コンテンツスパムは悪だが、コンテンツを検索最適化させることは悪ではない。

content-spam

2016年のSEO界隈のニュースでは、Googleの「ペンギンアップデートの自動化」、「AMPの導入」、「モバイルファーストインデックスの導入発表」などの動きがありましたが、現場でSEO施策を担当する者として印象に残った出来事は、これらのテクニカルな要素よりも、SEOで成果を出すためにコンテンツマーケティングを導入する企業の増加でした。

当社にも多くの相談が寄せられましたが、2016年はSEOとコンテンツマーケティングという2つのマーケティング活動がより密接な関係になった年だったと感じます。

そのコンテンツとSEOに関して、年の瀬の最後に大きな事件が起きました。ご存知のとおり、例の“プロ野球横浜ベイスターズのオーナー会社”のキュレーションサイトの問題です。「根拠のない医療情報」、「モラルなき検索キーワード設計」、「他サイト記事の無断転用」、「クラウドライターを安価に使い倒し」など、次から次に倫理に反するような事実が出てきて社会問題にもなりました。

この問題の功罪に関しては、昨年末すでにいろんな方面の方が論じていますので、ここであらためて解説するつもりはありませんが、この事件を通してSEOが良くも悪くも世間で注目されることになりました。

今回は、この問題を通して見えてきたコンテンツと検索エンジン最適化の課題などについてまとめます。

コンテンツスパムが拡大再生産され続けてきた2016年

ここ数年、SEOで成果を出すためにはコンテンツの強化が不可欠という文脈のもと企業もコンテンツマーケティングの導入に積極的になりました。そのニーズを追い風に、コンテンツマーケティング会社、SEO業者、コンテンツプロバイダー、クラウドソーシングなどがこぞって、コンテンツサービスを提供しました。

一方で業者を使わずに自社内でコンテンツ制作をおこなうインハウスSEOを導入した企業も珍しくなくなりました。例の会社は自社のWEBメディア事業にインハウスSEOを導入した代表的な企業だったと言えるでしょう。

今回の一件では、同社の倫理に反する過剰なコンテンツ施策が大きくクローズアップされましたが、しかし、その他の企業の中にもコンテンツスパムと呼べるような信用性が低い低品質コンテンツを量産している会社があること、そしてそれをサービスとして提供している企業があることも顕在化しました。

コンテンツスパムはこれから本格化へ

かつてのSEO対策では、被リンクを増やすためだけの目的で低品質な記事で構成されたサテライトサイトが量産されていた時代がありました。このような行為を被リンクスパムと呼びましたが、現在は他サイトのコンテンツ情報を無断で拝借し記事を生成しSEO対策をおこなうコンテンツスパムというものに様変わりした感があります。

実はこのコンテンツスパムはこれから本格化することが予想されます。すでにWEB上には文章作成ツール、リライトツールなどのサービスを提供している会社があり、精度はまだまだのようですが、一部のコンテンツプロバイダーやアフィリエイターの間ではすでに使用されています。

これから本格的なAI時代を迎え精度が高いツールの登場が予想されます。これに対してGoogleはどのような対応をとるのでしょうか?

今の段階では分かりませんが、一つ言えることはAIには作れない人間の手が入った独自性が高いコンテンツが有利になる可能性が高いということでしょうか。

Googleは未だ発展途上

google

「例のサイトはなぜ検索エンジンで圧倒的に検索上位化ができたのでしょうか?」このような質問を受けることがあります。

それは、言ってしまえば「Googleアルゴリズムに最適化できていたから」ということになりますが…そうなるために自社の持つアドバンテージを生かし、さらに徹底したコンテンツ施策をおこなっていたということが挙げられます。

具体的には、有名企業サイトゆえに「ソーシャル拡散」、「自然リンク獲得」が狙いやすいというアドバンテージ、また約7000文字もの長文記事を1日に100本もリリースするという桁外れのコンテンツ施策を実行する予算とマネージメント力があったのだと思います。

盗用(パクリ)、検索キーワード設計などに大きな問題はあったものの、コンテンツの重複を避けてそれなりにしっかりまとめられた記事も中にはありました。現在のSEOに不可欠なコンテンツ、被リンク、ソーシャルという3つの施策が噛み合った結果だったと言えるでしょう。

このようなパクリサイトがなぜ検索結果を専有するのかという素朴な疑問も聞かれましたが、Googleは検索ユーザーにとってより良い検索結果が出るように日々アルゴリズムを改善していますが、コンテンツスパム的なものに対して未だ対応できてないという結果ゆえです。


SEO対策をするのは悪くない

さて、今回の事件の報道の中には「意図的にSEO対策をおこない検索上位化させていた…」というような、あたかもSEOをおこなうこと自体が悪いような文脈で書かれた記事がいくつか見られました。

検索エンジンはその社会的な影響力もあってか、公的なモノに近いという目線で見る人がいるのは分かります。(Googleの市場占有率が高いためということもありますが…)しかし、検索エンジンは「Google」にしても「Bing」にしても米国の1企業が営利目的で作ったものです。

そのGoogleにしてもWEBサイトオーナー向けに検索エンジン最適化スタータガイドというものを用意しており、検索上位化させるためのテクニックについて解説しています。このようにGoogleもSEO対策をすることを推奨しています。

SEO対策は、検索で大きなシェアを持つGoogleエンジンに対してWEBサイトを最適化させるというマーケティング活動の一つです。

WEBサイトを多くの人に利用してもらうためにSEO対策をおこなうことは重要な企業活動と言えます。ただし倫理やモラルに反するようなコンテンツ施策はもちろん反対です。

まとめ

今回のキュレーションサイトの問題は残念な出来事でしたが、コンテンツ制作のあり方について大きな問題提起となった事件ではなかったでしょうか。

この問題を受けて、Googleのアルゴリズムがどのように変化するのか予測はできませんが、他サイトからの情報を引用した切り貼りのようなコンテンツは評価されなくなるのは間違いなく、正しい情報とともに「独自性」が問われるようになると考えられます。

当社では、SEO、コンテンツマーケティングに携わるものとして2017年はこれまで以上に「正しいSEO施策」、「検索ユーザーに役立つコンテンツ」、「オリジナリティ」といものにこだわっていかなくてはならないと強く思う次第です。