- 家族がした借金の返済義務があるのは保証人、相続人になっている場合のみ
- 取り立てへの対処は警察か弁護士に相談
家族がした借金の取り立てが自分に来た場合、代わりに支払う義務はあるのでしょうか。取り立てを受けて不安になっている方がいるかもしれません。
家族の借金を自分が代わりに支払う義務は原則としてありませんが、一方で返済義務が生じるケースもあります。
そこで今回は、家族がした借金の返済義務の有無、返済義務があるケース、取り立てに対する対処法や解決法などについて、わかりやすく解説します。
家族がした借金の返済義務はない
家族がした借金をその家族本人以外の人が返済する義務は原則としてありません。
法律的に別人の借金を支払う義務を負うのは特別なケースに限られます。家族とはいえ別人なので、支払う必要はありません。
よって、家族の借金の取り立てが自分に来ても、支払う義務はないことを告げて帰ってもらいましょう。それでもしつこいようでしたら、警察に相談したほうがよいかもしれません。
ただし、ケースによっては、家族がした借金の返済義務を負う場合もあります。その場合は支払いを免れることはできないため、注意が必要です。
家族がした借金の返済義務があるケース
家族がした借金の返済義務があるケースは、次の2つの場合です。これらに該当する場合は支払い義務がありますので、注意する必要があります。
もし支払わなかった場合、遅延損害金が発生し、借金が膨れ上がる可能性がありますし、最終的には訴えられてしまうリスクがあります。
保証人になっている場合
家族の借金の保証人となっている場合、家族がした借金を代わりに返済しなければなりません。
特に、連帯保証人の場合には自分が借金を負ったのと同じことになりますので、まずは家族に払えるか聞いてくださいといって拒むことができません。
また、家族が自己破産などの債務整理をしたとしても、保証人の義務が消えるわけではありません。このように、保証人の義務は重いため、家族といえども保証人になるのは慎重になりましょう。
なお、家族に勝手に保証人にされたようなケースについては支払う義務はありませんので、その旨を伝えましょう。
相続人の場合
借金をしていた家族が亡くなり、自分がその家族の相続人となっている場合、家族がした借金を支払う義務があります。
プラスの財産だけではなくマイナスの財産もすべて相続することになるためです。
もし家族がした借金を相続したくないのであれば、家族が亡くなってから3か月以内に、家庭裁判所に対し相続放棄の申述をするか、限定承認の申し立てを行わなければなりません。
この期間が過ぎてしまうと相続放棄や限定承認をすることができず、家族の借金を背負うことになりますので、期間には気を付けてください。
なお、家族が亡くなった後に借金の取り立てが自分に来た際に、支払う旨を伝えてしまうと相続を承認したとされてしまう可能性がありますので注意してください。
家族の借金の影響が及ぶケース
家族がした借金は、保証人になったり相続したりしなければ原則として支払う義務はありません。
しかし、自分が支払う義務はなかったとしても、家族が借金をしたことによって自分にも影響があるケースがあります。
以下では、どういったケースで事実上の影響が及ぶのかを解説します。もしこういったケースで困ってしまうのであれば、家族とよく相談しましょう。
家族カードを利用している場合
家族が借金の取り立てを受け支払いが滞っている場合、家族の情報は個人信用情報機関に事故情報として登録されてしまう可能性が高くなります。いわゆるブラックリストに登録されるといいます。
ブラックリストに登録されてしまうと、新たにクレジットカードを作成することはできなくなりますし、現在利用しているクレジットカードの利用が停止されてしまう可能性が極めて高くなります。
ご自身のカードが家族カードである場合、家族のクレジットカードが利用停止になることによってご自身のカードも利用停止となってしまいます。
家族カードをメインカードとして使用している場合、影響が大きくなります。
家族が自己破産をした場合
家族が借金を支払うことができず自己破産をした場合、家や車などの財産が没収されてしまいます。家族と同居している場合や家族の車を共同で利用している場合には極めて重大な影響が及んでしまうでしょう。
家族が自己破産をしてしまうと影響が大きい場合には、自己破産をすべきかどうか家族とよく話し合いましょう。
ローンをする場合
ご自身が車などを購入する際にローンを組むと、ローンの審査があります。
家族がブラックリストに登録されていると、家族はローンを組むことができませんが、家族以外の人はブラックリストに登録されているわけではないため、原則としてその影響を受けません。
しかしながら、ローン審査の際に家族の事故情報が参照され、事実上ローン審査に悪影響が及ぶ可能性があります。ご自身は借金の滞納がないのにローンの審査に落ちてしまった場合には家族の影響を受けた可能性が高いかもしれません。
取り立てに対する対処法
保証人になっているわけでもなく、借金を相続したわけでもないのに家族の借金の取り立てが自分に来て困っている場合、相談先としては主に2つあります。
以下では主な相談先2つについて、使い分けのポイントも踏まえて解説します。
警察に相談
借金の取り立てがしつこく、返済義務がないことを伝えているのに退去しなかったり、脅迫めいたことを言われているような場合には、警察に相談しましょう。
場合によっては不退去罪、強要罪、脅迫罪等に該当する可能性があり、警察に通報する旨を伝えればおさまることもあります。
ただし、警察はあくまで刑事事件に発展するようなケースしか取り扱ってくれません。借金問題について民事事件ですので、刑事事件に該当しないようなケースでは弁護士に相談するのがよいでしょう。
弁護士に相談
家族の借金の取り立てが来て困っている場合、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は法的問題に関する代理権を持っていますので、本人に代わって借金の取り立てについて交渉し、法的に支払う義務がないことを伝えてもらうことが可能です。
弁護士が間に入った場合、素直にあきらめるケースも多いです。
弁護士が代理人についた場合、本人に直接接触することをやめるよう求めることができますので、精神的な安心を得られるでしょう。
刑事事件に発展しそうな悪質なケースについては、被害届や告訴状を作成して警察に提出してもらうこともできます。
よって、警察に相談する前にまずは弁護士に相談することも可能です。
家族がした借金の返済義務が自分にある場合の解決方法
保証人になっている等により家族がした借金の返済義務が自分にある場合において借金の取り立てが厳しいのであれば、弁護士や警察に相談することは可能ですが、相談するだけでは根本的な解決には至りません。
家族の借金問題を解決するためには様々な方法が考えられますが、以下では主に2つの方法を紹介します。
特に債務整理については借金問題の解決に有効な方法ですので、ぜひ検討してみてください。
時効の援用
家族が借金をして最後に返済をしてから5年以上経過している場合には、時効が援用できないかを検討してみましょう。
保証人になっている場合、家族の借金の時効援用ができます。また、家族の死亡により家族の借金を相続した場合も時効援用が可能です。
借金が時効になっている場合、借金を返済する義務はなくなりますので、時効期間が経過しているかを確認してみてください。
時効については2020年4月1日に改正民法が施行され、借金の最終返済日から5年が経過した場合に時効になるとされました。
民法が改正される前は、借金は原則として10年で時効により消滅するものとされていました。ただし、改正前であっても消費者金融や銀行からの借金の場合は5年でした。
よって、民法改正前であっても改正後であっても、消費者金融や銀行からの借金は最終返済日から5年で時効により消滅します。一方、個人間のお金の貸し借りについては、民法改正前は10年となります。
注意してもらいたいのは、時効期間が過ぎていないときに消費者金融等に対し、家族本人が一部でも支払ってしまったり、支払う旨の約束をしてしまったりすると、時効期間がゼロにリセットされてしまうということです。
また、時効期間が経過した後であっても、支払う旨の約束をしてしまうと、支払い義務が消えません。時効に関して不安な場合は弁護士に相談してみてください。
債務整理
家族の借金が時効にかかっているケースは多くありません。消費者金融などは時効にかからないように債権を管理しており、必ず請求をしてくるからです。
家族がした借金の返済義務が自分にある場合の借金問題を解決するために有効な方法として、債務整理があります。債務整理とは、債権者と直接交渉したり裁判所を介することによって、借金を減額・免除する手続きの総称をいいます。
債務整理には任意整理・個人再生・自己破産の3種類の方法があり、それぞれメリット・デメリットが存在します。
以下では簡単にそれぞれのメリット・デメリットを紹介しますので、家族の借金で困っている方は、家族の状況に応じて適切な債務整理方法を選択しましょう。
よくわからない場合は弁護士に相談すれば、適切な債務整理方法をアドバイスしてくれるでしょう。
任意整理
任意整理は債務整理の中で最も利用されている方法で、他の2つの方法と異なり裁判所を介さずに借金を整理できる手軽さから、年間200万人が利用しているといわれています。
任意整理とは、債権者と直接交渉をすることにより、借金の利息や遅延損害金をカットしてもらい、分割払いの期間を延ばしてもらうことで3~5年で借金の完済を目指す方法をいいます。
裁判所を介する必要がないため家族や会社にバレにくい点がメリットです。また、他の2つの債務整理方法と異なり、整理する借金を選ぶことができます。
よって、保証人に迷惑をかけたくない場合には保証人がついている借金を整理対象から外すことが可能ですし、家や車を失いたくない場合はそれらのローンの整理を対象から外すこともできます。
デメリットとしては、元本は基本的に減額されないという点ですが、利息だけでも年利15%以上に設定されているケースが多く、元本額が大きい場合は予想以上の減額を実現することも可能です。
家族の借金問題で困っている場合、まずは任意整理を検討してみましょう。弁護士に相談すれば、任意整理を代理して手続きを進めてくれますので、弁護士に相談することをおすすめします。
個人再生
債務整理方法の2つ目は、個人再生です。個人再生とは、裁判所に申し立てて再生計画が認められることにより、借金の元本を含め5分の1から10分の1に減額し、原則3年で完済を目指します。
個人再生のメリットは、元本も減額ができるため任意整理よりも大きな減額が期待できる点です。
また、住宅ローン特則という制度を利用することにより、住宅ローンを整理の対象から外し、家を失うことを避けることができます。これは自己破産にはないメリットです。
デメリットとしては、裁判所を介する手続きであるため家族本人が対応するのは難しいこと、原則として全ての債務が整理の対象となるため、保証人に請求がされてしまうことが挙げられます。
また、最低弁済額が定められており、最低でも100万円は弁済しないといけないため、借金が100万円以下の場合は個人再生を行うメリットはないでしょう。
自己破産
自己破産は聞いたことがあるという方が多いと思います。自己破産は、裁判所の審理によって債務を全額免責してもらう手続きのことです。
他の2つの方法と異なり、一定の債務を除いて全ての借金の支払い義務を免責できるため、絶大な効果を受けることができます。
ただし、誰でも自己破産ができるわけではなく、「支払不能」状態にない人は自己破産ができません。支払不能とは、借金の返済をすることが困難な状態が継続することをいいます。
よってある程度の支払能力があり返済が可能である人は自己破産ではなく任意整理や個人再生を検討しましょう。
また、免責不許可事由に該当すると、原則として自己破産ができません。免責不許可事由はさまざまな事由がありますが、ギャンブルによる借金は免責不許可事由の一つです。
ただし、ギャンブルによる借金の場合であっても裁判官の裁量によって免責される可能性はありますので、弁護士に相談してみましょう。
まとめ 家族の借金トラブルは弁護士へ相談を
家族の借金については家族に代わって支払う必要はありません。毅然と対応しましょう。
一方で、保証人になってしまったり、家族の借金を相続してしまったりすると、家族がした借金の返済義務を自分が負うことになります。
家族がした借金問題について悩んでいる場合には、債務整理を検討することをおすすめします。弁護士は全ての債務整理について代理する権限を有しており、弁護士に依頼すれば本人に代わって手続きを進めてくれます。
家族がどの債務整理を選択すべきかわからない場合、弁護士に相談することをおすすめします。家族の状況をヒアリングし、状況に応じた最適な債務整理方法を提案してくれるでしょう。