- 闇金の中には系列化している業者は多い
- 顧客の個人情報は系列の闇金業者の間で共有されている
- 系列の闇金からお金を借りると以前の借り入れの返済を迫られることもある
- 系列かどうかを問わず闇金には一切、手を出してはいけない
闇金の中には、系列化して相互に連携しながら運営し、莫大な違法収益を得ている業者も多いです。系列の闇金は組織化して悪質な貸付けと取立てをおこないます。
複数の闇金に借入れをした際に、それらの業者が系列店だった場合、そうでないケースよりもさらに深刻な被害に遭う可能性が高いため、注意しなければなりません。
この記事では、闇金の系列について、その仕組みやリスク、系列の闇金からお金を借りてしまったときの対処法などを解説します。
闇金の系列とは
闇金の系列とは、闇金同士が相互につながり、連携して運営している状態のことを指します。
金融業界では、消費者金融やクレジットカード会社が大手銀行の子会社となっているケースや、消費者金融とクレジットカード会社が業務提携を結んでいるケースなど、複数の会社が系列化している例が数多くあります。
闇金は無登録で貸金業を営む存在なので、法的に親会社・子会社の関係になっていたり、業務提携を結んでいたりするわけではありません。
しかし、経営者同士が裏で手を結び、事実上の系列店となっているケースは多々見受けられます。
闇金に系列がある理由
闇金に系列がある理由をひと言でいえば、営業を効率化して違法な収益を伸ばすためには、系列化することが有効だからです。
以下で、より詳しくみていきましょう。
顧客に関する情報を共有し、取り立てや勧誘に利用する
闇金の営業手法は、融資前に顧客から個人情報を聞き出し、融資後に返済が滞った場合には個人情報を悪用した取り立てにより、顧客を精神的に追い込んで多額の金銭の支払いを迫ることが基本です。
闇金側は、顧客の個人情報を詳細に把握すればするほど、さまざまな手段を用いて取り立てをしやすくなります。
とはいえ、顧客の個人情報を収集するためには、それなりの手間もかかります。しかし、系列店との間で情報を共有すれば、系列内の各業者は、その情報を取り立てに利用することが可能です。
また、氏名や住所、連絡先などの顧客リストが豊富にあればあるほど、融資の勧誘もしやすくなります。このような顧客情報を共有することにより、各業者が独自に営業するよりも、収益を伸ばす機会を増やせるのです。
返済が苦しくなった顧客に系列店を紹介し、さらに借金をさせる
闇金からの借り入れには法外な金利を伴うため、ほとんどの借主は、やがて返済に行き詰まります。
そんなとき、闇金が借主に対して、「別の闇金から借りて払え」と迫ることは多いです。系列化している闇金は、借主に系列店を紹介し、実際にそこで借りさせてお金を回収します。
新たにお金を貸した闇金が、さらに系列内の闇金を紹介してお金を借りさせることもあります。
最終的には脅迫的な取り立てなどによって回収を図ることになりますが、1人の顧客から徹底的にお金をむしり取るためには、このように系列店を順次利用させることが効果的なのです。
1つが警察沙汰になっても、他の屋号で続けられる
闇金の営業は出資法違反などの犯罪に該当するため、警察問題に発展すると営業できなくなることもあります。
しかし、系列化していれば、1つの業者が営業できなくなったとしても、別の業者は営業を続けられる可能性が高いです。トカゲの尻尾切りのような状態といえるでしょう。
闇金の系列は法的な関係ではなく、裏で手を結んでいるものに過ぎないため、警察の捜査次第ではありますが、犯罪グループの全容解明にまでは至らないことが多いのです。
闇金の系列の仕組み
闇金の系列には、いくつかのパターンがあります。以下で、3つの主な仕組みをご紹介します。
複数の業者がグループ化して連携する
最も典型的な仕組みは、複数の業者がグループ化し、相互に連携しながら運営するというものです。
当初は別々に運営していた闇金同士が偶然知り合って手を結ぶパターンもあれば、犯罪グループが当初から複数の闇金に別れて連携していくパターン、さらには1つの闇金のスタッフが独立して子会社のような闇金を営むなど、さまざまなパターンがあります。
同一の業者が複数の屋号を用いて系列店を名乗る
複数の業者が系列化しているように見えても、実は同一の業者が複数の屋号を用いて系列店であるかのように装っているケースもあります。
闇金は、第三者名義の携帯電話(スマートフォン)や銀行口座を違法に入手して営業に用いているため、同一の業者が複数の屋号を名乗ることも容易にできるのです。
それぞれの屋号を用いて別々に勧誘することで、集客の増加が見込まれます。ひとつの屋号が警察にマークされたとしても、他の屋号で営業を続けやすいというメリットもあるでしょう。
反社会的勢力(反社)が営む闇金同士が連携する
暴力団や半グレのような反社会的勢力が営む闇金は、系列化していることが多い傾向にあります。
例えば、「○○会系」というように、同じ系列の暴力団に所属する構成員が営む闇金は、相互に連携して系列化している可能性が高いです。
また、暴力団が営む闇金が、正式な構成員ではない半グレに闇金を営ませ、両者が親会社・子会社のように連携するパターンもあります。
もちろん、半グレが営む闇金同士がグループ化して連携するパターンも多いです。
系列の闇金からお金を借りるリスク
闇金からお金を借りると、法外な利息を要求され、払えなければ脅迫的な取り立てを受けたり、個人情報を悪用した嫌がらせを受けたりするおそれがあります。
この点は、系列の闇金からお金を借りた場合も同様です。それに加えて、系列の闇金からお金を借りた場合には、以下のリスクが生じることにご注意ください。
高額のお金を貸し付けられ、利息を大きく要求される
闇金から借りられる金額は、当初は数万円から多くても10万円程度までの少額にとどまることがほとんどです。しかし、返済した実績を作れば、次第に大きな金額を借りられるようになります。
その点、以前に利用した闇金とは別の系列店に申し込みをした場合は、以前の借り入れを返済した実績が評価され、高額の融資に応じてもらえる可能性が高まります。
しかし、闇金から高額の融資を受ければ、その分だけ大きな利息を要求されますので、経済的な被害が深刻化してしまうことに注意が必要です。
以前の借り入れの返済を要求される
以前に利用した闇金に対して返済しないまま系列店に申し込みをすると、新たな融資を受ける前に以前の借り入れの返済を要求されてしまいます。
その場合には、遅延損害金などと称して暴利を要求されることも多いです。その原因は、顧客に関する情報が系列内で共有されているからに他なりません。
闇金問題をいったん解決したとしても、このように系列店に手を出すことにより、厳しい取り立てが再燃することもあるのです。
知らない業者から次々に勧誘が来るようになる
顧客の氏名や住所、連絡先などの情報は系列内で共有されているため、一度でも闇金を利用すると、その系列店から勧誘が来ることが多いです。
闇金は違法な名簿業者から顧客リストを購入して勧誘することも多いですが、知らない業者から次から次に勧誘が来るようになった場合は、以前に利用した闇金の系列店からターゲットにされている可能性が高いといえます。
お金に困っていると甘い勧誘に乗ってしまいそうになるかもしれませんが、系列店からの勧誘に乗ってしまうと、高額を貸し付けられたり、以前の借り入れの返済を要求されたりするリスクがあります。
押し貸しの被害に遭うことも
系列の闇金からの勧誘を拒否しても、押し貸しの被害に遭うケースが見受けられます。
押し貸しとは、申し込みをしていない人の銀行口座へ闇金が勝手にお金を振り込み、そのお金を貸したことにして、法外な利息とともに返済を迫る行為のことです。
顧客の個人情報が系列内で共有されていることから、利用した闇金に系列がある場合には、押し貸しの被害に遭う可能性が高まるということも知っておいた方がよいでしょう。
雪だるま式に借金が膨らむ
闇金への返済に困って系列店から借りると、新たな借入額は当初の借入額より大きくなることがほとんどです。
新たな借入額にも法外な金利がかかりますので、なおさら返済は難しくなるでしょう。そこで次の系列店から借りると、さらに借入額が増えてしまいます。
このように、闇金への返済のために系列店から借り入れをすると、雪だるま式に借金が膨らんで悪循環に陥り、闇金被害から抜け出せなくなる可能性が非常に高いです。
闇金の系列を見分ける方法はある?
闇金には最初から手を出すべきではありませんが、系列の闇金を利用した場合には特に、高いリスクを負うことがお分かりいただけたことでしょう。
それでは、闇金の系列を事前に見分ける方法はあるのでしょうか。
SNS・掲示板などで分かることもある
昨今では、闇金被害に遭った人がSNSやインターネット上の掲示板などに書き込みをすることも多いので、こまめにチェックすれば、以下のような情報が見つかることもあります。
「○○と××は裏でつながっている」
「△△と□□は姉妹店」 など
系列店の名称だけでなく、投稿者が被害に遭った状況や闇金の手口などが投稿されていることもあるので、まずはインターネットで検索して情報を探してみるのもよいでしょう。
完全に見抜くことは難しい
とはいえ、闇金の系列を完全に見抜くことは難しいのが実情です。そもそも闇金は違法な存在であり、法律に基づき国などに登録したり、許認可を得たりしているものではないからです。
正規の貸金業者については、すべて金融庁のホームページで検索できます。その業者のホームページで会社情報を確認すれば、系列の内容も分かることが多いです。
しかし、闇金については、このような調査手段がありません。
金融庁のホームページでは闇金業者も検索できるようになっていますが、あらゆる闇金の情報が掲載されているわけではありません。掲載されている業者についても、系列の内容はまでは把握されていないのが実情です。
結論として、系列の闇金による被害を回避するためには、闇金の利用を控えるしかないといえます。
系列の闇金から借りたときの対処法
系列の闇金からお金を借りてしまったときの対処法は、基本的に一般的な闇金問題の解決方法と同じです。以下で、具体的にご説明します。
二度と闇金は利用しないと決意する
まずは、二度と闇金は利用しないと決意することが第一歩となります。
既に闇金被害に遭っている場合には、その被害を食い止める必要がありますし、今以上に被害を拡大させないためにも、闇金の利用をやめることが必要です。
系列店から借りて返済するように迫られたとしても、決して応じてはいけません。次々に勧誘が来ても、絶対に連絡しないようにしましょう。
そして、以下の方法で、闇金問題の根本的な解決を図ることです。
返済はしない
闇金に対しては、1円も返済する必要がありません。
なぜなら、闇金による貸付は出資法の上限金利(年109.5%)を著しく超える金利を伴う犯罪行為に該当するから、民事上も公序良俗違反として契約無効となるからです。闇金から受け取ったお金は、不法原因給付に該当するため、返還する必要もありません。
返済しないことに罪悪感を持つ人もいるかもしれませんが、真面目に返済しようとすると闇金に「カモ」と認定されてしまい、次々にお金を要求されてしまいます。
そのため、返済したところで闇金問題を解決することはできません。系列の闇金に申し込みをして、以前の借り入れの返済を要求された場合も、脅しに屈することなく拒否することが重要です。
弁護士・司法書士に相談する
もっとも、ただ返済を拒否するだけでは、闇金の脅迫的な取り立てや個人情報を悪用した嫌がらせ行為がエスカレートしてしまいます。そのため、専門家の力を借りて対処する必要があります。
警察に相談するのもひとつの方法ですが、実害が生じていなければ警察は本格的に動いてくれません。警察が動いて取り立てが止まったとしても、ほとぼりが冷めたころに取り立てが再開されることも多いことから、根本的な解決にはつながりにくいといえます。
そこで、有効となるのが弁護士や司法書士といった法律の専門家の力を借りることです。闇金問題で困ったら、すぐに弁護士・司法書士へ相談することをおすすめします。
弁護士・司法書士に依頼して闇金問題を解決する流れ
弁護士・司法書士は、以下の流れで闇金問題の解決を図ります。
- 相談者から詳しい事情を聴き取る
- 委任契約後、闇金に連絡する
- 違法な取り立てや嫌がらせをやめるように闇金と交渉する(やめない場合は法的措置をと旨の警告もする)
多くの場合は、ここまでの段階で取り立てや嫌がらせが止まります。なぜなら、闇金も刑事告訴などの法的措置を恐れているからです。
また、弁護士・司法書士に依頼した顧客からはもう、お金をむしり取れないことも理解していますので、無駄な取り立てなどはやめて、他の顧客にターゲットを移すことがほとんどです。
それでも取り立てや嫌がらせが止まらない場合は、弁護士・司法書士が代理人として実際に刑事告訴の手続きをしたり、闇金が使用する携帯電話の利用停止や、銀行口座凍結の手続きをしたりします。
このような手続きをとると闇金は営業ができなくなりますので、それでも取り立てや嫌がらせを継続する闇金はまずいません。こうすることで、根本解決を図ることができるのです。
まとめ
闇金の系列とは、闇金同士が裏で手を結び、力を合わせてターゲットから多額のお金をむしり取るための仕組みであるといえます。
知らずのうちにでも系列の闇金に申し込みをすると、通常の闇金被害よりも深刻な被害に遭ってしまうおそれが強いです。
このような被害を回避するための最良の対策は、そもそも闇金を利用しないことです。
既に闇金に手を出してしまった場合は、闇金と手を切るためにも、お早めに弁護士や司法書士へご相談ください。専門家の力を借りて、闇金問題を根本的に解決してしまいましょう。