- 闇金の貸付は犯罪なので業者が逮捕されることがある
- しかし実際に闇金が逮捕されるケースは氷山の一角に過ぎない
- 闇金の利用者が逮捕されるケースもあるので注意が必要である
- 業者が逮捕されなくても弁護士・司法書士への依頼で闇金問題の解決が可能
闇金による貸付は犯罪です。闇金の取引に関連して過激な取り立てや悪質な嫌がらせ行為など、さまざまな犯罪が日々発生しています。闇金業者が逮捕されたというニュースを見聞きしたことがある方も多いことでしょう。
しかし、実際に闇金が逮捕されるケースは氷山の一角に過ぎません。大多数の闇金業者は巧みに警察の手から逃れて、違法な営業を続けているのが実情です。闇金被害に遭って警察に相談したからといって、闇金を逮捕して解決してもらえるとは限らないのです。
また、闇金に手を出した利用者が犯罪行為に加担させられてしまい、逮捕されるケースがあることにも注意しなければなりません。
この記事では、闇金がなかなか捕まらない理由や、逮捕してもらう方法、さらには闇金問題を根本的に解決する方法までをわかりやすく解説します。
闇金が逮捕されるケースはどれくらいあるのか
まずは、闇金が逮捕されるケースが年間に何件くらいあるのかをみてみましょう。
警察による闇金の検挙件数
警察庁の発表によると、闇金の検挙件数・検挙人員の推移は以下のとおりとなっています。
闇金問題は2000年代に社会問題となり、警察による取り締まりが強化されるとともに国をあげて対策が進められました。2003年には闇金対策法が成立し、法規制も強化されました。
令和4年(2022年)においては、検挙事件数が627件、検挙人員が708人となっています。
上の折れ線グラフのうち、青色の線(無登録・高金利事犯)は、闇金業者が検挙された事件数を示しています。それに対して赤色の線(ヤミ金融関連事犯)が示している検挙事件数の中には、闇金の利用者が検挙された事案が相当数、含まれていることに注意が必要です。
闇金業者が無登録営業や法外な利息を巻き上げたことで検挙された事例は、2022年において100件もありません。これをみても、闇金が逮捕されるケースはかなり少ないといえるでしょう。
なお、「検挙」とは、捜査機関が犯罪の被疑者を特定して捜査を開始することをいいます。捜査は被疑者を逮捕せずに進められることもあるので、「検挙件数」のすべてが「逮捕件数」というわけではありませんが、検挙件数のデータはひとつの参考となるでしょう。
闇金がなかなか捕まらない理由
闇金が実際にはなかなか検挙・逮捕されない理由は、以下のとおりです。
民事不介入の原則
警察には「民事不介入の原則」があります。お金の貸し借りに関するトラブルは民事の問題となるため、基本的に警察は取り扱いません。
理論上は闇金が法外な金利を伴う貸付を行った時点で犯罪が成立していますが、実害が生じていなければ、警察は「民事不介入」を理由として取り合ってくれないのが実情です。
また、警察の人員は世の中で発生している犯罪をすべて取り締まるには到底足りず、常に多忙であることから、深刻な被害が発生していなければ取り合ってくれない傾向にあります。
証拠が不十分
犯罪の証拠を確保するのは捜査機関の仕事なのですが、警察としても、犯罪が発生したという根拠がなければ捜査を始めることはできません。むやみに人を逮捕すると、重大な人権侵害という問題があるからです。
そのため、闇金を逮捕してもらうためには、被害者の方からある程度の証拠を提供しなければならないことが多いのが実情です。
被害者の言い分だけで有力な証拠がなければ、逮捕してもらうことはできません。
闇金の実態がつかめない
被疑者を逮捕するためには、その人がどこの誰なのかを特定しなければなりません。しかし、闇金は足がつかないように、できる限り証拠が残らない形で営業していますので、警察が逮捕しようと思っても難しいことが多いのです。
ほとんどの闇金は、携帯電話でのみやりとりし、お金のやり取りも銀行口座への振込のみです。しかも、闇金は第三者名義の携帯電話や銀行口座を使用しているので、調査をしてもなかなか闇金業者の実態がつかめないのが実情です。
闇金が逮捕される場合の罪名と罰則
警察が被疑者を逮捕する際には、何罪の疑いがあるのかを特定します。闇金が逮捕される場合の罪名と、その犯罪で有罪となった場合に科せられる刑罰は以下のとおりです。
無登録営業
貸金業を営むためには、国または地方自治体に貸金業者としての登録をしなければなりません。しかし、闇金のほとんどは無登録で不特定多数の人にお金を貸し、利益を得ています。
この点は貸金業法の「無登録営業」の罪に該当し、有罪になれば「10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、またはその両方」という刑罰が科せられます。
また、無登録業者が顧客に対して勧誘をするだけでも罪となり、その場合の罰則は「2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方」です。
高金利違反
闇金は、法律上の上限金利をはるかに超える高金利で貸付を行っています。この行為は出資法違反(高金利)の罪に該当します。この罪に対する刑罰には、以下の3パターンがあります。
ケース | 刑罰 |
---|---|
個人が年109.5%を超える金利で貸付 | 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方 |
貸金業者が年20%を超える金利で貸付 | 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方 |
貸金業者が年109.5%を超える金利で貸付 | 10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、またはその両方 |
闇金業者は登録業者ではありませんが、「業として金銭の貸付を行う者」に該当しますので、最も重い「10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、またはその両方」が適用されると考えられます。
不当な取立行為
貸金業者が取り立てを行う際に守るべきルールは、貸金業法で定められています。例えば、以下のような取立行為は禁止されています。
- 正当な理由がないのに深夜や早朝に電話をかけたり、自宅を訪問すること
- 正当な理由がないのに勤務先など自宅以外の場所に連絡すること
- 第三者に対して支払いを請求すること
闇金業者も「業として金銭の貸付を行う者」に該当する以上はこれらの規制を守る必要があり、違反すると「2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方」が科せられます。
その他、刑法上の犯罪
その他、闇金が威圧的な取り立てを行う際に刑法上の犯罪が成立することがあります。近年では暴行罪や傷害罪が発生することは滅多にありませんが、以下の犯罪が発生するケースは少なくありません。
- 脅迫罪…2年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 恐喝罪……10年以下の懲役
- 住居侵入罪…3年以下の懲役または10万円以下の罰金
- 不退去罪…3年以下の懲役または10万円以下の罰金
- 業務妨害罪……3年以下の懲役または50万円以下の罰金
闇金が実際に逮捕された事例
どのようなケースで闇金が逮捕されているのか、実際の事例をいくつかご紹介します。
無登録営業・高金利で逮捕されたケース
2022年1月、貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反(高金利)の疑いで不動産賃貸業の男が逮捕されたケースがあります。
この男は、2020年6月下旬から2021年7月中旬にかけて、貸金業の登録を受けずに法律上の上限を超える金利で金銭を貸し付けていました。
ある女性対して16回にわたって合計418万5,000円を貸し付け、利息として合計511万5,000円を支払わせる契約などをしていたとのことです。
参照:京都新聞 (リンク切れ) https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/710482
闇金が逮捕されるケースのほとんどで、貸金業法違反(無登録営業)もしくは出資法違反(高金利)、またはその両方が逮捕容疑となっています。
会社員が闇金を営み逮捕されたケース
2022年7月に、会社員の男ら4人が闇金を営んでいて逮捕されたという事件が報道されました。
報道によると、男らは共謀して、2020年12月頃から2021年8月頃までの間に、無登録で、利用者の男性ら5人に対し、合計40万6,000円を貸付、法定金利を超える利息合計46万4,000円を受け取るなどしたとのことです。
参照:埼玉新聞
かつて闇金といえば暴力団が運営するものというイメージが強くありましたが、近年では一般の人が闇金を営むケースが増えています。
ソフト闇金の業者が逮捕されたケース
2021年1月、全国的に有名なソフト闇金グループの首謀者とみられる男が出資法違反(高金利)の疑いで逮捕されました。
報道によると、逮捕容疑は2019年に男女2人に対して合計20万9,000円を貸し付け、法定利息の約16倍に及ぶ18万7,000円の利息を受け取ったというものです。
また、このソフト闇金グループの被害者は全国で延べ約2万人にのぼり、グループは累計で約5億円の利益を得ていたとのことです。
逮捕されたきっかけは、警察がサイバーパトロールでこの業者のホームページを見つけたということでした。
参照:長崎文化放送
ソフト闇金の中には、従来の闇金とは異なりホームページを開設し、堂々と「ソフト闇金である」と名乗って営業している業者も少なくありません。そのため、ソフト闇金が逮捕される可能性は十分にあります。
ただし、警察が民事の問題に過ぎないと判断した場合や、犯罪被害の証拠がない場合などでは、従来の闇金の場合と同様、逮捕されないという実情もあります。
警察に闇金を逮捕してもらう方法
闇金に手を出してしまい、過激な取り立てや悪質な嫌がらせを受けたとき、警察に相談することは有効な対処法のひとつです。ただし、闇金を逮捕してもらえなければ根本的な解決につながらないことが多いものです。
警察に闇金を逮捕してもらう可能性を少しでも高めるために、以下のような方法があります。
証拠を確保する
まずは、闇金の犯罪行為と被害の実態を証明できる証拠を確保することが重要です。利用者自身が確保できる証拠としては、以下のようなものが挙げられます。
- 闇金の名称や連絡先が分かるもの
- 振込先の銀行口座が分かるもの
- 闇金との取引状況(借入日、借入額、返済日、返済額など)が分かるもの
- 闇金と電話でやりとりした際の通話記録
- 闇金とやりとりしたメール
- 闇金とのやりとりを録画・録音したデータ
基本的に、闇金とのやりとりで形に残っているものはすべて保管しておきましょう。催促の電話でのやりとりを新たに録音するのも有効です。
被害届を提出する
ある程度の証拠を確保したら、最寄りの警察署の生活安全課に相談しましょう。その上で、被害届を提出することです。
捜査機関に対して正式に被害を申告することで、闇金の逮捕に向けて動いてもらえる可能性が出てきます。
弁護士・司法書士に刑事告訴を依頼する
被害届を提出したとしても、必ずしも警察が刑事事件として立件してくれるとは限りません。警察は多忙なので、深刻な被害が発生しているか、数多くの被害者が発生している事案でなければ動いてもらえないことも多いものです。
しかし、「告訴状」を受理した場合には、警察は捜査を開始しなければならない法律上の義務を負います。
それだけに告訴状はなかなか受理してもらえないという問題もあるのですが、弁護士や司法書士という法律の専門家に刑事告訴の手続きを依頼することも可能です。
警察も弁護士・司法書士からの告訴であれば簡単にあしらうことは難しいので、告訴状が受理されて捜査の結果、闇金が逮捕される可能性が高まります。
闇金の利用者が逮捕されるケース
闇金の利用者は、ただお金を借りて返済するだけなら何ら犯罪は成立せず、逮捕されることはありません。しかし、返済できない場合に闇金から以下のような犯罪行為への加担を要求されることがあります。
返済が苦しくても、以下の行為をすると逮捕されることがあるので要注意です。
銀行口座等を譲渡した場合
闇金は返済できなくなった利用者に対して、返済の免除または利息の軽減と引き換えに、銀行口座やキャッシュカードの譲渡を求めてくることがあります。
なぜなら、自己名義の銀行口座やキャッシュカードを営業に使用していると、そこから足がついて警察に逮捕される恐れがあるからです。
闇金に銀行口座やキャッシュカードを譲渡すると犯罪収益移転防止法違反の罪が成立し、「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方」が科せられます。
携帯電話を譲渡した場合
同じ理由で、闇金が返済できなくなった利用者に対して携帯電話の譲渡を求めてくることもあります。
闇金に携帯電話を譲渡すると携帯電話不正利用防止法違反の罪が成立し、「50万円以下の罰金」が科せられます。
出し子や受け子をさせられた場合
その他にも、闇金が返済できなくなった利用者に対して、他の利用者から振り込まれたお金を引き出したり(出し子)、他の利用者の自宅などにお金を受け取りに行ったりするように求めることもあります。なぜなら、これらの場面で警察に通報されるなどして逮捕される恐れもあるからです。
これらの行為をすると闇金の営業を手伝ったことになるため、出資法違反などの共犯として逮捕されることにもなりかねません。
また、闇金業者の中には、特殊詐欺などの犯罪行為を行っている業者もあり、返済できなくなった利用者に対して、その出し子や受け子の役割を果たすように求めてくることもあります。
特殊詐欺を手伝った場合は、詐欺罪で逮捕される可能性があります。詐欺罪の刑罰は、「10年以下の懲役」です。
業者が逮捕されなくても闇金問題の解決は可能!
闇金から過激な取り立てや悪質な嫌がらせを受けたときは、業者の逮捕が期待できなくても他の方法で根本的に解決することが可能です。
闇金に返済する必要はない
まず、闇金に対しては利息だけでなく元金も返済する必要がないということを知っておきましょう。
なぜなら、出資法違反という犯罪に該当する高金利を伴う貸付は民事上も違法で無効だからです。闇金から受け取ったお金は「不法原因給付」に該当し、法律上、返還する義務はありません。
取り立てを止めるためには弁護士・司法書士に依頼を
返済義務がないとはいっても、ただ返済を拒絶するだけで闇金の取り立てが止まるはずはありません。取り立てを止めるためには、弁護士や司法書士という闇金問題の専門家に依頼することを強くおすすめします。
弁護士・司法書士は被害者の味方として闇金に取り立てを止めるように警告し、交渉してくれます。
交渉で解決できない場合には、闇金が使用している銀行口座を凍結させたり、携帯電話の使用を停止させたりする手続きをとるので、闇金は営業できなくなってしまいます。
そのため、弁護士・司法書士が間に入ればほとんどの場合、闇金の取り立ては止まります。
まとめ
闇金の営業はほとんどの場合、それ自体が犯罪行為です。理論上はいつでも警察に逮捕してもらうことが可能ですが、実際に逮捕してもらえるケースは氷山の一角に過ぎません。
業者の逮捕にこだわるよりは、弁護士・司法書士のサポートを受けて闇金の取り立てを止める方が現実的な効果が期待できますし、根本的な解決方法にもなります。
闇金の取り立てに悩まされている方は、弁護士・司法書士の力を借りて取り立てを止め、平和な生活を取り戻しましょう。