- 業者の実態は闇金である
- 違法な高金利のため利用してはいけない
- 返済ができないと違法な取り立てを受ける
- 被害に遭ったときは司法書士・弁護士に相談すること
ここ最近、個人でも利用できる資金調達手段として「経費・領収書ファクタリング」というサービスが広まってきています。
経費・領収書ファクタリングは、会社員等が自費で立て替えた経費等の領収書を現金化できるサービスのことです。信用情報を用いた審査なしですぐに現金を手にできることから、金融機関の審査に通らない方の資金調達方法として注目を集めています。
しかし、このサービスを利用するには、借金の上限金利を超えた違法な利率による手数料を負担しなければなりません。期日までに元金と手数料を返済できなければ、闇金と同様の厳しい取り立てを受けてしまうため、注意が必要です。
この記事では、経費・領収書ファクタリングの仕組みや、業者による悪質な手口、被害に遭ったときの対処法などについてわかりやすく解説します。
経費・領収書ファクタリング業者のほとんどは闇金なので、利用はおすすめできません。
経費・領収書ファクタリングとは
経費・領収書ファクタリングとは、仕事上の経費を支払った際の領収書を現金化するサービスのことです。その仕組みを確認していきましょう。
経費の領収書を現金化するサービス
会社員が仕事で必要となる経費は、会社が負担すべきものです。しかし、営業職等では社員がいったん立て替えて支払い、後で会社から精算されることがよくあります。
精算は月に1回しか行われないことが多いですが、経費・領収書ファクタリングを利用すればすぐに現金を手にすることができます。
サービスの仕組み
このサービスの仕組みは、以下のとおりです。
- 経費の領収書を業者に売却する
- 領収書の額面から手数料を差し引いた金額が振り込まれる
- 会社で精算が行われたら、元金と手数料を返済する
交通費や携帯電話料金、飲食代等の交際費、宿泊費等、会社から精算される経費であればすべてサービスの対象となります。
領収書がなくても、自分で経費精算書を作成することで現金化に応じる業者が多くなっています。
経費・領収書ファクタリングの利用手順
経費・領収書ファクタリングを利用する場合、その手順は以下のとおりです。
Web等から申し込む
ほとんどの業者はホームページにWeb申し込みフォームを用意しているので、そこに必要な情報を入力して申し込みを行います。入力する主な項目は、以下のとおりです。
- 買い取り希望額
- 氏名
- 住所
- 生年月日
- 電話番号(携帯・自宅とも)
- 勤務先名
- 勤務先の住所・電話番号
- 勤続年数
- 手取り月収
- 緊急連絡先の名前・電話番号
Webで送信すると、担当者から電話で簡単な聴き取りが行われます。
必要書類を提出する
申し込み後は必要書類の提出を指示してきます。主な必要書類は以下のとおりです。
- 顔写真付きの身分証明書
- 健康保険証
- 領収書
- 給料が振り込まれる通帳の写し
以上の書類について、写真やPDFの形で送信するのが一般的です。
審査結果を待つ
申し込みが完了すると、審査が行われます。ただ、審査といっても名ばかりで、金融機関のように信用情報の照会等が行われるわけではありません。申込者の収入等を考慮して、買取額や手数料の金額を検討しているだけだと考えられます。
なお、業者から勤務先への電話による在籍確認が行われるかどうかは、業者次第です。
契約を締結する
審査は数十分で終了するのが一般的です。買取額と手数料の金額が電話で通知され、申込者が承諾すると契約締結となります。契約は口頭で済ませる業者もありますが、Web上で電子契約書を取り交わす業者もあります。
お金が振り込まれる
契約が完了すると、指定の口座に買取額が振り込まれます。最短で即日、現金を手にすることができます。
経費が精算されたら返済する
返済日は、給料日または経費の精算日あたりに設定されるのが一般的です。経費が精算されたら、元金と手数料を含めて返済することになります。
経費・領収書ファクタリング業者が闇金といえる理由
経費・領収書ファクタリング業者のほとんどは闇金である可能性が高いので、利用はおすすめできません。特に、以下の特徴を持つ業者は利用しない方がよいでしょう。
仕組みが給料ファクタリングと酷似している
経費・領収書ファクタリングの仕組みは、給料債権を業者に買い取ってもらう「給料ファクタリング」の仕組みと酷似しています。
給料ファクタリングについては、2020年に金融庁が、無登録業者(闇金)が実質的に貸金業を営んでいるので利用しないようにと警告を発しています。裁判所でも、同様の判断を示した判決が言い渡されています。
2020年から2021年にかけて、多くの業者が給料ファクタリングから撤退しましたが、それと入れ替わるようにして経費・領収書ファクタリングが広まってきました。
今後は、経費・領収書ファクタリングも給料ファクタリングと同様に、違法なものと公的に判断される可能性が高いといえます。
個人が勤務先に対して有する給与(賃金債権)を対象とした「給与ファクタリング」を業として行うことは、貸金業に該当(貸金業登録が必要)。貸金業登録を受けていないヤミ金融業者を利用すると、様々な被害や生活破綻につながるおそれ。
手数料が高額
経費・領収書ファクタリングの手数料は20~50%程度が相場となっています。さらに高い利率を要求する業者も少なくありません。
領収書の買取額2万円、手数料20%で買い取ってもらったとすると、手取額と返済額は以下のようになります。
- 手取額:1万6,000円
- 返済額:2万0,000円
手数料の分だけ、手出しで返済しなければなりません。
これは1.6万円借りて2万円を返すことと同じですので、返済期間を1ヶ月とすると利息25%となり闇金と同等の高金利だといえます。
貸金業登録を受けていない
経費・領収書ファクタリング業者のほとんどは、貸金業登録を受けていません。
業者は「ファクタリングは借金ではないので貸金業登録は不要」と主張しますが、経費・領収書ファクタリングの仕組みは実質的に見て貸金業に該当すると考えられています。
貸金業を営むには国や地方公共団体に貸金業登録をしなければならず、無登録で営業する業者は違法ということになります。
経費・領収書ファクタリングを利用するとどうなる?悪質な手口の例
経費・領収書ファクタリングを利用すると、期日までに全額を返済できなければ以下の被害を受ける可能性が高いです。
催促の電話が執拗にかかってくる
まず、業者から催促の電話が執拗にかかってきます。返済するまでに朝から夜中まで毎日、100回以上かかってくることもあるため、仕事や生活に悪影響があります。
恫喝まがいの取り立てを受ける
業者は高利の手数料を支払わせることが目的なので、脅迫的な言葉で支払を要求してくることが多いです。
- 直接取りに行く
- 他の業者から借りて支払え
- 家族や職場にばらすぞ
などと脅されることがよくあります。
職場への電話で事実を言いふらされる
実際に業者が職場へ電話をかけた例も少なくありません。通常は職場の人に対して返済を迫るわけではありませんが、電話に出た人に対して事実を言いふらした上で、「返済するようにお伝えください」などと言われます。
そのため、利用者は職場にいづらくなってしまいます。
家族への電話で事実を言いふらされる
業者は、家族へも電話をかけてきます。なかには、「家族が払わないのだから、代わりに支払え」と要求してくることもあります。このような電話によって、家族に迷惑がかかるだけでなく、家族関係が悪化するおそれもあります。
経費・領収書ファクタリングで被害に遭ったときの対処法
上記のような被害に遭ったときは、弁護士・司法書士といった専門家に相談するのが有効です。
法外な利率の手数料を伴う契約は民事上無効なので、返済する必要はありません。しかし、自分で対応すると厳しい取り立てが止まらず、被害が拡大するおそれがあります。
そんなときに弁護士・司法書士に依頼するメリットは、以下のとおりです。
- 代理人として業者に対応してもらえる
- 業者からの取り立てを止めることができる
- すでに一部返済している場合は、返還請求できることもある
業者も違法な取引をしていることは知っているので、弁護士・司法書士から返済拒否の旨を伝えられると、諦めて取り立てをやめることが多いです。
まとめ
経費・領収書ファクタリングは、経費の領収書を業者に買い取ってもらうことですぐに現金を手にすることができるサービスです。しかし、業者の実態は闇金なので、利用すると深刻な被害を受けてしまうおそれがあります。
もし被害を受けた場合は、弁護士・司法書士の力を借りて適切に対処し、平穏な生活を取り戻しましょう。