- 楽天カードは他社よりも任意整理に協力的な業者である
- 着手後3ヶ月以内なら柔軟な和解が可能である
- 交渉が長引くと和解条件が厳しくなり、裁判を起こされることもある
- 弁護士・司法書士に依頼することでより有利な和解が期待できる
「楽天カードマン」のテレビCMでおなじみの楽天カードは、国内でトップクラスの人気を誇るクレジットカードです。年会費無料でポイント還元率も高く、楽天市場でのショッピングで利用すればさまざまな特典を受けることもできます。
非常に便利なカードですが、つい使いすぎて返済が難しくなってしまう人も少なくありません。クレジットカード代金の返済が厳しいときには早めに任意整理をするのが有効です。そこで気になるのは、楽天カードが任意整理においてどのような対応をしてくるのかということでしょう。
この記事では、楽天カードの最近の和解傾向をご紹介するとともに、楽天カードとの任意整理を成功させるコツを解説していきます。
楽天カードとは
楽天カードとは、楽天カード株式会社が発行するクレジットカードのことです。楽天カード株式会社、および楽天カードの基本情報については以下の表を参考になさってください。
社名 | 楽天カード株式会社 |
---|---|
創業時期 | 2001年12月 |
本店の所在地 | 東京都港区南青山2丁目6番21号 楽天クリムゾンハウス青山 |
カードのブランド | VISA、Master、JCB、アメリカンエキスプレス |
年会費 | 永年無料 |
利用可能額 | 100万円 |
ポイント還元率 | 1%(100円につき1ポイント) |
返済方式 | 残高スライド定額方式 |
手数料率(ショッピング) | 15% |
手数料率(キャッシング) | 18% |
遅延損害金 | 20% |
楽天グループは組織が非常に複雑となっていますが、大元の親会社は「楽天グループ株式会社」といい、楽天カード株式会社はその子会社です。さらに楽天カード株式会社の子会社として「楽天銀行株式会社」等があります。
なお、以前には「楽天KC株式会社」(旧:国内信販株式会社)という会社がありましたが、こちらはJトラスト株式会社という会社に売却されたため、楽天カード株式会社とは全く別の会社となっています。
楽天KCや国内信販から借りていた人が任意整理をする場合は、Jトラスト株式会社が相手となりますのでご注意ください。
なお、以下では楽天カード株式会社のことを単に「楽天カード」と称して解説していきます。
楽天カードの任意整理における最近の和解傾向
楽天カードは、任意整理には基本的に協力的な業者であるといえます。
近年は大手の消費者金融やクレジットカード会社でも和解条件が厳しくなりつつあるところが多いですが、その中でも楽天カードは比較的柔軟な交渉に応じてくれる傾向にあります。
ただし、任意整理に着手してから3ヶ月以内に和解が成立しなければ、条件が厳しくなるという特徴があります。以下で、具体的にみていきましょう。
将来利息・遅延損害金は原則として免除してくれる
楽天カードとの任意整理では、将来利息や経過利息、遅延損害金については次のように対応されます。
将来利息 | 全額カット |
---|---|
経過利息・遅延損害金 | 3ヶ月以内に和解する場合は全額カット 3ヶ月以内に和解できない場合はカットされない |
他社では取引期間が短い場合などに将来利息を一部(5%~10%程度)要求されることがあります。しかし、楽天カードではそのようなこともなく、ほぼすべてのケースで全額カットが可能となっています。
経過利息と遅延損害金についても、他社ではカットに応じないところが多くなっていますが、楽天カードでは3ヶ月以内に和解が成立することを条件にカットに応じてもらえます。
なお、経過利息とは支払い停止から延滞に陥るまでの利息のことを指し、遅延損害金とは延滞に陥ってから和解が成立するまでに発生するお金のことを指します。
返済期間は5年まで応じてくれる
任意整理による返済期間については、楽天カードの対応は以下のような傾向にあります。
- 5年(60回払い)まで応じてくれる
- 残債務額が少ない場合は5年より短くなることもある
- 5年を超える和解には応じてもらえない
他社では取引期間が短い場合などに2~4年での返済を要求してくるケースが増えていますが、楽天カードではほとんど事情を問わずに5年まで交渉に応じてくれます。3ヶ月以内に和解できない場合でも、短期間での返済を要求されることはほぼないようです。
ただし、いかなる事情があっても5年を超える和解にはほとんど応じてもらえません。
また、楽天カードでは毎月の最低返済額が3,000円とされているため、残債務額が少ない場合には5年の和解に応じてもらえないこともあります。
なお、返済開始時期についても、和解が成立してから3ヶ月後まで待ってもらえるケースが多いです。
交渉が長引くと裁判を起こされる傾向にある
任意整理の交渉が長引いた場合に裁判を起こしてくるかどうかは業者次第ですが、楽天カードは裁判を起こしてくるケースが比較的多い傾向にあります。
とはいえ、任意整理に着手してから3ヶ月以内に和解できなければすぐに裁判を起こしてくるわけではなく、当面は待ってもらえることが多いようです。
おおむね半年以上にわたって放置していると、裁判を起こされる可能性が高いと考えておいた方がよいでしょう。弁護士や司法書士などの専門家に任意整理を依頼している場合には、裁判を起こされるまでの期間が延びる傾向にあります。
なお、裁判を起こされても、きちんと対応すれば分割払いでの和解に応じてもらえます。楽天カードと裁判上の和解をする場合の条件は以下のとおりです。
- 返済期間は5年まで
- 将来利息はカット
- 経過利息と遅延損害金はカットされない
楽天カードと任意整理するときの注意点
楽天カードからの借金は任意整理で解決しやすいといえますが、実際に任意整理をするときは以下の点に注意が必要です。
3ヶ月以内に和解できないと条件が厳しくなる
先ほどもご説明したように、楽天カードでも任意整理に着手してから3ヶ月以内に和解できなければ条件が厳しくなってしまいます。主に以下の点において、条件が厳しくなる傾向にあります。
- 経過利息と遅延損害金を要求される
- 和解成立後1ヶ月以内の返済開始を要求される
将来利息のカットや5年の長期分割返済については、3ヶ月経過後でも応じてもらえます。その点で、楽天カードは他社よりも任意整理に協力的といえます。
キャッシング枠とショッピング枠を分けることはできない
楽天カードと任意整理をお考えの方はキャッシング枠とショッピング枠の両方を利用中の方が多いと思いますが、どちらか一方だけを任意整理することはできません。
任意整理をするのであれば、両方が同時に対象となってしまいます。キャッシング枠だけを任意整理し、ショッピング機能は利用し続ける、ということはできないのです。
その結果、カードによる各種料金の引き落としなどもできなくなります。カード引き落としを利用している場合は、任意整理に着手する前に支払い方法を口座引き落としや振り込みなどに変更しておく必要があります。
楽天銀行からも借りている場合は同時に任意整理となる
楽天カードの他に楽天銀行のカードローンでも借り入れている場合は、以下の点に注意しなければなりません。
- 楽天カードと任意整理を開始すると、楽天銀行からの借金も任意整理となる
- 楽天銀行と任意整理を開始すると、楽天カードからの借金も任意整理となる
これは、楽天銀行が楽天カードの子会社であることによります。
楽天カードとの任意整理を開始すると楽天銀行のカードローンも利用できなくなりますし、逆に楽天銀行との任意整理を開始すると楽天カードは利用できなくなるということです。
楽天銀行の口座が凍結されることもある
楽天銀行のカードローンが任意整理となると、楽天銀行の口座が凍結されてしまいます。口座が凍結されると、以下の不利益を受けることになります。
- 預金を引き出せなくなる
- 口座引き落としができなくなる
- 給与などが振り込まれなくなる
つまり、口座からの入出金が一切できなくなるということです。そのため、任意整理に着手する前に預金残高を引き出しておくとともに、引き落としや給与振り込みの口座を変更しておく必要があるでしょう。
預金が残っている状態で口座が凍結されると、預金残高は楽天銀行に対する残債務と相殺されてしまいます。
口座の凍結はおおむね1ヶ月で解除され、その後は再び通常どおりに口座を利用できるようになります。
なお、楽天銀行からの借入がない場合は、楽天カードと任意整理をしても口座が凍結されることはありません。
楽天カードとの取引からは過払い金は発生しない
消費者金融やクレジットカードと長年取引をしている場合、任意整理をすると過払い金の発生が判明することがあります。しかし、楽天カードとの取引からは過払い金は発生しません。
「楽天カード」が登場したのは2011年8月であり、当初から法定金利の範囲内でしか貸付が行われていないからです。したがって、それ以降に楽天カードの利用を始めた場合は過払い金が発生することはありません。
なお、以前の国内信販、楽天KC、楽天クレジットから借り入れていた場合は過払い金が発生している可能性があります。国内信販または楽天KCへの過払い金返還請求は、Jトラストに対して行うことになります。
楽天カードとの任意整理を成功させるコツ
楽天カードとの任意整理を成功させるコツは、3ヶ月以内に和解成立を目指すことに尽きます。弁護士や司法書士などの専門家に任意整理を依頼した場合は、受任通知が楽天カードに到達してから3ヶ月以内に和解成立を目指すことが大切です。
3ヶ月経過後でも和解は十分に可能ですが、経過利息と遅延損害金が付加されるため、返済の負担が重くなってしまう可能性があります。早期に和解するに越したことはありません。
任意整理に着手した後に求職や転職をして収入の確保を図ることもあると思いますが、早めに対処することが重要です。
楽天カードとの任意整理後にクレジットカードを作る方法
楽天カードと任意整理すると、楽天カードは強制解約されてしまいます。他社のクレジットカードは任意整理の対象としていなければ当面の間は利用できますが、やがて強制解約となります。その後は一定の期間、カードを新規作成することもできなくなります。
なぜなら、任意整理をするとブラックリストに登録されるからです。しかし、任意整理後にクレジットカードを作ることが一切できなくなるわけではありません。
任意整理後5年が経過するとクレジットカードの作成が可能になる
ブラックリストとは、消費者金融やクレジットカード会社が加盟している信用情報機関に、長期の延滞や債務整理などの事実が事故情報として登録された状態のことです。事故情報が登録された状態でクレジットカードの作成を申し込んでも、審査で落とされてしまいます。
しかし、信用情報機関における事故情報は一生残るわけではありません。任意整理の場合は完済後5年が経過すると事故情報が削除されます。
その後は再びクレジットカードの作成が可能になります。
楽天カードの再発行はできない
楽天カードと任意整理をした後は、残念ながら5年以上が経過しても楽天カードの再発行を受けることはできません。
なぜなら、信用情報機関で事故情報が削除されても、楽天カードの社内データに登録された事故情報は残り続けるからです。このことを「社内ブラック」といいます。
したがって、任意整理後にクレジットカードを作成するなら他社のカードを選ぶ必要があります。
他社のクレジットカードを作るコツ
任意整理後に他社のクレジットカードを作るのは可能とはいえ、審査は厳しくなりがちです。事故情報が削除された後は信用情報が真っ白となり、信用がまったく築かれていない状態となるからです。この状態で審査に通過するコツは、以下のとおりです。
- 安定収入を確保しておく
- キャッシング枠をゼロに設定する
- 一度に複数の業者に申し込まない
- 立て続けに複数の業者に申し込まない
最も重要なポイントは、定職についており安定収入があるかどうかです。収入が多ければ多いほど審査で有利になるのは間違いありませんが、勤続年数も重視されます。給料があまり変わらないのなら、むやみに転職を繰り返さない方がよいでしょう。
新規にクレジットカードに申し込むときは、キャッシング枠をゼロに設定することで審査に通過する可能性を高めることができます。少額のショッピング利用を重ねることによってクレヒス(クレジットヒストリー)を積めば、やがてキャッシングの利用も認められることが多いです。
また、早くクレジットカードを作りたいからといって複数の業者に一度に、あるいは立て続けに申し込むと、お金に困っていると判断されて審査で不利になります。
申し込みは一社ずつ、審査で落とされた場合は次の申し込みまでに6ヶ月以上の期間を空けるようにした方が、結果的には審査に通りやすくなります。
楽天カードとの任意整理で楽天ポイントを失わない方法
楽天カードを利用している方の中には、楽天ポイントを貯めている方も多いことでしょう。しかし、任意整理後は楽天カードが強制解約となるため、それに伴ってポイントも失効してしまいます。
今までに貯めた楽天ポイントを無駄にしないためには、以下の方法があります。
任意整理前にポイントをすべて消費する
ひとつ目の方法は、任意整理をする前にポイントをすべて消費することです。楽天ポイントの利用方法は、主に以下のとおりです。
- 買い物に利用する
- カード代金の支払いに充てる
- ポイント投資をする
ポイントで必要な物を購入しておくのもよいですし、カード代金の支払いに充てて返済の負担を軽くしておくのもよいでしょう。
楽天証券での投資信託や株式取引などの投資にポイントを利用することもできます。
楽天スーパーポイントに移行する
楽天スーパーポイントとは、クレジットカードに紐付けられていない楽天のポイントサービスです。楽天カードと任意整理をしても、楽天スーパーポイントは今までどおりに利用できます。
楽天カードの利用で貯まったポイントをポイントのままで残しておきたい場合は、楽天スーパーポイントへ移行する手続きを行っておくとよいでしょう。
楽天カードとの任意整理が失敗するケースと対処法
楽天カードとの任意整理は他社との場合に比べて成功しやすいといえますが、それでも以下のケースでは失敗する可能性もあります。
- 他社からも多額の借金を抱えている場合
- 継続的な返済が可能なだけの収入がない
そんなときは、以下の対処法が有効です。
- 他社とも任意整理する
- 個人再生をする
- 自己破産をする
楽天カードと任意整理するだけでは返済が難しいという場合は、他者とも任意整理をして全体的に返済の負担を軽減させることです。
もっとも、他者は楽天カードよりも和解条件が厳しいところがほとんどです。そのため、楽天カードと最大限に有利な和解を結ぶことが、任意整理を全体的に成功させるコツとなります。
それでも返済が厳しい場合には、個人再生が有効です。個人再生は任意整理と異なり、元金も含めて借金総額を大幅に減額できる手続きです。継続的な収入があれば、多くの場合は個人再生で解決可能です。
自己破産を選択すれば、すべての借金を免除してもらうことができます。ただし、ギャンブルなどの浪費で借金を作った場合には免責が認められないなど、いくつかのデメリットもあります。
ご自身のケースでどの解決方法が最も有効となるかについては、事前に弁護士や司法書士などの専門家に相談して確認することをおすすめします。
楽天カードへの返済が厳しくなったら弁護士・司法書士へ相談を
楽天カードへの返済が厳しくなったときにひとりで悩んでばかりいると、時間だけが経過して借金が増えてしまい、任意整理も難しくなってしまうおそれがあります。
そのため、楽天カードとの任意整理を成功させるには早めに弁護士または司法書士へ相談することを強くおすすめします。
弁護士・司法書士に相談することで得られるメリットは以下のとおりです。
- 最善の解決方法を提案してもらえる
- 債務整理を依頼すれば受任通知を発送してもらい、督促を止めることができる
- 任意整理では専門的な交渉力によって、より有利な和解が期待できる
- 個人再生や自己破産をする場合も複雑な手続きを代行してもらえる
まとめ
楽天カードは、任意整理に協力的な対応をしてくれます。経営状況の悪化などによって和解条件が厳しくなっている業者が多い昨今において、楽天カードはありがたい存在ということもできるでしょう。
とはいえ、早期に和解できなければ経過利息や遅延損害金を付加されますし、有利な和解を目指すには専門的な知識や交渉力も要求されます。そのため、法律の専門家である弁護士・司法書士に依頼する方が得策といえます。
弁護士または司法書士のサポートを受けて、楽天カードとの任意整理を成功させましょう。