- 取り立て屋には合法な業者と違法な業者とがいる
- 闇金の取り立て屋は悪質な取り立てや嫌がらせをしてくる
- 闇金の取り立て屋から請求を受けても返済する義務はない
- 取り立て屋への対応は弁護士・司法書士に任せた方がよい
借金の返済が苦しくなると誰しも、「このままでは取り立て屋がやってくるのではないだろうか」と不安になることでしょう。
取り立て屋には合法な業者もいれば違法な業者もいます。合法な取り立て屋であれば、法律に則って裁判を起こされることはあっても、悪質な取り立てを行うことはありません。
しかし、闇金の取り立て屋は法律を無視して脅迫的な取り立てや、悪質な嫌がらせをしてくるので注意が必要です。
この記事では、取り立て屋とはどのような業者なのかを確認した上で、闇金の取り立て屋が行う悪質な手口、そして被害を受けたときの対処法についてわかりやすく解説します。
取り立て屋とは
取り立て屋とは、金銭債務を支払わない債務者に対して支払いを請求し、お金を回収する仕事に従事する人のことを総称する言葉です。
広い意味では税金や公共料金、さまざまな契約に基づく代金の未払いを集金する人のことを取り立て屋といっても間違いではありません。
ただ、一般的に「取り立て屋」というときは、借金の返済を滞納したときに自宅などに訪問してきて返済を迫る人のことを指します。
取り立て屋の種類
借金の返済を迫る取り立て屋についても、次の4種類に分類することができます。
貸金業者等の担当者
消費者金融などの貸金業者やクレジットカード会社、銀行などの回収担当の従業員は、滞納している債務者に対する取り立てを行います。
以前は「サラ金」による悪質な取り立てが社会問題となったこともありましたが、現在では貸金業法で借金の取り立て方法が厳しく規制されています。正規の貸金業者等は法律を遵守するので、悪質な取り立てを行うことはありません。
また、貸金業者等にとって債務者の自宅等にまで出向いて返済を請求することは費用対効果が乏しいと考えられているため、担当者が訪問してくることもほとんどないようです。
債権回収会社
債権回収会社とは、未払いとなった金銭債務の回収業務を専門的に行う会社のことです。悪質なイメージを持たれることも少なくありませんが、法務大臣の認可を受けて営業している正規の業者です。
以前は弁護士または認定司法書士(債権額が140万円以内の事案に限ります。)でなければ債権回収の代行業を行うことはできませんでしたが、1999年に施行された「債権管理回収業に関する特別措置法」(通称:サービサー法)に基づき債権回収会社という存在が認められるようになりました。
近年では消費者金融やクレジットカード会社の中にも、未払い債権の回収業務を自社で行うのではなく、債権回収会社に委託または債権譲渡するところが増えてきています。
そのため、貸金業者等からの借金を滞納していると債権回収会社から取り立てを受けるケースが多くなっています。
債権回収会社は違法業者ではないので、法に反するような悪質な取り立ては行いません。ただし、債権回収会社からの連絡を無視していると、担当者が自宅や職場などに訪問してくる可能性はあります。
弁護士・司法書士
貸金業者等の中には、債権回収会社ではなく弁護士や認定司法書士(債権額が140万円以内の事案に限ります。)に債権回収を依頼するところもあります。
弁護士・司法書士は当然ながら法律を守りますので、悪質な取り立てを行うことはありません。
通常、文書による支払い請求や電話による交渉を経て、債権を回収できる見込みが薄いと判断すれば裁判や強制執行の手続きを粛々と進めていきます。弁護士・司法書士が突然、自宅などにやってくることもまずありません。
闇金
以上の取り立て屋はあくまでも法律に則って取り立ての手続きを進めますが、闇金だけは別です。
闇金は最初から法律を無視して営業を行っていますので、取り立てにおいても違法な手口を使って借り手を追い込んできます。
昔ながらの強面で脅迫的に返済を迫ってくる取り立て屋がいるとすれば、闇金の取り立て屋に限られます。
闇金の取り立て屋が使う手口
闇金の取り立ての手口は、正規の貸金業者や債権回収会社の場合とは根本的に異なります。
違法な闇金業者は裁判などの法的手段で債権を回収できないため、強行的な手口で返済を迫ってくるのです。
頻繁かつ執拗な電話による催促
闇金への返済が1日でも遅れると、催促の電話が頻繁かつ執拗にかかってきます。1日に数回という頻度ではなく、100回以上かかってくることも珍しくありません。
貸金業法では夜9時以降、翌朝8時までは正当な理由がない限り取り立てが禁止されていますが、闇金の取り立て屋は深夜や早朝でもお構いなしに催促の電話をかけてきます。
その狙いは、借り手を精神的に追い込むことです。「どうにかしてお金を工面して返済しなければ電話が止まらない」という気持ちにさせて、お金をむしり取ろうとしているのです。
職場や親族等への電話による催促
闇金は融資の際に審査と称して、借り手本人の住所や連絡先だけでなく、職場や家族、親戚、友人・知人の連絡先など、ありとあらゆる個人情報を聞き出しています。
そして、本人に催促してもお金を回収できない場合には、これらの人たちに対しても頻繁に電話をかけます。家族や親戚に対しては返済を迫ることもあります。
その狙いは、やはり借り手を精神的に追い込むことにあります。自分に電話がかかってくるだけなら我慢できても、他の人にまで迷惑はかけられないという気にさせて、お金を工面するように駆り立てるという手口です。
他の闇金から借りさせる
闇金の目的は借り手を苦しめるということよりも、お金を少しでも多く支払わせることにあります。
そのため、お金を工面できそうにない借り手に対しては他の闇金業者を紹介し、そこから借りたお金で返済するように指示することもあります。
借り手は闇金の恐ろしさを認識していても他に解決手段がないと考えてしまい、次々に闇金に手を出して深みにはまってしまうのです。
犯罪行為への加担を要求する
闇金は返済できない借り手に対して、犯罪行為を手伝うことを強要してくることもあります。その見返りとして利息を免除する、借金を帳消しにするなどと提案されるため、応じてしまう借り手が後を絶ちません。
携帯電話・スマホや銀行口座を譲渡するように求められたり、特殊詐欺の受け子や出し子として動くように求められることが多いです。
これらの行為はいずれも犯罪であり、たとえ実行した借り手が違法だと知らなかったとしても、警察に発覚すると逮捕される可能性が高いです。
末端の実行者が逮捕されても闇金業者は逮捕されないことが多いので、これも悪質な手口であるといえます。
暴力行為はほとんどない
取り立て屋といえば、お金を払えない債務者を脅すだけでなく、殴る・蹴るといった暴行をはたらいてお金を巻き上げるというイメージが強いかもしれませんが、最近は闇金の取り立て屋でも暴力行為を行うことはほとんどありません。
借り手と対面して暴力行為をはたらけば、身バレして逮捕されるリスクが高くなります。闇金は何よりも警察に検挙されることをおそれていますので、基本的に身バレするようなリスクは犯さないものです。
闇金の取り立て屋による嫌がらせの実態
以下の行為は、およそ「取り立て」とは呼べない嫌がらせ行為ですが、闇金の取り立て屋は借り手を精神的に追い込む目的で、このような嫌がらせ行為も行ってきます。
個人情報をネットで拡散される
最近急増している嫌がらせ行為は、借り手の個人情報をインターネット上に拡散するというものです。
SNSや掲示板などに、顔写真や住所・氏名などとともに、「この人は借りたお金を返さないドロボーです」などと投稿します。
女性の借り手から担保と称して裸の写真を入手している場合には、それをインターネット上で拡散してしまいます。
そして、「削除してほしければお金を払え」と迫ってくるのです。
近隣の住民に悪評を流される
次に最近増えている嫌がらせ行為は、近隣の住民に悪評を流されるというものです。
借り手の自宅の近隣住民に対して、「○○さんに貸したお金を返してもらえないので伺ったのですがお留守のようで…○○さんを見かけたら連絡するように伝えてもらえませんか」などと言って回る手口です。
近所の人たちに対してこのような悪評を流されると、借り手はそこに住みづらくなり、やはり精神的に追い込まれてしまいます。
近年は闇金に対する法規制や警察の取り締まりが強化されてきているので、闇金の取り立て屋が行う嫌がらせ行為も強行的なものではなく、ソフトなものが主流となりつつあります。
自宅の玄関等に貼り紙をされる
以下4つの嫌がらせ行為は、以前は頻繁に見受けられましたが近年では減ってきています。とはいえ、現在でも行われる可能性はあるのでご紹介します。
ひとつ目は、自宅の玄関や壁などに「金を返せ」「ドロボー」などと罵倒する言葉で貼り紙をされるというものです。
このような貼り紙をされると近隣住民の手前、やはり精神的に追い込まれてしまいます。
自宅の前で大声を出される
借り手の自宅の前で闇金の取り立て屋が「金を返せー」「ドロボー」などと、大声を張り上げることもあります。
貼り紙のケースと同様、やはり借り手はそこに住みづらくなってしまいます。
救急車や消防車を呼ばれる
闇金の取り立て屋が消防署に虚偽の通報をし、借り手の自宅などに突然、救急車や消防車を呼ぶこともあります。
このような嫌がらせ行為を受けると、借り手は迷惑を受けるだけでなく、恐怖を感じてしまいます。
大量のデリバリーを注文される
闇金の取り立て屋が勝手に注文した出前の寿司やデリバリーのピザなどが、大量に借り手の自宅に届けられることもあります。
この場合も、救急車や消防車を呼ばれるケースと同様、借り手は恐怖を感じてしまうものです。
闇金から悪質な取り立てを受けたときの対処法
闇金から悪質な取り立てを受けたとき、多くの借り手は脅しに負けて何とかお金を工面し、支払おうとします。しかし、それでは闇金の取り立て屋の思うつぼです。
以下のような正しい対処法を知れば、闇金の取り立てや嫌がらせに怯える必要はありません。
返済義務はない
まず、闇金から借りたお金を返済する義務はないということを知っておきましょう。
闇金からの借金は年利何百%にもおよぶ法外な金利を伴うことが通常で、年利千%を超えることも少なくありません。
しかし、年利109.5%を超える金利を伴う貸付は「出資法違反」という犯罪行為であり、民事上も契約は無効となります。
そして、闇金から受け取ったお金は「不法原因給付」に該当するため、闇金に返還請求権は認められません。その結果、借り手は返済する必要がないのです。
闇金はこのことを知りつつ、借り手を精神的に追い詰めてお金を支払わせようとしてきます。脅しに負けて返済すると「カモ」と判断され、次々にお金を要求されることになります。
闇金の取り立て屋から逃れるためには、お金を1円も支払わないという基本姿勢が必要です。
警察に相談する
闇金から借りたお金を返済せずに放置していると、悪質な取り立てや嫌がらせを受けてしまいます。その場合には、警察に相談しましょう。
ただ、警察は証拠がなければ動いてくれないこともあります。脅迫的な電話の音声を録音したり、個人情報をネット上に投稿された場合にはスクリーンショットで保存するなどして証拠化し、被害届を提出するようにしましょう。
警察が介入すると、一部の闇金業者は取り立てや嫌がらせ行為をやめます。
弁護士・司法書士に相談する
警察に相談しても「事件性が乏しい」として取り合ってもらえなかったり、多忙を理由としてすぐに動いてもらえないケースも少なくありません。そんなときは、弁護士または司法書士に相談することを強くおすすめします。
弁護士・司法書士は依頼を受けると、すぐに闇金業者に対応し、取り立てや嫌がらせ行為をやめるように働きかけてくれます。
闇金の取り立て屋に対して弁護士・司法書士ができること
弁護士・司法書士は警察とは異なり、相談者・依頼者の味方であり、依頼を受ければ即日、解決のために動き出してくれます。
まずは闇金業者に連絡し交渉します。多くの場合は、この段階で取り立てや嫌がらせ行為が止まります。闇金業者は、法律の専門家に依頼した借り手からお金を回収することの困難さをよく知っていますし、刑事告訴などの法的措置も恐れているからです。
それでも取り立て嫌がらせ行為が止まらない場合には、法的手段を使って闇金業者の銀行口座を凍結させたり、携帯電話を強制的に解約させたりします。こうなると闇金業者は営業ができなくなりますので、ほとんどの場合は取り立てや嫌がらせ行為をやめます。
必要に応じて、刑事告訴の手続きも弁護士・司法書士が代行します。
さらに、他にも借金を抱えている場合には、債務整理も含めて最適な解決方法を提案してくれます。弁護士・司法書士に債務整理を依頼すれば、複雑な手続きを全て任せて、借金問題を一挙に解決することも期待できます。
まとめ
法律に則った「取り立て屋」から請求を受けた場合は、債務整理などを検討する必要はあるにせよ、悪質な取り立て嫌がらせ行為を受けることはありません。
しかし、「闇金の取り立て屋」から請求を受けた場合は危険です。一人で対応しようとすると精神的に追い込まれてしまい、深刻な被害を受ける可能性が高いです。
どのような取り立て屋から請求を受けた場合でも、法律の専門家である弁護士・司法書士のサポート受けて解決することが可能です。
困ったときは一人で抱え込まず、弁護士・司法書士の力を借りて解決を図りましょう。