文章を書く時に文法を意識しながら書く人は少ないと思います。
しかし、文法は正しい日本語の文をつくる法則であり、「読みやすい」、「正確に伝わる」文章作成の第一歩と言っても過言ではありません。さらに、文法、品詞というものを理解することによりライティングにも自信を持って取り組むことができるでしょう。
日本語の文法は奥が深くさまざまな用法や種類があります。かつて国語の授業で学んだ文法もあらためて学習しようとすると膨大な時間が必要です。
そこで、今回は文法の重要なポイントに絞って解説します。WEBライティング、SEO記事のライティングにも活きる部分は多いと思いますのでご参照下さい。
文の単位
文は単語の集まりにより形成されます。その文が意味を成してまとまったものが文章になりますが、その単位は以下のようになっています。
【単語】:(例)「今日」、「は」、「家族」など独立した品詞が単語
↓
【文】:最初の単語から最後の「。」までのひとかたまりが文
↓
【文節】:文の中に「ネ」を入れて区切ったものが文節 (例)今日はネ / 家族とネ / 動物園にネ / 行ったよ
↓
【段落】:ある文章のなかのひとつのまとまり(区切り)が段落
↓
【文章】:小説、俳句からWEB記事まで、ひとつのまとまりを文章という
チェックポイント
正確に読み手に伝わる文かそうでないかは、文節ごとに「ネ」で区切ってみると分かりますが、そのようなことは国語の授業ではないので普通はしませんね。
ここでは、ひとつの文を形成するためには文節が重要で、読み手に伝わるロジカルな文を書く際に文節を意識して丁寧に書くと良いということを覚えておきましょう。
文の成分
文の成分には5つの種類があります。
主語:「だれ」、「何が」という文の主体となるもの。
述語:主語の状態、動作を表す単語(文節)。
修飾語:他の文節に係る文節。
接続語:前後の文節を結ぶ文節。
独立語:他の文節と関わりを持たずに成り立つ文節。
(例)
・雨が降っている = 「雨が」が主語、「降っている」が述語
・私は動きが素早い = 「私は」が主語、「動きが」が修飾語、「素早い」が述語
・彼女は、努力したので、成績が上がった = 「彼女は」が主語、「努力したので」が接続語、「成績が上がった」が述語
・おはよう、気持のいい朝だね = 「おはよう」が独立語
チェックポイント
読みやすい文をつくるために意識すべきは、主語抜けがない、述語となる状態を丁寧に表す、適切な修飾語を選ぶことです。
つまり文を成すために丁寧に言葉(単語)をつないでいくということが重要になります。
文の構造
文の構造は以下のように3つに分けられます。
- 単文:主語と述語だけでできている文
(例)ぼくは本が好きだ。
- 複文:述語が2つ以上ある文
(例)ぼくは本が好きだが、昔はマンガが好きだった。
- 重文:単文を2つ以上結びつけて並列にした文
(例)ぼくは本が好きだが、妹は映画を見るのが好きだ。
チェックポイント
単文は子どもの作文などによく見られます。しかし、ビジネスやWEBライティングでは、複雑な複文、重文で書くのが当たり前です。
気を付けたいのが、複文では述語をたくさん設けたり、重文では並列が多すぎたりして、無駄に長文になるケースがあります。そうなると強調箇所が分かりにくく、焦点がボヤケた文章になりがちですので気をつけなくてはなりません。
文の種類
文の種類は3つに大別できます。いわゆる普通の文である平叙文(へいじょぶん)、相手に質問したり、自問する際に使う疑問文、「~しない」、「~でない」など否定形の文に分けられます。
- 平叙文:(例)鈴木さんは会社に地下鉄で通勤している
- 疑問文:(例)鈴木さんは会社に地下鉄で通勤しているか
- 否定文:(例)鈴木さんは会社に地下鉄で通勤していない
チェックポイント
文章のほとんどは平叙文で構成されます。その文章の中にあえて、疑問文、否定文など、「関心」、「驚き」、「問題提起」などの要素を入れることで生き生きした文章になることがあります。問いかけ、否定はライターの考えを明確に示すためのアクセントとして有効です。
ただし、疑問、否定を入れ過ぎるとテンポが損なわれ、読者も不快感を感じるケースがありますので注意しましょう。
品詞とは
一つの文をつくる際には、いろいろな単語を用いて構成します。品詞とは、「名詞」、「動詞」など単語の性質、かたち、はたらきによって分けたモノのことを指します。
日本語の文は11の品詞を使って作られます。品詞の用法は複雑ですので、それをすべて覚える必要は無いと思います。代表的な品詞とその用法だけでも覚えておくことで文というものに対する理解が増すでしょう。
品詞の種類
日本語の品詞には「自立語」という、その単語だけで文(文節)がつくれるものが9つと、「付属語」という他の「自立語」がなければ文(文節)がつくれないものが2つあります。
〈自立語〉
1.動詞 → 怒る、走る (動作・存在を表す)
2.形容詞 → 白い、美しい(状態・性質を表す)
3.形容動詞 → 静かだ、穏やかだ(状態・性質を表す)
4.名詞 → 会社、東京(ものごとの名前を表す)
5.代名詞 → それ、あれ(ものごとを指し示す)
6.副詞 → いつも、とても(主に連用修飾語)
7.連体詞 → 大きな、この(連体修飾語だけ)
8.接続詞 → しかし、だが(接続語だけ)
9.感動詞 → ああ、えい(独立語だけ)
〈付属語〉
10.助動詞 → です、ます(活用がある)
11.助詞 → が、を(活用がない
品詞は細分化すると種類も多く特殊な用法もありますが、ここでは一般的な用法について説明します。
名詞の用法
名詞は読み手に「何のことが書かれた文章なのか」、「具体的な情報は何か」を伝えるために、ひとつの文を作る上で最も重要な品詞です。
名詞は以下の4つの種類があります。
1.普通名詞:一般名称 (例)動物、植物
2.固有名詞:地名、人名 (例)大阪府、鈴木さん
3.代名詞①(人称代名詞):人名、地名を直接言わず、代わりの言葉で指し示す。(例)わたし、あなた、きみ
代名詞②(指示代名詞):(例)あれ、これ、その
4.数詞:数値、量、順序など(例)1つ、1個、2倍
チェックポイント
一つの文をより具体的に意味あるものとして伝えるためには、固有名詞、数詞などの情報は詳細に入れると分かりやすくなります。
例えば、「鈴木さんは東京スカイツリーから見た富士山の夕景に感動した」という単なる一文よりも
「鈴木さんは、東京スカイツリーの最も高い場所にある展望回廊フロア450という450メートルの高さから見た富士山の夕景に感動した。」
このように、ちょっと長いですが名詞を詳細に用いることで、この文を読んだ人はイメージが膨らみます。具体的かつ詳細な文を積み重ねることでコンテンツが有益となり高品質化します。当然、SEOにも有利になりますので情報は積極的に入れましょう。
動詞の用法
動詞は、動作・存在・作用などを表すものとして3つの種類があります。名詞と並んで一つの文を作る上で欠かせない重要な品詞です。
1.自動詞:主語への動作、存在などの様子を表す
2.他動詞:主語以外への何かに働きかける様子を表す
3.可能動詞:「分かる」、「読める」など”~ができる”意味を含んでいる
チェックポイント
動詞は「意図や目的を明確に示す」、「動作によりイメージを喚起させる」ために必要な品詞です。日本語では主語がなかったり動詞を使わずに文が成り立つようなケースもありますが、ロジカルな文には動詞は不可欠です。
ライティング時に、自動詞、他動詞など細かく気にする必要はありませんが、文中に動詞の漏れがないように気をつけましょう。
形容詞の用法
形容詞は述語になる単語で、状態、性質をあらわします。「怖い」、「広い」など語尾が「い」で終わるのが一般的です。
チェックポイント
形容詞は「高いビル」、「広い部屋」など名詞を修飾する役割を持ちます。ちなみに修飾とは情報を加えることです。
形容詞を使ってより具体的な状況を伝えるために、「30階建ての高いビル」→ 「アーチ型の30階建ての高いビル」など、詳細な情報を付加することで、姿かたちのイメージがくっきりしたもになります。
形容動詞の用法
形容動詞は述語になる単語で、形容詞と同様に状態、性質をあらわしますが、「きれいだ」、「賑やかです」など、語尾が「だ・です」で終わるのが一般的です。
チェックポイント
形容動詞も形容詞と同様に「イルミネーションがきれいだ」 → 「金色に輝く100万個のイルミネーションがきれいだ」のように、より具体的な情報を加えることでイメージが膨らみます。
代名詞の用法
代名詞は「あれ」、「それ」など、ものごとを指す「指示代名詞」と「かれら」、「きみ」など人を指す「人称代名詞」があります。
チェックポイント
一つの文に人名(名詞)を頻出させると繰り返しに感じられ文章がくどくなります。
それを避けるために代名詞を使うことがありますが、この人称代名詞も頻出させてしまうと「だれが何を」という主語と目的がボヤケた文になります。また、「あれ」、「それ」なども同様に繰り返し使うと伝わりにくい文になることがあるので要注意です。
副詞の用法
副詞は主に用言(動詞、形容詞、形容動詞)を修飾する連用修飾語です。
「ゆっくり」、「とても」など用語の修飾から「バリバリ」など擬音語、「ささっと」など擬態語としても使われます。形容詞と同様に重要な品詞です。
チェックポイント
「ゆっくりしゃべる人」 → 「 穏やかな笑顔でゆっくりしゃべる人」のように副詞にさらに情報を加えるとより具体的な像が見えてきます。
連体詞の用法
連体詞とは、体言(名詞、代名詞)を修飾する連体修飾語で、「この」、「いろんな」、「ある」、「たいした」などの単語です。また、活用はありません。
接続詞の用法
接続詞とは文や文節をつなぐ「だから」、「また」、「つまり」などの単語です。
チェックポイント
接続詞は複文、重文などの長文をライティングする際にテーマを変えたり、強調する際によく使います。
この接続詞も適切に単語を用いないと違う意味になることがあります。また、使いすぎるとテンポの悪い読みにくい文章になるので要注意です。
感動詞の用法
感動詞は、感動の「ああ」、「おお」、呼びかけの「ほら」、「もしもし」、応答の「はい」、「いや」などを表す単語です。
また、挨拶の「こんにちは」、かけ声の「せぇの」なども感動詞になります。ちなみに感動詞は自立語で活用はありません。
チェックポイント
感動詞は、「おお、素晴らしい紅葉の景色だなぁ」、「えい、というかけ声でハードルを超えた」のように、「おお」、「せぇの」という単語が入るだけで書いた人の感情が伝わってきます。
このように気持を表現したいときには感動詞を入れると文がより鮮明になります。
助動詞の用法
助動詞とは、それだけの単語では意味をなさない付属語です。「らしい」、「そうだ」、「させる」など、体言・用言に意味を持たせる単語です。
チェックポイント
助動詞には、推定、伝聞、比喩、例示、断定、否定、使役、受け身などの用法があります。
WEBライティングで気を付けたいのが推定、伝聞など憶測の文です。断定、否定など言い切る文は説得力を持ちますが、推定、伝聞がたくさん入っている文はリアリティが足りなくなります。
助詞の用法
助詞とは、助動詞どうようにそれだけの単語では意味をなさない付属語です。「が」、「や」、「ので」、「まで」など自立語との関係性や意味を持たせるための単語です。
まとめ
文法を知らなくても文章を書くことはできます。文章を書くという行為は書く人の個性を自由に表現できる方法でもあります。
しかし、ビジネスの現場やコンテンツマーケティングなど、多くの人に文章で「何かを伝える」、「読んでもらう」という場合には好き勝手に書くという訳にはいきません。「正確に伝える」、「読みやすい」という要素が求められます。
そこで文法や品詞の用法を意識することで「丁寧に正しく書く」ということができるようになります。
プロのライター、文筆家ならともかく、普段何気なく書いている文章も、あらためて見直すことで、自分だけのルールで書いていたことが分かるかもしれません。
文法は国語学者の数だけあるとはよく言いますが、基本となる部分だけでもおさえておくことで今後のライティング業務に役立つことでしょう。