- 任意整理は会社にバレにくい手続きである
- 状況によっては任意整理が会社にバレることもある
- 会社にバレても解雇などの懲戒処分を受けることは原則としてない
- 弁護士・司法書士に依頼すれば会社や同僚に知られるリスクを減らせる
借金の返済が苦しくなったときは、任意整理で返済額を減らせば完済しやすくなります。しかし、「任意整理をすれば会社にバレるのではないか?」と心配している方も少なくないでしょう。
会社から解雇や減給などの処分を受けてしまうと、返済が難しくなるばかりか生活も厳しくなってしまうので、もっともな心配だと思います。
結論から言いますと、債務整理をしても会社にバレることはありません。仮にバレたとしても解雇などの処分は受けません。
この記事では、任意整理が会社にバレない理由や、どのようなケースでバレてしまうのか、会社に知られずに任意整理をするための対処法などについて、分かりやすく解説します。
任意整理が会社にバレにくい3つの理由
任意整理をしても会社にバレにくい理由は、以下の3つです。
- 非公開の手続きである
- 手続き中に債権者が会社に連絡することはない
- 会社に書類を申請する必要がない
非公開の手続きである
任意整理は、債権者と直接話し合うことによって今後の返済条件を変更する手続きです。裁判所を介さず内々に行われるので、手続きをしたことが公表されることはありません。
唯一、信用情報機関に事故情報が登録されます(いわゆるブラックリストへの登録)。
しかし、信用情報機関に加盟している金融機関を除いて第三者が信用情報を見ることはできません。したがって勤務先が金融関係でない場合はバレません。
手続き中に債権者が会社に連絡することはない
任意整理の手続きの際には、債権者から現在の勤務先の名称や連絡先、役職などについて確認されます。
しかし、これは支払い能力の確認や、和解後に返済が滞った場合に備えて確認しているだけであり、手続き中に債権者が会社に連絡することはありません。
そもそも、任意整理をするということは借金の返済について話し合うことですので、手続き中に取り立ての電話がかかってくることはないのです。
会社に書類を申請する必要がない
任意整理では、書類はさほど必要ありません。この点、自己破産や個人再生の場合は、以下のような書類を裁判所に提出するために、会社に申請して取得する必要があります。
- 退職金見込額証明書
- 社内預金や財形貯蓄の証明書
任意整理の場合は、会社への申請が必要な書類はないのでバレることはありません。
任意整理したことが会社にバレるケース
実際には、任意整理をしたことが会社にバレるケースもあります。バレてしまうのは主に以下のケースです。
- 会社からの借入金を任意整理した場合
- 和解後の返済を怠った場合
- 給料の差押えを受けた場合
会社からの借入金を任意整理した場合
従業員貸付制度を利用するなどして会社から借り入れをしている場合に、その借入金を任意整理すると、当然ながら任意整理したことが会社に判明します。
返済条件について会社と交渉する際には、さまざまなことを聞かれますので、他にも借金を抱えていることがバレる可能性も高いといえます。
ただし、任意整理では自己破産や個人再生と異なり、手続きの対象とする借入先を自由に選ぶことができます。会社からの借入金を除外し、他の借金のみを任意整理すれば、会社に知られることなく手続きすることが可能です。
和解後の返済を怠った場合
任意整理の和解後に返済が遅れると、当然ながら債権者は電話や文書で催促してきます。
通常は携帯電話や自宅へ連絡してくるので、その際に適切に対応し、いつまでに支払うかを伝えれば問題ありません。
しかし、この連絡を無視すると、債権者はやむを得ず職場に連絡してくることになります。他の人が債権者からの電話に出ると、借金のことがバレてしまう可能性があります。
給料の差押えを受けた場合
和解後の返済を2回以上怠ると、ほとんどの場合は一括返済を求められます。
支払えずに放置していると、債権者は裁判を起こした上で強制執行による差押え手続きに進み、多くの場合は給料を差押さえてきます。
給料が差押さえられると、裁判所から会社へ書類が送付されます。
その書類には差押債権者として貸金業者等の名称が記載されている上に、その債権者からも会社に連絡が入ります。そのため、確実に借金が会社にバレることになります。
任意整理しなければ会社に借金がバレることはない?
任意整理をしないで滞納を続けた場合は債権者が会社に連絡したり、給料を差押えたりします。
任意整理をせず返済もしないとなれば借金のことがバレると考えるべきです。
延滞中の連絡を無視すると会社に連絡される
任意整理をしなくても、延滞中の連絡を無視すると債権者は職場に連絡してきます。この連絡によって借金のことが会社にバレる可能性があります。
1回の延滞でも連絡を無視すると会社に連絡されてしまうので、債権者からの連絡には必ず対応しなければなりません。
延滞が続くと給料を差し押さえられる
延滞が続くと債権者が裁判を起こし、給料を差し押さえてくることもあります。
ただ、いつ裁判を起こしてくるかは、債権者によって大きく異なります。早ければ延滞後3ヶ月程度で裁判を起こす業者もいますが、半年ほどは待ってくれる業者も少なくありません。
いずれにしても、任意整理後の「2回以上の延滞」よりは時間に余裕があります。その間に任意整理または他の債務整理に踏み切れば、会社にバレずに借金を整理することが可能となります。
任意整理が会社にバレるとどうなる?
任意整理をしたことが会社にバレてしまうと、どうなるのでしょうか。万が一の場合に備えて知っておきましょう。
解雇などの懲戒処分を受けることはない
借金を払えないことが会社バレると、解雇や減給、降格などの懲戒処分を受けるのではないかと心配している方は多いことでしょう。
しかし、たとえ借金を返済できなくなった場合でも、そのことを理由に会社から懲戒処分を受けることは原則としてありません。
なぜなら、会社が従業員に対して懲戒処分を行うための要件は、法律で厳しく制限されているからです。
会社が解雇などの懲戒処分を行うためには、「客観的に合理的な理由」がなければならず、この要件が欠ける場合は権利濫用として処分が無効となります(労働契約法第15条、第16条)。
懲戒処分が有効となるのは、闇金から借りたお金を返さず、脅迫的な取り立てや嫌がらせ行為が職場に及んだような場合です。
正規の貸金業者からの借金であれば、会社にバレたとしても懲戒処分が有効となることはほとんどないと考えられます。
職場にいづらくなる可能性はある
会社から処分を受けないとしても、借金のことがバレると職場で噂の的になったり、陰口を叩かれることは考えられます。職場に居づらくなり、退職を考える人もいます。
しかし、他人の噂はやがて収まるものです。会社や上司から退職を迫られることはありませんので、早期に借金問題を解決することを第一に考えるべきでしょう。
任意整理は自己破産・個人再生よりもバレにくい
会社にバレずに借金問題を解決するためには、できる限り早期に任意整理を行うことが得策です。
なぜなら、任意整理は自己破産・個人再生よりもバレにくいからです。具体的には、以下の表をご覧ください。
バレるきっかけ | 任意整理 | 自己破産・個人再生 |
---|---|---|
手続きの公表 | なし | 官報に掲載される (一般人が読むことない) |
必要書類の取得 | 会社への申請は不要 | 会社への申請が必要な場合がある |
会社からの借り入れ | 手続きから外すことが可能 | 手続きから外すことはできない |
財産処分 | 不要 | 必要な場合がある |
事故情報の登録期間 | 5年 | 7年 |
自己破産の場合、一定の評価額を超える財産は処分しなければなりません。マイホームや車などを手放せば、上司や同僚から怪しまれて借金がバレる可能性がないとはいえません。
ブラックリストに登録される期間は、自己破産・個人再生よりも任意整理の方が短くなります。
会社でクレジットカードを作ることを勧められた場合、自己破産・個人再生では手続き後7年は応じられませんが、任意整理の場合は5年が経過すると応じることが可能なので、リスクが軽いといえます。
会社にバレずに任意整理をするための対処法
任意整理は基本的に会社にバレにくい手続きですが、万全を期すためには以下の対処をとることをおすすめします。
- 専門家に依頼する
- 和解後の返済が遅れそうなときは事前に相談する
- 返済が難しくなったら方針変更を検討する
専門家に依頼する
任意整理をするなら、自分で手続きをするよりも弁護士・司法書士に依頼することをおすすめします。
法律の専門家に依頼することで、以下のメリットが得られます。
- 取り立てや督促がすぐに止まる
- 手続きを代行してもらえる
- 専門家の事務所が債権者からの連絡が窓口となる
すでに延滞している場合でも、専門家から受任通知を送付してもらうことで取り立てや督促が止まります。
その後の交渉は専門家が代理人として行うので、本人が債権者と直接やりとりする必要はありません。
したがって、依頼後は債権者からの連絡や差押えで会社にバレる心配がなくなります。
和解後の返済が遅れそうなときは事前に相談する
弁護士・司法書士に依頼して任意整理をした場合でも、和解後の返済が遅れると会社にバレる可能性が出てきます。
返済が遅れそうなときは、事前に債権者に連絡し、いつまでに支払うかを伝えることが大切です。
万が一、返済を2回以上怠った場合でも、事情によっては債権者が待ってくれる可能性もあります。
諦めずに債権者に連絡し、具体的な事情を話すようにしましょう。返済できない状態を放置すると、会社にバレるリスクが高まります。
返済が難しくなったら方針変更を検討する
和解後に返済できない状態になると、やがては差押えを受けてしまい、会社にバレることになります。
任意整理後でも、自己破産や個人再生を申し立てることが可能です。放置せず弁護士または司法書士に相談し、方針変更を検討しましょう。
任意整理が会社にバレないか不安なときは弁護士・司法書士に相談・依頼しよう
任意整理が会社にバレるのではないかと不安なときは、一人で悩まず弁護士または司法書士に相談・依頼することを強くおすすめします。
早期に専門家に相談・依頼することで得られるメリットは、以下のとおりです。
- 専門家としての立場で交渉してもらえるので、有利な和解が期待できる
- 債権者からの連絡や差押えを回避できる
- 状況に応じて最適な解決方法を提案してもらえる
- 自己破産または個人再生が必要な場合でも会社にバレるリスクを抑えることが可能
専門家によるサポートを受けることで、会社にバレるリスクを減らしつつ、より有利な形で借金問題を解決することが可能となります。
まとめ
任意整理は会社にバレる可能性が低い手続きですが、自己判断で対応すると会社にバレてしまうこともあります。
だからといってリスクを恐れて借金を放置すると、やがて返済できなくなり結局は会社にバレるリスクがさらに高まってしまいます。
借金の返済が苦しくなったら、早めに弁護士・司法書士に相談しましょう。もちろん、専門家には守秘義務があるので、相談したことが会社に知られることはありません。
安心して会社で働くためにも、借金問題は早期に専門家の力を借りて解消してしまいましょう。