- 取引期間が短い借金でも多くの場合は任意整理できる
- 取引期間が短い場合は任意整理の和解条件が厳しくなりやすい
- 他にも借金がある場合は任意整理で返済の負担を軽減できる
- 弁護士・司法書士に依頼して交渉すれば有利な和解が期待できる
任意整理は、債権者との交渉によって利息の免除や返済期限の延長を認めてもらう手続きです。
交渉にはお互いの信頼関係が要求されるため、取引期間が短い場合は債権者からの信頼を得られず、任意整理はできないのではないかと気になる人もいることでしょう。
結論からいうと、取引期間が短くても任意整理はできます。しかし、いくつかのリスクがあることに注意が必要です。
この記事では、取引期間が短い場合の任意整理のリスクを踏まえて、取引期間が短くても任意整理をした方がよいケースや、任意整理を成功させるコツなどを解説します。
取引期間が短いと任意整理はできない?
借入先との取引期間が短い場合でも、条件を満たせば任意整理を利用することは可能です。
そこで、まずは任意整理の利用条件を確認しておきましょう。
任意整理の利用条件
任意整理の利用条件は、次の3点です。
- 和解後に3~5年で完済できる程度の安定収入が見込めること
- 和解した金額を完済するまで返済を継続する意思があること
- 債権者が交渉に応じること
債務者に「支払い能力」と「支払う意思」があることを前提として、債権者が交渉に応じるのであれば任意整理を利用できます。
最大の問題は、債権者が交渉に応じるかどうかです。任意整理は自己破産や個人再生のように裁判所を介する手続きではないので、債権者に和解を強制することはできません。
和解に応じるかどうかは、あくまでも債権者の意思に委ねられています。
取引期間が短くても利用可能
任意整理の利用条件に「取引期間が○年以上であること」といった要件はありません。したがって、取引期間が短い場合でも上記の3つの条件を満たせば、任意整理は利用可能です。
ただし、取引期間が短いと、債権者からの信頼が得られにくいことは否定できません。債権者からの信頼は、取引期間が長くなるにつれて厚くなっていくという傾向にあります。
取引期間が短い場合の任意整理のリスク
取引期間が短い場合の任意整理では、次に紹介するようなリスクがあることに注意が必要です場合によっては任意整理に失敗することもあります。
和解条件が厳しくなりがち
取引期間が短い場合、債権者が任意整理の交渉に応じたとしても、和解条件は厳しくなりがちです。具体的には、次のような和解条件を求められることが多いです。
- 将来利息を契約どおりに支払うこと(減額できない)
- 将来利息を一部(年3~10%など)支払うこと
- 短期間(3年以内など)で完済すること
取引期間が短ければ、債権者はまだ利息による収益をほとんど得ていないため、将来利息の全額免除には応じにくくなります。
また、借りてすぐに任意整理をするような債務者に対しては、誠実に「支払う意思」がないと判断されがちです。そのため、早期に債権を回収するために短期間での完済を求められるケースが多くなっています。
取引期間が概ね1年未満で任意整理をする場合には、このようなリスクを考慮しなければなりません。
債権者が交渉に応じないこともある
債権者が交渉に応じない場合には、残念ながら任意整理はできません。
基本的には交渉に応じる業者でも、取引期間が3ヶ月以内などと短い場合には応じないケースが少なくありません。
特に、借りてから一度も返済していないケースでは、債権者が交渉に応じず、任意整理ができない可能性が高いといえます。
過払い金は期待できない
任意整理を行う過程では、利息引き直し計算をすることで過払い金の発生が判明することがあります。しかし、取引期間が短い場合には、過払い金は期待できないことも知っておきましょう。
過払い金とは、かつて存在していたグレーゾーン金利で取引していた場合に、利息制限法上の上限金利を超えて支払った利息のことです。
過払い金を取り戻せるのは、グレーゾーン金利で概ね5年以上の取引を続けていたケースに限られます。したがって、取引期間が1~2年程度では、過払い金の返還は見込めないのです。
そもそも、2010年6月以降は出資法の改正によりグレーゾーン金利が撤廃され、過払い金が発生しなくなりました。それ以降の取引では、払い過ぎた利息を元本に充当して借金を減らすことも見込めません。
取引期間が短くても任意整理が有効なケース
取引期間が短く、リスクがあったとしても、次の4つのケースでは任意整理を検討してみるとよいでしょう。
既に滞納して一括請求を受けている
借金の返済を2~3ヶ月滞納すると、期限の利益を失い、残高の一括返済を請求されます。その場合には遅延損害金も加算されるので、返済の負担は非常に重くなってしまいます。
そんなとき、再び分割払いを認めてもらうためには任意整理が有効です。取引期間が短くても、分割払いに戻すだけなら、ほとんどの貸金業者が応じてくれます。
和解が成立すれば、その後は遅延損害金がかかりません。遅延損害金の利率は、貸金業者では20%程度、クレジットカードのショッピング枠では14.6%程度です。
任意整理で3~10%程度の将来利息を要求されたとしても、返済の負担を軽減することが可能です。
取引期間が短い借金の他に保証人付きの借金がある
保証人付きの借金がある場合、自己破産または個人再生をすると、保証人が残高の返済請求を受けてしまいます。
なぜなら、自己破産と個人再生は裁判所の決定によって強制的に借金を減免するものであるため、「債権者平等の原則」が適用されるからです。
保証人付きの借金のみを手続きから除外して、従来どおりに返済を続けることは許されません。
それに対して、任意整理は裁判所を介しない手続きなので、「債権者平等の原則」は適用されません。手続きの対象とする借入先は自由に選べます。
保証人付きの借金を除外して任意整理をすれば、保証人が返済請求を受けることはありません。
保証人に迷惑をかけたくない場合は、取引期間が短い債権者との和解条件が厳しくなるとしても、任意整理を検討する価値があるといえるでしょう。
取引期間が短い借金の他に担保付きの借金がある
住宅ローンや自動車ローンのように、物的担保が付いた借金がある場合も、保証人付きの借金がある場合と同様に任意整理が有効です。
自己破産や個人再生ではマイホームを売却されたり、自動車を引き揚げられたりしますが、任意整理で担保付きの借金を除外して手続きをすれば、財産を守ることができます。
借金の担保に入れた財産を維持したい場合は、任意整理を検討してみましょう。
他に借金がない
借入先が1社のみの場合は、取引期間が短くても基本的には任意整理を検討することになるでしょう。
なぜなら、借金総額が少なければ自己破産はできませんし、個人再生はできるとしてもメリットが乏しいからです。
ただし、借入先が1社のみでも、借入額が100万円を超える場合は個人再生をするメリットが大きくなります。借入額が数百万円に上るときは、自己破産も視野に入れた方がよいでしょう。
取引期間が短い場合の任意整理を成功させるコツ
取引期間が短い場合に任意整理で借金問題を解決するためには、いくつかのコツがあります。任意整理をするなら、以下の方法を試してみましょう。
家計の収支を債権者に開示して交渉する
任意整理は交渉の手続きなので、成功させるためには債権者の理解を得ることがポイントとなります。
そこで、債権者と交渉する際に家計の収支を開示することがおすすめです。複数社と任意整理をする場合は、他社への返済プランも併せて開示しましょう。
家計の収支から返済に回せる金額を割り出した上で、A社に毎月○万円、B社に毎月○万円……、といった返済プランを提示して交渉するのです。
こうすることで、支払いの能力と意思を示すことができるので、債権者の理解が得られやすくなります。理解が得られると、通常よりも有利な条件で和解できる可能性があります。
他の借金のみを任意整理する
取引期間が短い債権者が交渉に応じない場合、他にも借金があれば他の借金のみを任意整理することも検討しましょう。
他の借金について返済の負担を軽減すれば、取引期間が短い債権者に対しては契約どおりの返済を継続できるようになる可能性があります。
このように柔軟な形で解決を図れることも、任意整理のメリットのひとつです。
しばらく返済を続けた後に任意整理する
取引期間が短いために任意整理が難しいのなら、その債権者に対してはしばらくの間、返済を続けましょう。
借りてから概ね1年以上、返済を続ければ、一般的な条件で和解できる可能性が高まります。任意整理の一般的な和解条件とは、次のようなものです。
- 将来利息を全額カット
- 残りの元金を3~5年の分割で返済
他の借金のみを任意整理した場合は、取引期間が短い債権者に対して1年以上返済した後、追加介入で任意整理をするとよいでしょう。
借入先が1社のみの場合も、何とか1年以上は返済できないかを検討してみましょう。
ただし、返済のために新たな借り入れをすることはおすすめできません。返済のための借入を繰り返すと、あっという間に借金が膨らみ、任意整理では解決できなくなるおそれがあるからです。
どうしても返済が苦しい場合には、他の解決方法も視野に入れた方がよいでしょう。
弁護士・司法書士に依頼する
任意整理をするなら、法律の専門家である弁護士または司法書士に手続きを依頼することが得策です。弁護士・司法書士は、債務者に代わって債権者と交渉します。
債権者は、無知な債務者に対しては不利な和解条件を押し付けてくることが多いですが、弁護士・司法書士が介入すると態度が変わることが少なくありません。
取引期間が短い借入先との任意整理で将来利息を要求されている場合でも、弁護士・司法書士が交渉すれば将来利息をカットしてもらえることも期待できます。
返済期限の延長についても、柔軟に応じてもらえる傾向にあります。自力での交渉がスムーズに進まない場合は、弁護士・司法書士に相談してみるとよいでしょう。
任意整理が難しいときの借金解決方法
取引期間が短くて任意整理が難しいときには、以下の解決方法がおすすめです。
おまとめローンや借り換え
まずは、現在の借入先よりも金利の低い業者に借り換えることが考えられます。
例えば、消費者金融から金利18%で借りているのなら、金利13~15%程度の銀行カードローンから借りて消費者金融に完済することで、毎月の返済額を数千円程度ですが減らせる可能性があります。
複数社から借りている場合は、おまとめローンで借金を一本化することも有効です。おまとめローンなら金利3%程度で利用できる業者もあるので、審査に通れば返済の負担を相当程度、軽減することが可能です。
ただし、おまとめローンや借り換えを利用した場合には、完済した業者から再度借りることは控えるべきです。追加の借り入れをすると、借金が激増することになりかねません。
個人再生
借金総額が大きい場合には、裁判所を介する債務整理手続きも検討しましょう。裁判所の決定によって借金が減免されるため、債権者が応じないという心配は不要です。
個人再生は、裁判所の手続きを利用して、借金総額を5分の1~10分の1程度に減額できる手続きです。減額後の借金は原則3年、最長5年の分割払いで返済します。
個人再生を利用するためには安定収入が必要ですが、任意整理よりも大幅に借金総額が減額されるので、さほど高額の収入は要求されません。
したがって、定職に就いている人であれば、個人再生で解決できる可能性は高いといえます。
自己破産
自己破産は、裁判所の手続きを利用して、借金の返済義務を全額免除してもらうことが可能な手続きです。借金を返済する必要がなくなるので、収入が少ない人や無収入の人も自己破産は利用できます。
ただし、浪費やギャンブルで借金を作った場合など「免責不許可事由」がある場合には、原則として返済義務が免除されません。
任意整理・個人再生・自己破産は、それぞれメリット・デメリットが異なる手続きとなっています。状況に応じて、最もメリットが大きく、デメリットが小さい手続きを選ぶことで、スムーズに借金問題を解決することが可能となります。
取引期間が短い借金の任意整理を弁護士・司法書士に依頼するメリット
取引期間が短い借金で任意整理をするなら、弁護士・司法書士に依頼するのがおすすめです。法律の専門家の力を借りることで得られるメリットは、以下のとおりです。
- 依頼した段階で受任通知が送付されるので、督促と返済が止まる
- 債権者との交渉は弁護士・司法書士が代行する
- 専門家の交渉術によって有利な和解が期待できる
- 任意整理で解決可能かどうかについてアドバイスが受けられる
- 任意整理での解決が難しい場合も、最善の解決策が分かる
- 任意整理以外の債務整理手続きも代行してもらえる
弁護士・司法書士に依頼するメリットは大きいといえるでしょう。
取引期間が短いからといって一人で悩んでいても、借金問題は解決しません。早めに弁護士・司法書士に相談してみた方がよいでしょう。
まとめ
借金をしてから1年未満でも、さまざまな事情で返済が苦しくなることはあるでしょう。滞納が続くと一括返済を請求され、最終的には裁判を起こされて給料や預貯金などを差し押さえられるおそれがあります。
かといって、返済のために新たな借り入れをすると、あっという間に借金が膨らんでしまうことでしょう。
取引期間が短くても、返済が苦しくなったら任意整理をはじめとする債務整理も視野に入れて、早めに対処することが重要です。
最善の解決方法を見つけるためには、弁護士・司法書士への相談が有効です。専門的なアドバイスを受けて、なるべく早めに借金問題を解決してしまいましょう。