- 闇金と元金和解をしても請求は止まらないことが多い
- 闇金に元金を返済すると他の闇金業者から請求を受けることもある
- 闇金と和解するならゼロ和解をするべきである
- 闇金との問題は弁護士・司法書士に依頼するのが得策である
闇金から法外な利息を要求され返済できずに困っていると、相手が元金和解を提案してくることがあります。元金和解とは、利息を免除してもらい借りた元金のみの返済で和解することをいいます。
しかし、元金を全額払ったとしても闇金問題は解決しない可能性が非常に高いので、元金和解に応じるべきではありません。闇金問題を解決するためには、弁護士または司法書士に依頼してゼロ和解をすることが最も得策です。
この記事では、闇金と元金和解してはいけない理由と、闇金問題を根源的に解決する方法、闇金との交渉を依頼する専門家の選び方について、わかりやすく解説していきます。
闇金との元金和解とは
元金和解とは、文字通り元金のみの返済で完済扱いとする和解のことをいいます。通常は元金に加えて利息も必要ですが、元金和解ができれば利息を支払う必要がなくなります。
闇金からお金を借りると、トイチやトサンといった法外な利息を要求されます。その利息を支払えずに困っていると、闇金業者の方から「元金を一括ですぐに支払えば終わりにしてやる」という和解を提案してくることがあります。
借主にとっては、渡りに船とばかりに元金和解に応じたくなることでしょう。しかし、闇金業者の真の狙いは、より多くのお金を支払わせることにあります。
元金を全額支払っても、さまざまな請求を受け続ける可能性が非常に高いので、闇金との元金和解に応じてはいけません。
闇金と元金和解してはいけない理由
闇金業者が元金和解を提案してくるときには、裏の事情があるものです。具体的には、闇金に元金を返済すると以下のような事態に陥るケースがあります。
問題が解決するどころか、さらなる苦境に追い込まれる可能性が非常に高いので、闇金との元金和解に応じてはいけません。
和解しても闇金からの請求は止まらない
闇金業者は、和解案として元金に加えて違約金や慰謝料などを求めてくることもあります。この場合、元金を返済するだけでは闇金業者からの請求は止まりません。
たとえ闇金業者が「元金だけでいい」と言ったケースでも、後から違約金や慰謝料などの名目で支払いを要求されたり、「お金が届いてない」と嘘をつかれ、再び元金の支払いを要求されたりすることがあります。
闇金業者からの提案に乗って元金を返済すると「この顧客は脅したり騙したりすればお金を支払う」と判断され、「カモ」と認定されてしまいます。闇金業者は、カモに対して次々に請求を仕掛けてきます。
和解すると再度の借入を勧められる
別のパターンとして、元金和解に応じて元金を完済したとしても、再度の借入を勧められることもあります。借入を勧められるだけであれば断ればよいと思われるかもしれませんが、闇金業者はそう簡単に引き下がりません。
執拗に電話をかけて勧誘してくることもありますし、勝手にお金を振り込んで元金と利息の返済を要求する「押し貸し」をしてくることもあります。
闇金業者は、カモに対しては、あの手この手でお金を支払わせようとしてくるのです。
元金を払うと他の闇金業者からも請求される
元金を完済した後、その闇金業者からの支払い要求が収まったとしても、他の闇金業者からの勧誘や押し貸しを受けることもあります。
闇金の顧客リストは、闇金業者をはじめとする違法業者の間で横流しされています。一度でも闇金を利用すると、さまざまな違法業者に個人情報が知れ渡ってしまいます。
特に、「優良顧客」(カモ)と認定された顧客に対しては、多くの違法業者が請求を仕掛けてきます。優良顧客と認定されないためにも、元金和解に応じてはいけません。
闇金と和解するならゼロ和解をすべき理由
闇金業者とのトラブルを解決するために和解をすることは有効な手段です。ただし、元金和解ではなく「ゼロ和解」をすべきです。
ゼロ和解とは、元金も利息も返済せず、「債権・債務なし」であることを双方が確認して取引を終了させる合意のことです。
闇金業者とゼロ和解をすべき理由は、以下のとおりです。
そもそも闇金に元金を返済する必要はない
実は、闇金業者のような違法な貸金業者に対しては、法律上、利息だけでなく元金も返済する必要はありません。
なぜなら、出資法で定められている上限金利(年109.5%)を超える金利で貸付を行うことは民法上の不法行為に当たるからです。不法行為の加害者(貸主)が被害者(借主)に対して返済を請求することは、社会の倫理や道徳に反するため認められないとした最高裁判所の判例もあります(最高裁平成20年6月10日判決)。
そして、民法では「不法な原因でお金を貸した者はその返済を請求できない」と定められています。自ら不法な状態を作り出した者は、法律上の返還請求権を主張できないのです。
結論として、闇金から借りた元金は、闇金業者からの返済請求は認められず、借主から自主的に返済する必要もないということになります。
つまり、法律上は闇金業者に対して1円も返済する必要はないので、元金を返済すると損をするといえるのです。
ゼロ和解でなければ請求は止まらない
先ほどもご説明したように、元金和解をしても闇金業者からの請求は止まりません。元金を返済してもしなくても請求が止まらないのであれば、返済しても無駄であることがおわかりいただけることでしょう。
闇金からの請求を止めるためには、「債権・債務なし」「返済義務なし」ということを明らかにして決着をつける必要があります。そのためにゼロ和解をすべきなのです。
闇金との関係を根源的に絶つべき
闇金業者は、自分たちが行っている貸付行為や取立行為が違法であることを最初から熟知しています。
その上で少しでも多くのお金を得るために、請求すれば支払ってくれる「カモ」に対して次々に請求を仕掛けます。一方で、請求しても支払わない顧客に対しては、いずれ請求することを諦め、別のカモへとターゲットを移すようになります。
闇金業者との関係を根源的に絶つためには、「請求しても支払わない顧客」であると認定される必要があります。そのためには、元金和解ではなくゼロ和解をすべきなのです。
闇金と和解するときの注意点
中には、闇金業者が和解の条件として以下のような提案をしてくることがあります。これらの提案に応じれば、ゼロ和解に応じてもらえることもありますし、元金和解でも請求が止まります。
しかし、これらの提案に応じるとさまざまなトラブルに巻き込まれる可能性が非常に高いので、決して応じないようにしましょう。あくまでも、闇金業者とは条件なしのゼロ和解をすべきです。
身分証明書や印鑑を渡してはいけない
闇金業者から「和解書を作成するため」などの理由で、身分証明書や印鑑を送付するように求められることがあります。
しかし、身分証明書や印鑑を闇金業者に渡してしまうと、さまざまな犯罪に悪用されたり、勝手に借金をされたりする可能性が高いです。そのため、身に覚えのない罪を着せられたり、身に覚えのない借金の返済を請求されることがあります。
携帯電話や銀行口座を譲渡してはいけない
闇金業者が自己名義の携帯電話や銀行口座を営業に用いると、容易に足がつき警察に逮捕されてしまいます。そのため、通常は他人名義の携帯電話や銀行口座を用いています。ただ、他人名義の携帯電話や銀行口座は通常のルートで手に入るものではありません。
そこで闇金業者は、返済に窮した顧客に対して、返済を免除する代わりに携帯電話や銀行口座を譲渡するよう求めてくるのです。
しかし、携帯電話や銀行口座を不正に譲渡することは「犯罪収益移転防止法違反」という犯罪に当たりますので、譲渡した方も罪に問われ、刑罰を科せられることがあります。
他の人の連絡先を教えてはいけない
闇金業者が元金和解を提案してくる場合に多いパターンですが、友人や知人などでお金を借りそうな人の氏名・住所・連絡先などを教えるように求められることもあります。
他人の連絡先等を闇金業者に教えると、当然ながら、その人が闇金からの勧誘や押し貸しなどを受けてしまう可能性が高いです。
他人の個人情報を本人の承諾なく漏らす行為は、プライバシー侵害として違法となります。その人との人間関係にヒビが入るだけでなく、慰謝料を請求される可能性もあります。
闇金とゼロ和解をする方法
闇金業者とはゼロ和解で決着をつけるべきですが、借主が「債権・債務なしで和解したい」と言ったところで容易に応じてもらえるものではありません。
闇金とゼロ和解をするためには、以下の方法を強くおすすめします。
弁護士・司法書士に依頼する
闇金との交渉は、法律の専門家である弁護士・司法書士に依頼することが最善の対処法です。
闇金業者は、弁護士・司法書士に依頼した顧客からお金を取り立てるのは容易でないことや、取り立てを続ければ刑事告訴されるリスクが高いことを熟知しています。
弁護士・司法書士が介入した当初は多少の抵抗をするかもしれませんが、ほどなくして諦め、他のカモにターゲットを移すケースがほとんどです。
なお、闇金業者からの取り立てで身の危険が迫っているような場合には、警察に相談することも有効です。しかし、警察はすぐに動いてくれないことも多いですし、「元金だけは返済するように」と勧められることすらあります。
闇金問題を解決するためには、弁護士・司法書士に依頼することが最も確実な手段であるといえます。
弁護士・司法書士に依頼することで得られるメリット
闇金問題の解決を弁護士・司法書士に依頼することで得られる主なメリットは以下のとおりです。
- 取り立てを止めるよう警告してもらえる
- すぐに対応してもらえるので、嫌がらせ行為を受けるリスクが低い
- 闇金業者との和解交渉を代行してもらえる
- 専門家の交渉術によって穏便な解決が期待できる
- 携帯電話の利用停止、銀行口座の凍結等によって闇金との関係を絶つことが可能
- 刑事告訴の代行により闇金業者の逮捕につなげることができる
闇金業者との関係を根源的に絶つために、法律の専門家に対応を依頼することを強くおすすめします。
闇金問題の解決を依頼する専門家の選び方
闇金問題の解決を依頼する際には、専門家の選び方も重要となります。専門家を探すときには、以下のポイントにご注意ください。
闇金との交渉経験が豊富な専門家
闇金業者との交渉を積極的に取り扱っている専門家は、さほど多くありません。経験が少ない専門家では、闇金業者と交渉しようとしても要領がわかりません。
闇金業者の方でも、要領を得ない専門家の対応はすぐにわかりますので、「この専門家の言うことは無視しても大丈夫」と考え、請求を続ける可能性が高いです。
依頼するなら、闇金業者との交渉経験が豊富にある専門家を選ぶことが大前提です。
元金の返済を勧めない専門家
闇金業者との交渉経験が多少はある専門家でも、解決方針がさまざまに異なることもあります。中には、「元金さえ返済すれば、うるさく言ってこないだろう」と、元金の返済を勧める専門家もいます。
しかし、元金を返済しても闇金問題を解決できないことは、これまでにご説明してきたとおりです。
元金の返済を勧める専門家に依頼すると、依頼費用を支払ったのに問題は解決しないということになりがちです。
迅速に対応してくれる専門家
闇金問題の事案では、専門家による迅速な対応も重要となります。
初動が遅れると、親族や友人・知人、職場への取り立てをはじめとする嫌がらせ行為を受け、被害が拡大する可能性が極めて高くなります。これらの嫌がらせ行為を受ける前にゼロ和解で闇金業者と決着をつけなければ、生活が破壊されてしまうおそれもあります。
専門家を選ぶ際には、迅速に対応してくれるかどうかも確認しましょう。
まとめ
闇金業者に一人で対応していると、元金和解の提案に応じてしまいやすいものです。
ほとんどの人は元金だけは返済しなければならないと思いこんでいるでしょうし、それまで利息の支払いを強硬に要求していた闇金業者から「元金だけでいい」と言われると、ホッとした気持ちにもなることでしょう。
しかし、闇金業者はこのような顧客の心理を突いて、さらにお金を支払わせることを目論んでいます。被害を食い止めるためには、元金和解に応じないようにしましょう。
ただ、お金を借りているという立場上、「支払いません」とは言いにくいでしょうし、それだけでは闇金業者からの請求も止まりません。そんなときこそ、法律の専門家である弁護士・司法書士の力を借りることを強くおすすめします。
専門家にゼロ和解を依頼し、闇金との関係を根源的に絶つようにしましょう。