- ティーアンドエスは他社から債権譲渡を受けて取り立てを行うことがある
- ティーアンドエスが請求する債権は時効にかかっている可能性もある
- 債務承認をしないように注意が必要である
- 請求された債権が時効にかかっている場合は時効援用をするべき
ティーアンドエスという業者が突然家に来て、金銭の支払いを請求されるケースが増えています。支払わなければ、その後もしつこい取り立てを受けてしまうケースが多いです。
身に覚えがない業者から督促を受けると不安になるでしょうし、対処に困るのも無理はありません。しかし、ティーアンドエスは違法な悪質業者ではありませんので、放置すると裁判や差押えなどに発展するリスクもあります。
この記事では、ティーアンドエスが家に来たり、しつこい取り立てを受けたりしたときの正しい対処法について、わかりやすく解説します。
ティーアンドエスとは
まずは、ティーアンドエスがどのような会社なのかを確認しておきましょう。
会社概要
ティーアンドエスは、東京都に事務所がある消費者金融業者です。個人の顧客を対象として、無担保・無保証で貸し付けを行っています。
会社の概要は、以下のとおりです。
会社名 | 株式会社ティー・アンド・エス |
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所在地 | 〒105-0012東京都港区芝大門2丁目6番6号VORT芝大門 総合受付2階 ご融資受付1階(旧ビル名:芝大門エクセレントビル) |
貸金業者登録番号 | 東京都知事(7)第29447号 |
設立 | 平成7年10月20日 |
主な事業内容 | 消費者金融業 一般人材派遣業 コンサルティング業 ファクタリング業 |
メインの業務は、ティーアンドエスが貸主となって貸し付けを行う消費者金融業です。しかし、それだけでなく、他の消費者金融などから未払債務について債権譲渡を受けて、その債権回収も行っています。
ただし、ティーアンドエスは法務大臣の許可を受けたサービサー(債権回収会社)ではありません。
債権譲渡とは
債権譲渡とは、債権者が債務者に対して有する債権を、他の人に譲り渡すことです。これにより、借入残高や支払期限などの契約条件は同一のまま、元の債権者から新しい債権者へと債権が移転します。
例えば、Aさんが消費者金融Bからの借金を滞納している場合に、消費者金融Bがティーアンドエスへこの債権を譲渡すると、ティーアンドエスが新しい債権者となり、従前と同じ契約条件にてAさんに対して借金の返済を請求できるようになるのです。
なお、債権譲渡が行われても、元の債権者から債務者に対する通知がなければ、債務者は新しい債権者に対して返済する必要はありません。
主な元の債権者
ティーアンドエスへ債権譲渡を行っている「元の債権者」として、主に以下のところが確認されています。
- アエル(旧日立信販、ナイス)
- エイシン産業
- オリエント信販
- クライム
- クリバース
- センチュリー
- タイヘイ
- 日本プラム
- プライム
- プロマイズ
- ベルーナ
- ユニワード
ティーアンドエスは、倒産や廃業をした消費者金融などから債権譲渡を受けて、取り立てを行うことが多いようです。以上の他にもティーアンドエスへ債権譲渡を行う業者がいる可能性もありますが、参考になさってください。
ティーアンドエスから支払いを請求される理由
ティーアンドエスから支払いを請求される理由として、次の2点が挙げられます。
- ティーアンドエスから借金をした
- 他社で滞納していた借金がティーアンドエスへ債権譲渡された
ティーアンドエスから借金をした覚えがない場合は、他社からの借金がティーアンドエスへ債権譲渡されていることになります。その場合は、元の債権者から債権譲渡通知書が届いているはずですので、確認してみましょう。
通知書を廃棄・紛失している場合は、以下の信用情報機関へ個人信用情報の開示請求を行うことで、元の債権者名と債権譲渡された事実を確認できる可能性があります。
- JICC(株式会社日本信用情報機構)
- CIC(株式会社シー・アイ・シー)
- KSC(全国銀行個人情報信用センター)
ティーアンドエスが家に来るのは違法?
借金の取り立てが家にまで来ると、ほとんどの方は困惑してしまうでしょう。ここでは、ティーアンドエスが家に来ることが違法ではないのかについてご説明します。
法律上のルールを守っていれば合法
貸金業者による取立行為については、貸金業法で一定のルールが定められています。しかし、自宅訪問による取り立て自体は禁止されていません。
したがって、他の禁止規定に抵触する行為がない限り、自宅訪問による取り立ても合法です。
ティーアンドエスは貸金業者としての登録をした、適法な貸金業者です。基本的に法律の範囲内で取り立てを行っていますので、ほとんどの場合、ティーアンドエスが家に来ることは合法と考えてよいでしょう。
違法な取り立てのケース
貸金業法では、取り立てに関する禁止行為として、主に以下のものが掲げられています。
- 早朝、深夜(午後9時~翌午前8時)の取り立て
- 退去を求められても居座る
- 貼り紙、立て看板、その他の方法で債務者のプライベートを口外する
- 他者から借りて返済するように要求する
- 家族など第三者への返済要求
もし、ティーアンドエスの担当者からこれらの行為を受けた場合には、日本貸金業協会へ苦情を申し出るか、弁護士または司法書士に相談して対処することをおすすめします。
ティーアンドエスのしつこい請求を無視するリスク
ティーアンドエスはしつこい取り立てを行うことで知られていますが、無視すると以下のリスクが生じるため、適切に対処しなければなりません。
電話・文書・自宅訪問による督促が繰り返される
督促を無視すると、何度も督促が繰り返されます。
電話は連日のようにかかってきますし、督促状や催告書などの文書も、日を置いて何度も郵送されてきます。自宅訪問された際に居留守を使うなどして無視すると、自宅訪問が何度も繰り返される可能性があります。
このようにして督促が繰り返されると、精神的な負担が重くなりますし、家族に借金のことがバレるおそれもあるでしょう。
そもそも、ティーアンドエスが家に来るのは、事前の電話や文書による督促を無視したためです。トラブルを回避するためには、当初、電話や文書で督促された段階で適切に対処することが大切です。
裁判を起こされる
督促を無視し続けていると、ティーアンドエスは裁判手続きで支払いを請求してくることが多いです。
具体的には、民事訴訟(請求額が60万円以下の場合は少額訴訟)を提起されたり、支払督促を申し立てられたりする可能性があります。
このような裁判を起こされた場合には、裁判所から自宅へ「訴状」や「支払督促」といった書類が届けられます。
裁判所から届いた書類も無視していると、ティーアンドエスの主張がすべて認められてしまい、「判決」や「仮執行宣言付き支払督促」が確定しますので、注意が必要です。
給料や預金を差し押さえられる
判決や仮執行宣言付き支払督促が確定すると、ティーアンドエスは強制執行手続きにより債務者の財産を差し押さえることが可能となります。
そのため、放置し続けていると、ある日突然、給料や預金口座などを差し押さえられることがあります。
給料を差し押さえられた場合は、ティーアンドエスから請求された金額を完済するまで、毎月の給料から一部が強制的に差し引かれます。
預金口座が差し押さえられた場合には、その口座が凍結され、預金残高を上限として、ティーアンドエスから請求された全額が強制的に差し引かれます。
ティーアンドエスから請求を受けたときに確認すべきこと
ティーアンドエスから請求を受けたときは、適切に対処するためにも、まずは以下のことを確認しましょう。
詐欺ではないか
昨今は架空請求などの詐欺による被害事例が急増していますので、ティーアンドエスの名前をかたった詐欺ではないかを確認することも重要です。
ティーアンドエスの担当者が家に来る前には、必ず、債権譲渡通知や督促状などが届いているはずです。何の前触れもなく自宅訪問されて支払いを要求された場合は、詐欺である可能性が高いでしょう。
後でも詳しくご説明しますが、自宅訪問を受けたその場で慌てて支払ったり、支払いの約束をしたりすることは控えるべきです。
相手から用件を聞き取り、名刺を受け取って、後日連絡すると回答して退去してもらいましょう。
そして、会社概要と照らし合わせるなどして、間違いなくティーアンドエスからの請求であるかを確認することです。
元の債権者名
詐欺でないことが確認できたら、元の債権者名を確認しましょう。
ティーアンドエスから請求される前に、元の債権者からの債権譲渡通知書が届いているはずですので、手元にないかを確認してください。
通知書を廃棄・紛失してしまっている場合は、ティーアンドエスの担当者に尋ねれば教えてもらえます。ただし、自分でティーアンドエスに尋ねると「債務の承認」(借金の存在を認めること)をしてしまい、時効が完成していても援用できなくなるおそれがあることに注意が必要です。
元の債権者名を確認する手がかりが手元にない場合には、弁護士・司法書士に依頼して調査してもらうこともできます。
借金の残高
次に、元の債権者に対して負っていた借金の残高を確認しましょう。
ティーアンドエスから送られてきた督促状には、元の借金の残高について、元金・利息・遅延損害金の内訳が記載されています。
元の債権者から借りた際の書類や、ご自身の記憶と照らし合わせて、間違いないかを確認することです。
時効が完成していないか
元の借金が特定できたら、その借金について時効(消滅時効)が完成していないかを確認しましょう。
ティーアンドエスは時効にかかった古い債権を譲り受けて取り立てを行うことが多いため、この確認を行うことは非常に重要です。
消費者金融などの貸金業者からの借金について、消滅時効が完成するための条件は、以下の2つです。
- 最後の取引から5年以上が経過したこと
- その間、時効が中断していないこと
最後の取引から5年以上が経過しているかを調べるためには、元の債権者への返済に使用した通帳の履歴や振り込み明細書などの資料を確認したり、記憶を遡ったりする必要があります。
どうしても分からない場合には取引履歴を取り寄せる必要がありますが、元の債権者が廃業している場合には、ティーアンドエスに記録の開示を請求することになります。
その際に、「債務の承認」をしてしまうおそれがあるので、取引履歴の入手が必要な場合は、弁護士・司法書士に依頼した方が無難です。なお、「時効の中断」については、後ほど詳しく解説します。
支払期日と振込先
元の借金について消滅時効が完成していない場合は、支払い義務があります。ティーアンドエスから送られてきた督促状などで、請求額とともに、支払期日と振込先も確認しておきましょう。
ティーアンドエスのしつこい取り立てへの対処法
ティーアンドエスのしつこい取り立てを止めるための正しい対処法は、以下のとおりです。
時効が完成している場合は時効援用をする
元の借金について消滅時効が完成している場合は、時効援用をすることで支払いを免れることができます。時効援用の手続きをするまでは、債務が消滅しないことにご注意ください。
時効援用について詳しくは、後ほど解説します。
支払い方法を交渉する
消滅時効が完成していない場合には支払い義務がありますので、一括で支払える場合は早めに支払ってしまいましょう。
すぐに支払えない場合には、ティーアンドエスに連絡して事情を伝えて、支払期限の延期や分割払いなど、支払い方法について交渉することです。
支払う姿勢を見せて申し入れをすれば、ある程度は交渉に応じてもらえます。支払い方法について合意ができたら、ティーアンドエスからの取り立ては止まります。
債務整理を検討する
請求額が大きく膨らんでいたり、他にも借金を抱えていたりして返済が厳しい場合は、債務整理を検討してみた方がよいでしょう。
債務整理とは、法律に則った手続きを通じて正当に借金の減免や支払期限の延期などを認めてもらうことが可能な制度の総称です。
具体的には、任意整理・個人再生・自己破産という、特徴が異なる3種類の手続きがあります。状況に合った手続きを選択して行うことで、ティーアンドエスを含む借金問題を解決することが可能です。
時効援用の手続き方法と注意点
時効援用の手続きは、さほど複雑なものではありませんが、失敗すると支払いを拒めなくなるおそれがあります。そこで、ここでは時効援用の手続き方法と注意点を詳しく解説します。
時効援用とは
時効援用とは、時効によって利益を受ける人が、相手方に対し、その利益を受ける旨の意思表示をすることです。
借金の消滅時効を援用する場合は、債務者から債権者に対し、「この借金については消滅時効が完成したため、支払いません」と伝えることになります。
消滅時効を援用するかどうかは、債務者の自由意思に委ねられています。そのため、時効が完成しても、時効援用をするまで債務は消滅しないことに注意が必要です。
時効は中断していることもある
5年の時効期間が経過したとしても、時効が「更新」や「完成猶予」により中断していることもあります。
時効の更新とは、一定の事由が生じた場合に、それまで進行していた時効期間がリセットされ、ゼロから新たな時効期間が進行し始めることです。主な時効の更新事由として、以下のものが挙げられます。
- 裁判(判決が確定した場合)
- 支払督促(仮執行付き支払督促が確定した場合)
- 債務の承認
裁判や支払督促によって時効が更新された場合、新たな時効期間は10年に伸張されることにも注意が必要です。
また、時効完成前に裁判外で支払いを請求された場合には、そのときから6ヶ月間だけ、時効の完成が猶予されます。債権者から内容証明郵便で催告書が届いた場合などが、時効の完成猶予に該当します。
債務の承認はしないこと
債務の承認とは、文字どおり、債務者から債権者に対して、債務を負っている旨を認めることです。以下の言動はすべて、債務の承認に該当します。
- 少しでも支払う
- 支払う約束をする
- 分割払いや支払期限の延期を申し出る
- 「支払いたいがお金がないので支払えない」と告げる
ティーアンドエスは譲渡を受けた債権が時効にかかっている旨を承知の上で、債務者が債務の承認をすることを目論んで請求してくることも多いです。
自宅訪問や電話でティーアンドエスの担当者に対応する際には、債務の承認に該当する言動を引き出されないように注意しなければなりません。
時効が完成している可能性がある場合には、債務の承認を回避するためにも、ティーアンドエスへの対応を弁護士や司法書士に任せた方がよいといえます。
時効援用の方法
時効援用の方法に決まりはなく、電話や口頭で意思表示をするだけでも有効です。
しかし、証拠が残らなければ後日、再び請求され、その際に債務の承認をさせられてしまうおそれもあります。そのため、一般的に時効援用は文書で行います。
具体的には、「消滅時効援用通知書」を内容証明郵便で作成し、ティーアンドエスの本社宛に送付しましょう。
ティーアンドエスのしつこい取り立てへの対処を弁護士・司法書士に依頼するメリット
ティーアンドエスから自宅訪問やしつこい取り立てを受けて困ったときは、弁護士または司法書士に対応を依頼することをおすすめします。法律の専門家によるサポートを受けることで、以下のメリットが得られます。
- 時効が完成しているかどうかを調査、判断してもらえる
- 時効が完成している場合には時効援用の手続きを任せられる
- 弁護士、司法書士が代理人となるため、債務の承認をしてしまうおそれがない
- 支払いが厳しい場合には最適ない解決方法を提案してもらえる
- 債務整理の複雑な手続きを任せられる
- 専門家が的確に手続きを行ってくれるので、納得のいく結果が期待できる
- 受任通知の送付により、しつこい取り立てが止まる
どのような状況であっても、弁護士・司法書士の力を借りることで、最善の解決を図ることが可能です。
まとめ
ティーアンドエスから自宅訪問やしつこい取り立てを受けたときは、まず、詐欺でないかを確認し、債権譲渡を経た請求である場合には、時効が完成していないかを確認することが大切です。
時効が完成している場合は、時効援用を行います。債務が残っていて、支払いが厳しい場合には、債務整理も視野に入れて解決方法を検討することになるでしょう。
放置していると、しつこい取り立てが続きますし、最終的には裁判や差押えに発展するおそれがあります。困ったときは1人で抱え込まず、お気軽に弁護士や司法書士へ相談してみましょう。