- 闇金への返済が遅れると法外な延滞金を請求されることがある
- 闇金の延滞金は債務整理をしても解消できない
- そもそも闇金の貸付は無効なので返済する必要はない
- 弁護士・司法書士への依頼で闇金の取り立てを止めることができる
一般的に借金の返済を滞納すると延滞金(遅延損害金)が発生し、返済額が増えてしまいます。闇金の場合はただでさえ金利が高いので、返済が遅れるといったいどれくらいの延滞金を請求されるのかと気になる方も多いことでしょう。
実際のところ、闇金に手を出すと、ほんの数万円を借りただけでも信じられないほど高額の返済を要求されます。そして、支払えなければ厳しい取り立てや悪質な嫌がらせを受け、仕事にも生活にも支障をきたしてしまいかねません。
そこで今回は、闇金への返済が遅れた場合にどれくらいの延滞金がかかるのか、それを支払えない場合はどうすればよいのかについて、わかりやすく解説します。
そもそも延滞金とは?
まずは、延滞金とはどのようなものであるのかを確認しておきましょう。ここでは「合法な延滞金」つまり、正規の貸金業者からの借金を滞納した場合に発生する延滞金についてご説明します。
正確には遅延損害金という
借金の返済が遅れた場合に請求されるお金のことを、正確には「遅延損害金」といいます。「延滞金」というのは、税金などの公租公課を滞納した場合に国や地方自治体などから請求される割増金のことを意味する言葉です。
ただ、遅延損害金という言葉も法律用語ではなく、俗に「遅延利息」「延滞利息」「延滞金」などと呼ばれることもあります。ですので、この記事では借金の遅延損害金のことを「延滞金」と呼ぶことにして、解説を続けます。
貸金業者から請求される延滞金は年20%が上限
遅延損害金とは、約束した期限までに借金を返済できなかった場合にペナルティーとして課せられる損害賠償金の一種です。そのため、一般的に延滞金の金額は通常の利息よりも高い利率で計算されます。
ただし、延滞金の上限利率は利息制限法で定められていて、貸金業者の場合は年20%が上限です。消費者金融からの借入でも、銀行カードローンでも、年20%を超える割合で延滞金を請求されることはありません。
利息と延滞金が二重にかかることはない
利息と延滞金が二重にかかることはないということも覚えておきましょう。
利息とは、お金を貸すというサービスを提供した側が、その対価として受け取る利益のことです。返済できなかった場合のペナルティーである延滞金とは、発生する場面がことなるのです。
まだ滞納していない元金には利息がかかり、滞納した元金には利息ではなく延滞金がかかるようになる、という仕組みになっています。
闇金から請求される延滞金はどれくらい?
それでは、闇金の場合は延滞金がどうなっているのかをみていきましょう。
延滞金を請求しない闇金も多い
実は、闇金の場合は返済が遅れたからといって延滞金を請求されないこともよくあります。
その理由は、闇金が良心的だからというわけではなく、最初から法律を無視した膨大な金利で利息を請求しているからです。
借金の上限金利は、借入残高に応じて年15~20%までと利息制限法で定められています。しかし、闇金はこれを無視して「トイチ」「トサン」「トゴ」といった暴利を要求してきます。年利に引き直すと以下のようになります。
金利 | 内容 | 年利換算 |
---|---|---|
トイチ | 10日で1割 | 365% |
トサン | 10日で3割 | 1,095% |
トゴ | 10日で5割 | 1,825% |
これだけ法外な利息を要求しているのですから、滞納した場合に延滞金を加算してもあまり意味がないともいえます。
利用者が滞納した場合、闇金は何%の延滞金を支払ってもらうかという細かい計算をするのではなく、少しでも多くのお金をむしり取るために利用者を脅したり、嫌がらせをしたりするというのが実情です。
利息に加えて延滞金を請求する闇金もいる
中には、法外な利息に加えて延滞金を請求してくる闇金もいます。ただ、最初から法律を無視した貸付なので、延滞金の金額も法律上のルールとは無関係に、さまざまな金額を請求してきます。
延滞金を請求してくる場合は、「元金の○%」という計算によるのではなく、「1日につき○万円」という計算によることが多いです。1日あたり1万円~数万円を要求されるケースが多いようです。
闇金への延滞が続くとどうなる?
合法な貸金業者への返済を滞納した場合には延滞金を加算され、払えなければ法律に従って請求手続きが進められます。それに対して、闇金の場合は法律を無視して、以下のように悪質な手段で返済を迫られることになります。
最初の対応は穏便なことも多い
闇金への返済が1日でも遅れると厳しい取り立てをしてくる業者もいますが、最初は穏便に対応してくる業者も多いものです。
闇金の目的は少しでも多くのお金をむしり取ることであり、そのために有効な戦略として利用者を脅した方がよいのか、穏便に対応した方がよいのかは、業者によって考え方が異なります。
穏便な対応としてよくあるのは「ジャンプ」を提案してくることです。
闇金のジャンプとは、返済期日に利息だけを支払い、元金の返済は先延ばしにすることをいいます。
例えば、5万円をトサンで借りた場合、10日後には3割の利息がついて総額6万5,000円を返済しなければなりません。ジャンプをすると、10日後の支払いは利息分の1万5,000円だけで済み、その10日後に6万5,000円を支払うという仕組みです。
通常、初回の利息は元金から天引きされていますので、3回ジャンプすれば4回分の利息を支払うことになります。上記の例で4回分の利息といえば6万円となり、既に元金を上回っています。
このようにして、闇金は脅迫的な手段を使わなくても、さらにいえば延滞金を請求しなくても、不当に大きな利益を獲得しているのです。
延滞が続くと取り立てが激化する
最初は穏便に対応する闇金であっても、延滞が続くと取り立ては激化します。返済期日に利息も支払えない場合や、取り立ての電話やメールを無視した場合も、途端に厳しい取り立てを受けることになります。
取り立ての手段は主に電話やメールですが、昼夜問わず、頻繁に連絡をしてきます。1日に100件以上の電話やメールが来ることも珍しくありません。
電話に出ると、「何をしてでも金を作れ」「返さないと家に火をつけるぞ」「家族がどうなっても知らないぞ」というように脅迫的な請求を受けることもあります。頻繁に連絡がくるので仕事や生活に支障をきたすことになります。
このようにして利用者を精神的に追い込むことによって、お金を支払わせようとするのが闇金の目的です。
家族や職場にも嫌がらせをされる
利用者本人に請求してもすぐに支払えないとみると、闇金は家族や職場にも頻繁に連絡するようになります。
通常は「○○さんが借りたお金を返さないので、返すように伝えてください」と言うだけです。しかし、家族に対しては脅せば支払いそうだとみると、肩代わり返済を要求してくることもあります。
職場では、何度も闇金からの電話がかかってくると業務が妨害されるため、退職に追い込まれることもあります。会社から退職を迫られなくても、職場にいづらくなって自ら退職する人も少なくありません。
闇金が家族や職場に嫌がらせをする目的も、利用者本人が困ることをして精神的に追い込むことにより、お金を作らせて支払わせることにあります。
犯罪行為に加担させられることもある
闇金の厳しい取り立てや悪質な嫌がらせ行為は基本的に返済するまで続きますが、ときには犯罪行為を手伝うことと引き換えに返済が免除または軽減されることもあります。
携帯電話や銀行口座の譲渡を求められたり、特殊詐欺の受け子や出し子などをやらされることが多いです。
後で詳しくご説明しますが、闇金の貸付は犯罪行為なので、闇金業者は足がつかないように第三者名義の携帯電話や銀行口座を使用して営業しています。普通は第三者名義の携帯電話や銀行口座など入手できないので、返済に困った利用者から提供させるのです。
また、特殊詐欺では末端の受け子や出し子は逮捕されやすいものの、黒幕はなかなか逮捕されないのが実情です。そこで、返済に困った利用者に受け子や出し子を実行させて、自分たちは逮捕されることなく不当な利益を得ようとします。
これらの行為はすべて犯罪であり、闇金から迫られたとしても手を出すと逮捕される可能性が十分にあります。闇金から「借金をチャラにしてやる」「利息を負けてやる」などと言われたときは、裏があると考えるべきです。
闇金の延滞金は債務整理で解消できる?
合法な貸金業者の延滞金は、債務整理をすれば解消できます。
任意整理では既に発生した延滞金を免除してもらうことは難しいですが、手続きをすることで延滞金の発生がストップし、今後の利息も免除してもらえるので、返済の負担が軽減されます。
個人再生では元金・利息・延滞金を含めて大幅に減額されますし、自己破産ではすべての借金の返済義務が免除されます。
しかし、闇金の延滞金はこれらの債務整理をしても解消できません。
なぜなら、闇金は最初から法律など無視しており、債務整理手続きにも従わないからです。闇金に対して「自己破産するので取り立てを止めてください」などと言っても、「関係ない」と言われ、厳しい取り立てや悪質な嫌がらせを受けることになります。
闇金に返済する必要は一切ない!
実は、闇金からの借金は一切、返済する必要がありません。
闇金は無登録で貸金業を営んでいる上に、出資法で定められた上限金利をはるかに超える金利で貸付を行っていることから、その貸し付け契約は犯罪行為であり、民事上も無効だからです。
そして、最高裁判所では2008年6月に、著しく高利の貸付という形をとった闇金の貸付は反倫理的な不法行為の手段であることから、貸し付けられたお金は「不法原因給付」に当たるという旨の判決が下されています。
不法原因給付とは、犯罪行為など反倫理的な行為の一環として給付された経済的利益のことであり、この場合、給付した側がその返還を求めることはできません。
わかりやすくいうと、闇金が貸付として利用者に渡したお金は不法原因給付に該当し、そのため、闇金には利用者に支払いを請求する法律上の権利が認められないということになります。
その結果、利用者は利息や延滞金だけでなく、元金についても返済すべき法律上の義務がないのです。
闇金の取り立てを止めるための対処法
闇金に対して返済する義務がないのですから、そもそも債務整理の対象となりません。そのため、闇金の取り立てを止めるためには別の対処法が必要です。具体的には、以下のように対処していくことになります。
電話やメールは無視しないこと
返済義務がない以上、本来であれば請求を無視すれば足りるのですが、闇金からの電話やメールを無視することはおすすめできません。
なぜなら、利用者本人が無視すると家族や職場に対して嫌がらせが行われ、これらの人たちに迷惑をかけてしまうからです。本人にとっても、家庭生活や社会生活が破壊されてしまう恐れがあります。
1円でもお金を支払わないこと
闇金からの電話やメールには対応すべきですが、そこで脅しに負けてお金を支払ってはいけません。
少しでもお金を支払うと、闇金から「この利用者は脅せば支払うカモだ」と判断されてしまい、次々に法外な利息を要求されることになるからです。
電話やメールによる取り立てに対しては、「違法なお金は支払いません」という回答をすべきなのです。
警察に相談する
闇金への返済を拒絶すると、当然ながら取り立てが激化し、悪質な嫌がらせも行われます。闇金の取り立てや嫌がらせを自力で止めることは極めて困難なので、しかるべきサポートを受けることが必要です。
身の危険を感じるような脅迫を受けたり、既に多額の利息を支払っているような場合は、犯罪被害を受けているといえます。その場合は警察に相談しましょう。
闇金は逮捕を恐れているので、警察が動けば取り立てが止まる可能性が高いです。
弁護士・司法書士に依頼する
もっとも、警察に相談してもすぐには動いてくれないケースも少なくありません。電話で脅迫的な取り立てを受けていても、実害が発生していなければ「民事の問題」と言われ、取り合ってもらえないこともあります。
確実に闇金の取り立てを止めるためには、弁護士や司法書士という闇金問題の専門家に対応を依頼することがベストです。
弁護士・司法書士は闇金被害者の味方として、依頼を受ければすぐに動いてくれます。
弁護士・司法書士への依頼で闇金の取り立てが止まる理由
なぜ、弁護士・司法書士に依頼するだけで闇金の取り立てが止まるのでしょうか。理由として、以下のことが挙げられます。
- 闇金は専門家による法的措置を恐れているから
- 弁護士、司法書士に依頼した利用者にお金を支払わせることは困難だから
- 携帯電話や銀行口座を使えなくなるから
弁護士・司法書士は、依頼者に代わって刑事告訴や民事裁判といった法的手続きをとることができます。闇金もそれを知っているので、専門家が介入しただけで警戒して取り立てを止めるケースがよくあります。
また、闇金は効率よくお金を巻き上げたいのですから、脅せば支払うターゲットを見つけて追い込みをかけます。弁護士・司法書士に依頼した利用者からお金を巻き上げることは困難であることを、闇金も知っています。そのため、取り立てを諦めて別の利用者にターゲットを移していきます。
それでも取り立てが止まらない場合、弁護士・司法書士は闇金が使用している携帯電話の利用停止や、銀行口座の凍結などの手続きをとります。こうなると闇金は営業できなくなるため、取り立てを止めるのです。
まとめ
闇金の延滞金が気になる方は多いと思いますが、それ以前に闇金は法外な利息を要求し、払えなければ厳しい取り立てや悪質な嫌がらせをしてくるので、決して手を出してはいけません。
もし、既に闇金から借りている場合は、すぐに警察や弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。
自力で闇金に立ち向かおうとすると、家庭生活や社会生活が破壊されてしまう可能性が極めて高いので、弁護士・司法書士の力を借りて正しく対処していきましょう。