- 闇金からの借金は不法原因給付なので返済不要である
- 闇金問題を解決するためには返済しないことが重要である
- ただし自分で闇金に対応するのは危険である
- 闇金への対応は闇金に強い弁護士・司法書士に依頼すべきである
闇金からの借金は不法原因給付に当たるため、返済する必要はありません。
このように言われても、「本当に返さなくても大丈夫なのか」「不法原因給付とは、どういうことなのか」と不安や疑問を感じる方が多いことでしょう。
たしかに、借りたものを返さなくてよいという結論には違和感があるかもしれません。実際、借りた方が自分で闇金に対して「返済しません」などと言えば、激しい取り立てを受けるおそれがあります。
しかし、闇金に対しては法律上の返済義務がないのです。
この記事では、不法原因給付の意味と闇金に返済しなくてよい理由をわかりやすく解説し、合わせて、闇金に対して返済を拒否するための正しい方法もご紹介します。
不法原因給付とは
不法原因給付とは、不法な原因で受け取ったお金について、法律上、どのように扱えばよいのかを定めた民法上のルールのことです。
以下で、その内容をわかりやすくご説明します。
不法な契約で受け取ったお金は返還不要
不法原因給付については、民法第708条で以下のとおり定められています。
第708条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
民法|e-Gov法令検索
ここにいう「不法」とは、社会一般の倫理や道徳に反することを意味します。「給付」とは、金銭に限らず財産的価値のある利益を与えることです。
要するに、反倫理的、反道徳的な理由で財産の受け渡しが行われた場合、渡した側が返還を要求したとしても、受け取った側には返還する義務がないということです。
愛人関係の対価として、男性から女性に金銭が支払われていたケースで考えるとわかりやすいでしょう。現在の社会では、愛人関係は反倫理的、反道徳的なものであると考えられています。そのため、支払われた金銭は不法原因給付に当たります。
この場合、関係を解消する際に男性が金銭の返還を求めたとしても、女性には返還する義務がないのです。民法第708条で男性の返還請求権が認められていませんので、たとえ男性が裁判を起こしたとしても、女性から金銭を取り戻すことはできません。
返還不要とされている理由
反倫理的、反社会的な内容の契約は、公序良俗に反するため無効です(民法第90条)。そうであるならば、本来は、財産を受け取った側は不当利得となるため、返還しなければならないはずです。契約がなかったことになる以上、その財産を手元に置いておける法律上の理由がないからです。
しかし、社会的な非難に値するような行為をした人が、後になって財産を取り返すために法律を利用することは、正義の理念に反します。このような場面で返還を要求する人を法的に保護すべきではないため、民法第708条で返還請求権が否定されているのです。
この点は、先ほどの愛人契約の例の他にも、闇バイトのケースで考えてみると、さらにわかりやすくなります。
例えば、闇バイトの募集をした人が、何らかの犯罪行為を依頼するための着手金を応募者に支払ったとします。その後、応募者が犯罪行為に失敗したり、考え直して犯罪行為に及ばなかったとしても、募集した人が着手金の返還を請求することは認められません。
以上のことを踏まえて、闇金からの借金と不法原因給付の関係についてみていきましょう。
闇金からの借金は不法原因給付?
闇金からの借金も公序良俗に反するものであり、不法原因給付に該当します。そのことは、最高裁判所の判例でも認められています。
最高裁判例の結論
最高裁判所平成20年6月10日判決で、闇金による高金利を伴う貸付けについて、以下のような判断が示されました。
- 出資法の上限金利を著しく上回る金利による利息の契約、利息の受領、支払いの要求は、それ自体が強度の違法行為である
- 闇金が利用者に対して貸付けと称して金銭を交付したのは、元利金等の弁済の名目で金銭を違法に受領するための手段に過ぎない
- 本件で貸付けと称して行われた金銭の交付は公序良俗に反する違法なものであり、不法原因給付に当たる
- したがって、闇金は利用者に対して、交付した金銭を不当利得として返還請求することはできない
このように最高裁判所は、闇金による貸付けが不法原因給付に当たり、借主に返済義務はないことを明確に認めたのです。
闇金には例外なく返済不要
上記の最高裁判例には、ひとつだけ注意点があります。
それは、「年利数百%~数千%」にも及ぶ高金利の貸付けが違法であり、不法原因給付に当たると述べているに過ぎないことです。言い換えれば、出資法の上限金利(個人間の貸付けでは年109.5%、貸金業者の貸付けでは年20%)を1%でも上回ると不法原因給付に当たるとは述べていません。
しかし、その理由は、この判例の事案が年利数百%~数千%のケースであったからです。最高裁判所は、「年利数百%までなら合法です」と述べているわけではないのです。
結論として、闇金による貸付けは例外なく違法であり、不法原因給付に該当するため返済不要であると考えて差し支えありません。
闇金の金利は低くても「トイチ」程度の水準です。トイチとは10日で1割という意味であり、年利に直すと365%です。明らかに、上記判例が指摘する「年利数百%」に該当します。
そもそも、出資法の上限金利を1%でも超える金利を伴う貸付けは犯罪行為であり、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方」という刑事罰も用意されています。
そのため、仮に金利が年数百%に及ばないとしても、出資法に違反していれば公序良俗違反の違法行為であり、不法原因給付に該当するのです。
実際、闇金に強い弁護士・司法書士は、闇金には例外なく返済不要という方針で対処しています。
闇金から借りた元金はもらってよいのか
闇金に対して返済する必要がないとしても、利息はともかく元金も返さなくてよいのか、という点については疑問に感じる方が多いことでしょう。
結論として、元金はそのままもらっておいて構いません。以下で、その理由をわかりやすく解説します。
不法原因給付の反射的効果としてもらってよい
民法第708条では、不法原因給付を行った人の返還請求権を否定しているだけであり、給付されたものが誰の所有となるのかについては明確に規定していません。
しかし、返還請求権を否定することの反射的効果として、交付を受けた側の人が確定的にその給付物を取得するものと考えられています。
この結論は最高裁判所昭和45年10月21日判決で既に認められていますし、上記の最高裁判所平成20年6月10日判決でも同じように認めています。
不法原因給付とは、反社会的な行為をした者に対しては、その行為の結果の復旧を訴求することを許さない趣旨を規定したものと認められるから、闇金からの返還請求は法律上は認められません。
この場合、借主が受け取った金銭は、貸主からの返還請求が確定的になされないものである以上、返還先がないこととなり、実体に即して借主のものとなります。
ただし借りパクをしてはいけない
闇金から借りた元金をそのままもらえるという結論は、あくまでも不法原因給付の「反射的効果」に過ぎないことにご注意ください。
最初から返済する気がないのに元金を着服する目的で闇金から借金をする「借りパク」のケースでは、反射的効果が認められない可能性もあります。
また、相手が闇金であっても、返済する意思があるかのように装って騙し、金銭を着服する行為は詐欺罪に該当します。罪に問われる恐れがありますので、借りパクは絶対にしないようにしましょう。
個人間での貸し借りであるなら、貸した金を返してもらう請求をすることは当然です。
貸金業法では細かく規定されている督促行為ですが、闇金は、そもそも法の外にある存在であり、法に縛られません。
借りたままの状態が一番嫌がらせを受けるケースが多く、昼夜とわず、当事者関係者とわず請求されます。
安易に借りパク目的で、闇金に手を出した方には、会社をやめざるをえなくなったり、取引先から損害賠償されたケースもあります。離婚となって、人生すら変わってしまうこともあります。
自分で闇金に不法原因給付を主張するのは危険
闇金には利息だけでなく、元金も返済する必要はありません。しかし、だからといって借主がご自身で闇金に「不法原因給付だから払いません」と告げることは、非常に危険です。
一人で対処しようとすると、以下のリスクが生じます。
執拗な取り立てを受ける
借主が払わないとなると、当然ながら闇金は取り立てを開始します。
取り立ての方法は主に電話ですが、昼夜を問わず頻繁に支払い催促の電話がかかってきます。1日に100件以上の着信があることも珍しくありません。
少しでも支払いをしない限り、取り立ての電話が鳴り続けます。
悪質な嫌がらせを受ける
取り立ての電話を繰り返しても借主が支払わないとみるや、闇金は別の手段で嫌がらせをしてきます。例えば、以下のように悪質な嫌がらせを受けるケースが数多く報告されています。
- インターネットで個人情報を拡散される
- SNSや掲示板サイトなどで実名を記載して誹謗中傷される
- 大量の寿司やピザなどの出前が届けられる
- 自宅に救急車や消防車を呼ばれる
- 自宅前で「金を返せ!」などと大声で叫ばれる
- 玄関や壁などに誹謗中傷の貼り紙をされる
他にも様々な嫌がらせがありますが、近年ではインターネットを使った嫌がらせ行為が増えています。ネット上の書き込みを削除することは容易ではないので、悪質な書き込みをされると大きなダメージを受けてしまうことに注意しなければなりません。
家族や勤務先も取り立てや嫌がらせを受ける
闇金からの攻撃がご自身だけに向けられたものなら、我慢するということも考えられます。しかし、闇金は借主本人だけでなく、その家族や勤務先などにも上記のような取り立てや嫌がらせを行います。
闇金から借りる際には家族や勤務先などの連絡先も聞かれますが、それは審査のためではなく、取り立ての材料とするためなのです。
以上のような取り立てや嫌がらせが行われる目的は、本人を精神的に追い込み、お金を支払うように仕向けるためです。
闇金自身、自分たちが行っている貸付けが違法であり、不法原因給付のため法律上の返還請求権がないことは知っています。そうであるからこそ、法律以外の手段でお金を支払わせるために、戦略的に取り立てや嫌がらせを行っているのです。
借主が一人で闇金に立ち向かおうとしても、執拗で悪質な取り立てや嫌がらせに耐えられる人は、なかなかいないでしょう。
闇金への返済を拒否するためにやるべきこと
とはいえ、闇金問題を解決するためには、返済しないことが重要です。少しでも返済すると「カモ」とみなされ、次々に支払いの請求を受けてしまいます。
闇金に対して返済を拒否する正しい方法は、警察と弁護士・司法書士に相談することです。
警察に相談する
闇金による取り立てや嫌がらせで身の危険を感じるときは、すぐ警察に相談してください。警察も闇金対策には力を入れていますし、相談に乗ってもらえます。
警察から闇金に電話をしてもらうだけで、しばらくは取り立てや嫌がらせが止まることもよくあります。
しかしながら、近年の闇金は実店舗を持たない業者がほとんどで、足がつかないような工夫もしているため、警察といえども闇金の摘発に至るケースは少ないのが実情です。
そのため、警察に相談するだけで安心できるわけではありません。
弁護士・司法書士に相談する
そこで、闇金に対応するためには弁護士または司法書士という法律の専門家の力を借りることが重要となります。
弁護士・司法書士は警察とは異なり、依頼者を闇金から守るため、すぐに動いてくれます。相談・依頼することで、以下のメリットが得られます。
- 弁護士、司法書士から闇金に警告してくれる
- 取り立てや嫌がらせの中止を交渉してくれる
- 闇金が使用する携帯電話の利用停止の手続きをとってくれる
- 闇金の銀行口座を凍結する手続きをとってくれる
- 既に支払った金銭の返還についても交渉してくれる
- 刑事告訴の手続きもサポートしてくれる
- 他にも借金を抱えている場合は債務整理のサポートもしてくれる
ほとんどの場合、弁護士・司法書士が介入すれば、闇金は諦めて取り立てや嫌がらせをストップします。携帯電話が利用停止となったり、銀行口座を凍結されたりすれば営業できなくなるからです。
弁護士・司法書士からの警告を無視してまで、強行的に取り立てを継続する闇金はあまりいません。
弁護士・司法書士を間に入れてこそ、不法原因給付を正しく主張することが可能となるのです。
着手金不要 迅速対応 円満解決
闇金の嫌がらせが多い傾向にあるのがやはり借りたままの状態や借りパク状態にあるものです。
当事務所では、この様な借りっぱなしの案件についても、円満解決できるよう全力で取り組んでいます。
借りてしまい支払いができない状態になってしまいますと、すでにかなり危険な状況です。
当事務所では、着手金不要・即日対応も可能ですのですぐにご相談ください。
まとめ
闇金からの借金は、不法な原因による給付に当たるので、元金・利息とも返済する必要はありません。
ですが、闇金もそんなことは承知の上で取り立てや嫌がらせを行ってきますので、対処するためには弁護士・司法書士の力を借りることを強くおすすめします。
法律の専門家のサポートを受けて闇金問題を解決し、平和な生活を取り戻しましょう。