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個人再生の成功率は約9割 | 失敗する原因と成功率を上げる方法について解説

個人再生の成功率は約9割 | 失敗する原因と成功率を上げる方法について解説
この記事でわかること
  • 個人再生の成功率は約9割。正しく手続きを進めればほぼ成功する
  • 手続きを進める過程でいくつかの失敗パターンがあるので要注意
  • 個人再生が失敗する原因は債務者側の理解・経験不足によるもの
  • 成功率を上げるためには債務整理に強い弁護士や司法書士への依頼が最善

個人再生を検討している方の中には、どのぐらいの確率で成功するのか気になっている方も多いでしょう。裁判所が公表しているデータによると個人再生を申し立てた人の約9割は成功しています。

ただし、個人再生の成功率は、「債務状況」「収入」「自分でやるか弁護士・司法書士に依頼するか」といった要因によって変わります。失敗の1割に入らないようにするためには、適切な申請手続きが求められます。

この記事では、個人再生が失敗するよくあるパターン、成功率を高めるための手続きのポイント、失敗した場合の対策方法について詳しく解説します。

個人再生の成功率は90%を超える

裁判所が公表しているデータによると、個人再生の成功率は、例年90%を超えています。直近のデータは以下のとおりです。

  • 令和4年度の成功率…92.1%
  • 令和3年度の成功率…92.7%
  • 令和2年度の成功率…93.4%
  • 令和元年度の成功率…93.7%
  • 平成30年度の成功率…92.2%

【出典】司法統計

令和4年度 個人再生事件の終局状況
小規模個人再生 給与所得者等再生
総数 9,581 770
再生手続き終結 8,841 694
手続き廃止 322 10
再生計画不認可 16 3
再生計画取消し 0 0
棄却・却下 17 6
取り下げ 353 56
その他 32 1

個人再生を申し立てた人のほとんどは、再生計画案が無事認可され、手続きを終結(成功)させています。

ただし、成功に終わった人のほとんどが、弁護士や司法書士に依頼して個人再生を申し立てています。誰が申し立てても個人再生を成功させられるというわけではありません。

実際に、数%の人は失敗に終わったり、何らかの理由で手続きを途中で取りやめたりしています。

個人再生が失敗するパターン

個人再生が失敗に終わるケースには、以下のパターンがあります。個人再生を成功させるためにも、失敗する原因を知っておきましょう。

  • 個人再生の申立てが拒否された
  • 個人再生手続き直前に特定の借金のみ完済した
  • 履行テストの積み立てを怠った
  • 個人再生の禁止行為をした
  • 書類の提出期限に遅れた
  • 再生計画案が認められなかった
  • 債権者に反対された
  • 個人再生後の返済を滞納した

個人再生の申立てが拒否された

以下のように個人再生の利用条件を満たしていない場合は、申し立てても却下されます。「却下」とは、裁判所で申し立てが受理されず門前払いとなることです。

  • 個人名義の借金ではない
  • 借金総額が5,000万円を超えている(住宅ローンは除きます)

申し立てが受理されても、以下のようなケースでは申し立てが「棄却」により拒否されます。

  • 手続き費用を予納しない
  • 既に債権者から破産を申し立てられ、破産手続き開始決定が出ている
  • 借金を減額しても支払えないことが明らかである
  • 不当な目的で申し立てが行われた
  • 申し立てが誠実なものでない

もっとも、個人再生の申し立てが却下・棄却されるケースは、ごくわずかです。その理由は、債務者から依頼を受けた弁護士・司法書士が事前に内容を確認し、却下や棄却が予想されるケースでは個人再生の申し立てを控えていることが挙げられます。

申し立てを行ったとしても、問題があるケースでは裁判所が却下や棄却をする前に、取り下げを勧めてきます。そのため、例年、取り下げの件数は却下・棄却の件数よりも多くなっています。

個人再生手続き直前に特定の借金のみ完済した

個人再生の申し立て直前に特定の借金の身を完済した場合は、その分だけ個人再生後の返済額が増額してしまいます。

個人再生は、裁判所の決定をもって強制的に借金を減額する手続きであるため、すべての債権者を平等に扱わなければなりません。このルールのことを「債権者平等の原則」といいます。

申し立て直前に特定の借金のみ完済することは、債権者平等の原則に反します。このような場合には、特定の債権者にのみ優先的に返済した金額が清算価値(保有財産の総額)に加算されます。個人再生は保有財産の金額以上を返済する必要があるので返済額が増額される可能性があります。

なぜなら、そのお金は、本来であれば全債権者に対する返済の引き当てとなったはずだからです。個人再生では、債務者がそのお金をまだ持っているものとみなして手続きを進めることにより、他の債権者との公平が図られます。

例えば、申し立て時の借金総額が500万円の債務者が、申し立て直前に友人からの借金200万円を優先的に返済したとしましょう。

借金総額500万円の場合、個人再生によって返済額が100万円にまで減額できるはずです。しかし、このケースでは友人に返済した100万円が加算されるため、清算価値はその他の財産と合わせて200万円となります。

もし、200万円を3年~5年で完済できる見込みがなければ個人再生は認められず、失敗に終わってしまうのです。

履行テストの積み立てを怠った

個人再生の申し立てが受理されると、裁判所または個人再生委員から「履行テスト」の積み立てを指示されます。履行テストとは、個人再生後に見込まれる毎月の返済額を、実際に返済していけるかどうかをテストするために、4~6ヶ月にわたって積み立てる手続きのことです。

積み立てを一切行わない場合には申し立てが却下され、再生手続き開始決定後に積み立てが滞った場合は廃止により打ち切りとなります。最後の方に滞納した場合は、再生計画案が不認可となり、個人再生が失敗に終わります。

個人再生の禁止行為をした

再生手続き開始決定が出た後でも、禁止行為をしたことが発覚すると、手続き廃止により打ち切りとなります。

以下のような行為は個人再生で禁止されていますので、行ってはいけません。

  • 財産隠し
  • 特定の負債を申告しない
  • 裁判所や個人再生委員による調査を拒否する
  • 虚偽の説明をする
  • 資料を提出しない
  • その他、裁判所や個人再生委員の指示に従わない

書類の提出期限に遅れた

個人再生の手続きにおいては、減額後の借金残高をどのようなプランで返済していくのかを記載した「再生計画案」を提出しなければなりません。その提出期限は、事前に裁判所から指定されます。

再生計画案の提出が1日でも遅れると、手続きは廃止となることが法律で定められています。

返済できる見込みがあったとしても、このように書類の提出期限に遅れたことが原因で個人再生に失敗することもあるので、注意が必要です。

再生計画案が認められなかった

再生計画案を期限内に提出すれば、裁判所がその認可・不認可を決定します。以下のような場合には、裁判所が不認可の判断を下すことがあります。

  • 客観的に見て、再生計画案どおりの返済が見込めるだけの安定収入がない
  • 個人再生による減額対象外の債務(税金など)が多く、減額が見込めない
  • 再生計画案に不備があり、補正を指示しても従わない

税金や社会保険料、養育費、罰金、一定の要件を満たす損害賠償金などは減額対象外ですので、注意が必要です。

裁判所が不認可の決定をすると、個人再生手続きはそこで失敗に終わります。

債権者に反対された

個人再生のうち小規模個人再生では、債権者の多数の反対によって手続きに失敗することもあります。

再生計画案を提出すると、小規模個人再生では債権者による書面決議に付されます。総債権者数の半数以上が反対した場合、または反対した債権者が有する債権額の合計が借金総額の半分以上である場合は、書面決議は否決となります。

否決となった場合は、その時点で個人再生手続きは廃止され、打ち切られます。

給与所得者等再生の場合は、書面決議は行われません。裁判所は債権者の意見は聴取しますが、反対意見があったとしても、裁判所が認可が相当と判断すれば再生計画案が認可されます。

個人再生後の返済を滞納した

再生計画案が認可されても、まだ安心はできません。認可された再生計画に従って完済してはじめて、残りの借金の返済義務が免除されるからです。

個人再生後の返済を滞納すると、債権者からの申し立てにより再生計画が取り消される可能性があります。取り消されると借金は減額されなかったことになり、全額を返済する義務が復活します。

1度か2度の滞納なら、債権者に事情を話して待ってもらえるかもしれませんが、法律上は1度でも滞納すると取り消せるので、注意が必要です。

個人再生に失敗したらどんな末路をたどるのか

個人再生に失敗したら、当然のことですが借金は一切減額されません。遅延損害金が加算され続けるため、返済額はどんどん増えていってしまうでしょう。

それだけでなく、申し立ての準備に要した費用や、裁判所に納めた費用も戻ってきません。

依頼した弁護士や司法書士に支払った費用も、戻ってこないと考えた方がよいでしょう。事務所によっては、一部を返金してくれたり、返金されなくても次回の依頼費用に一部が充当されたりすることもあります。しかし、全額を返金してもらえることは原則としてありません。

ほとんどの場合、申し立て前よりも経済的な負担が重くなってしまうことに注意が必要です。

個人再生に失敗した時の対処法

個人再生に失敗したとしても、もう打つ手がないというわけではありません。以下の対処法により、借金問題を解決することが可能です。

  • 再び個人再生を申し立てる
  • 自己破産する

再び個人再生を申し立てる

個人再生手続きが途中で打ち切られたからといって、改めて個人再生を申し立てることに支障はありません。

ただし、個人再生の利用条件を満たさない場合や、返済の見込みが認められない場合などでは、状況が改善されないまま再び個人再生を申し立てても、また失敗に終わるだけです。再度の申し立てを行う前に、失敗する原因を除去しましょう。

債権者の反対によって小規模個人再生に失敗した場合には、給与所得者等再生に切り替えることによって成功する可能性があります。

自己破産する

どうしても個人再生での成功が見込めない場合は、自己破産を検討することになるでしょう。

自己破産では、すべての借金の返済義務を免除してもらうことが可能なので、多額の借金を抱えて個人再生が認められない場合でも、生活の立て直しを図ることができます。

マイホームや車などの財産を処分しなければならないこともあるなど、一定のデメリットはありますが、借金問題を解決することが先決です。最終手段として、自己破産も視野に入れてみましょう。

個人再生後に返済が厳しくなった場合は再生計画を変更する

個人再生後の返済が難しくなった場合も、諦めずに再生計画の変更を検討しましょう。

やむを得ない事情によって再生計画どおりの返済ができなくなったときは、返済期間を最大2年まで延長できる可能性があります。延長が認められると、毎月の返済額が減るので、生活を立て直すことができるでしょう。

以下のような場合は、再生計画の延長が認められやすいといえます。

  • 勤務先の業績不振で給料が減った
  • リストラや勤務先の倒産のため転職したが、収入が減った
  • 自分や家族の病気・怪我により多額の出費を要した

また、さらに厳しい条件を満たす必要がありますが、返済の途中で残りの借金が免除される「ハードシップ免責」が受けられることもあります。

返済が難しくなったときは、滞納する前に弁護士や司法書士に相談し、再生計画の変更やハードシップ免責が可能であれば手続きを依頼した方がよいでしょう。

個人再生の成功率を高めるポイント

個人再生には多くの人が成功していますが、成功した人のほとんどは以下のポイントをおさえています。成功率を高めるために必須のポイントであるといえるでしょう。

  • 手続きをミスなく正確におこなう
  • 嘘や隠し事をしない
  • 弁護士・司法書士に依頼する

手続きをミスなく正確におこなう

個人再生の利用条件や提出すべき書類、手続きの流れは決まっています。事前にルールをしっかりと調査し、ルールに従ってミスなく正確に手続きを進めることで、成功率を高めることが可能です。

申し立て書類に不備があったときは裁判所から指示がありますので、素直に応じて、補正や補充を的確に行いましょう。再生計画案も、期限内に提出しておけば、不備があった場合でも「訂正の申し立て」で対応できる可能性があります。

そのため、裁判所の指示をよく聞くということも重要です。

嘘や隠し事をしない

裁判所や個人再生委員に対して、嘘や隠し事をしてはいけません。

個人再生を成功させたいと思うあまりに、財産や負債の状況、収入や支出の状況、借入の経緯などについて、嘘や隠し事をしたくなることもあるかもしれません。

しかし、裁判所や個人再生委員は徹底的に調査を行いますので、嘘や隠し事は必ずといってよいほどバレます。バレると、その時点で個人再生は失敗に終わります。

弁護士や司法書士に依頼する場合も、すべての事情を正直に話さなければ、適切な解決方法を提案してもらえません。

個人再生に限らず、債務整理で嘘・隠し事は失敗の元となります。

弁護士・司法書士に依頼する

個人再生の手続は債務整理の中でも最も複雑で、正確な知識や経験がなければ、スムーズに進めることは難しいものです。

そのため、個人再生をするなら弁護士・司法書士に依頼することが、成功するための最大のポイントとなるといっても過言ではありません。弁護士・司法書士に依頼することで、以下のメリットが得られます。

  • 個人再生の利用条件を満たすかを判断してもらえる
  • 個人再生による解決が最適かどうかを判断してもらえる
  • 受任通知の送付により債権者からの督促を止めてもらえる
  • 複雑な手続きを一任できる
  • 再生計画案の内容についてもアドバイスが受けられるので、完済の可能性が高まる
  • 再生計画の変更や自己破産の申し立てが必要となった場合も、手続きを任せられる

依頼する際にはすべての事情を正直に話すとともに、弁護士・司法書士からの指示をよく聞いて、手続きの進行に協力することが重要です。

まとめ

個人再生の成功率は高く、約9割が手続きを成功できていますが、裏を返せば10人に1人は失敗しています。失敗しないためには個人再生について理解して、不備がないように手続きをすることが大切です。

また、そもそもご自身の債務状況や経済力で個人再生ができるかどうかを見極めることも重要です。専門知識を持たない一般の方が個人再生を成功させるためには、弁護士・司法書士のアドバイスやサポート力が極めて大きなポイントになると言えます。

個人再生の成功率を高めるためには経験や実績が豊富な弁護士・司法書士を選んで手続きを進めていくことをおすすめします。

メインの執筆者かつ9312

元弁護士。関西大学法学部卒。15年にわたり、債務整理、交通事故、相続をはじめとして、オールジャンルの法律問題を取り扱う。
債務整理では、任意整理、個人再生、自己破産の代行から過払い金返還請求、闇金への対応、個人再生委員、破産管財人、法人の破産まで数多くの事案を担当経験する。

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