- アコムは比較的に柔軟に任意整理に応じてくれる
- 近年は和解条件が厳しくなりつつある
- アコムと任意整理をするなら早い方がよい結果につながりやすい
- 弁護士・司法書士に依頼することで有利な和解が期待できる
任意整理は、借入先の業者と直接交渉することで借金の減額や返済期間の延長が可能となる手続きです。裁判所を介する必要がないため、手軽に借金を整理できるというメリットがあります。
任意整理の対象となるのは、主に消費者金融・クレジットカード会社・銀行等ですが、なかには任意整理に応じてくれない業者もあります。
アコムは、消費者金融の中でも大手の業者で知名度も高いため、利用者が数多くいます。そのため、アコムが任意整理に応じてくれるかどうか、気になる人も多いことでしょう。
この記事では、アコムの借金を任意整理できるかどうかについて、最近の傾向を踏まえてわかりやすく解説します。
アコムの借金は任意整理できる?
結論からいうと、アコムの借金を任意整理することは可能です。ただし、最近は和解条件が厳しくなりつつあるため、いくつかの点に注意が必要です。
アコムの基本情報
アコムは消費者金融業者の大手として有名ですが、「ACマスターカード」というショッピング機能付きのクレジットカードも発行しており、クレジット事業にも力を入れています。
アコムの基本的な情報については、以下の表を参考になさってください。
社名 | アコム株式会社 |
---|---|
創業時期 | 1978年 |
本店の所在地 | 東京都港区東新橋一丁目9番1号 東京汐留ビルディング |
契約方法 | 自動契約機「むじんくん」、インターネットなど |
融資限度額 | 800万円 |
返済方式 | 定率リボルビング方式 |
返済期間・回数 | 最長9年7か月(1回~100回) |
遅延損害金 | 年利20.0% |
担保・連帯保証人 | 不要 |
主な提携企業 | ・三菱UFJフィナンシャル・グループ ・楽天銀行 ・セブン銀行 ・じぶん銀行 ・各地の地方銀行 ・アイ・アール債権回収株式会社 ・エム・ユー信用保証株式会社 |
アコムは任意整理に比較的柔軟に対応してくれる
アコムは業界最大手ということもあって、任意整理の対応は他の消費者金融業者やクレジットカード会社と比べても比較的柔軟に対応してくれます。アコムに任意整理を申し出て、一切交渉に応じてもらえなかったというケースはほとんどありません。
ただし、毎月の返済が可能な安定収入がない場合はアコムでも任意整理を断られることがあります。この点はどの消費者金融・クレジットカード会社でも同じです。大手金融のアコムは返済余力がある方に対しては、他の消費者金融と比較して柔軟に対応してくれると考えて良いでしょう。
近年は和解条件が厳しくなりつつある
アコムは任意整理に対して比較的柔軟に対応してくれるものの、近年では和解条件を厳しめにしています。その原因として、次の2点が考えられます。
- 債務整理をする利用者が増えたこと
- 過払い金返還の負担が続いていること
今後も債務整理をする人は増えていくことが考えられるので、和解条件はさらに厳しくなっていく可能性があります。そのため、アコムと任意整理をするなら早めに検討した方がよいといえます。
アコムとの任意整理で得られる結果
アコムとの任意整理で得られる結果は、下記のとおりです。それぞれの点についてアコムと交渉して返済の負担を軽減し、完済を目指すことになります。
将来利息の免除
将来利息は、原則として全額カットされます。将来利息とは、和解日以降に発生する利息のことです。
今まで年利18%で利息を支払っていたとしても、任意整理による和解後は金利0%で元金のみを返済していけばよいことになります。
返済期間の延長
返済期間も、交渉次第で延長してもらうことが可能です。返済期間が延長されると、毎月の返済額が軽減されます。
例えば、元金50万円の場合、36回払いの予定を60回払いに延長してもらえれば、毎月の返済額は5,000円以上も減ることになります。
返済回数 | 毎月の返済額 |
---|---|
36回 | 1万3,889円 |
48回 | 1万0,417円 |
60回 | 8,333円 |
過払い金返還請求
アコムは2007年6月までは利息制限法を上回る金利で貸付を行っていました。そのため、それ以前からアコムと取引をしていた場合は過払い金の返還請求ができる可能性があります。
近年は貸金業者の経営難等の理由で、過払い金が発生していても返還に応じない業者も増えてきています。しかし、アコムは三菱UFJフィナンシャル・グループと提携しており経営基盤がしっかりしているため、過払い金の返還請求にも比較的柔軟に応じています。
ただし、最終の取引から10年が経過すると時効で返還請求できなくなります。そのため、過払い金が発生している場合は早めに請求すべきといえます。
アコムとの任意整理で注意すべき最近の傾向
債務整理をする人の増加や過払い金返還の負担が続いていることによって、アコムとの任意整理における和解条件は厳しくなりつつあります。
最近では以下の傾向が見られるので、これからアコムと任意整理をする場合は注意しましょう。
返済期間の延長は原則5年まで
以前は返済回数61回以上に及ぶ長期間の延長にも応じていましたが、現在では原則として60回(返済期間5年)までの延長にしか応じていません。
ただし、特別な事情がある場合には、交渉次第で5年を超える延長に応じることもあるようです。その場合でも、他社も含めた借金総額、今後の収入の見込み、家計の収支等を詳細に尋ねられます。
特別な事情とは、以下などが考えられますが、個別のケースでアコムが判断することなので一概にはいえません。
- 病気やケガ
- 地震や水害、火災などの災害
- 勤務先の倒産やリストラ
取引期間が短い場合は将来利息を要求される
アコムでは、将来利息は原則として全額免除されますが、取引期間が短い場合は例外的に将来利息を要求されます。
おおよその傾向は、以下の表のとおりです。
取引期間 | 将来利息の要求 |
---|---|
6か月未満 | ほぼ全件で要求される |
1年未満 | 要求されるケースが多い(元金の額や延滞歴などにもよる) |
1年以上 | 原則として全額免除 |
ただし、将来利息を要求される場合でも、利率は年5%程度となるようです。従来の金利よりは大幅に下がるので、任意整理をするメリットはあるといえます。
遅延損害金のカットは原則不可
任意整理をする前に延滞していた場合の遅延損害金や、和解日までの経過利息について、以前は全額免除されていましたが、現在では原則として一切免除に応じていません。
交渉次第で免除される可能性がないとはいえませんが、特別な事情がない限りは難しいようです。
2007年6月以降の取引からは過払い金が発生しない
アコムでは、2007年6月17日までは当時の出資法の上限金利に近い年27.375%の金利で貸付を行っていました。しかし、同月18日以降は貸出の上限金利を利息制限法の範囲内である18%に引き下げたため、それ以降の取引からは過払い金が発生しなくなっています。
過払い金返還請求権は10年で消滅時効にかかるため、現在では過払い金の返還を請求できる人は少なくなりつつあります。
ただし、2007年6月18日以降にアコムから借りた場合でも、同月17日以前にアコムと取引したことがあれば、前後の取引が一連のものとみなされることにより、過払い金返還請求が可能な場合もあります。
取引が一連のものと認められるかどうかは専門的な判断となるので、弁護士や司法書士などの専門家に相談して確認することをおすすめします。
アコムとの任意整理における一般的な注意点
下記の3点は最近の傾向というわけではありませんが、アコムと任意整理する場合には注意しておく必要があります。
一定期間はブラックリストに登録される
任意整理をするということは借金を契約どおりに返済しないことを意味するので、ブラックリストに登録されてしまいます。ブラックリストとは、個人信用情報機関のデータベースに金融に関する事故情報が登録された状態のことをいいます。
事故情報が登録されると、その後は新たな借り入れやクレジットカードの利用ができなくなります。任意整理の場合、5年は個人信用情報機関に事故情報が保有されるため、少なくとも5年間は借り入れやクレジットカードの作成ができないことになります。
アコムは今後利用できなくなる
アコムに対して任意整理を申し出た時点で、アコムとの契約は解約されます。そして、その後もアコムと再契約することはできません。
なぜなら、任意整理をしたという情報はアコムの社内にデータとして保管されるからです。
任意整理後5年が経過すると個人信用情報機関の事故情報は削除されるので他社とは契約できますが、アコムには社内データが残っているため、審査で落とされてしまいます。このことを「社内ブラック」といいます。
社内ブラック情報は、アコムに限らずどこの貸金業者も保管しているものです。したがって、任意整理後に借り入れをするときは、任意整理をしたところ以外の貸金業者を選ぶ必要があります。
一部の銀行のローン等も利用できなくなる
アコムとの任意整理後には、アコムだけでなく一部の銀行のローン等も利用できなくなります。なぜなら、アコムはさまざまな銀行のローンを保証しているからです。
銀行に融資を申し込むと、保証会社による審査が行われます。そのため、申込先の銀行のローンの保証会社がアコムの場合は、社内ブラックのため審査で落とされるのです。
アコムが保証をしている主な銀行は、下記のとおりです。
- 三菱UFJ銀行
- じぶん銀行
- 楽天銀行
- セブン銀行
- 各地の地方銀行
地方銀行はアコムとは関係ないようにも思えますが、実はアコムが保証会社となっているケースが多々あるので注意が必要です。
アコムの借金を任意整理する方法
アコムの借金を任意整理する方法は、他社の場合と同じですが、ひと通り確認しておきましょう。
取引履歴の取り寄せ
まずは、アコムに連絡をして取引履歴の送付を依頼します。取引履歴とは、借入日・借入額・返済日・返済額・金利など、相手の貸金業者とのすべての取引内容が記載された記録のことです。
返済額を交渉する前提として、必ず取引履歴を取り寄せましょう。
利息引き直し計算
取引履歴を取り寄せたら、すべての取引を利息制限法所定の利息に引き直す計算をします。
利息制限法の範囲内でのみ取引をしていた場合はこの計算は不要ですが、アコムは2007年6月17日までは利息制限法を超える金利で貸付を行っていました。したがって、それ以前から取引をしていた場合は必ず利息引き直し計算を行いましょう。
無料の「利息計算ソフト」を使えば、利息引き直し計算はそれほど難しいものではありません。
過払い金が発生している場合は返還請求
利息制限法を超える金利で取引をしていた場合は、利息を支払い過ぎています。支払い過ぎた利息は元金に充当できます。元金に充当しきれない利息が残った場合は、それが「過払い金」となります。
過払い金が発生している場合には、金額を明らかにした上でアコムに対して返還請求を行います。
アコムは過払い金返還請求にも応じますが、何割か減額するように交渉してきます。満額を回収するためには裁判が必要となります。裁判をすると過払い金を取り戻すまでに時間がかかるため、早期に回収したい場合は交渉で減額された金額で和解するのもひとつの方法です。
債務額の確定
現在、過払い金が発生するケースは少なくなっているので、多くの場合は利息引き直し計算によって債務額が確定します。債務額が確定したら、その金額を何回の分割で支払うのか、毎月いくらを支払うのかといった返済方法を検討します。
アコムとの交渉・和解
希望する返済方法を検討したら、アコムに対して提案し、交渉を行います。近年は和解条件が厳しくなっているため、必ずしも希望する返済案が通るとは限りません。
しかし、借金総額や今後の収入の見込み、家計の収支等を開示して誠実に交渉すれば、有利な条件で合意できる可能性もあります。
一定の返済案でアコムと合意に至ったら、和解が成立します。その場合は和解書を作成しなければなりませんが、通常はアコムが作成した和解書に署名・押印することになります。
返済の再開
和解書を取り交わした後は、合意した内容に従って返済を再開します。通常、2回延滞すると残額を一括請求されるので、遅れないように返済を継続することが重要です。
アコムとの任意整理で弁護士・司法書士ができること
アコムとの和解条件は厳しくなりつつあるため、簡単には合意に至らないケースも増えてきています。そこで、アコムとの任意整理を成功させるには、弁護士・司法書士といった専門家の力を借りることを強くお勧めします。アコムとの任意整理を弁護士・司法書士に依頼するメリットは下記のとおりです。
受任通知の送付で督促を止める
弁護士・司法書士に任意整理を依頼すると、受任通知書をアコムに送付してもらえるので、返済が滞ってる場合でも督促がすぐに止まります。返済もいったんストップするので精神的負担が軽くなり、落ち着いて任意整理を進めることができます。
利息引き直し計算から交渉まで代行
受任通知の送付後は、弁護士・司法書士がすべての手続きを代行してくれます。利息計算や交渉を行う手間と時間が省けるので、安心して仕事や家事などに専念することが可能となります。
専門的な交渉力で有利な和解を獲得
アコムとの交渉は専門家に任せた方が、有利な結果が得られやすくなります。
自分で交渉する場合はアコムから不利な和解案を押しつけられがちですが、弁護士・司法書士が専門家としての立場で交渉することで、有利な条件での和解成立が期待できるのです。
まとめ
アコムが任意整理の交渉を拒否することはまずありませんが、スムーズに債務者の希望に応じてもらえるケースは少なくなってきています。しかし、交渉次第では柔軟に和解できる可能性もあるので、法律の専門家である弁護士や司法書士の交渉力を借りるのが得策といえます。
ひとりで悩まず、弁護士・司法書士の力を借りて、アコムとの任意整理を成功させましょう。