- 任意整理で弁護士・司法書士に辞任されると督促が再開される
- 辞任された場合は別の弁護士に依頼すること
- 再び辞任されないためには誠実に対応することが重要
- 任意整理の再依頼は債務整理に強い専門家にするべき
任意整理を弁護士や司法書士といった法律の専門家に依頼していても、何らかの事情で辞任されてしまうことがあります。任意整理の和解前に辞任されることもあれば、和解後に返済手続きを依頼していた専門家に辞任されることもあります。
辞任された場合は、当然ながら弁護士・司法書士が代理人でなくなるため、いわば債権者に対してノーガードの状態となります。借金はそのまま残っている上に、遅延損害金が加算されている可能性も高いので、早急に対処しなければ一括請求や差し押さえされるリスクが生じます。
任意整理を依頼していた事務所に辞任されたら、別の事務所にもう一度依頼することは可能です。ただし、依頼する際には適切な対処が必要です。
そこで、この記事では、辞任される原因や新しく依頼した専門家に辞任されないための注意点についてご紹介します。また、実際に債務整理SOSに寄せられた弁護士辞任で困っている方の体験談も公開します。
依頼していた弁護士・司法書士から「辞任します」という連絡を受けてお困りの方は、ぜひ参考になさってください。
任意整理を依頼した弁護士・司法書士に辞任されたらどうなる?
まずは、任意整理を依頼していた弁護士・司法書士に辞任された場合に、どのような状態になるのかを知っておきましょう。
債権者からの督促が再開する
任意整理を法律の専門家に依頼している間は債権者からの取り立てや督促がストップしますが、辞任されるとそれが再開されます。
専門家への依頼中は、債権者が債務者本人へ直接返済の請求をすることは貸金業法で禁止されています。しかし、その専門家が辞任すると禁止が解かれるので、債権者は当然、借主本人に対して連絡をしてくるのです。
借金を返済するか、すぐに返済できない場合は返済方法の合意ができるまで、取り立てや督促は止まりません。債権者から連日のように電話や手紙が来るようになるので、仕事や生活に支障をきたすおそれもあります。
不利な和解案を押しつけられる
専門家に辞任されても、借金をいつまでにいくら払うのかについて債権者と合意ができれば、問題はありません。しかし、債務者が自力でこのような交渉を行うことは難しいのが実情です。
債権者と話し合うこと自体は可能ですが、専門家のサポートがなければ、一方的に不利な和解案を押しつけられることになりがちです。和解後の返済が滞って専門家に辞任された場合には、その傾向がいっそう強くなります。
最終的に財産を差し押さえられる
交渉が進まなければ、債権者は当初の契約や、すでに和解している場合はその内容に従って請求手続きを進めます。具体的には、以下の流れをたどります。
- 残った借金を一括で返済するよう請求する
- 返済されなければ訴訟や支払督促といった裁判手続きをとる
- 強制執行を申し立て、債務者の財産を差し押さえる
差し押さえの対象となる財産は、主に給料や預金口座です。これらの財産を差し押さえられると、生活にも困ってしまう可能性が高いでしょう。
任意整理で弁護士・司法書士に辞任される原因
任意整理を依頼した弁護士・司法書士に辞任された場合、その原因は依頼者側にあることがほとんどです。
※当サイトで紹介しているウイズユー司法書士事務所からの情報によると、司法書士費用が支払えなくなって辞任になる依頼者の方は任意整理全体のうち約5%にものぼるということです。100人のうち約5人は費用が支払えなくなるわけです。
以下の各ケースは委任契約書に辞任事由として記載されており、依頼時の面談でも弁護士・司法書士に禁止事項として説明されているはずです。
弁護士・司法書士への費用支払いが遅延した
最も多い原因は、約束した依頼費用を支払えないことです。特に、分割払いの約束をした場合に多く発生しています。弁護士・司法書士は、依頼費用を受け取らなければ責任を持って事案を処理することができないため、支払いがなければ辞任することになります。
支払いが1ヶ月遅れただけならほとんどの場合は待ってもらえますが、2~3ヶ月延滞が続くと辞任される可能性が高くなります。
事務所との連絡を怠った
任意整理を依頼した後は、弁護士・司法書士事務所のスタッフから折に触れて連絡があります。そのほとんどは、今後の方針や債権者との和解条件に関する打ち合わせ・意向確認のためです。
専門家は依頼者の意向を確認できなければ任意整理を進めることはできませんので、連絡が取れない場合は辞任せざるを得ません。
- 電話がかかってきたのに出ず、折り返しの連絡もしない
- 手紙を受け取ったのに返信をしない
このようなことが続いた場合も、辞任される可能性が高くなります。
嘘をつくなど不誠実な対応をした
依頼した専門家に虚偽の説明をした場合も、辞任される可能性が高いです。
- 隠している借金がある
- 借金額を実際より大幅に少なく申告した
- 借り入れの時期が実際とは大きく異なる
- 収入を実際よりも多く申告した
専門家が任意整理に着手してからこのような嘘が発覚すると、事案処理に支障をきたしてしまいます。重要な事項で虚偽を申告する依頼者や、いくつもの嘘を重ねる依頼者とは信頼関係を築くことができませんので、専門家は辞任することになります。
アドバイスを聞かなかった
弁護士・司法書士からの「こうした方がいい」というアドバイスを依頼者が受け入れない場合も、辞任される可能性があります。
例えば、最初は正確な借金額が分からないため、とりあえず任意整理に着手して債権調査を行い、その結果を見て債務整理の最終的な方針を打ち合わせて決めるケースは少なくありません。
その結果、借金額が大きいことが判明し、専門家から「個人再生か自己破産をしないと解決は難しい」とアドバイスを受けることがあります。依頼者が頑なに任意整理にこだわる場合は、専門家としては責任を持ってその借金問題を解決できない可能性があるため、辞任することがあります。
和解後に返済を遅延した
任意整理で和解が成立した後の返済について、「返済代行」を引き受ける専門家の事務所もあります。返済代行とは、依頼者が返済金を毎月の支払日までに事務所の口座に入金し、事務所が各債権者に対して返済の振り込みを行うシステムのことです。
事務所への返済金の入金が遅れた場合も、専門家に辞任されることがあります。1回遅れただけなら通常は待ってもらえますが、2回遅れると辞任される可能性が高いです。2回遅れると、債権者から一括返済を請求されることがほとんどなので、専門家として対応のしようがなくなるからです。
任意整理で依頼費用や返済金の入金が遅れてしまう原因
任意整理の依頼費用や和解後の返済金を期日どおりに支払う意思はあっても、実際には支払いが難しくなってしまうこともあるでしょう。その原因として、主に以下のことが考えられます。
依頼費用が高くて払えない
弁護士・司法書士への依頼費用の金額は、事務所によってさまざまに異なります。なかには相場より高額のところもあります。依頼した事務所の費用が相場よりも高い場合は、分割払いをしても途中で支払いが苦しくなる可能性が高くなります。
依頼費用は相場の範囲内であっても、毎月の支払額が高ければ支払いが苦しくなる可能性があります。分割払いの期間は短いに越したことはありませんが、無理に短期間で支払うことを約束することは避けるべきです。
無理な和解をした
任意整理で債権者と無理な条件で和解をすると、返済金の入金が遅れてしまう原因となります。
早期に完済したいと思っていると、毎月の返済額を多めに設定して和解してしまい、途中で返済が苦しくなってしまいがちです。完済を目指すには、ある程度は余裕を持った返済計画を立てて、債権者と交渉することが大切です。
そもそも任意整理に適した事案ではない
無理な和解をしてしまう原因として、そもそも任意整理に適した事案ではないということも考えられます。借金総額が大きい場合は、任意整理で解決することは難しくなります。
任意整理では通常、残った借金を3年~5年かけて分割返済していきます。借金300万円が残った場合は、毎月5万~8万5,000を返済していかなければなりません。
収入にもよりますが、借金総額が大きい場合は個人再生や自己破産も視野に入れるべきです。無理に任意整理で和解したとしても、返済金の入金が遅れると専門家に辞任されてしまいます。
任意整理で弁護士・司法書士に辞任された場合の対処法
それでは、任意整理を依頼した専門家に辞任された場合はどうすればよいのでしょうか。
考えられる対処法は、以下の2つです。
自分で債権者と交渉する
一つ目の対処法は、自分で債権者と交渉することです。
先ほどもご説明したように、債務者が自力で債権者と対等に交渉するのは難しいですが、以下のような場合には自力で交渉可能なこともあります。
- 専門家が交渉を進めていて、微調整のみで和解できる場合
- 和解後の入金が2回遅れたものの、一括返済の請求を待ってほしい場合
任意整理の和解ではほとんどの場合、返済が2回遅れると一括返済するという条項が定められています。実際には2回遅れても事情を話して交渉すれば一括返済の請求を待ってもらえることが多いですが、必ずしも待ってもらえるとは限らないことに注意が必要です。
新たに弁護士・司法書士に依頼する
専門家に辞任された後は、新たに弁護士・司法書士に依頼する必要がある場合がほとんどです。
まだ債権者との交渉が進んでいない場合や、和解後の返済が2回以上遅れて遅延損害金が加算されて再和解が必要な場合などは、専門家によるサポートがどうしても必要となります。
辞任した専門家に謝罪して再依頼することも考えられますが、多くの場合は信頼関係が破壊されているため、別の弁護士・司法書士に相談・依頼する必要があるでしょう。
再び弁護士・司法書士に辞任されないための注意点
新たに弁護士・司法書士に任意整理を依頼しても、同じことを繰り返せば辞任されてしまいます。再び辞任されないためには、以下の点に注意することが必要です。
前に辞任されたことを正直に話す
新しい弁護士・司法書士に依頼する際には、以前に別の専門家に辞任されたことを正直に話すことが大切です。この事実を隠して依頼してもほとんどの場合は後に発覚し、信頼関係が壊れる原因となるからです。
辞任された理由も正直に話して、今後は決してそのようなことはしないと約束して依頼しましょう。
費用は無理のない支払い方法にする
依頼費用が相場の範囲内の事務所を選ぶことを前提として、依頼する際に、支払いが滞らないように無理のない支払い方法を相談することも大切です。
専門家は原則として依頼費用をすべて受け取るまで債権者との交渉を開始できないので、できる限り早期の支払いを勧めてきます。しかし、支払えなければ再び辞任されてしまうので、しっかりと交渉しましょう。
3ヶ月以内に支払うのが理想的ではありますが、6ヶ月~1年でも引き受けてくれる専門家の事務所はあります。ただし、依頼費用の支払期間が長期になると、その間に一部の債権者から裁判を起こされ、返済を開始しなければならないこともあるので注意が必要です。
専門家との連絡を欠かさないようにする
新たな弁護士・司法書士に依頼したら、連絡を欠かさないようにしましょう。専門家からの連絡は平日の日中に来る場合がほとんどですので、仕事中などで電話に出られないこともあるでしょう。その場合は、手が空いたときに折り返し連絡することが大切です。
電話連絡が難しい場合でも、メールやファックスなどで連絡する方法がありますので、折り返しの連絡は必ず行いましょう。
誠実な対応を心がける
当然のことですが、新たに依頼する弁護士に虚偽の説明をしてはいけません。信頼関係を壊さないように、全般的に誠実な対応を心がけることが大切です。
専門家から必要書類の提出を求められたときも、できる限り早期に準備して提出しましょう。任意整理で提出を求められる可能性がある書類としては、以下のようなものがあります。
- 身分証明書
- 印鑑
- 借入先との契約書や返済したときの明細書など
- 借入先のキャッシングカードやクレジットカード
- 給与明細
- 家計収支表
必要に応じて他の債務整理も視野に入れる
自分では任意整理を希望していても、借金総額や収入の状況から見て個人再生や自己破産の方が適しているというケースは少なくありません。専門家が状況を見て「任意整理では解決が難しい」と判断した場合は、他の債務整理を検討した方がよいというアドバイスがあるはずです。
その場合は、素直になって他の債務整理も視野に入れた上で、自分が任意整理を希望する具体的な理由を専門家に伝えて方針を打ち合わせましょう。そうすることで、専門家との信頼関係も築くことができますし、借金問題を適切に解決できる可能性も高まります。
辞任通知が届いたら、すぐに別の弁護士・司法書士へ相談をすること
任意整理を依頼した専門家から「辞任します」という通知が来たら、その後は債権者に対してノーガードの状態となります。その状態を放置していると、債権者から取り立てや督促を受けるだけでなく、裁判を起こされて財産を差し押さえられることがあります。
しかし、別の専門家に依頼すれば、任意整理の交渉を再開することができますし、すでに和解している場合でも再和解(2回目の任意整理)が可能です。
深刻な状態に陥る前に、別の専門家へ相談しましょう。
任意整理で弁護士・司法書士に辞任された方の体験談
債務整理SOSに実際に相談があった、任意整理で弁護士・司法書士に依頼したけれど、費用が支払えずに辞任されたケースの体験談をご紹介します。
いずれのご相談も、当サイトで紹介する債務整理に強い弁護士が受任をして、解決できたという報告を受けています。辞任された場合でも別な専門家に依頼すれば解決できることがありますので、諦めずに相談してみましょう。
(20代男性 神奈川県在住)
(60代男性 北海道)
(30代女性 愛媛県)
(30代男性 埼玉県)
つい最近まで某大手法律事務所に任意整理をお願いしていたのですが、月の支払い(2万円)が3ヶ月ほど滞ってしまい、先日代理人を辞任されてしまいました。
滞ってしまった理由は、実家への帰省が何度も必要になって旅費がかさんだことや、体調不良による病院通院などで生活費を上手くやりくり出来なかったためです。
私個人の事情で担当してくださっていた弁護士の方にはとても迷惑をかけしてしまいましたが、気持ちをあらたに任意整理したいと考えています。
(20代女性 新潟県)
(30代男性 東京都)
(50代女性 大分県)
仕事が安定しなくて支払いが厳しく司法書士事務所との債務整理が解約になり今に至ります。
もう一度債務整理は可能なのでしょうか。
(30代男性 北海道)
まとめ
任意整理で弁護士・司法書士に辞任される原因は、依頼者側にあることがほとんどです。しかし、他の事務所で辞任された人の任意整理を引き受けてくれる専門家の事務所はありますので、早めに相談することが大切です。
辞任された後は、遅延損害金が加算されたり、再和解が必要であったりして、通常の任意整理よりも交渉が難しくなる可能性もあります。他の債務整理を検討する必要もあるかもしれません。
そのため、新たに依頼する場合には債務整理に強い弁護士・司法書士を選ぶことが重要となります。具体的には、債務整理の実績が豊富で、親身になって話を聞いてくれる専門家を選びましょう。
債務整理に強い専門家に改めて依頼し、借金問題を解決しましょう。