- 子供が闇金から借金した場合、子供にも親にも返済義務はない
- ただし、放置すると親も闇金から取り立てや嫌がらせを受ける可能性が高い
- 闇金問題は債務整理では解決できない
- 子供の闇金問題のベストな対処法は弁護士・司法書士に依頼すること
子供が闇金から借金して返済できなくなると、親が肩代わりの要求を受けることがよくあります。
闇金に対して返済する必要はありませんが、放置していると他の親族、友人、子供の職場の人まで執拗な取り立てや悪質な嫌がらせを受けてしまう可能性が高いです。
そのため、闇金から要求を受けたときは早急に対処する必要があります。また、子供が抱えている借金問題も解決に導く必要性があるでしょう。
この記事では、子供が闇金に手を出したときに親がとるべき対処法をわかりやすく解説します。
子供が闇金から借金した場合、親に返済義務はある?
結論からいいますと、子供が闇金から借りたお金を、親が返済する義務はありません。
とはいえ、闇金はさまざまな口実を用いて親に肩代わりを強要してくることが多いものです。そこで、以下では返済義務がないといえる理由をケース別にご説明します。
子供自身の名義で借りた場合
法外な金利を伴う闇金との借入契約は無効なので、そもそも借主自身にも返済義務はありません。
最高裁判所の判例でも、出資法の上限金利である年109.5%を著しく超える高金利を伴う貸付契約は、公序良俗に反するため全体的に無効とされています。
契約が無効なので、借主である子供は元本・利息を含めて返済する必要がないのです。
闇金は「親なら子供が借りた金を返すのが当然だ」と主張することが多いですが、そもそも子供にも返済義務がないので、親が返済する必要はありません。
仮に合法な借金であったとしても、契約は個人単位なので、子供の借金を親が返済しなければならない理由はありません。
親の名義で借りた場合
子供が勝手に親の名義で闇金から借金した場合でも、親に返済義務はありません。誰の名義で借りようが、闇金との借入契約は無効だからです。
合法な借金であれば、子供が親の代理人として契約した場合、状況によっては「表見代理」が成立し、親に返済義務が生じることもあります。しかし、闇金との借入契約は無効なので、表見代理を考慮する必要はありません。
また、子供が親になりすまして借金した場合、理論上は詐欺に該当し、子供は損害賠償として借りたお金を返さなければならない可能性もあります。
しかし、闇金が騙されて親と子供を混同するとは考えがたいので、詐欺を心配する必要もまずないでしょう。
勝手に親を連帯保証人にした場合
子供が勝手に親を連帯保証人として闇金から借金した場合も、親に返済義務はありません。闇金との借入契約そのものが無効なので、連帯保証契約も無効だからです。
親の名義で借りた場合と同様、表見代理や詐欺を心配する必要もありません。
親が闇金に返済をしないとどうなる?
親に返済義務がないとしても、闇金からの要求を放置することはおすすめできません。無視していると、次のようなリスクが生じるからです。
執拗な取り立てを受ける
闇金からの要求どおりに支払わなければ、まずは借主である子供に対して執拗な取り立てが始まります。
取り立ての方法は主に電話による返済要求ですが、昼夜を問わず、繰り返し電話がかかってきます。1日に100件を超える着信があることも珍しくありません。電話に出ると、脅迫的な言葉で返済を強要されることが多いです。
要求された方は、「支払わなければ取り立てをやめてもらえない」という気持ちになることでしょう。それこそが、闇金の狙いです。
親の自宅や職場に連絡がくる
子供自身が払えなければ、親の自宅や職場にも闇金からの連絡が来ます。闇金は、貸し付けの際に審査と称して、ありとあらゆる個人情報を聞き出しています。
そのため、子供が親の電話番号などを伝えており、突然闇金からの連絡が来るのです。
親に対しては、「子供の借金は親が返せ」との言い分で、子供に対するのと同様の執拗な取り立てが行われることが多いです。
親の職場の人に対しては、「○○さんに子供の借金を返せと伝えてください」と告げることもあれば、上司や同僚に肩代わり返済を迫ることもあります。
いずれにしても、職場に執拗な連絡が来ると業務に支障をきたすので、退職を迫られたり、職場にいづらくなってしまうおそれがあります。
他の親族も取り立てを受けることがある
闇金は、借主の親だけでなく、配偶者や子供、兄弟姉妹、その他の親戚にまで取り立ての連絡をすることが多いです。友人や知人にまで連絡することもあります。
このようにして、子供の借金が原因で周囲の人たちにまで迷惑が及ぶと、親としても何とかして子供の借金を返さなければならないと考えることでしょう。
親名義での契約を迫られる
闇金が親に肩代わりを要求する際、親名義で契約し直すように迫ることもよくあります。
その際、闇金はさらに法外な金利を上乗せしてくることにも注意が必要です。闇金の金利は、年数百%から千%以上という暴利です。例えば、子供が借りた金額が数万円だったとしても、利息を上乗せして数十万円の金額を平気で請求してきます。
もともとの元金に対しても、さらに法外な金利を要求してきます。支払いに応じなければ、親に対しても執拗な取り立てが繰り返されます。
さまざまな嫌がらせをされる
取り立てを受けても払わない場合には、さまざまな嫌がらせをしてくるのが闇金の常套手段です。
以前から多かった嫌がらせの事例として、次のようなものが挙げられます。
- 大量の出前やデリバリーを注文される
- 自宅に救急車や消防車を呼ばれる
- 動物の死骸や汚物などが届けられる
- 自宅に「金を返せ」「ドロボー」などの貼り紙をされる
- 自宅の前で「金を返せ」「ドロボー」などと大声で叫ばれる
近年は、SNSやネット上の掲示板サイトなどで個人情報を晒され、誹謗中傷されるという事例が増えています。子供も親も、ともども誹謗中傷されるケースがあります。「書き込みを削除してほしければ金を払え」と迫る手口です。
以上のように、闇金はありとあらゆる手段を使って借主や親族を精神的に追い込んで、お金を支払わせようとしてきます。
子供が闇金から借金した場合の対処法
子供が闇金から借金したことに気づいたら、放置せず、次のように対処して行きましょう。
返済には応じない
まず、執拗な取り立てを受けたとしても、返済に応じてはいけないということを覚えておきましょう。
そもそも返済義務はありませんが、闇金もそんなことは百も承知で返済を要求してきます。少しでも返済すると、「カモ」だと判断され、次々に法外な要求をされる可能性が非常に高いです。
一括で全額を返済したとしても、さまざまな口実でさらに支払を要求されたり、押し貸しをされたりして、闇金からの要求がいつまでも続くことも少なくありません。
闇金に対しては1円も支払わない、という姿勢で臨むことが重要です。
状況を確認する
子供の闇金問題を解決するためには、前提として状況をできる限り詳細に確認しましょう。
まずは、子供から次のような情報を聞き出すようにしてください。
- 闇金の名称、住所、連絡先、担当者の名前
- いくら借りたのか
- いつ借りたのか
- 既に一部返済した場合は、いつ、いくら返済したのか
- 約束した金利
- 返済期限などの返済条件
- どのような個人情報を伝えたのか
そして、借入先が闇金かどうかも確認しておきましょう。闇金だと思っていても、実は「街金」であるケースもあるので注意が必要です。
街金とは、地元民を中心として小口融資を行う中小規模の消費者金融のことです。合法な貸金業者なので、街金から借金した場合、少なくとも子供自身には返済義務が生じます。
闇金かどうかを調べるには、インターネットで借入先の名称や電話番号などを検索してみるのが便利です。その業者の実態に関する情報が見つかることもあります。
より正確に調べるためには、以下のサイトで検索するのがおすすめです。
金融庁ホームページの「登録貸金業者情報検索入力ページ」
日本貸金業協会のホームページの「ヤミ金(悪質業者)の実例検索」
取り立てや嫌がらせの証拠を確保する
闇金から取り立てや嫌がらせを受けたら、証拠化して確保しておきましょう。証拠は、警察や弁護士・司法書士に相談する際に重要となります。
有力な証拠としては、次のようなものが挙げられます。
- 闇金からの電話の着信履歴
- 通話を録音したデータ
- メールやLINEでのやりとりのスクリーンショット
- 業者のホームページやネット広告のスクリーンショット、URL
- 個人情報をネットで晒された場合は、その画面のスクリーンショット、URL
- 借入や返済に利用した銀行口座の通帳
- 振込みで返済したことがある場合は振込明細書
闇金に関する情報は、できる限り数多く証拠化するようにしましょう。
警察に相談する
以下のように、実害が生じていたり、身の危険を感じたりする場合は、警察への相談がおすすめです。
- 執拗な取り立てや脅迫的な取り立てを受け、生活に支障が出ている
- 悪質な嫌がらせを受け、生活の安全が脅かされている
- 職場に何度も連絡があり、業務が妨害されている
- 既に法外な金利を支払ってしまった
- ネットで個人情報を晒された
警察へ相談する際は、最寄りの警察署の生活安全課を訪ねましょう。「#9110」へ電話すれば、最寄りの相談窓口を案内してもらえます。
被害届と一緒に証拠を提出すれば、警察が捜査をして闇金業者を摘発してくれる可能性があります。そこまでいかなくても、警察が闇金業者へ連絡することにより、取り立てや嫌がらせが一時的に止まることも少なくありません。
弁護士・司法書士に相談する
闇金問題を解決するためのベストな方法は、弁護士・司法書士に対応を依頼することです。
警察では被害届をなかなか受理してくれないことも多く、受理してくれたとしても闇金業者が検挙される可能性は高くありません。それに対して、弁護士・司法書士に依頼すれば、すぐに動いてもらえます。
依頼を受けた弁護士・司法書士は、闇金に連絡をして返済義務がないことを説明し、取り立てや嫌がらせを止めるように交渉します。止めなければ法的措置をとる旨の警告もします。
闇金は、弁護士・司法書士からの警告を無視すると、携帯電話の利用停止や銀行口座の凍結、刑事告訴などにより、営業できなくなることを知っています。そのため、弁護士・司法書士が介入すると取り立てや嫌がらせを止めることが多いです。
自力で闇金に対処しようとすると、取り立てや嫌がらせがエスカレートしていく可能性が高いので危険です。闇金問題は、早めに弁護士・司法書士に相談するようにしましょう。
未成年の子供が闇金から借りた場合の対処法
未成年の子供が闇金から借りた場合も、対処法はこれまでにご説明したところと同じです。
合法な貸金業者から未成年の子供が単独で借金をした場合は、親権者が契約を取り消せます。しかし、闇金との借入契約はそもそも無効なので、契約取消の手続きをとる必要はありません。
早めに弁護士・司法書士に相談し、正しく対処していきましょう。ただ、闇金から借金をする子供は、親に言えないような何らかの問題を抱えている可能性が高いと考えられます。
未成年者は合法な貸金業者から借りることはできないため、しっかりと監督しなければ、今後も闇金のような違法業者や、個人間融資などの危険な行為に手を出すおそれがあります。
今後の防止策については、親子で十分に話し合い、子供が抱えている問題を理解した上で、必要なサポートをしてあげることが重要となるでしょう。
闇金問題は債務整理では解決できない?
合法な借金は債務整理で正当に解決できますが、闇金からの借金は債務整理では解決できません。なぜなら、闇金との借入契約は無効なので、債務整理の対象となる「借金」に該当しないからです。
そもそも、闇金業者が債務整理手続きに協力することもありません。そのため、闇金問題は弁護士・司法書士に依頼して、警告や交渉をしてもらうことがベストな解決方法となります。
なお、成人の子供は、闇金以外に合法な借金を抱えている可能性が高いと考えられます。その場合は、本人に債務整理を勧めた方がよいでしょう。
債務整理には、主に任意整理、個人再生、自己破産という3種類の手続きがあります。どの手続きがよいのかは、借入額や本人の収入、資産の状況などによって異なります。闇金問題と併せて、債務整理についても弁護士・司法書士に相談し、専門的なアドバイスを受けるとよいでしょう。
まずは、闇金問題を弁護士・司法書士の力で早急に解決し、落ち着いて債務整理を検討するのがおすすめです。
子供の闇金問題で弁護士・司法書士に依頼するメリット
子供の闇金問題で困ったら、弁護士・司法書士に依頼することで次のメリットが得られます。
- 弁護士・司法書士からの警告によって、取り立てや嫌がらせがすぐに止まる可能性が高い
- すぐに止まらない場合も、闇金の携帯電話の利用停止、銀行口座の凍結、刑事告訴などの措置によって根本的な解決が期待できる
- 既に返済したお金を取り戻せる可能性もある
- 合法な借金がある場合も、最適な解決方法を考えてもらえる
- 債務整理が必要な場合は、複雑な手続きを一任できる
弁護士・司法書士に依頼するメリットは大きいといえるでしょう。
まとめ
子供が闇金から借金した場合、子供にも親にも返済義務はありません。しかし、放置すると執拗な取り立てや悪質な嫌がらせにより、子供も親も精神的に追い込まれてしまうでしょう。
闇金からの借金が判明したら、子供を責めるよりもまずは、適切に対処することが先決です。弁護士・司法書士の力を借りて、闇金問題は解決してしまいましょう。