません。ですが、打ち明ければ夫婦で協力して問題に対処することができ、精神的にも安心できるでしょう。
まとめ
債務整理を理由に結婚できなくなったり、離婚しなければならない法律はありません。ローンやクレジットカードを使えなくなるなど結婚生活に様々な制限がかかりますが、人並みの結婚生活を送ることは十分可能です。
また、債務整理していることがバレないようにする方法はありますが、常に気を払わなければならないような、非常にストレスのかかる道を歩むことになります。
むしろ、正直に打ち明け、配偶者に理解してもらい、協力して問題を解決していく方が、充実した結婚生活を送るためには有効な手段だといえます。
債務整理に関して何か心配なことがあれば、弁護士や司法書士といった専門家に相談するのがおすすめです。様々な選択肢を提示してより良い結婚生活へと導いてくれるはずです。
債務整理と結婚に関するQ&A
債務整理をしても結婚はできますか?
できます。
債務整理をした人が結婚することは法律上なにも問題ありません。ただし、相手に断われる可能性はあります。
債務整理をすると結婚生活にどのような影響がありますか?
債務整理後の5~7年程度はクレジットカードが使えず、ローンも組めなくなりますので、金銭面での影響は少なからず存在します。
とはいえ配偶者のカードはこれまで通り使用可能ですので、大きな心配は不要です。
債務整理したことが配偶者にバレますか?
バレる場合もあります。
任意整理や自己破産をしたことが配偶者に知らされることはありません。しかし、クレジットカードが使えないといった状況から勘付かれる可能性はあります。