- 偽装質屋は闇金である
- 質屋の特権である年利109.5%で融資する
- 年金手帳を要求されたら要注意
- 偽装質屋の被害にあった場合は弁護士や司法書士に相談
2009年頃から質屋を装って違法融資をおこなう「偽装質屋」による被害が警察や消費センターなどに報告されています。
実はこの偽装質屋は非常に高い金利で利用者のお金を騙し取る闇金業者です。
もしも質屋を利用する際には、「偽装質屋ではないか?」「安全な業者か?」を確認したほうがよいでしょう。
この記事では偽装質屋とは何か、悪質な手口、一般の質屋との違い、被害にあった際の対処法を解説します。
そもそも質屋とは何か
偽装質屋を解説する前に、質屋についてご説明します。
質屋を簡単に言うと、担保が必要な消費者金融です。
質屋は質草(担保となる品物)を利用者から預かり、質草の査定額以内の金額で融資します。返済期限は3ヶ月で利率は1ヶ月につき3%~8%が一般的です。(年109.5%が上限)
期限までにお金を返済した場合は質草が利用者に返還されます。一方で返済しなかった場合は質草を売却して利用者が返済しなかった分の金額を回収します。これが質屋のビジネスです。
偽装質屋とは?その実態は闇金
偽装質屋は「◯◯質屋」「◯◯質店」と名乗っていますが、実際には質屋ではなく闇金です。質草の価値に関係なく融資するのが特徴で、さらには質屋の特権である109.5%の年利で融資します。
偽装質屋は質屋ではないため実際の上限金利は出資法の範囲である年20%以内にしなくてはなりませんが、実際には法定金利を超えて融資します。また、貸金業者として金融庁に登録していません。このことから、偽装質屋は法外な利息でお金を貸し付ける、いわゆる闇金だと判断できます。
【参考】『偽装質屋ヤミ金に関する会長声明』日本司法書士会連合会
偽装質屋の手口とは
偽装質屋は高い金利で融資して利用者の口座からお金を強制的に回収する違法業者です。ここでは偽装質屋の手口について説明します。
偽装質屋は質屋にのみ許された高金利で融資している
偽装質屋は上限金利が高い質屋の貸金方法を悪用する手口を用います。貸金業者は年利が20%までと出資法で定められていますが、質屋は年109.5%の利率が認められています(質屋営業法)。
偽装質屋は貸金業と質屋に適用される法律の違いを悪用し、質屋を装い利用者からお金を騙し取っているのです。
質屋 | 109.5% |
---|---|
貸金業 | 20% |
偽装質屋は高齢者を狙っている
偽装質屋のターゲットは高齢者で、特に年金以外に収入がない人を狙います。
収入が年金のみである場合、消費者金融からお金を借りる事が難しくなります。そこで「高齢者でも融資可能」などのチラシや掲示板の張り紙でお金に困った高齢者を誘いだします。
実際、消費生活センターに寄せられた偽装質屋の相談の7割が60歳以上となっています。
偽装質屋は質草ではなく年金を担保にする
偽装質屋は質草ではなく、年金受給額を見て融資額を判断します。偽装質屋も通常の質屋と同じように質草を要求しますが、融資額を判断するためではなく、あくまで質屋の体裁を取るために質草を求めます。
そのため、偽装質屋にとって質草の価値は関係なく実質的な担保は年金です。
年金口座からの自動引き落としにして何度も借りさせる
偽装質屋は年金支給日に利用者の年金口座から自動引き落としでお金を回収します。自動引き落としにすれば確実に回収できるからです。
年金を自動で引き落とされると収入が少なくなるため利用者は生活が厳しくなります。その不足分を補うためには再びお金を借りなければなりません。このように偽装質屋は利用者の年金を強制的に回収することで、利用者に何度も借りさせているのです。
偽装質屋の見分け方
偽装質屋の存在を知っていても騙される可能性はあります。もしも質屋を利用した際に以下のようなことがあった場合は、偽装質屋の可能性があるため利用を中止してください。
- 契約時に年金手帳や通帳を要求する
- 「質草は何でもよい」と言う
- 質屋の営業許可証が無い
- 年利が109.5%を超えている
年金手帳や通帳を要求する
偽装質屋は利用者に年金手帳や通帳を要求します。目的は自動引き落としの口座登録をして、利用者の年金を確実に回収するためです。しかし貸金業者が利用者の年金から返済を受ける目的で年金手帳・預金通帳を要求することは貸金業法に違反します。
したがって、質屋から「年金手帳が必要だ」と言われても、絶対に年金手帳を渡してはいけません。
「質草は何でもよい」と言う
偽装質屋は「質草は何でもよい」と利用者に持ち掛けます。その時点で正規の質屋ではなく偽装質屋だと断定できます。
質屋にとって質草は担保として重要なものなので、何でもいいはずがありません。仮に質屋が質草の価値以上の金額を融資して利用者が返済しなかった場合は質屋が損をします。そのため一般の質屋が質草に見合わない金額を融資することはありません。
質屋を利用する場合は質草の価値と融資額を比較してください。もしも質草に比べて融資額が高額な場合は偽装質屋の可能性が高いため、利用を中止すべきです。
質屋の営業許可証を持っていない
質屋として営業するためには公安委員会に届け出をおこない許可証を取得して、それを店内に見やすく表示する必要があります(質屋営業法)。そのため、正規の質屋では以下のようなプレートを店内に表示して許可を受けたことを証明しています。
偽装質屋の中には営業許可を取得している業者も存在していますが、無許可の質屋は確実に違法業者なので利用しないでください。
月利が9%を超えている
質屋の上限年利は109.5%、月利に直すと9.125%になります。そのため質屋を利用する際は月利が9%以内かどうかをチェックしましょう。
ただし、上限金利内の場合でも上限ギリギリの月利を設定する質屋には注意してください。多くの質屋では利率を月3~8%としていますので、月利が9%の質屋は偽装質屋の可能性があります。
偽装質屋の被害例
多くの高齢者が偽装質屋の被害に遭っていますが、これまで国民生活センターに寄せられた偽装質屋の相談例を参考までに紹介します。
・ポスティング広告を見て電話したら「質草は何でもいい」と言われた。ゴミ同然の時計を持っていき9万円を借りた。返済方法は年金支給日に口座から自動引き落としになった。返済金額が11万円以上で生活できない。どうしたらよいか。
・チラシで見た質屋に行ったら「年金を担保に融資できる」と言われ、借り入れした。返済は年金支給日に質屋に通帳を渡して、質屋が引き出す。生活にも困窮している。どうしたらよいか。
【抜粋】:国民生活センター
このように偽装質屋を利用してしまうと、生活は苦しくなってしまいます。高齢者の方にとって年金は大切な生活資金です。そのため、質屋を利用する際は、正規の質屋かどうかを注意して利用してください。
偽装質屋を利用してしまった場合の対処法
偽装質屋は人を騙して利益をあげる詐欺商法なので、いくら気をつけていても被害を受ける可能性があります。もし、被害にあった場合や、偽装質屋を利用したという心当たりがある場合は以下のような機関に相談してください。
- 国民生活センター
- 警察
- 弁護士、司法書士事務所
国民生活センターに相談する
国民生活センターでは消費者からの相談を無料で受け付けています。偽装質屋を利用してしまった場合は消費生活ホットライン「188」に電話をかけてみましょう。トラブルに対するアドバイスが貰えたり、弁護士などの専門家を紹介してくれます。
警察に相談する
偽装質屋から恐喝などの嫌がらせを受けている場合は警察に相談しましょう。警察が偽装質屋に迷惑行為を止めるように警告してくれる可能性があります。ただし警察は証拠が無いと動きにくいため、相手業者との電話を録音するなどした方が良いでしょう。
弁護士・司法書士に相談する
偽装質屋の問題を解決するために1番確実な方法が、弁護士・司法書士のような専門家に相談することです。弁護士・司法書士に依頼することで借金を返済しなくて済むだけでなく、これまで払った分を取り戻せる可能性もあります。これら専門家は被害者の代わりに偽装質屋と交渉したり、警察に被害届を出すなど様々なことをしてくれます。
そのため偽装質屋の被害に遭って困っているけど何をすれば良いのか分からないという場合は専門家に相談することがベストです。
まとめ
質屋のふりをして高齢者の年金を奪うのが偽装質屋です。質屋から「年金手帳が必要」、「質草は何でもいい」と言われた場合は注意が必要です。悪質な偽装質屋であり闇金業者に間違いありません。
もしも、偽装質屋を利用してしまった場合はすぐに弁護士・司法書士に相談してください。また、高齢者の親を持つ家族の方も自分の親が騙されていると感じたらできるだけ早く専門家に相談しましょう。