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ホストの未収期限はいつまで?時効の期間と根本的に解決する方法も解説

ホストの未収期限はいつまで?時効の期間と根本的に解決する方法も解説
この記事でわかること
  • 法律上、ホストの売掛の未収期限は時効が成立するまでとなる
  • ホストの未収の時効期間は基本的に5年だが、状況により異なることもある
  • ホストに対して時効を主張するには「援用」が必要である
  • 未収期限がだいぶ先で売掛を払えないときでも債務整理で解決できる

ホストクラブでは、代金をツケにしてもらえることがあります。ツケは後日に支払わなくてはなりませんが、期日までに支払えなくなる女性客も少なくありません。それはホスト側から見れば、売掛金が未収という状態です。

以前なら、飲食店の売掛金は1年で時効にかかっていたため、ホストへの未収も1年間支払わなければ支払い義務がなくなると考える方が多くいらっしゃいました。

しかし、現在では法律が改正されて売掛金の未収期限が長期化しており、ホストへの未収を支払わないまま逃げ切ることは難しくなっています。

この記事では、ホストの売掛の未収期限はいつまでなのかという問題について解説します。法律上の時効期間がいつまでなのか、ホストからの返済要求が止まらない場合の対処法や、時効が成立しない場合の根本的な解決方法もご紹介しますので、参考になさってください。

ホストの「未収」とは?

ホストの売掛の未収期限について考える前に、そもそもホストの「未収」とは法的にどのような意味であるのかを確認しておきましょう。

店でツケにした売掛金の未払いこと

ホストの「未収」とは、店でツケにした代金(店にとって「売掛金」)のうち、まだ清算されていないもののことです。お客にとっては「未払い」、ホストにとっては「未回収」の売掛金のことを、ホスト業界では一般的に「未収」と呼んでいます。

手持ちのお金がないお客がツケ払いを頼んだ場合でも、ホストから「売り上げに協力してほしい」と頼まれてツケ払いを持ちかけられた場合でも、お客の意思でサービスを利用した以上、法的には売掛金債務として支払う義務が生じます。

借用書を書かされた場合は借金となる

お客が売掛金をなかなか支払わない場合や、ツケを何度も繰り返すような場合には、ホストに借用書を書かされることもあります。それまでの未収の合計額を、お客がホストから借りたという形にすることを求められるのです。

このように、借金以外の金銭債務を借金という形に改める約束のことを「準消費貸借契約」といいます。法律で認められている契約類型であり、悪質な行為ではありません。

借用書を書かされた後は、借金をした時と同じようにホストへの返済義務が生じます。借用書には高金利の利息や遅延損害金が記載されることもあるので注意が必要です。

ホストの売掛の未収期限はいつまで?

ホストの売掛の未収には、以下のように法律上の期限があります。

本来の支払期限は1ヶ月前後

多くのホストクラブでは、未収の締め日は毎月末とされています。したがって、ツケを利用した場合には月末までに支払う必要があります。

店によっては翌月までとされていることもありますが、基本的には当月末までと考えておいた方がよいでしょう。

締め日までに支払わなかった場合は、ホスト個人が売掛金を立て替えて店に支払う必要があります。

未収が多ければホストにとって死活問題となりますので、ホストから厳しい取り立てを受けることもあります。

未収期限は時効が成立するまで

法律上の金銭債務には「時効」があります。ホストの売掛の未収期限とは、すなわち債務の時効期間のことです。債務が時効にかかれば、支払う必要はなくなります。

ホストの未収が売掛金債務の場合も、借金に変わった場合も、時効期間は基本的に5年です。状況次第で1年になることもあれば10年になることもありますが、詳しくは次項で解説します。

時効が成立したら援用することが必要

時効が成立しても、自動的に債務が消滅するわけではないことに注意しなければなりません。ホストからの返済要求を拒否するためには、「時効の援用」をすることが必要です。

時効の援用とは、債務者から債権者に対して「この債務は時効が成立したので支払いません」という意思表示をすることです。時効の援用をしない限り、債権・債務はそのまま残ります。

つまり、未収についてお客が時効の援用をするまでは、ホストは未収期限に関係なく、いつまでも請求できるのです。

ホストの未収の時効期間

ホストの未収の時効期間は、以下のとおりです。法改正により2020年4月1日から時効期間が変更されたため複雑な内容となっていますが、正確に確認しておきましょう。

基本的には5年

借用書がなく、未収が売掛金債務である場合の時効期間は、以下の表のとおりツケを利用した時期によって異なります。

利用時期 時効期間
2020年3月31日以前 1年
2020年4月1日以降 5年

2020年3月31日以前に発生した債務には旧民法が適用されるため、ホストクラブを含む飲食店の売掛金の時効期間は1年です。もし、2020年3月31日以前のツケを未だに支払っていない場合は、2023年現在において既に時効期間が経過していることになります。

それに対し、2020年4月1日以降は現行民法が適用されるため、売掛金の時効期間は5年となります。例えば、2023年4月1日にツケを利用した場合は、5年後の2028年4月1日まで時効は成立しません。

借用書がある場合は10年となることも

借用書がある場合は、未収の法的性質が借金となるため、時効期間は以下の表のとおりとなります。

借用書を書いた時期 時効期間
2020年3月31日以前 10年
2020年4月1日以降 5年

旧民法では、飲食店の売掛金については1年という短期消滅時効の規定がありましたが、借金の場合は一般原則どおり、借用書を書いてから10年が経過するまで時効は成立しません。

現行民法では、売掛金についても借金についても時効期間は同じ5年とされています。ただし、ツケを利用したときからではなく、借用書を書いたときから5年となることにご注意ください。

裁判をされた後は10年となる

未収の時効期間が1年や5年の場合でも、裁判をされると10年に延長されるということにも注意が必要です。

ホストにとって売掛金の未回収は死活問題ですので、裁判をしてくることも少なくありません。ホストが起こす可能性がある裁判は、主に以下の表に記載した2種類です。

裁判の種類 裁判後の時効期間 時効期間の開始時期
支払督促 10年 債務者が支払督促を受け取ってから2週間が経過したとき
民事訴訟 10年 債務者が判決書を受け取ってから2週間が経過したとき

時効はリセットされることもある

時効は途中でリセットされることがあり、その場合には当初の時効期間が経過しても時効は成立しません。このことを「時効の更新」といいます。

時効がリセットされる主な原因として、以下のことが挙げられます。

  • 裁判上の請求
  • 支払督促
  • 債務者による承認

裁判上の請求と支払督促については、上記のとおり債務が確定したときにリセットされ、その後の時効期間は10年となります。

もし、債務が確定することなく手続きが途中で終了した場合は、リセットはされません。手続き中は時効が完成しませんが、手続き終了時から残りの時効期間(1年または5年のうちの残存期間)が進行します。

債務者による承認には注意が必要です。債務者が債権者に対して、以下のように債務を認める言動をすれば、時効期間がリセットされてしまいます。

  • 1円でも返済した
  • 「支払いを待ってほしい」と言った
  • 「分割払いにしてほしい」と言った
  • 「支払いたいけれど支払えない」と言った

ホストから返済を請求されたときに以上のようなやりとりをしていないかについて、確認する必要があるでしょう。

その他にも、ホストから裁判外で請求を受けた場合には、そのときから6ヶ月が経過するまで時効が完成しないことにもご注意ください。このことを「時効の完成猶予」といいます。

未収期限後にホストから返済を迫られたときの対処法

未収期限後にホストから返済を迫られたときの対処法

ホストが時効に関する法律上のルールを正確に知っているとは限りませんので、未収期限が過ぎた後でも返済を迫ってくることはよくあります。

その場合には、以下のように対処しましょう。

消滅時効の援用をする

未収期限が過ぎただけでは、まだ債務そのものは消滅していません。ホストからの請求を止めるためには、消滅時効の援用をすることが必要です。

その方法は、「消滅時効援用通知書」を作成して、配達証明付き内容証明郵便でホスト宛に送付することです。

内容証明郵便とは、誰が・誰に対して・いつ・どのような内容の文書を送付したのかを、郵便局が公的に証明してくれる郵便のことです。配達証明を付けておくことで、いつ相手が文書を受け取ったのかも証明できます。

こうすることで、ホストから裁判を起こされた場合には、時効の援用により債務が消滅したことを証明することが可能で、支払いを拒めるのです。

また、内容証明郵便という格式張った文書を送付することでホストに心理的な圧力をかけて、取り立てを止めるという効果も期待で期待できます。

取り立てが続くときは警察に相談する

正しい手順で時効の援用をしたとしても、ホストが諦めず、取り立てが続くこともあります。その場合、基本的には債務が法律上消滅していることをホストに説明し、取り立てを止めるように求めることになります。

それでも取り立てが止まらない場合には、警察に相談することも考えましょう。行き過ぎた取り立てでは以下の犯罪が成立している可能性があり、その場合には警察が取り締まってくれます。

  • 暴行罪や傷害罪
  • 脅迫罪
  • 恐喝罪
  • 住居侵入罪や不退去罪

接近禁止の仮処分などの法的措置をとる

債務が法律上消滅しているにもかかわらず請求を繰り返すことを、「不当要求」といいます。ホストが不当要求を行う場合には、接近や訪問、面談、電話、メール送信などの禁止を命じる仮処分を裁判所に申し立てることができます。

裁判所の仮処分命令にホストが違反してさらに請求しても罰則はありませんが、このような場合には犯罪予防の観点から警察がホストに警告してくれる可能性があります。

未収期限内にホストから返済を請求されたときの対処法

未収期限内は支払い義務がありますので、ホストから返済を請求されたときには誠意をもって対処する必要があります。

分割払いや返済期限の延期を交渉する

未収金をすぐには支払えない場合には、ホストとの話し合いで分割払いや返済期限の延期などを依頼してみましょう。

ホストにとっても、お客が任意に支払うのであれば、裁判や差し押さえ手続きにかける労力とコストをカットできるというメリットがあります。そのため、誠意をもって交渉すれば柔軟な対応も期待できます。

支払いが厳しい事情を伝えて交渉すれば、ホストも「自己破産されるよりはまし」と考え、減額にも応じてくれる可能性もあります。

交渉がまとまらないときは債務整理をする

ホストとの交渉がまとまらない場合でも、債務整理をすれば未収金を減免することが可能です。債務整理には主に任意整理・個人再生・自己破産の3種類があり、ホストの未収も対象となります。

どの手続きが適しているかは、負債額や収入・財産の状況、生活状況、職業などによって異なりますが、状況に合った債務整理手続きを行えば、未収金の問題を根本的に解決できます。

他にも借金を抱えている場合には、債務整理で借金問題をすべて解決できるというメリットもあります。

未収期限(時効期間)が間近に迫っているときの注意点

未収期限(時効期間)が間近に迫っているときにホストから返済を迫られた場合には、安易に債務を承認する言動をしないように注意する必要があります。

債務を承認すると、もう少しで時効が成立したのに時効期間がリセットされてしまい、未収金の支払い義務から免れられなくなるからです。

とはいえ、ホストから面と向かって返済を迫られる場面では、債務の承認を回避することは難しいのが実情です。

そんなときは、「弁護士に相談して回答する」と伝えて、一人で対応するのは控えることが理想的です。

そうしているうちに未収期限が経過すれば時効の援用ができます。どうしても債務の承認が避けられない場合には、ホストとの交渉または債務整理で解決を図ることになります。

ホストへの未収を解決するために弁護士に依頼するメリット

ホストへの未収を解決する方法をまとめると、以下のとおりです。

  • 未収期限が過ぎている場合は、消滅時効の援用
  • 未収期限が過ぎていない場合は、ホストとの交渉または債務整理

しかし、どちらの場合もホストからの返済要求が止まらないという問題が残る可能性があります。この問題を踏まえて考えると、ホストへの未収を根本的に解決するための最善の方法は、弁護士に対応を依頼することです。

法律の専門家である弁護士の力を借りることで、以下のメリットが得られます。

  • 未収期限がいつまでなのかが正確にわかる
  • 時効がリセットされないための注意点がわかる
  • 消滅時効の援用手続きを代わりに行ってもらえる
  • ホストとの交渉を任せることができる
  • 債務整理の手続きを代行してくれる
  • ホストからの不当要求には警告を出し、取り立てを止めてもらえる

まとめ

ホストの売掛の未収期限は、法改正後は5年となっていますので、逃げ切ることは難しくなっています。

未収期限が間近に迫っている場合は時効による解決を図るのもよいですが、何年も先の場合はホストとの交渉で円満に解決するか、債務整理を検討する方が賢明です。

最適な解決方法を選択するためには、まず弁護士に相談することを強くおすすめします。法律の専門家の力を借りて、未収の問題を安全かつ的確に解決してしまいましょう。

メインの執筆者かつ9312

元弁護士。関西大学法学部卒。15年にわたり、債務整理、交通事故、相続をはじめとして、オールジャンルの法律問題を取り扱う。
債務整理では、任意整理、個人再生、自己破産の代行から過払い金返還請求、闇金への対応、個人再生委員、破産管財人、法人の破産まで数多くの事案を担当経験する。

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