- 任意整理の和解交渉には平均して3~6ヶ月程度かかる
- 任意整理後の返済期間は基本的に3~5年程度となる
- 任意整理をすると完済から5年間はブラックリストに登録される
- 弁護士・司法書士に依頼すると任意整理をスムーズに進めやすくなる
任意整理は、債務整理の手続きの中では最も短い期間で手続きが完了します。債権者と和解が成立すれば、借金が減額できるため、1日も早く任意整理の手続きを進めて、借金から解放されたいと考える方も多いことでしょう。
その一方で、返済を再開するまではゆとりを持って暮らしたい等の理由で、任意整理の手続きにある程度の時間をかけたいという方も少なくありません。
また、借金を滞納し始めてからどれくらいの期間が経てば任意整理をするべきなのか、ということが気になる方もいらっしゃるはずです。
そこで今回は、借金滞納から任意整理を始めるまでの流れと、任意整理の手続きにかかる期間、和解後の返済にかかる期間、さらにはブラックリストに登録される期間などについて、わかりやすく解説します。
任意整理を始めてから解決するまでの期間
任意整理に要する期間は債権者によって対応が異なるため一定ではありませんが、手続きが順調に進めば概ね同じような期間で終了します。
ここでは、最初に任意整理の手続きの流れを確認した上で、任意整理によってすべてが解決するまでに要する平均的な期間をご紹介します。
債権者からの履歴開示と費用の積み立てが終われば、すぐに和解していきます。おおよそ3カ月から6カ月で和解できる方が多いです。
任意整理手続きの流れ
任意整理は自分で行うことも不可能ではありませんが、専門的な知識や交渉力を要するため、弁護士または司法書士に依頼して行うことが一般的です。
その場合の手続きは、以下の流れで進められます。
- 弁護士、司法書士への相談、委任契約
- 受任通知を債権者へ送付
- 取引履歴の取り寄せ
- 利息引き直し計算
- 債権者と和解交渉
- 合意できたら和解成立
- 和解契約書の作成
- 和解内容に従って返済開始
債権者とのやりとりは、すべて弁護士・司法書士が代理人として対応します。依頼者は、弁護士・司法書士から随時報告を受け、必要に応じて打ち合わせをしながら手続きを進めていきます。
和解成立までにかかる期間は3~6ヶ月
弁護士・司法書士に任意整理を依頼してから和解が成立するまでにかかる期間は、3~6ヶ月程度が平均的です。
3ヶ月以内に和解が成立するケースもあれば、6ヶ月以上かかるケースもあります。1年以上を要するケースも珍しくありません。
しかし、債権者側や弁護士の手続きに不手際や遅滞がなく順調に進めば、多くのケースで3~6ヶ月の間に終了します。
和解後の返済期間は3~5年
任意整理では、和解後の返済期間も債権者と交渉して決めます。その返済期間は、3~5年程度が平均的です。
人によっては、さらに長期の返済期間を望むこともありますが、5年を超えると債権者との交渉が難しくなります。ほとんどの債権者は3~5年以内の完済を求めてくるため、3~5年が平均的な返済期間となっているのです。
ブラックリストへの登録期間は5年
任意整理をすると、ブラックリストに登録されます。多くの場合は完済後も5年間はブラックリストに登録されていることに注意が必要です。
完済すれば借金はなくなりますが、ブラックリストが解消されるまでは基本的にローンやクレジットカードなどが利用できないので、完全に借金問題を解決したとはいえないかもしれません。
借金滞納後に任意整理を依頼するべき期間
ここからは、借金の滞納が生じたときから時系列で、任意整理の期間についてみていきましょう。まずは、借金を滞納し始めた後、いつ任意整理を弁護士・司法書士に依頼すればよいのかについてご説明します。
【滞納直後】遅延損害金が発生し、債権者から督促を受ける
借金の返済が1日でも遅れると、遅延損害金が発生します。そして、当然のことながら債権者から督促を受けます。
※ 遅延損害金:返済が遅れたことに対する罰金のようなもの
督促の方法や頻度は債権者によって異なり、返済期限の翌日から連日のように電話をしてくるところもあれば、ハガキが送られてくるだけのところもあります。
いずれにしても、滞納した金額に遅延損害金を加算して支払わない限り、何度でも繰り返し督促を受けることは避けられません。
【滞納後2~3ヶ月】一括返済を請求され、ブラックリストに登録される
滞納が2~3ヶ月続くと期限の利益を失い、債権者から残債務の一括返済を請求されます。
期限の利益:事前に決めた返済期限までは返済しなくても良いという権利
同じころ、ブラックリストにも登録され、以降は新たな借り入れやクレジットカードの利用などが難しくなってしまうことに注意が必要です。
【滞納後3ヶ月~】裁判を起こされ、差し押さえを受ける
滞納期間が3ヶ月を超えてくると、債権者の中には裁判を起こしてくるところがあります。いつ裁判を起こしてくるかは債権者によって異なりますが、貸金業者は貸したお金を回収しなければならないので、いつかは必ず裁判を起こしてきます。
3ヶ月~6ヶ月を超えて滞納を続けたまま放置していると、いつ裁判を起こされてもおかしくないと考えるべきです。
裁判を起こされても放置していると、債権者は仮執行宣言付支払督促や民事訴訟の確定判決に基づいて強制執行を申し立て、給料や預金口座などを差し押さえてきます。
いったん差し押さえを受けると、その後に任意整理をしても差し押さえを解除してもらうことはできません。
滞納が2~3ヶ月続いたら任意整理を検討すべき
以上の流れの中でみると、滞納が2~3ヶ月続いたら任意整理を検討した方がよいといえます。なぜなら、この時点で期限の利益を失うため、分割返済を継続するためには債権者と交渉する必要があるからです。
また、この時点でブラックリストにも登録されるので、任意整理をしないまま返済を継続するメリットも乏しくなっています。
それ以前でも、このままでは返済を継続できないと感じたら、任意整理を検討した方がよいでしょう。遅くとも、債権者から裁判を起こされる前に、弁護士・司法書士に任意整理を依頼した方がよいといえます。
任意整理の手続きにかかる期間
次に、弁護士・司法書士に任意整理を依頼した後、和解が成立するまでの手続きにかかる期間と注意点について、詳しくご説明します。
最短1ヶ月程度で和解成立することも
弁護士・司法書士は、任意整理の依頼を受けると即日または翌日には受任通知を発送します。受任通知は取引履歴の開示請求書も兼ねており、早ければ1週間程度で取引履歴を送付してくる債権者もいます。
その後、交渉がスムーズに進めば依頼後1ヶ月程度で和解が成立することも稀にあります。しかし、これほど迅速に手続きが進むのはレアケースと考えておいたほうが良いでしょう。
平均的には3~6ヶ月程度
通常は、債権者から取引履歴が届くまでに1ヶ月程度を要します。債権者によっては、2~3ヶ月を要することもあります。この段階では、債務者側で進行をコントロールすることはできません。
債務者側としては、基本的には全社の取引履歴がそろうまで待ち、正確な借金総額が判明してから、どの債権者に毎月いくらを返済するのかという返済プランを検討する必要があります。
それから各社との交渉に進みますが、必ずしも債務者側の希望が通るとは限りません。ある債権者の提示する和解条件が厳しい場合には、別の債権者に対してさらなる譲歩を求めて交渉するといった駆け引きを要することもよくあります。
和解案の検討と各社との交渉には1~数ヶ月ほどかかることが多く、結局、和解が成立するまでの期間は3~6ヶ月程度を要することが多くなっています。債務者側が「早く和解したい」と望んでも、この程度の期間は必要になるということです。
交渉期間が長引く原因と対処法
交渉期間が長引く原因として、主に以下の3点が挙げられます。
- 取引期間が短い(ほとんど返済していない)
- 長期の返済期間を希望している
- 収入が十分でない
取引期間が短い
取引期間が短く、ほとんど返済していない場合には、債権者が提示する和解条件が厳しいものとなりがちです。このような場合には、ある程度の頭金を用意したり、しばらく返済を継続した上で改めて交渉するとスムーズに和解できる可能性があります。
長期の返済期間を希望している
借金額や債権者の方針などにもよりますが、5年を超える返済期間を希望すると、交渉が難航しがちです。貸金業者としては返済が長期になることで、「回収できないリスクが高くなる」ためです。
3~5年で完済できる返済プランで和解できない場合、個人再生や自己破産への切り替えも視野に入れた方がよいでしょう。
収入が十分でない
収入が十分でなく、毎月の返済額が少ない場合にも、債権者から「和解は受け入れられない」と拒否される可能性が高まります。その場合の対応についてウイズユー司法書士事務所代表の奥野様にお聞きしました。
・収入が安定しない
収入が安定しない結果、毎月の支払いをきちんと行える見込みがないため、収入が安定するまで和解交渉を待って和解することがあります。
和解交渉に時間をかけたいときの注意点
一方で、和解交渉を急ぐのではなく、ある程度の時間をかけたいという方もいらっしゃいます。その間に弁護士費用や司法書士費用を積み立てたり、収入の増加を図ったり、あるいは、しばらくはゆとりを持って暮らしたいといったケースです。
実は、任意整理の手続きで時間を稼ごうと思えば、それも可能です。弁護士・司法書士に依頼した後、1年以上も和解交渉が進められていないケースも珍しくありません。
しかし、時間をかければかけるほど、遅延損害金が加算されることに注意が必要です。以前は任意整理で遅延損害金を免除してもらえることが多かったですが、近年の任意整理ではほとんどの債権者が遅延損害金の免除には応じなくなっています。
一般的に、6ヶ月を超えて放置していると遅延損害金が高額となり、和解できたとしても毎月の返済額が大きくなるため、その後の返済が苦しくなってきます。また、時間をかければかけるほど、債権者から裁判を起こされるリスクも増してきます。
そう考えると、和解交渉に時間をかけるとしても、基本的には6ヶ月までにしておいた方がよいといえます。実際にも、6ヶ月を超えて和解が成立しない場合には、個人再生や自己破産に切り替えるケースが多くなっています。
任意整理後の返済にかかる期間
和解が成立した後、多くの場合は分割で返済していくことになります。
合意できれば自由
債権者との間で合意ができれば、返済期間は自由に決めることができます。支払えるのであれば、一括返済で和解することにもまったく支障はありません。親族などからの援助が期待できる場合は、一括返済を検討するのもよいでしょう。
分割返済を希望する場合は交渉が必要となり、債権者の意向が問題となるため、債務者の一存で返済期間を決めることはできません。
平均的には3~5年
多くの場合、債権者は3~5年での完済を求めてきます。その理由として、債権者としてはできる限り早く債権を回収してしまいたいことと、返済期間が5年を超えると途中で返済が途絶えることが多いということが考えられます。
会社の方針として、基本的に3年以内の完済を求めてくる債権者もいれば、5年を超える返済期間でも柔軟に交渉に応じる債権者もいますが、大半のケースでは返済期間3~5年で和解することになります。
5年を超える返済期間で和解できるケース
任意整理では、返済期間7年程度で和解できるケースも少なくはありません。5年を超える返済期間で和解できるケースには、以下のような特徴があります。
- 借入額が大きい
- 取引期間が長い
- 延滞歴がない
- 安定収入が確実に見込まれる
ひとことで言えば、債権者からの信用が高い場合には長期の返済期間で和解できる可能性が高まるといえます。このような場合には、返済期間の延長を求めて交渉してみるのも良いでしょう。
返済期間が長引くときの注意点
もっとも、返済期間が長引くと、完済まで返済を継続するために強固な意志が必要となってきます。
通常、任意整理後の返済が2回以上遅れると一括返済を請求され、支払えなければ再度の債務整理を検討しなければなりません。
返済期間が長期に及ぶということは、借金を十分に減額できていないか、そもそも借入額が大きすぎるということも考えられます。
任意整理で返済を継続するのもよいですが、長期間の返済が苦しいと感じるのなら、個人再生で借金を大幅に減額したり、自己破産で借金を全額免除してもらうことも視野に入れてみるとよいでしょう。
任意整理でブラックリストに登録される期間
和解内容に従って借金を完済したとしても、ブラックリストがすぐに解消されるわけではありません。任意整理をすると、5年間はブラックリストに登録されます。
ただ、いつから5年登録されるのかは少し分かりにくくなっています。
完済から5年が目安
ブラックリストとは、信用情報機関に事故情報が登録された状態のことです。信用情報機関には以下の3種類があり、それぞれ、任意整理によって登録される事故情報の内容と登録期間が異なります。
機関の名称 | 登録される内容 | 登録される期間 |
---|---|---|
JICC 株式会社日本信用情報機構 |
債務整理 | 和解成立の日から5年 |
CIC 株式会社シー・アイ・シー |
延滞 | 完済から5年 |
KSC 全国銀行個人信用情報センター |
代位弁済 | 代位弁済の日から5年 |
銀行カードローンのみを任意整理した場合には、KSCの事故情報のみが問題となりますが、代位弁済の日から5年で事故情報が削除されます。
受任通知が債権者である銀行に届くとすぐ保証会社による代位弁済が行われるので、この場合には任意整理を始めてから5年程度でブラックリストが解消される可能性があります。
JICCには主に消費者金融などの貸金業者が、CICには主にクレジットカード会社や信販会社が加盟していますが、両方に加盟している業者も数多くあります。そのため、任意整理をした場合の多くは、完済から5年まで、CICに事故情報が残ってしまいます。
そのため、任意整理による事故情報が削除されるまでの期間としては、「完済から5年」が目安となります。
ブラックリストへの登録で生じる影響
ブラックリストに登録され、事故情報が削除されるまでの間は、以下のような信用取引に制限がかかります。
- 新たな借り入れができない
- 各種ローンが利用できない
- クレジットカードの新規作成ができない
- 手持ちのクレジットカードも強制解約となる
- 他人の借金の保証人となれない
- 携帯電話やスマホの端末の分割購入ができない
- 賃貸住宅の契約や更新ができないことがある
人によっては生活に支障をきたすこともあるかもしれませんが、借金の返済が厳しい場合には放置せず、早期に任意整理を行った方が得策です。
任意整理をしなくとも滞納すればブラックリストに登録されるので、速やかに手続きを進めて完済した方がブラックリストからも早期に解放されることになるからです。
信用情報を確認する方法
前述のとおり、いつから5年で事故情報が削除されるかはケースによって異なります。そのため、任意整理後に信用取引を行う際には、事前にご自身の信用情報の開示請求を行い、事故情報が削除されているかどうかを確認した方がよいでしょう。
JICC・CIC・KSCはいずれも、原則として本人からの情報開示請求に応じています。
窓口での請求は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から休止されているので、インターネット(JICCではスマホアプリ)または郵送で開示請求を行うことになります。
念のために、3つとも開示請求することをおすすめします。手数料は1件につき1,000円程度です。
他の債務整理の手続きにかかる期間との比較
任意整理をお考えの方の中には、「他の債務整理よりも手続きが早く終わりそうだから」という理由で任意整理を選択する方もいらっしゃることでしょう。
そこで、個人再生と自己破産の手続きにかかる期間についても、比較してご紹介します。
個人再生にかかる期間
個人再生にかかる平均的な期間は、以下のとおりです。
- 申立て準備にかかる期間…1ヶ月~数ヶ月
- 裁判所での手続きにかかる期間…4~6ヶ月
- 手続き後の返済にかかる期間…3~5年
- ブラックリストに登録される期間…5~7年(信用情報機関により異なる)
個人再生の手続は複雑ですが、手続きにかかる期間と返済にかかる期間は任意整理とそれほど異なりません。申し立て前に、弁護士の指示に従って準備をしっかりと行うことがポイントとなります。
自己破産にかかる期間
自己破産にかかる平均的な期間は、以下のとおりです。
- 申立て準備にかかる期間…1ヶ月~数ヶ月
- 裁判所での手続きにかかる期間…3~4ヶ月(同時廃止事件の場合)
- ブラックリストに登録される期間…5~7年(信用情報機関により異なる)
高価な財産がある場合や、免責不許可事由がある場合には管財事件となり、裁判所での手続きが長引くこともあります。
しかし、免責が認められると返済義務がすべて消滅しますので、結果としては最もスピーディーに借金問題解決できる方法であるといえます。
任意整理をスムーズに進めるためには弁護士・司法書士への依頼が有効
任意整理は自分で行うこともできますが、スムーズに進めるためには弁護士・司法書士に依頼することが得策です。特に借金問題に強い法律の専門家の力を借りることで、以下のメリットが得られます。
- 受任通知の送付により督促と返済をストップできる
- 弁護士、司法書士が手続きを代行するので、自分で債権者とやりとりする必要がない
- 債権者と的確に交渉してもらえるので、適正な借金減額が期待できる
- その結果、早期の和解成立も期待できる
- 場合によっては和解成立までに時間を稼ぐことも可能
- 他の解決方法についてもアドバイスが受けられる
依頼費用は発生しますが、弁護士・司法書士に任意整理を依頼するメリットは大きいといえるでしょう。
まとめ
任意整理の手続きには3~6ヶ月、和解後の返済には3~5年程度かかるのが平均ですが、個別の事情によって異なってくることもあります。
しかし、早期に任意整理をした方が早く借金から解放されますし、ブラックリストも早期に解消されることは間違いありません。
借金の返済が苦しいと感じたら、早めに弁護士・司法書士に相談の上、任意整理を検討しみてはいかがでしょうか。