- ひととき融資は違法で危険性が高いので利用してはいけない
- 貸主からの肉体関係などの要求に応じると被害が拡大する可能性が高い
- ひととき融資の被害に遭ったら毅然とした態度での対応が重要となる
- 一人で対応するのは危険。弁護士・司法書士を通じて対応すべきである
ひととき融資とは、お金に困っている女性を募集し個人間融資を持ちかけ、融資の見返りとして肉体関係を要求する行為です。主にSNSやネット上の掲示板などで勧誘されます。
利用してしまった女性は、性交渉を一度するだけではすまないことがほとんどです。裸の写真や性行為中の動画像を担保に取られ、法外な利息を要求されます。払えなければ動画像を拡散するなどと脅迫され、何度も性交渉を強要されます。
相手の言いなりになってしまうと、肉体的にも金銭的にも被害が拡大する一方となります。ひととき融資は違法行為ですので、毅然とした態度で対処していくことが大切です。
この記事では、ひととき融資の違法性や被害の実態をご紹介した上で、実際にひととき融資に手を出してしまったときの対処法を詳しく解説します。
ひととき融資とは
ひととき融資とは、主に女性を対象とした個人間融資で、肉体関係を持つことを条件として融資が行われるものです。
SNSや掲示板サイトなどで、お金を借りたい女性と貸してもよいという男性が出会い、合意すれば実際に会って肉体関係を持った上で、お金が手渡されます。
このように、男女間で親密な「ひととき」を過ごすことと引き換えに融資が行われることから、ひととき融資と呼ばれています。
お互いが合意した取引による融資なら両者にメリットがあると言えなくもありませんが、ほとんどの場合、女性にデメリットが多いことばかりです。
法外な利息を要求される上に、性交渉の様子を写真や動画に撮られてしまいます。
そして女性が返済できなくなると、次のような脅迫が行われます。
「定期的に性交渉に応じれば、毎月の返済額を減らしてあげます」
「応じなければ、写真や動画を個人情報と一緒にネットで拡散します」
「性交渉に応じなければ、親や職場に連絡します」
このように脅迫されると、女性としては何度でも性交渉に応じざるを得ないでしょう。
ひととき融資は、どこからもお金を借りられず、藁にもすがる思いで借金を申し込んだ女性の弱みにつけ込んで、甘い汁を吸おうとする卑劣な行為です。
ひととき融資は違法?
ひととき融資は違法なケースがほとんどですが、中にはグレーゾーンとなるような事案もあり、全てが違法と一概にいうことはできません。
ここでは、ひととき融資がどのような法律に違反するのかについて、正確にご説明します。
民事で違法となるケース
ひととき融資の貸主は、ほとんどの場合、貸金業者でもない個人が無登録で不特定多数の人に対して超高金利で貸付けをしています。そのため、民事事件として以下の法律違反が成立します。
- 貸金業法違反:貸金業登録をせずに不特定多数に貸付けをする行為
- 利息制限法違反:上限金利が年に15~20%を超える貸付け
- 出資法違反:個人が年利109.5%を超える貸付け
ただし、貸主が不特定多数の人には融資をしておらず、利息制限法の範囲内の金利での貸付けだったとします。そこで貸主と合意の上で肉体関係を持ったのであれば合法な融資ということになります。
契約無効で返済義務がないケース
肉体関係を持つことと引き換えにお金を貸すという契約は、公序良俗に反すると考えられ、民法により無効となる可能性が高いです。
また、出資法の上限金利を超える金利を伴う契約は犯罪であるため、やはり公序良俗に反し、無効となります。個人間融資の場合、出資法の上限金利は年109.5%です。
そして、肉体関係との引き換えや暴利を巻き上げるといった不法な動機で手渡されたお金は「不法原因給付」に当たり、貸主には法律上の返還請求権が認められません。
つまり、お金を借りるために性交渉に応じざるを得なかったケースや、年109.5%を著しく上回る高金利で貸し付けられたケースでは、元金・利息を含めて返済義務がないと考えて差し支えありません。
貸主に犯罪が成立するケース
ひととき融資の貸主には、以下の犯罪が成立する可能性があります。
- 貸金業法違反
- 無登録で不特定多数の人に金銭を貸し付けた場合
- 10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、または両方
- 出資法違反
- 年109.5%を超える金利で個人間融資を行った場合
- 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または両方
- 脅迫罪
- 裸の動画像をばらまくと脅して返済を迫った場合など
- 2年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 暴行罪
- 返済や性交渉を求める際に暴力を振るった場合など
- 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料
- 強制わいせつ罪
- 相手の同意なく性的な行為を行った場合
- 6ヶ月以上10年以下の懲役
- 強制性交等罪
- 相手の同意なく性交渉、性交類似行為を行った場合
- 5年以上の有期(最長20年)懲役
- 名誉毀損罪
- 裸の動画像や個人情報を拡散した場合
- 3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金
- ストーカー規制法違反
- 継続的な肉体関係を求めてつきまとったり、執拗に連絡したりした場合
- 1年以下の懲役または100万円以下の罰金。禁止命令に違反した場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金
借主が罪に問われることは基本的にありませんが、返済する意思がないのに返済を約束して借りる「借りパク」は詐欺罪に問われるおそれがあるので、注意が必要です。
ひととき融資による被害の実態
ひととき融資に手を出すと、以下のような被害に遭ってしまいます。
既に何らかの被害に遭っている方も、適切に対処しなければさらに深刻な被害を受けてしまうおそれがありますので、確認していきましょう。
裸の写真を担保にとられる
お金を借りるために貸主と性交渉をする際に、裸の写真や性行為の様子を撮影され、その動画像を担保に取られることがほとんどです。
「性交渉には合意したけれど、撮影には合意していない」と抗議しても、既に性交渉に及んでから「嫌なら貸さない」などと言われると、拒否することは難しいでしょう。
法外な利息を要求される
ひととき融資の借主は個人間融資を装ったヤミ金業者の場合があります。また、個人が闇金まがいの貸付けをすることも多く、トサン(10日で3割)やトゴ(10日で5割)などといった法外な利息を要求してきます。
中には「性交渉に応じれば無利子で貸してあげる」と言っておきながら、肉体関係が終わった後、約束を反故にして法外な利息を請求してくるケースもあります。
何度も肉体関係を強要される
返済ができなければ、再度、肉体関係を要求されます。それも、性交渉に応じれば返済を免除してもらえるわけではなく、利息を引いてもらえたり、返済を待ってもらえたりするだけです。
完済するまで、継続的に肉体関係を要求されることがほとんどです。それを拒否しようとすると、担保に取られた動画像をネット上にばらまくと脅されるため、女性としては応じざるを得なくなるでしょう。
裸の動画像や個人情報をばらまかれる
いつまでも完済できない場合には、実際に裸の動画像や個人情報をネット上にばらまかれることもあります。
悪質な個人の貸主は、闇金まがいの嫌がらせ行為によって借主の女性を精神的に追い込み、お金を支払わせようとします。
一般の男性の場合も、性交渉を断ったりすると、腹いせ目的にアダルトサイトなどに動画像を拡散するおそれがあります。
ストーカー行為をされることもある
場合によっては、貸主が借主の女性に恋愛感情を抱いたり、都合の良い交際相手として関係を継続したいといった欲望から、つきまとったり頻繁に連絡してくるようなケースもあります。
闇金業者よりは、一般の男性から借りた場合に多いケースです。完済した後にまで、裸の動画像をネタに関係を迫ってつきまとう、という悪質なケースもあります。
ひととき融資の貸主から不当な要求を受けたときの対処法
それでは、ひととき融資に手を出してしまった場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。
まずは、借りる前の段階や、まだ深刻な被害には遭っていない段階での対処法をご説明します。
裸の写真を送らない
相手に融資を申し込んだ段階で、担保として裸の写真を送信するように要求されることもあります。しかし、いったん裸の写真を握られてしまうと、理不尽な要求を拒否できなくなってしまいます。
決して裸の写真は送らないようにしましょう。
性交渉に応じてはいけない
性交渉に応じることも禁物です。裸の写真を送っていなければ拒否しても痛手はありませんので、断固として拒否しましょう。
既にお金を借りて、返済できなくなった段階で性交渉を要求されたときも、拒否すべきです。先ほどもご説明したとおり、性交渉に応じると何度でも関係を強要されてしまいます。
返済は拒否する
性交渉に応じないのなら返済を迫られることになりますが、違法なひととき融資では返済義務はありません。返済も断固と拒否しましょう。
貸主は、借主の女性を、返済するか性交渉に応じるかの二者択一に追い込み、甘い汁を吸うことを目論んでいます。
この両方を断固として拒否しなければ、貸主との関係を断ち切ることはできません。勇気を持って、拒否する決意をすることです。
裸の写真を取られている場合は消去を求める
裸の写真を相手に握られたままでは、返済と性交渉の両方を拒否することは困難です。そのため、裸の写真を取られている場合には消去するように求める必要があります。
ひととき融資は違法であり、刑事罰も適用されることを告げて、消去を求めるべきです。
しかし、貸主が素直に消去に応じるとは考えがたいことも事実です。そこで、以下のように警察や弁護士・司法書士の力を借りることが必要になってきます。
警察に相談する
悪質なひととき融資の場合、まずは警察に相談することが考えられます。
実害が生じていなければ警察は動かないことも多いですが、裸の写真をネタに脅迫されているような場合には、犯人検挙に向けて動いてくれる可能性が十分にあります。
被害届または告訴状を提出し、捜査を依頼するようにしましょう。
弁護士・司法書士に依頼して警告する
とはいえ、警察が動いてくれたとしても、犯人が検挙されるまでには、ある程度の時間を要するのが実情です。そこで、弁護士または司法書士という法律の専門家に依頼することが最善の対処法となります。
弁護士・司法書士は、すぐに依頼者の味方として動いてくれます。貸主に対して代理人としての立場で、脅迫や返済の要求をやめなければ刑事告訴などの法的措置をとる旨を警告し、交渉してくれます。
貸主が一般の男性の場合はもちろんのこと、闇金業者の場合も、弁護士・司法書士が介入すれば、法的措置をおそれて脅迫や返済の要求をやめることがほとんどです。
ひととき融資の被害に遭った場合の対処法
既に貸主との性交渉に応じ、裸の写真も握られて実害が生じている場合には、さらに断固とした対処が必要になってきます。
貸主との関係を絶つ
まずは、貸主との関係を絶つことを考えましょう。性交渉と引き換えに借り増しをしている場合は、そのような取引はストップしなければなりません。
性交渉だけでなく返済も拒否し、自分で貸主と連絡をとることも控えるべきです。
ただ、貸主を無視していると深刻な被害を受ける可能性が高いので、以下のように対処していきましょう。
裸の写真や個人情報が流出した場合は削除請求
もし、裸の写真や個人情報が流出した場合には、広く拡散される前に削除する必要があります。
ネットで自分の名前を検索する「エゴサーチ」をこまめに行うなどして、流出していないか確認しましょう。
実際に流出した場合に削除請求をするには、Webフォームから削除依頼を送信する方法や、裁判手続きを利用する方法など、いくつかの方法があります。
迅速に対処する必要があるので、弁護士・司法書士に依頼して的確に進めてもらった方がよいでしょう。
刑事告訴をする
実害が生じている場合には、警察も真剣に動く可能性が高くなります。被害届の提出よりも刑事告訴をした方が確実に警察に動いてもらえますので、告訴状を提出しましょう。
ただし、警察がなかなか告訴状を受理してくれないこともあります。やはり、法律の専門家である弁護士・司法書士に依頼して、刑事告訴をしてもらう方が有効です。
民事で慰謝料請求をする
性交渉を強要されたり、裸の写真をばらまかれたりして精神的苦痛を負った場合には、貸主に対して民事で慰謝料を請求することも可能です。
ただし、実際に慰謝料を請求するには裁判手続きなどに時間を要してしまいます。ひととき融資による被害を食い止めるためには、脅迫や返済の要求をやめなければ刑事告訴だけでなく慰謝料も請求する、という形で警告の材料として使うと有効です。
弁護士・司法書士を通じて対応する
実際の対応は、弁護士・司法書士に依頼して行うことを強くおすすめします。貸主に弱みを握られた女性が自分で対応していくことは困難だからです。
弁護士・司法書士は、先ほどもご説明したとおり代理人として貸主に対して警告し、交渉してくれます。流出した動画像の削除請求や、刑事告訴、慰謝料請求といった専門的で複雑な手続きも迅速に進めてくれます。
ひととき融資の被害から速やかに解放されるためには、法律の専門家の力を借りることが得策です。
ひととき融資は利用しない!借金問題は債務整理で解決しよう
ひととき融資の利用を考える方のほとんどは、一般的なカードローンやクレジットカードなどでは借入ができなくなっているのではないでしょうか。既に抱えている借金の返済に窮して、ひととき融資に手を出してしまうのでしょう。
しかし、これまでにご説明してきたとおり、ひととき融資に手を出してしまうと深刻な被害を受けてしまい、底から自力で抜け出すことは困難となります。
一般的な借金は債務整理で解決できますので、ひととき融資に手を出してはいけません。債務整理には主に任意整理・個人再生・自己破産という3種類の手続きがありますが、状況に合った手続きを選ぶことで、必ず解決の道筋が見えてきます。
ひととき融資に興味を持った方も、既にひととき融資に手を出してしまった方も、債務整理という合法的な手段で平穏な生活を取り戻すことを検討しましょう。
自分で対応するのは危険!ひととき融資で困ったら弁護士・司法書士ヘ相談を
既にひととき融資でお金を借りた方、特に裸の動画像をとられてしまっている方は、自分で貸主に対応することは非常に危険です。正しい主張をしても脅迫されると抵抗できず、被害が深刻化する可能性が極めて高いからです。
ひととき融資の被害で弁護士・司法書士に相談・依頼することで得られるメリットをまとめておきます。
- 返済義務の有無を正しく判断できる
- 性交渉や性的動画像の送信を要求されたときの対処法を教えてもらえる
- 貸主との交渉を代わりに行ってもらえる
- 動画像の削除請求や刑事告訴、慰謝料請求などの複雑な手続きを一任できる
- 借金問題についても最善の解決方法を提案してもらえる
- 債務整理を依頼すれば、受任通知の送付により貸金業者からの督促が止まる
- 債務整理の手続きもすべて代わりに行ってもらえる
一人で悩まず、一刻も早く法律の専門家である弁護士・司法書士に相談する方が賢明です。
まとめ
ひととき融資は卑劣な違法行為なので、絶対に利用してはいけません。
「闇金よりはマシ」と思われるかもしれませんが、実態は個人間融資を装った闇金まがいの行為をおこなう貸主が多いですので危険です。
借金返済に困っているのなら、債務整理など正当な手段で解決して、平穏な生活を取り戻しましょう。既にひととき融資の被害に遭っている場合には、弁護士に相談すれば、あなたの味方となり適切に解決を図ってくれます。
一人で悩んでいるだけでは事態は改善しませんので、まずは弁護士に相談してみましょう。