- 任意整理後に一括返済することは可能
- 一括返済によって借金から解放される
- 任意整理後の一括返済にはデメリットもあるので要注意
- 一括返済によって残高を減額できることもある
任意整理ではほとんどの場合、それまでの借金を分割で返済していく和解を、貸金業者と結ぶことになります。将来利息をカットし、毎月の返済額を減らすことで和解前よりも返済が容易になります。
ただ、任意整理後に収入が増えたり、思わぬ臨時収入があったりして一括返済をすることが可能になることもあるでしょう。
一括返済のメリットは借金問題を早く解決できることです。
この記事では、以下3点についてわかりやすく解説します。
- 任意整理後に一括返済することが可能である理由
- 一括返済のメリットとデメリット
- 一括返済するときに和解額よりもさらに減額することが可能かどうか
任意整理後に一括返済することは可能
結論から申し上げて、任意整理後に一括返済することは可能です。一括返済することに法律上の支障は一切ありません。
任意整理で分割払いの和解をしている場合、毎月の返済期日になるまでは返済する必要はありません。このように、返済期限が来るまで債務者が返済しなくてよい状態のことを「期限の利益」といいます。
期限の利益は債務者のために定められているので、債務者が自主的に放棄することは認められています。したがって、和解上の返済期日が来る前に債務者が期限の利益を放棄して一括返済することに問題はないのです。
せっかく和解したのに一括返済をすると貸金業者から文句を言われるのではないかと心配する方もいまがすが、そのような心配はいりません。
任意整理で和解する前に将来利息はカットされているので、貸金業者としては分割返済されても利息収入が入ることはないのです。そのため、早期に一括返済してもらった方が貸金業者としても助かるので、苦情が出ることはありません。
任意整理後の一括返済のメリット
任意整理後は既に将来利息がカットされているので、一括返済しても利息が減るというメリットはありません。それでも、任意整理後に一括返済することには以下のようなメリットがあります。
生活が楽になる
まず、一括返済することでその後の生活が楽になります。任意整理後に毎月3万円を返済していたとしたら、一括返済後はその出費がなくなります。
3万円を生活費に充てることもできますし、貯金に回すこともできます。返済中は貯金をするのも難しいと思いますが、一括返済して毎月3万円を貯金すれば1年で36万円が貯まります。
借金のストレスから解放される
任意整理をすると返済は楽になりますが、それでも借金を抱えていると精神的なストレスがかかるものです。
多くの場合、任意整理では2回以上返済を怠ると残高を一括で返済するという条件で和解をします。貸金業者によっては、1回でも返済が遅れると一括返済するという条件でなければ和解しないところもあります。
任意整理後の返済は、いわば「最後のチャンス」ともいえるものであり、絶対に2回以上の延滞はできないというプレッシャーがかかります。このプレッシャーは、人によっては任意整理前の借金によるストレスより大きいこともあるでしょう。
任意整理後に一括返済をすれば、このような借金のストレスから完全に解放されるというメリットが得られます。
ブラックリストへの登録期間が短くなる
任意整理するとブラックリストに登録され、5年間は新たな借り入れやクレジットカードの利用ができなくなります。
ブラックリストは任意整理を完済後5年で消去され、その後はまた借入やクレジットカードを利用できるようになります。
したがって、一括返済をすればその分、早く事故情報が消去されることになります。
任意整理後の一括返済のデメリット
任意整理後に一括返済をすることにはメリットだけではなく、デメリットもあります。一括返済をする前に下記のデメリットを確認し、本当に一括返済しても問題ないかをよく考えることが大切です。
一時的にお金に困るおそれがある
私たちが生活していると、突発的な出費でお金に困ることもよくあるものです。誰しも、病気や事故、冠婚葬祭、家電製品の買い換えなどでお金に困った経験が何度かあるのではないでしょうか。
臨時収入があったからといって借金の一括返済に充ててしまうと、突発的な出費が発生したときに対応できないおそれもあります。任意整理をしてから5年間は借り入れやクレジットカード、ローンの利用もできないため、一時的に生活が苦しくなることもあるでしょう。
余裕資金ができたとしても、生活に無理が生じないようにある程度の余裕を確保しておくことも大切です。
ブラックリストへの登録はすぐには消えない
一括返済した方が早く事故情報が消去される、つまりブラックリストから削除されるということを先ほどご説明しました。
しかし、それでも一括返済後5年はブラックリストへの登録が消えることはありません。
すぐに消えると勘違いして、借り入れやクレジットカードの再利用を期待して一括返済をすると見込み違いとなり、生活に支障をきたすおそれもあるのでご注意ください。
自己破産や個人再生手続きに支障をきたすおそれがある
いったん任意整理をしても借金を返済しきれない場合は、自己破産や個人再生に切り替える場合があります。
このとき、任意整理をした複数の貸金業者のうちの一部の業者だけに一括返済をしていると、自己破産や個人再生の手続きに支障をきたすおそれがあります。
個人再生の場合
一括返済した後に個人再生する場合は返済額が増えてしまうことがあります。
なぜなら、個人再生には「清算価値保障の原則」というものがあり、債務者が所有する資産の合計額以上の金額を返済しなければならないとされているからです。この清算価値には一括返済した金額も含まれます。
例えば、借金額が総額で300万円あったとして、A社に150万円を一括返済したとしましょう。
借金が300万円の場合、本来なら返済額は100万円となります。しかし、A社に一括返済した150万円が清算価値とみなされるため、返済額は150万円となってしまいます。
自己破産の場合
一括返済した後に自己破産する場合は失敗する可能性があります。
なぜなら、一社にだけ一括返済をすることは「偏頗弁済」に該当するためです。偏頗弁済は免責不許可事由ですので借金の返済義務が免除されないのが原則です。
実際には多くのケースで裁判所の裁量によって免責が許可されますが、手続きの負担は重くなります。
具体的には、数十万円の費用がかかります。なぜなら、一括返済を無効にして取り戻した返済金を債権者全員に平等に分配する手間が生じるからです。
例を挙げると、債権者が3社いてA社のみに150万円を一括返済していた場合は、その150万円を取り戻しA社を含む債権者3社に50万円ずつ分配します。
任意整理後の一括返済によって残高を減らせる可能性もある
任意整理後に一括返済をすると残高を減額することが可能な場合もあります。
貸金業者にとっては、任意整理中に自己破産や個人再生に移行されてしまうと、受け取れる金額が少なくなってしまいます。
そのため、早期に一括でまとまった金額を支払ってもらえるのであれば元金の減額に応じすることもあるのです。
ただし、残高の減額に応じてもらえるかどうかは貸金業者次第です。このような交渉には一切応じない業者も少なくないので注意が必要です。
任意整理後の一括返済で元金を減らしたい場合は弁護士・司法書士による交渉が得策
残高の減額を求める場合は、自分で貸金業者と交渉するよりも弁護士・司法書士に交渉を依頼する方が得策です。
自分で交渉して希望を聞き入れてもらえない場合でも、弁護士・司法書士が専門的な立場で交渉することによって減額に応じてもらえる可能性が高まります。
貸金業者は弁護士・司法書士に依頼した債務者に対しては直接の返済要求ができないため、早く和解するために弁護士・司法書士からの要望をある程度は受け入れる可能性が高いのです。
まとめ
任意整理後に余剰の資金ができた場合、借金の一括返済が可能であれば一括返済するに越したことはありません。ただ、一括返済にはデメリットもあるので、ご自分の生活状況をよく考えて一括返済するのが得策かどうかをよく考えることが大切です。
一括返済する場合は、貸金業者に対して残高の減額を求めてみるのもよいでしょう。その場合は、弁護士・司法書士といった法律の専門家に相談・依頼することがおすすめです。
専門家に相談・依頼することには下記のメリットがあります。
- 残高の減額が可能かどうか専門知識を踏まえてアドバイスしてもらえる
- 残高を減額してもらえる可能性が高まる
- 貸金業者との交渉を代行してもらえる
専門家によるサポートを受けて、一括返済を上手に行いましょう。