- 個人再生をすると7年間はクレジットカードが使えなくなる
- 個人再生後もデビットカードや家族カードは使える
- 7年経過後も個人再生した会社のカードは作成できないことがほとんど
個人再生を検討している方の中には、「二度とクレジットカードは使えなくなるのでは…」と心配される方がいるようです。しかし、完済後に一定期間経過すれば新たに発行することはできます。
この記事では、個人再生をするとなぜクレジットカードは使えなくなるのか?完済後に使えない期間や家族カードなど代替えできるカードの種類や各種対処法についてご説明します。
個人再生をすることでカード使用への影響について不安をお持ちの方は参考になさってください。
個人再生でクレジットカードが使えなくなる理由
個人再生という債務整理を行うとクレジットカードは使えなくなります。まずはその理由から説明していきます。
個人再生は約定違反でクレジットカード契約は解除される
個人再生は、裁判所が債務の減額と分割払いを認める債務整理の手続きで、定められた期間内に分割弁済が終了すれば、それ以上の返済義務はありません。債務返済は完了したことになります。
しかし、クレジットカード会社に借入れをしていた場合、契約内容に従わなかったという、約定違反を犯したという事実が記録として残ります。
カード会員規約には、約定違反で契約を解除できる条項や、カード利用を停止できる条項が明記されています。
例えば、楽天カードでは、支払いを怠るなどの規約違反や民事再生申立など信用状態の悪化には、カードの利用停止や会員資格の取消しをなしうると定められています。
(第19条(カード利用の停止、会員資格取消)第1項、第2項)カード会員規約 | 楽天カード(2022年6月時点)
このように個人再生はカード会社との契約違反に該当します。当然ながら、カード会社は会員資格を取り消して契約解除や利用停止の措置をとりますのでカードは使えなくなります。
個人再生は信用情報機関の事故情報に登録される
信用情報機関とは、個人の債務返済能力に関する情報を集め、金融機関が融資の審査をする際などの判断資料に供する団体です。
クレジットカード会社や消費者金融など貸金業者は会員として加盟しており、新規の借入れの際には必ず信用情報機関に照会が行われます。
現在、日本には、次の3つの機関があります。
クレジットカード会社は、個人再生の手続きが行なわれたことや、約定どおりに返済がなされなかったこと等を、自社が加盟している信用情報機関に報告します。それらは俗称「事故情報」として登録されます。これがいわゆる「金融ブラック」です。
個人再生の完済後、クレジットカードは、いつ作れるのか?
個人再生を行い支払いが完済したら早速クレジットカードが使えると思うことでしょう。しかし、一定期間が経過しないと新たにクレジットカードは取得できません。
いつ作れるようになるのか、その期間について見ていきましょう。
信用情報が回復されるまで5年から7年
個人再生の分割弁済が終了し、新たなカードを作るため、クレジットカード会社に契約を申し込んだとしましょう。
通常の手続きとして、カード会社は加盟する信用情報機関に、申込者の情報を問い合わせます。そこで事故情報が登録されていれば信用性が乏しいと判断され、新規の契約は拒否される可能性が高くなります。
ただし、一定の年数(5~7年)が経てば、信用情報は回復します。それぞれの信用情報が回復されるまでの年数は以下のようになります。
信用情報機関 | 登録期間 |
---|---|
CIC(株式会社シー・アイ・シー) | 5年間 |
JICC(株式会社日本信用情報機構) | 5年間 |
KSC(全国銀行個人信用情報センター) | 7年間 |
株式会社シー・アイ・シー(CIC)
個人再生の申立てをしたことは登録されません。しかし、個人再生による約定違反、支払条件・支払総額の変更は登録されます。その登録期間は、契約期間中および契約終了後5年以内です。
- 【参考】
- 裁判所へ特定調停や民事再生を申請した場合、および弁護士・司法書士に債務整理を依頼した場合、自分の信用情報にその事実がコメントとして登録されますか? | CIC
- 「信用情報開示報告書」表示項目の説明 | CIC
- CICが保有する信用情報 | CIC
株式会社日本信用情報機構(JICC)
JICCには主に、消費者金融と信販会社が加盟しています。改正貸金業法で定められた「指定信用情報機関」に指定されているため、「貸金業者」が多く加盟しています。
民事再生の申し立てをしたことが登録されます。その登録期間は、契約日または貸付日によって異なります。
- 契約日または貸付日が2019(令和元)年9月30日以前の場合
→申立日から5年以内 - 契約日または貸付日が2019(令和元)年10月1日以降の場合
→契約継続中の期間及び契約終了後5年以内
【参考】:<詳細版>『信用情報記録開示書』項目説明書 | JICC(2020年12月版)
全国銀行個人信用情報センター
KSCには主に、銀行・銀行系クレジットカード会社・農協・信用組合・信用金庫などの金融機関が加盟しています。
官報に掲載された裁判所の個人再生手続開始決定を登録します。登録期間は、開始決定日から7年以内です。
個人再生後、クレジットカードを作るコツ
個人再生後はできるだけ早くクレジットカードを作りたいと考えることでしょう。ここからは、個人再生後にクレジットカードを確実に作るためのコツについてご説明します。
債権者だったカード会社には申し込まない
個人再生時に債権者だったカード会社には申込みをしないことが賢明です。
事故情報が抹消済みでも、カード会社は過去の顧客の事故情報を独自に保有している場合があります。債権者だった会社に再度申し込みをしても、審査は通らない可能性が高いため、避けたほうがよいでしょう。
「数を撃てば当たる」方式はダメ
新規申し込みを受けたカード会社は、審査のため信用情報機関に情報照会をします。その照会を受けた事実も「申込情報」として、信用情報に記録されます。
他の会社にも立て続けに申し込みをしているとわかれば、「資力が悪化」、「他社は拒否」と推測され、契約を断わられる可能性が高くなります。“数打てば当たる”的な手当たり次第の申し込みはおこなわないようにしましょう。
リボ払いの申込みならカードを作れる可能性がある?
最終的に契約を承諾するかどうかは、申込者の信用性を各カード会社がどのように判断するかで決まります。信用性が低い利用者であっても、高金利の融資ならば、利用を認めるという判断はあり得ます。
リボ払いは、毎月の返済額を低額で一定化でき、経済力の乏しい者でも利用を継続しやすい融資契約です。その一方、利息は増大しやすくカード会社からすれば利益を得やすいのが特徴で、審査は比較的ゆるいと言われています。
そのため、カード会社によってはリボ払いの申込みならば作れる可能性があります。
クレジットカード会社のキャンペーン中や営業強化シーズンを狙う
クレジットカード会社の営業強化シーズンには、普段よりカードを発行できる確率が高まります。なぜなら、営業強化シーズンにはキャンペーンをおこない新規顧客を増やして営業成績を伸ばそうとカード会社全体が前がかりになるため、審査基準が緩くなるからです。
特に営業強化シーズンとなることが多いのが、年度末の時期です。この時期に申込みをすれば、比較的簡単にカードを作ることが期待できるかもしれません。
個人再生前は、いつまでクレジットカードを使ってよいのか?
個人再生をおこなう予定の方の中には、しばらくクレジットカードは使えなくなることがわかっているので、駆け込みで使用する方がいます。
個人再生前はいつまでクレジットカードを使えるのかご説明します。
返済できないと認識して以降のクレジットカード使用は避けるべき
個人再生の申立前なら、事故情報には登録されていませんので、限度額の範囲で利用することはもちろん可能です。
しかし、「もはや返済できない」「債務整理を選択せざるを得ない」とわかっていながら、カードを使用することは、詐欺罪に当たりますのでお勧めできません。
また、このような「取り込み詐欺」的な行為は、「申立てが誠実にされたものでないとき」(民事再生法第25条4項)として、裁判所によって、個人再生の申立てを棄却されてしまう可能性もあります。
企業再生の事案ですが、ある会社が民事再生を行うと決めた後に、その申立て前に、取引先から商品を仕入れる等の取り込み詐欺的な行為を行ったなどの理由で、不誠実として申立が棄却された裁判例があります(高松高裁平成17年10月25日決定、金融・商事判例1249号37頁)。
弁護士・司法書士に依頼した後のクレジットカード使用は厳禁
申立てを弁護士・司法書士に依頼した後に、たまたまカードが手許にあることをよいことに、使用してしまうことは厳禁です。
依頼者と弁護士・司法書士は連携して個人再生の再生計画書を作成して申立てをおこない手続きを進めていきます。
お互いの信頼関係が何よりも重要になりますので、依頼者側が信頼を損なうようなことをすると、弁護士・司法書士に辞任を余儀なくされます。
クレジットカードが使えない間の対処方法
クレジットカードが使えない間も代替手段はありますので悲観することはありません。これから紹介するカードの利用を検討してみましょう。
デビッドカードを利用する
デビッドカードは預金口座の残高から金銭が引き落とされ、預金がなければ決済できない仕組みのサービスです。クレジットカード会社が立替払いをするものではありません。
そのため、カード会社にはリスクがありませんから、事故情報が残る者でも、デビッドカードの新規発行は認められることがあります。
クレジットカードのような、翌月払い・分割払い・リボ払い・ボーナス払い・キャッシングはできませんが、ネット通販の決済や店舗でのカード払いなど、ほとんどの場面で、デビッドカードでの決済が可能です。
【参考】:デビットカードとは | 三井住友カード
家族カードを利用する
家族カードとは、クレジットカード契約者の本会員の家族に対して発行することができるカードのことです。利用額の引き落としは、本会員が登録している口座から回収されます。
この家族カードは、契約者本人を代理してショッピングやキャッシングを行い、契約者本人が債務を負うとされます。
つまり債務を負うのはカード契約者本人ですので、例えば、妻が契約者の家族カードを事故情報に登録されている夫が利用しても何ら問題はありません。
JCB会員規約(個人用)第1条4「家族会員の家族カードによるカード利用はすべて本会員の代理人としての利用となり、当該家族カード利用に基づく一切の支払債務は本会員に帰属し、家族会員はこれを負担しない」
【引用】:JCBカード会員規約 | JCB
プリペイドカードを利用する
プリペイドカードは、カード購入という形でカード発行会社に金銭を預けておき、その後、コンビニなど店舗での支払、ネットでの決済などに使用できるものです。いわば「前払い」ですから、誰でも利用することができます。
カード発行時に審査はほとんどありませんので、金融ブラックでも発行できます。当然ながら分割払いはできませんし、チャージに手間が必要ですが、クレジットカードの代替え手段として利用価値はあるでしょう。
電子マネーを利用する
今日では、メルペイ、ペイペイなど、独自の電子マネーが数多く登場しています。その中には、翌月払いや、分割決済を認め、実際上クレジットカードと同じ機能を担うサービスも登場しています。
その電子マネーの運営会社はクレジットカード会社と同様に審査を行っており、信用情報機関の情報を参照しつつも、それにとらわれずに独自の審査を行っています。
審査は比較的緩やかですので、事故情報登録後も利用できる可能性があります。
メルペイ利用規約
第 16 条(立替払いサービス)「1. 立替払いによる決済 ユーザーは……加盟店に対する商品代金の支払いについて……弊社による立替払いサービスを利用できます。」【引用】:メルペイ利用規約 | mercari
クレジットカード惜しさに個人再生を諦めるべきではない理由
個人再生を行えば、5~7年クレジットカードは利用できなくなりますが、カード惜しさに個人再生をためらうべきではありません。
個人再生を避けても、いずれクレジットカードは使えなくなる
個人再生を先延ばしして、債務がかさめばカードの利用枠は一杯になり、支払いも滞納します。カード会社に延滞の事故情報が登録されて、遅かれ早かれカードは利用できなくなることは明らかです。
個人再生を行わなくても、いずれクレジットカードを使えなくなるという結果に変わりはないでしょう。
個人再生をしない限り、クレジットカードは使えないまま
前述のように個人再生を行えば、5年から7年で事故情報が消え、再度、クレジットカード契約をできる可能性が生じます。
他方、個人再生などの債務整理を行わず、債務を返済できないままであれば、借金も抱えたまま、事故情報が消えることもなく、いつまで経ってもクレジットカードを作ることはできません。
それならば個人再生の手続きをおこない、できるだけ早くクレジットカードを使えるようにするのが得策です。
弁護士・司法書士に任せることでクレジットカード発行の機会も早まる
個人再生に踏み切ることで、やがては、再度クレジットカードを使える時期が来ます。
当然ですが、個人再生の申立てを、できるだけ早く行い、早く裁判所の決定をもらえれば、分割弁済を終える時期も早く到来し、新しいクレジットカードを手にできる機会も早まります。
そのためには個人再生の申立ては、専門家である弁護士・司法書士に依頼することが大切です。
個人再生の手続は、複雑で細かい条件が数多く設定されており、法制度の中でも、かなり難解な分野です。一般の方が自分で手続を進めるにはハードルが高すぎます。
弁護士・司法書士に任せてしまえば、安心して本業に集中し、生活を立て直せるばかりでなく、クレジットカード再取得までの期間も短縮できるでしょう。
まとめ
個人再生をすることでクレジットカードは使えなくなりますが、一生のことではありません。5年から7年で再び発行することができますので、カードが使えなくなることを理由にせず、躊躇することなく申立てをおこなうことをおすすめします。
弁護士・司法書士に個人再生を依頼して、確実な方法で手続きをおこない、クレジットカードを再取得するまでの期間を短くしましょう。