- 債務整理はネット完結できないケースが多い
- 弁護士・司法書士との面談をおこない依頼するのが原則となる
- ネットで完結したい場合は全国対応の事務所への相談がおすすめ
- 債務整理は信頼できる弁護士・司法書士に依頼することが重要
債務整理をするには専門的な法律知識が要求されるため、弁護士あるいは司法書士といった専門家に依頼して行うのが一般的です。
ただ、「仕事が忙しくて専門家の事務所に行く時間がとれない」「面と向かって借金問題を相談することに抵抗がある」「依頼したい事務所が遠方にある」などの事情により、ネット完結で債務整理ができないかと考える人も少なくありません。
その一方で、債務整理を成功するには専門家との信頼関係も重要となります。
この記事では、債務整理の手続きをネット完結で行えるかどうかを解説するとともに、安心して依頼できる弁護士・司法書士の選び方もご紹介します。
債務整理の手続きはネット完結できない?
最近はホームページなどで全国から債務整理の相談や依頼を受け付けている専門家の事務所が増えています。
しかし、債務整理を依頼する際には原則として最低1回は専門家と顔を合わせて面談する必要があります。債務整理は手続きの最初から最後まですべてをネット完結で行うことはできないというのが原則だからです。
相談はネット完結が可能
借金問題について専門家に相談するだけであれば、ネット完結することも可能です。債務整理に強い弁護士・司法書士のほとんどは無料相談窓口を設けていますので、まずは相談してみましょう。
ただし、すべての専門家の事務所がネットでの相談に対応しているわけではありません。ネット相談に対応している事務所では、ホームページ内に「メールで相談」「LINEで相談」「ZOOM相談」などが設置されているので、そこをクリックすればメールやLINEで相談ができます。
依頼するには直接面談が必要
債務整理の手続きを依頼する際には、前述したように最低1回は専門家と直接面談する必要があります。なぜなら、弁護士や司法書士が相談者と1度も面談することなく債務整理の依頼を受けることは、以下の規則で原則として禁止されているからです。
- 債務整理事件処理の規律を定める規程(日本弁護士連合会)
- 債務整理事件の処理に関する指針(日本司法書士会連合会)
第3条
弁護士は債務整理事件を受任するに当たっては、あらかじめ、当該事件を受任する予定の弁護士(中略)が当該債務者と自ら面談をして、次に掲げる事項を聴取しなければならない。
第5
債務整理事件の依頼を受けるにあたっては、依頼者又はその法定代理人と直接面談して行うものとする。
債務整理を依頼するときに直接面談が必要な理由
しかし債務整理の依頼をネット完結で行うことができれば、依頼者にとっても専門家にとっても便利なはずです。それでも以下の理由から依頼する際には面談が必要とされています。
専門家が依頼者の事情を十分に把握するため
専門家が依頼者の借金問題を解決するためには、まず債務整理の中でもどの方法が最適であるのかを判断しなければなりません。債務整理には主に以下の方法があります。
- 任意整理
- 特定調停
- 自己破産
- 個人再生
この他にも、以下の手続きによって借金問題を解決できる可能性があります。
- 過払い金返還請求
- 消滅時効の援用
どの方法が最も適しているかは、状況によって1件1件異なります。そのため、専門家は依頼者に関する以下のような詳しい事情を把握しなければなりません。
- 借金の残高、借入先、借入件数、借入時期、返済状況
- 収入と支出
- 家族構成や生活状況
- 依頼者の意向
メールやLINEだけでは情報量が限られる上に、行き違いや勘違いも発生しがちです。専門家が依頼者の詳しい事情を十分に把握するためには、依頼者と顔を合わせて話すことが必要です。
依頼者が専門家の説明を十分に理解するため
依頼者も債務整理を依頼する際には専門家の説明を理解する必要があります。
- どのような手続きを行うのか
- その手続きでどのような結果が得られるのか
- 依頼した後に行ってはいけないことや注意点
- 債務整理のデメリット
これらの話は専門的な内容になることも多く、メールやLINEだけでは分かりにくいこともあります。
直接顔を見て話せば、専門家は依頼者の様子を見ながら分かりやすく噛み砕いて説明することが可能となります。依頼者も、分からないことはその場ですぐに質問して説明を受けることができるので、話の内容を理解しやすくなります。
専門家と依頼者が話し合って解決方針を決めるため
借金問題の解決方針は、専門家が独断で決めるものではありません。最適な解決方法を見つけるためには、以下のプロセスが必要です。
- 依頼者が現在の状況や、どのような方向で解決したいのかを専門家に伝える
- 専門家が依頼者の意向も踏まえて状況を判断し、解決方法を提案する
- 依頼者が納得すれば、その方法で専門家に依頼する
専門家は客観的な状況だけでなく、依頼者の意向も十分に把握しなければ、納得できる解決方法を提案することはできません。
そのためには、専門家と依頼者が直接顔を合わせて意見交換を重ねることが最も有効です。
債務整理をネット完結で依頼する場合のリスク
もし、債務整理をネット完結で依頼した場合には、以下のリスクを負うことになります。ネット完結の便利さの裏側に潜むリスクも知っておく必要があります。
信頼できない専門家に当たる可能性がある
先ほどもご説明したとおり、弁護士・司法書士は債務整理の依頼を受ける際に依頼者と直接面談することを義務づけられています。
それにもかかわらずネット完結のみで債務整理の依頼を受け付ける弁護士・司法書士がいるとすれば、それはグレーゾーンな対応と言えるかもしれません。
その弁護士・司法書の信頼性には疑問があり、依頼しても責任を持って手続きを行ってもらえないおそれもあります。
債務整理に失敗するおそれがある
仮に専門家の信頼性に問題がないとしても、ネットだけのやりとりでは意思疎通が不十分となりがちです。そのため、肝心の債務整理に失敗してしまう可能性が否定できません。
例えば、自分は自己破産は避けたいので任意整理または個人再生で解決したいと考えていても、専門家が借金額を見て「自己破産が最適」と判断し、手続きを進めてしまうおそれもあります。
この例は極端ですが、メールだけでやりとりしていると、このような行き違いが非常に起こりやすいので注意が必要です。
割高の費用を請求されるおそれがある
債務整理の依頼費用には相場がありますが、ネット完結で依頼する場合には割高の費用を請求されるおそれがあります。実際の依頼費用は状況によって異なるので、同じ事務所に依頼する場合でもケースによって金額が違うこともあります。
本来は直接面談の上で、どのような理由で費用がいくらかかるのかについて説明を受け、納得した上で依頼すべきです。しかし、ネットですべての手続きを済ませようとする依頼者に対しては、詳しい説明もしないまま割高の費用を請求される危険があります。
債務整理のデメリットを把握できない可能性がある
債務整理には一定のデメリットがあります。例えば、以下のようなデメリットです。
- ブラックリストに登録され、借り入れやクレジットカードを利用できなくなる
- 自己破産や個人再生では官報で住所・氏名が公表される
- 自己破産や個人再生では保証人に迷惑がかかることがある
- 自己破産の手続き中は一部の資格や職業に制限がかかる
- 自己破産では財産を処分しなければならないことがある
ネット完結で債務整理を依頼する場合には、専門家がデメリットの説明を省略することがあるかもしれません。説明されたとしても、メールの文章だけでは依頼者が正確に理解できなかったり、見落としてしまうことも考えられます。
その結果、思わぬ不利益を受けてしまうおそれもあります。
債務整理で全国対応の法律事務所に依頼する方法
最近は、全国から債務整理の依頼を受け付けている専門家の事務所も数多くあります。債務整理に力を入れている事務所ほど、多くの債務者を救うために全国対応している傾向があるので、そういった事務所を選ぶのもよいでしょう。
全国対応の事務所に債務整理を依頼する方法は、メールやLINE、電話などで相談した後、1度は事務所に出向いて専門家と直接面談するのが基本です。
ただし、以下の方法により依頼できる場合があります。
出張相談会を利用する
事務所によっては、弁護士・司法書士が定期的に全国を回って出張相談会を開催していることがあります。債務整理に積極的ならば柔軟な対応をしてくれる事務所も多いです。
遠方の事務所に依頼したい場合は、出張相談を行っているかを確認してみましょう。事務所によってはすぐに弁護士・司法書士が出張対応してくれる場合もあります。
例外的に依頼時に面談が不要なケースもある
以下のような特段の事情がある場合には、例外的に専門家と直接面談することなく、メールや電話のみで債務整理の依頼が可能なこともあります。
- 専門家が近くにいない地域に住んでいてる
- 依頼したい弁護士・司法書士が近くにいない
- 早急に督促を止める必要がある場合
- ヤミ金などから違法な取り立てを受けていて、緊急の対応が必要な場合
- 怪我や病気で事務所を訪問できない
- 自然災害などで移動が困難
- 伝染病が蔓延していて外出や移動が制限されている場合
- 既に専門家と面識がある場合
何らかの事情により、依頼者自らが「面談を希望しない」「面談を受けられない」という場合はその旨を専門家に伝えてみましょう。
ただし、日本弁護士連合会の「債務整理事件処理の規律を定める規程」では、やむを得ず直接面談をせずに依頼した場合は、その後、速やかに直接面談が必要とされるケースがありますので覚えておきましょう。
過払い金返還請求の依頼は直接面談が不要
さらに、例外として、過払い金返還請求については専門家と直接面談することなく依頼することも可能と考えられています。過払い金返還請求はすでに完済済みの案件であり、弁護士・司法書士が債権者に対しての請求手続きだけで済む可能性が高い案件だからです。
ただし、過払い金が発生している可能性があるというケースの中には債務整理が必要な案件もあります。その場合は原則として専門家との直接面談が必要となります。
債務整理で信頼できる弁護士・司法書士の選び方
債務整理を成功させるためには、信頼できる弁護士・司法書士を選んで依頼することが大切です。依頼する前に直接面談することは、その弁護士・司法書士が信頼できるかどうかを判断する方法のひとつでもあります。
その他にも、以下のポイントに注意して信頼できる弁護士・司法書士を選ぶようにしましょう。
債務整理の実績が豊富にあるか
最も重要なことは、債務整理の実績が豊富にある弁護士・司法書士を選ぶということです。専門家といえども、すべての人が債務整理に詳しいわけではありません。
債務整理の実績があればあるほど、その専門家は債務整理に関する知識やノウハウを豊富に持っているので、安心して依頼することができます。
明快な料金体系を備えているか
専門家への依頼費用の問題も重要です。信頼できる弁護士・司法書士は、相場の範囲内で明快な料金体系を備えているものです。依頼する前に費用について明確かつ分かりやすい説明があります。
料金体系が不明瞭な事務所では、その場の判断で割高な費用を請求されたり、後から追加費用を請求される可能性があるので注意が必要です。
解決方針を一緒に考えてくれるか
信頼できる弁護士・司法書士は、依頼者の意向を踏まえて解決方針を一緒に考えてくれます。
専門家であれば、事案の概要を聞けば、どのような方法をとるべきかについて、おおよその判断がつきます。しかし、依頼者から詳しい話を聞かないうちに即断して手続きを進めようとする専門家は信頼できません。
それでは、たとえ借金がなくなったとしても、依頼者が思わぬ不利益を受けてしまうおそれがあります。
直接面談でじっくりと話を聞いてくれて、依頼者が納得できる解決方針を一緒に考えてくれるのが信頼できる弁護士・司法書士の特徴です。
まとめ
債務整理の手続きをネットで完結できれば便利ですが、さまざまなリスクがあることも知っておかなければなりません。
信頼できる弁護士・司法書士は、依頼者の借金問題を適切に解決するためにこそ、依頼前に直接面談して十分な聴き取りと説明、解決方針の相談を行っています。
さしあたりの相談はネット完結も可能なので、メールやLINE、電話を上手に活用して信頼できる弁護士・司法書士を見つけて、債務整理を成功させましょう。