- 闇金からの借金の保証人にされたら借主と同様に激しい取り立てや嫌がらせを受ける
- 闇金の保証人にされても返済義務はない
- 勝手に保証人にされたら闇金や借主を罪に問うこともできる
- 闇金から保証人としての返済を要求されたら弁護士・司法書士への依頼で解決できる
突然、身に覚えのない闇金から連絡が来て「あなたは保証人になっている」と言われ、返済を迫られるというケースがあります。
闇金は融資の条件に保証人を立てることを必ず借主に求めてきます。そのため、借主が了承を得ずに家族や友人などを勝手に保証人にすることがあります。
勝手に保証人にされた人にとっては、闇金から取り立てを受けてもどのように対処すればよいのかわからず、困ってしまうことでしょう。
この記事では、勝手に闇金の保証人にされた場合の返済義務、そして闇金や主債務者(借主)への対処法について解説します。
闇金の借金の保証人にされたときに起こること
闇金の借金の保証人にされると、主債務者(お金を借りた本人)と同じように取り立てや嫌がらせの被害に遭ってしまいます。具体的に、どのような被害に遭うのかをみていきましょう。
執拗な電話で督促される
主債務者の返済が滞ると、闇金は保証人とされた人に電話をかけて返済を督促してきます。
電話がかかってくるのは1度や2度ではありません。返済しない限り、昼夜を問わず頻繁にかかってきます。1日に100件以上の着信があることも珍しくありません。
「返済するまで電話が止まらない」と思わせて精神的に追い込むのが、闇金の手口です。
職場や親族にまで電話をされる
電話で督促されても返済しない場合や、電話を無視した場合、闇金は職場や親族にまで電話をかけてくることがあります。
電話に出た人や職場の上司に対して肩代わり返済を要求することもあれば、「○○さんがお金を返してくれない」などと言いふらすこともあります。職場へ頻繁に電話をかけて業務を妨害することも少なくありません。
このような電話が繰り返されると、保証人とされた人は退職に追い込まれることもあります。また、親族間のトラブルに発展することもあるでしょう。
やはり、このようにして精神的に追い込んでお金を支払わせようとするのが闇金の目的です。
悪質な嫌がらせをされる
その他にも、闇金は悪質な嫌がらせをしてくることがあります。さまざまな嫌がらせ行為が見受けられますが、代表的な行為は次のようなものです。
- 大量の出前やデリバリーを勝手に注文される
- 自宅に救急車や消防車を呼ばれる
- ネットに個人情報を晒され誹謗中傷を受ける
近年では、ネットに個人情報を晒され、「削除してほしければ金を払え」と迫られるケースが増えています。
このように、闇金はさまざまな手段を用いて、借主や保証人が返済せざるを得ない状況に追い込むのです。
他の闇金から連絡がくることも
勝手に保証人にされた段階で、闇金には個人情報を握られています。そして、個人情報は他の闇金に横流しされることがほとんどです。
そのため、他の闇金から連絡が来て融資の勧誘をされることもあります。「他社への返済にお困りなら、当社の融資をご利用ください」という勧誘です。
その闇金は系列店であったり、裏でつながっているケースも多く、グルになって保証人からお金を巻き上げようとしている可能性が非常に高いです。
安易に闇金にお金を借りてしまうと、法外な金利を要求され、払えなければ取り立てや嫌がらせがエスカレートするので注意しましょう。
保証人とは
そもそも保証人とは、主債務者が金銭債務を返済できなくなったときに、代わりに返済する義務を負う人のことです。
ただ、借金をする際には通常の「保証人」ではなく「連帯保証人」を立てることが一般的です。保証人と連帯保証人には、次のような違いがあります。
保証人 | 連帯保証人 | |
---|---|---|
返済義務の内容 | 主債務者が返済できないときだけ返済義務を負う | 主債務者による返済が可能であっても返済義務を負う |
催告の抗弁権の有無 | 債権者に対して、先に主債務者へ請求するように主張できる | 主債務者より先に返済を請求されても拒めない |
検索の抗弁権の有無 | 債権者に対して、まず主債務者の財産から取り立てるように主張できる | 主債務者に差し押さえ可能な財産があっても、返済を請求されると拒めない |
しかし、保証人も連帯保証人も、次の2点では同じです。
- 債権者との契約によって保証人(連帯保証人)となる
- 債権者と主債務者との借入契約が無効であれば、保証契約(連帯保証契約)も無効
勝手に闇金の保証人(連帯保証人)にされた場合に返済義務を負うかどうかを考える際には、この2点がポイントとなります。
保証人と連帯保証人の違いは、あまり重要なことではありません。本記事では、通常の保証人のことも連帯保証人のことも、ひとまとめに「保証人」と称して解説を続けます。
勝手に闇金の保証人にされても返済義務がない理由
結論を言えば、勝手に闇金の保証人にされても、返済義務はありません。その理由は、次の2点です。
無断での保証契約は無効
保証人は、債権者との間で保証契約を結ぶことによって返済義務を負うことになります。
債権者と主債務者との間に無断で保証契約が結ばれていたとしても、そこには保証人とされる人の意思が反映されていません。つまり、その保証契約は無効です。
したがって、保証人とされた人に返済義務は生じません。ただし、法律上は次のような場合に、無効なはずの保証契約が有効となることもあり得ます。
- 債権者から見て、主債務者に保証契約の代理権があるように思える状況で、主債務者が代理人として保証契約を結び、「表見代理」が成立する場合
- 主債務者に代理権がないのに代理人として保証契約を結んだ後、保証人とされた人がその契約を「追認」した場合
しかし、表見代理や追認が成立する場合であっても、相手が闇金の場合は「契約自体が無効」なので、保証人とされた人が返済義務を負うことはありません。
闇金との契約はそもそも無効
そもそも、闇金と主債務者との貸付契約は無効です。なぜなら、闇金による貸し付けは法律上の上限金利をはるかに超える暴利を伴うため「出資法違反」という犯罪に該当するからです。
貸付行為そのものが犯罪なので、民事上もその契約は公序良俗違反として無効になります。闇金と主債務者との契約が無効である以上、保証契約も有効となることはあり得ません。
したがって、勝手に保証人とされた人は、闇金から返済を要求されても応じる義務はないのです。
勝手に保証人にされたら罪に問える
他人を勝手に借金の保証人にする行為は、それ自体が犯罪に該当する可能性があります。
実際に警察がすぐに動いてくれるとは限りませんが、返済を拒否した上で、闇金や借主に対して、罪を問える正当な権利があるということは、知っておいた方がよいでしょう。
闇金に成立する可能性がある犯罪
闇金には、詐欺罪が成立する可能性があります。なぜなら、法律上の保証人ではない人に対して「保証人になっている」と嘘をつき、金銭の支払いを要求しているからです。
保証人とされた人が騙されなければ詐欺罪は成立しませんが、闇金の取り立ての方法によっては脅迫罪や恐喝罪が成立する可能性もあります。
詐欺罪や恐喝罪は未遂でも処罰の対象となるので、保証人とされた人がお金を払っていなくても、闇金から騙されたり脅されたりした場合には罪に問える可能性が高いです。
なお、上記の各罪の刑罰は以下のとおりです。
- 詐欺罪…10年以下の懲役(未遂の場合も同じ)
- 脅迫罪…2年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 恐喝罪…10年以下の懲役(未遂の場合も同じ)
借主に成立する可能性がある犯罪
借主が借用書に他人の名前を勝手に書き、押印した場合には、有印私文書偽造罪と同行使罪が成立する可能性があります。ただ、闇金は借用書など作成しないことが多いので、その可能性は低いでしょう。
闇金からお金を借りるために借主が他人の身分証明書や給料明細などを無断で持ち出した場合には、窃盗罪が成立する可能性があります。
なお、上記の各罪の刑罰は以下のとおりです。
- 有印私文書偽造罪、同行使罪…3ヶ月以上5年以下の懲役
- 窃盗罪…10年以下の懲役または50万円以下の罰金
闇金から保証人としての返済を要求されたときの対処法
勝手に保証人にされた人に返済義務はありませんが、闇金はそんなことは承知の上で返済を迫り、お金を巻き上げようとしてきます。
そんなときは、次のように正しく対処していきましょう。
返済を拒否する
まずは、きっぱりと返済を拒否することが大切です。闇金に対しては主債務者にも返済義務がないのですから、1円も支払ってはいけません。
執拗に電話がかかってきたとしても、基本的には無視して構いません。
保証人とされた人に対する取り立ては、主債務者に対する取り立てほどには厳しくないことも多く、無視していればやがて闇金が諦めて手を引く可能性があります。
取り立てが怖い、借主を助けたいなどと思ったとしても、少しでも返済すると闇金から「カモ」と判断されてしまい、次々にお金を要求されてしまうので注意しましょう。
警察に相談する
無視しても闇金が諦めず、いつまでも執拗な取り立てを続けたり、悪質な嫌がらせをしてくることも多々あります。
取り立てや嫌がらせによって仕事や生活に支障をきたすなどの実害が生じていたり、身の危険を感じたりするときは、警察に相談しましょう。
被害届や告訴状を提出すれば警察が捜査を開始し、闇金を摘発してくれる可能性があります。そこまでいかなくても、警察が闇金に電話をして警告することで、取り立てや嫌がらせが一時的に止まることも少なくありません。
警察に動いてもらうためには、闇金との通話を録音したデータや、携帯電話の着信履歴、その他の嫌がらせ行為の記録などを証拠化し、警察に提出しましょう。
弁護士・司法書士に相談する
警察には「民事不介入の原則」があるため、闇金問題でも事件性が弱いと判断されると動いてくれません。動いてくれたとしても、闇金の摘発までには時間がかかるケースが多いです。
闇金による取り立てや嫌がらせが止まらず困っている場合は、弁護士・司法書士という法律の専門家に相談するのがおすすめです。
闇金の被害者から依頼を受けた弁護士・司法書士は、すぐ問題の解決に向けて動いてくれます。弁護士・司法書士が介入すると、ほとんどの場合、闇金は取り立てや嫌がらせをしなくなります。
なぜなら、闇金は弁護士・司法書士に依頼した人からお金を巻き上げるのは難しいことを知っていますし、法的措置をとられることを恐れているからです。
闇金問題を根本的に解決するためには、弁護士・司法書士の力を借りることが最も有効な方法です。
勝手に保証人にした借主への対処法
勝手に闇金の保証人にされたという場合、闇金からお金を借りた本人は家族や友人など身近な人であることが多いものです。
身近な人が闇金問題や借金問題で苦しんでいると、あなたも安心して暮らせないということもあるでしょう。
そんなときは、借主に対して次のように対処することをおすすめします。
闇金への正しい対処法を教える
まずは、借主に対して闇金への対処法を教えてあげましょう。
つまり、闇金に対しては借主本人も返済義務がなく、1円も返済してはいけないということを教えてあげるのです。
ただし、借主本人が闇金の取り立てを無視すると、悪質な嫌がらせなどによって、どこまでも追い込まれてしまう恐れが強いことに注意が必要です。
身の安全を守るために、警察や弁護士・司法書士に相談して解決すべきことも教えてあげましょう。
他にも借金がある場合は債務整理を勧める
闇金から借金をする人は、正規の貸金業者からも返済しきれない借金を抱えていることがほとんどです。
正規の貸金業者からの借金は、債務整理という正当な方法で解決できます。借主本人が闇金以外の借金も抱えているようなら、債務整理による解決を勧めてあげましょう。
弁護士・司法書士への相談を勧める
債務整理にはいくつかの種類があり、状況によってとるべき手続きは異なります。適切な手続きを選ぶためには専門的な知識を要するので、弁護士・司法書士からアドバイスを受けることが重要です。
そのため、闇金から借金した本人に対しては、弁護士・司法書士への相談を進めることが最善の対処法となります。
借主本人を弁護士・司法書士への相談に導くことができれば、あとは弁護士・司法書士が闇金問題も他の借金も含めて、最適な解決方法に導いてくれます。
闇金の保証人問題で弁護士・司法書士に依頼するメリット
勝手に闇金の保証人問題にされた人にとっても、最善の対処法は弁護士・司法書士に依頼することです。弁護士・司法書士の力を借りることで得られる具体的なメリットは、以下のとおりです。
- 闇金の取り立てや嫌がらせが早期に止まることが多い
- 闇金問題の解決に向けてすぐに動いてもらえる
- 闇金との交渉を任せられる
- 携帯電話の利用停止や銀行口座の凍結などの手続きにより闇金が営業できないようにしてもらえる
- 刑事告訴の代行も可能
また、借主本人の闇金問題・借金問題についても、代理で弁護士・司法書士に相談することは可能です。
闇金に関する問題で困ったら、早めに弁護士・司法書士に頼ることをおすすめします。
まとめ
闇金から突然の連絡が来て「保証人になっているから支払え」などと要求されても、返済義務はないので応じてはいけません。
正しい解決方法は、きっぱりと返済を拒否することです。また、無視しても問題ありません。もしも取り立てや嫌がらせが執拗に続くようなら弁護士・司法書士に相談することです。
闇金問題で困ったときは1人で抱え込まず、闇金に強い弁護士・司法書士の力を借りて解決を図りましょう。