- アビリオ債権回収は正規のサービサー(債権回収業者)である
- アビリオ債権回収の督促状を無視すると差し押さえを受けるおそれがある
- アビリオ債権回収は債権が時効消滅していても督促してくることがある
- アビリオ債権回収から請求された借金を払えないときは債務整理が有効
アビリオ債権回収から督促状が届いたものの、身に覚えがないと思って戸惑う人が少なくありません。
アビリオ債権回収は、消費者金融などから買い取った不良債権の回収を図るサービサーです。怪しい業者ではありませんが、督促状を無視していると裁判を起こされ、最終的に財産を差し押さえられるおそれがあります。
請求された借金を払えないときは債務整理で解決できますが、その前に消滅時効が成立していないかなど、確認すべきポイントもあるので注意が必要です。
この記事では、アビリオ債権回収から督促状が来たときの正しい対処法と注意点について、わかりやすく解説します。
アビリオ債権回収とは
アビリオ債権回収とは、サービサー(債権回収会社)のひとつで、貸付を行うのではなく、消費者金融などから委託を受けたり、不良債権を買い取るなどして、その債権の回収を専門的に行っている業者です。
会社の概要
アビリオ債権回収は、法務大臣から正式に認可を受けた正規のサービサーです。会社の概要は以下のとおりです。
正式名称 | アビリオ債権回収株式会社 |
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許可番号 | 法務大臣 第5号 |
設立日 | 1999年3月4日 |
株主 | SMBCコンシューマーファイナンス株式会社(100%出資) |
事業所 | 本社:東京都江東区豊洲二丁目2番31号 事業部:札幌・仙台・大阪・福岡 |
事業内容 |
|
主な「元の借入先」
アビリオ債権回収はSMBCコンシューマーファイナンス株式会社の完全子会社なので、アビリオ債権回収に債権回収を委託したり、不良債権を譲渡するのもSMBCグループの金融機関等が中心的です。
主な「元の借入先」として、以下のような金融機関等が挙げられます。
- SMBCコンシューマーファイナンス(旧プロミス、旧三洋信販)
- 三井住友カード
- 新生ファイナンシャル(レイク)
- ジャックス
- モビット
- アットローン
- シティカード
- オリックス・クレジット など
これらの業者からの借入を返済できずに放置していると、アビリオ債権回収から督促状が来ることがあります。
アビリオ債権回収から来た督促状を無視するとどうなる?
アビリオ債権回収から来た督促状を無視しても、元の借金から逃れることはできません。
以下で、無視すると何が起こるのかをみていきましょう。
遅延損害金が加算されていく
アビリオ債権回収から請求された借金を完済するまで、遅延損害金が加算され続けます。
遅延損害金とは、支払い期日までに借金を返済しなかった場合に発生する損害賠償金のことで、通常の利息よりも高い利率で日々発生します。
消費者金融などの貸金業者に対する遅延損害金の利率は利息制限法で20%が上限とされているため、多くの場合は20%の利率で遅延損害金を請求されるのが実情です。
なお、アビリオ債権回収から督促状が来るまでには既に元の借入先に対して遅延損害金が発生しているのが通常です。
債権回収の委託や債権譲渡が行われる時点での元の借入先に対する「元金+遅延損害金」がアビリオ債権回収が請求する債権の「元金」となり、その金額に対して遅延損害金が加算されていきます。
そのため、アビリオ債権回収からの督促状を無視していると返済額が意外なほどに膨らみやすいことに注意が必要です。
自宅に取り立てが来ることがある
督促状を無視していると、電話や郵便による督促が何度も繰り返されます。それだけでなく、アビリオ債権回収の場合は自宅にまで取り立てに来ることがあります。
違法業者ではないので貸金業法上の取り立てのルールは守りますが、債権回収のプロですので、合法的な取り立ての手段は全て使ってくると考えておくべきです。無視しても逃げ切れるものではありません。
職場に催促の連絡が入ることがある
アビリオ債権回収の場合に限りませんが、督促状を無視していると職場にも催促の電話がかかってくることがあります。
貸金業者等が債務者の職場に連絡することは貸金業法で原則として禁止されていますが、債務者と連絡をとる手段が他にないなど正当な理由がある場合には、職場に連絡することも認められているからです。
督促状を無視することによって、職場の人たちに借金のことを知られてしまうおそれがあるので注意しなければなりません。
裁判を起こされる
アビリオ債権回収からの再三にわたる督促を無視し続けると、やがて裁判を起こされます。
債権回収の裁判には、主に次の2種類の手続きがあります。
- 支払督促
債権者の申立に基づき、裁判所がただちに債務者に対して支払いを命じる手続き。債務者が2週間以内に異議申立てをしなければ、債権者からの仮執行宣言の申立てを経て債権が確定する。 - 訴訟
原告(債権者)と被告が法廷でそれぞれ主張・立証を行い、原告の主張が認められると裁判所が判決で債務者に対し支払いを命じる手続き。被告が主張・立証を行わない場合、原告の主張どおりの判決が言い渡される。
貸金業者や債権回収会社が裁判を起こす場合、簡易裁判所に「訴訟」を提起することが一般的です。ただ、アビリオ債権回収の場合は「支払督促」を申し立てる例も少なくないようです。
いずれにしても、裁判を無視すると次の差し押さえ手続きを回避できなくなることに注意が必要です。
給料などを差し押さえられる
仮執行宣言付き支払督促や確定した判決書のことは「債務名義」と呼ばれ、債権者は債務名義を取得すると強制執行を申し立てて債務者の財産を差し押さえ、そこから強制的に債権を回収することが可能となります。
差し押さえの対象となる財産は、主に給料と預金口座です。
給料を差し押さえられた場合は、裁判所から会社に差し押さえ通知が送付され、給料の一部が会社から債権者に直接支払われることになります。当然、会社に借金のことを知られてしまいます。
預金口座を差し押さえられた場合は、その口座の預金の中から債権額を上限として全額が債権者に支払われます。
どちらの場合も、生活に支障をきたすおそれもあることでしょう。
アビリオ債権回収から督促状が届いたときに確認すべきこと
前項でご説明した重大な事態を回避するためには、アビリオ債権回収から届いた督促状を無視せず、適切に対処する必要があります。
まずは、督促状が届いた時点で以下のことを確認すべきです。
元の借入先はどこか
元の借入先、つまりアビリオ債権回収がどこの業者から債権回収の委託または債権譲渡を受けたのかを確認する必要があります。
督促状の中に債権回収の「委託者」または「債権譲渡人」として元の借入先の会社名が表示されていますので、ご確認ください。
消滅時効が成立していないか
アビリオ債権回収は、既に消滅時効が成立している債権について督促状を送付してくることもあります。そのため、アビリオ債権回収に連絡をする前に、消滅時効が成立していないかを確認することが重要です。
消費者金融などの貸金業者からの借金は、最後の取引から5年で消滅時効が成立します。
元の借入先がどこであるかが判明したら、その業者との最後の取引がいつだったかを確認してください。
通常は返済が最後の取引となっていることが多いので、返済用口座の通帳や振込明細書などで最後の返済日を確認しましょう。
裁判を起こされていないか
既に元の借入先から裁判を起こされ、仮執行宣言付き支払督促や判決が言い渡されていた場合は、時効期間がそのときから10年に伸張されます。
手元にある書類を全て整理してでも、元の借入先に対する借金について既に裁判を起こされていないかを確認しましょう。
元の借金が時効にかかっているときの対処法
元の借金が時効にかかっている場合は、アビリオ債権回収に対してお金を支払う必要はありません。ただ、以下の点には注意が必要です。
債務の承認に要注意
債権者に対して債務を承認すると、時効が更新され、消滅時効を主張できなくなります。
時効が更新されると、それまでに進行していた時効期間がリセットされて新たにゼロから時効が進行し始めるため、そのときからさらに5年が経過するまでは消滅時効を主張できないのです。
督促状が届いたとき、慌ててアビリオ債権回収に連絡をすると、「いつまでに支払えるか」「毎月いくらずつなら支払えるか」という話になるはずです。
このような話し合いに乗り、支払いの約束をすると債務の存在を承認したことになるので、時効が更新されます。「支払いたくてもお金がないので支払えません」というだけでも、債務の承認に当たる可能性があるので注意が必要です。
また、アビリオ債権回収に対して1円でも支払いをした場合も、債務を承認したことになります。支払うという行為は債務があることを前提としているからです。
時効を援用する方法
実は、消滅時効が成立していても、債務者が時効を援用するまで借金の返済義務は消滅しません。
時効の援用とは、債務者が債権者に対し、「消滅時効が成立しているので支払いません」という意思表示をすることです。
法律上は口頭で意思表示をするだけでも有効ですが、一般的には時効を援用したことの証拠を残すために「時効援用通知書」を作成し、内容証明郵便で送付します。
不用意にアビリオ債権回収に連絡すると債務承認に当たる言質をとられるおそれがあるので、消滅時効が成立している場合にはあえて連絡せず、時効援用通知書を送付するのが得策であるといえます。
アビリオ債権回収から裁判を起こされたときの対処法
アビリオ債権回収から裁判を起こされたとしても、以下のように対処すれば差し押さえを回避できます。
裁判を起こされても時効が成立している可能性もあるので要注意
まず、アビリオ債権回収は時効にかかった債権でも裁判を起こしてくる可能性があることにご注意ください。
そのため、裁判所から書類が届いたときも、まずは落ち着いて元の借入先に対する借金が消滅時効にかかっていないかを確認することが重要です。
消滅時効が成立している場合は、裁判の中で時効を援用すれば問題は解決します。
支払督促の場合は異議申立てをする
裁判所から「支払督促」が届いたときは、その書類を受け取った日から2週間以内に異議申立てをしてください。
異議申立書の書式は裁判所から届いた書類の中に同封されています。送付先も同封の書類の中に記載されているので、正確に異議申立書を作成し、2週間以内に裁判所に届くように発送しましょう。
異議申立てが認められると訴訟の手続きに移行しますので、下記のステップに進みます。
訴訟の場合は答弁書を提出する
訴訟を起こされた場合は、裁判所から「訴状」と関連書類が届きます。「答弁書」という書式が同封されているので、必要事項を記入し、裁判期日の1週間前までに裁判所の担当係宛に送付しましょう。
答弁書を提出せず、裁判期日にも出頭しなければ、訴状に記載されたとおりの内容で判決が言い渡されることになります。答弁書は必ず提出してください。
協議の上、分割払いの和解をする
アビリオ債権回収は悪質な業者ではありませんので、裁判の中で分割払いの和解を希望すれば、最大限に配慮してくれます。
和解する手順としては、まず、答弁書の中に希望する和解案を記載する欄がありますので、そこに毎月の返済額や返済期間などの提案を記載して提出します。
その後、第1回の裁判期日までにアビリオ債権回収に連絡し、直接協議をして、合意ができたら裁判期日において裁判上の和解が成立します。
直接の協議がまとまらなかった場合も、諦めず裁判期日に出頭してください。裁判期日では、裁判所もできる限り和解が成立するようにアビリオ債権回収に働きかけてくれます。
1回の期日で和解が成立しない場合は続行期日が設けられることもあるので、粘り強く交渉することが大切です。
アビリオ債権回収から請求された借金を払えないときは債務整理の検討を
アビリオ債権回収とは分割払いの和解が可能だとはいっても、そもそも支払えないということもあるでしょう。そんなときは債務整理が有効です。
特に、他にも借金がある場合には債務整理で一挙に解決することが得策です。アビリオ債権回収も、債務整理手続きには一般的な貸金業者と同様に協力してくれます。
債務整理には、主に任意整理・個人再生・自己破産という3種類の手続きがあります。債務整理手続きの選び方を簡単にご説明すると、以下のようになります。
- 任意整理…毎月の返済額を減らせば返済可能な場合に適した手続き
- 個人再生…借金の大幅な減額が必要な場合に適した手続き
- 自己破産…借金を減額しても返済できない場合に適した手続き
ただ、最適な手続きを選ぶためには様々な事情を考慮する必要がありますし、法律の知識も要求されます。そのため、弁護士または司法書士のアドバイスを受けて検討した方がよいでしょう。
アビリオ債権回収から請求を受けたら弁護士・司法書士に相談を
アビリオ債権回収から請求を受けたときは、まず弁護士または司法書士に相談してみることをおすすめします。法律の専門家に相談することで、以下のメリットが得られます。
- 消滅時効が成立しているか判断してもらえる
- 時効の援用手続きを依頼すれば、債務の承認を防止できる
- 時効が成立しておらず、支払えない場合でも最適な解決方法がわかる
- 債務整理手続きを依頼すれば、複雑な手続きを一任できる
- 正しく対処してもらえるので心強く、精神的な負担も軽減される
一人で悩むのではなく、専門家のサポートを受けることには大きなメリットがあるといえるでしょう。
まとめ
近年では架空請求をしてくる悪質業者も多く、警戒している人も多いはずです。そのため、アビリオ債権回収という聞き慣れない業者から請求書面が届いた場合も架空請求と勘違いし、無視する人もいます。
しかし、アビリオ債権回収からの請求を無視すると、本記事でご説明したように差し押さえなどの重大な事態に陥る可能性が高いです。
早急に適切な対処が必要ですが、その際には弁護士・司法書士の専門的なアドバイスに従って対処することを強くおすすめします。
アビリオ債権回収は、適切に対処すれば怖い業者ではありませんので、弁護士・司法書士のサポートを受けて最善の形で解決を図りましょう。