- 自己破産しても携帯・スマホを利用することは可能
- 料金滞納が続くと携帯契約が強制解約となるケースもある
- 免責確定後に新規契約は可能だが注意点がある
- 弁護士・司法書士への相談で強制解約を回避できることもある
自己破産をすれば多額の借金を帳消しにすることが可能ですが、一定のデメリットも生じます。その一つに携帯電話の契約という問題があります。
自己破産をすると携帯電話やスマホの契約が打ち切られてしまうのではないかと気になる方も多いことでしょう。自己破産後も携帯・スマホを利用することは可能ですが、場合によっては契約に影響が出ることもあります。
そこでこの記事では、自己破産をすると携帯契約はどうなるのか、強制解約を避ける方法や自己破産後に新規契約をする方法などをわかりやすくご説明します。
自己破産しても原則として携帯契約に影響はない
自己破産しても、それだけが理由で携帯契約が打ち切られることはありません。なぜなら、現代社会において携帯・スマホの利用料金の支払いは生活費の一部と考えられているからです。
水道光熱費や家賃といった生活に必要不可欠な費用は、自己破産の対象となる負債とは異なり、生活費の一部として自己破産の手続き中も支払い続けることが認められています。携帯・スマホの利用料金もこれと同じ扱いとされているのです。
また、各携帯電話会社の利用規約においても、利用者が自己破産したことが解約事由とはされていません。
したがって、自己破産しても原則として携帯・スマホは今までどおりに使用を続けることができます。
自己破産して携帯契約が解約されるケース
ただし、以下のようなケースでは自己破産すると携帯契約が解除されることがあるので注意が必要です。
利用料金を滞納している
携帯・スマホの利用料金を滞納したまま自己破産を申し立てると、携帯・スマホが強制解約されることになります。
月々発生する利用料金は生活費の一部として支払うことができますが、滞納した分は借金と同様に自己破産の対象となるからです。
自己破産の対象となる債務は、自己破産手続き以外で支払うことが禁止されています。もし支払ってしまうと「偏頗弁済(へんぱべんさい)」となり、原則として免責が許可されなくなります。
つまり、自己破産の申し立て前に携帯・スマホの利用料金を滞納している場合は申し立て後も滞納した状態が続いてしまうのです。滞納が2~3ヶ月続くと、ほとんどの携帯電話会社は契約を強制解除します。
端末の購入代金を分割で支払い中
携帯・スマホの端末の購入代金は、生活の一部としては認められません。端末の購入代金を分割で支払い中の場合は、残債務が自己破産の対象となり、申し立て後は支払いをストップしなければなりません。
通常、端末の分割代金は携帯・スマホの利用料金と併せて支払っているはずです。そのため、端末の分割払いをストップするためには利用料金の支払いもストップすることになります。
そうすると利用料金の滞納が発生しますから、2~3ヶ月後には携帯・スマホが強制解約されてしまいます。
利用料金をクレジットカード払いにしている
利用料金の滞納がなく、端末代金の残債務がない場合でも、利用料金をクレジットカード払いにしている場合は要注意です。
自己破産をすると信用情報機関に事故情報が登録されるため、クレジットカードが使えなくなります。弁護士・司法書士に自己破産を依頼した場合には、受任通知が債権者に届いた時点で事故情報が登録されます。
その後はクレジットカードで携帯・スマホの利用料金が決済できなくなるため、放置していると滞納が発生します。そして、滞納が2~3ヶ月続くと携帯・スマホが強制解約されてしまうのです。
クレジットカード払いを利用している場合は、弁護士・司法書士に依頼する前に支払い方法を口座引き落としなどに変更しておけば問題ありません。
自己破産で家族の携帯契約も解約されることがある?
自己破産して携帯・スマホが強制解約される場合、家族の携帯契約まで強制解約されることがあるので注意しなければなりません。
自己破産する人が契約者となって家族の携帯・スマホも契約している場合、メインの契約が強制解約されると家族分の契約も解除されてしまいます。
一方、家族がそれぞれ個別の契約をしている場合には、そのうちの1人に対する強制解約が家族の携帯契約に影響を及ぼすことはありません。
また、夫が契約者となって妻と子の携帯・スマホも契約していて、妻が自己破産する場合なら、夫が妻の利用料金も含めて滞納なく支払っていれば、解約されることはありません。
携帯の強制解約を避けるために自己破産前にできること
携帯・スマホの利用料金を滞納している場合や、端末の分割代金が残っている場合でも、以下の対処法によって強制解約を避けることが可能です。
第三者に一括払いしてもらう
自己破産前に滞納料金や端末代金を一括返済すると「偏頗弁済」に当たります。偏頗弁済は免責不許可事由とされているので、自分で一括返済をすると自己破産をしても免責が許可されなくなる可能性があります。
しかし、第三者に支払ってもらうことは問題ありません。離れて暮らしている親や兄弟、親戚、友人などに頼める場合は一括払いをしてもらうとよいでしょう。
ただし、生計を同じくする人に一括払いをしてもらうと、実質的に本人の財布から支払ったものとみなされ、免責不許可とされる可能性があります。そのため、同居の家族に頼むのは避けるべきです。
滞納料金や端末代金の一括返済が許されることもある
状況によっては、本人が滞納料金や端末代金を一括返済しても、自己破産で免責が許可されることもあります。
偏頗弁済が免責不許可事由に当たるとはいえ、何百万円もの借金を抱えている状態で数千円か数万円の滞納料金や端末代金を優先的に支払っただけで免責不許可となるのかといえば、そうとも限りません。
免責不許可事由があっても軽微な場合はそのまま免責が許可されますし、軽微とはいえない場合でも裁判所の裁量による免責(裁量免責)が許可されることもあります。
特に携帯・スマホは仕事や日常生活で重要なものなので、本人による一括返済が絶対に許されないというものでもないのです。
ただ、いくらまでなら一括返済しても許されるのかという基準は明確ではありませんし、裁判所によって運用が異なることもあります。
あくまでも偏頗弁済は免責不許可事由に当たりますので、自己判断で一括返済することは控えてください。自己破産手続きの経験が豊富な弁護士または司法書士にご相談の上、判断を仰ぐべきです。
自己破産前に注意すべきその他のポイント
先ほど、携帯・スマホの利用料金をクレジットカード払いにしている場合は、自己破産前(弁護士・司法書士に依頼する場合は依頼前)に支払い方法を変更すべきであるということをご説明しました。
それ以外にもクレジットカード払いを利用している支払いがあれば、自己破産前に変更しておきましょう。
その他にも、自己破産前には以下の点に注意する必要があります。
キャリア決済の利用は控える
キャリア決済とは、商品購入やサービス利用の料金を携帯・スマホの利用料金とまとめて支払うことができるという、携帯電話会社が提供している決済サービスのことです。
手元にお金がなくても買い物やサービスの利用ができるため、特にクレジットカードが使えない場合には便利なサービスです。
しかし、使いすぎて支払いができなくなると携帯・スマホの利用料金を滞納することになるので、携帯・スマホの強制解約につながりかねません。
借金問題を完全に解決するまでは、このような後払い式のサービスの利用は控えた方がよいでしょう。
高額の利用は控える
キャリア決済を使わないとしても、油断すると携帯・スマホで高額の利用料金が発生することがあります。
- 長時間の通話
- 動画の視聴などによるギガの大量消費
- 有料アプリの購入
- ゲーム課金
これらの行為は、高額利用につながりやすいといえます。
一般的な利用の範囲を超える高額な利用料金を支払っていると、自己破産手続きにおいて「浪費」とみなされる可能性があります。
浪費も免責不許可事由のひとつですので、著しい浪費をしている場合は自己破産をしても免責が許可されません。
自己破産をする以上は、携帯・スマホの利用は常識の範囲内にとどめるとともに、利用料金をなるべく抑えるように料金プランの見直しなどもした方がよいでしょう。
自己破産後に新規で携帯契約できる?
利用料金の滞納や端末の分割代金が残っていたために携帯・スマホを強制解約されてしまった場合、自己破産後に新規で携帯契約をできるのかが気になるところでしょう。以下でご説明します。
免責確定後は可能
通常、利用料金を滞納したままでは同じ携帯電話会社と再契約はできません。
また、他社に新規契約を申し込んでも断られてしまいます。なぜなら、利用料金の不払い情報は携帯電話会社間で共有されているからです。
携帯電話会社の多くは、次の機関に加盟しています。
- TCA(電気通信事業者協会)
- TELESA(テレコムサービス協会)
携帯・スマホの利用料金を不払いにすると、その情報がこれらの機関のデータベースに登録されます。そして、加盟している携帯電話会社はその情報を見ることができます。
そのため、不払者情報が登録されていると携帯・スマホの再契約や新規契約は断られてしまうのです。このことを「携帯ブラック」といいます。
ただし、自己破産をして免責許可決定が確定すると、TCA・TELESAに登録されていた不払い情報は削除されます。その後は、他社と新規契約することが可能です。
なお、不払いとした携帯電話会社の社内には滞納に関するデータが残り続けるため、免責後も再契約を断られる可能性もあります。再契約してもらえるかどうかは、その携帯電話会社の判断次第です。
端末の分割購入はできないことに要注意
新規契約や再契約が可能な場合でも、自己破産後は携帯・スマホ端末の分割購入が難しくなることに注意が必要です。
なぜなら、端末の分割購入はローンの一種に当たるため、信用情報機関に登録された事故情報が影響してくるからです。
自己破産すると、以下の信用情報機関に事故情報が登録されます。
- CIC(株式会社シー・アイ・シー)
- JICC(株式会社日本信用情報機構)
- KSC(全国銀行個人信用情報センター)
端末の分割購入を申し込むと、携帯電話会社はCICに登録された個人信用情報を照会します。そこに事故情報が登録されていると支払い能力に問題があると判断されるため、通常は分割購入を断られてしまうのです。
自己破産による事故情報はCICに約5年は残り、その間は基本的に端末の分割購入はできません。
自己破産後に新規契約を断られたときの対処法
新規契約を断られてしまった場合でも、以下の対処法により携帯・スマホを使用することが可能となります。
格安SIMに申し込む
大手の携帯電話会社はすべてTCAとTELESAに加盟していますが、格安SIM業者の中にはこれらの機関に加盟していないところもあります。
TCA・TELESAに加盟していない業者であれば携帯ブラックの影響を受けませんので、新規契約ができる可能性が高いです。
格安SIMを利用すれば携帯・スマホ料金を抑えることにもつながりますので、検討してみるとよいでしょう。
預託金制度を利用する
預託金制度を利用すれば、大手の携帯電話会社でも新規契約や再契約ができる可能性があります。
預託金制度とは、最初にまとまった金額を携帯電話会社に預けた上で携帯・スマホの契約をする制度のことをいいます。
契約後に利用料金の滞納が続いた場合などには、携帯電話会社は預託金の中から滞納金を回収することができます。解約する際に預託金が残っていれば、返してもらえます。
このように、担保のような形でお金を預けることにより、支払い能力に問題があると思われる人でも新規契約できる可能性があるのです。
docomo、au、ソフトバンクといった携帯大手三社はいずれも預託金制度を導入しており、金額は1契約につき最大10万円とされています。
預託金制度で契約できるかどうか、いくらを預けなければならないかは携帯電話会社の判断によりますが、一度問い合わせてみるのもよいでしょう。
端末の購入が必要な場合は一括払いする
端末を分割購入できないために新規契約ができないという場合には、一括払いで購入することです。
信用情報機関に事故情報が登録されていても一括払いは問題なくできますので、安価な機種や中古の携帯電話などを探してみましょう。
家族名義で契約する
ご自身で新規契約することが難しい場合は、家族名義で契約するのもひとつの方法です。
ご家族が携帯ブラックの状態でなければ問題なく新規契約ができますし、信用情報機関にご家族の事故情報が登録されていなければ、端末の分割購入も可能です。
自己破産に不安や疑問があるときは弁護士・司法書士に相談を
自己破産をしようと考えても、携帯契約をはじめとして、さまざまな不安や疑問があることでしょう。そんなときは、法律の専門家である弁護士または司法書士に相談することを強くおすすめします。
状況に応じて、携帯・スマホの強制解約を避けるための対処法や、新規契約をするためのポイントなどについてアドバイスが得られます。
また、弁護士・司法書士に自己破産手続きを依頼することで以下のメリットも得られます。
- 受任通知の送付により督促と返済がストップする
- 自己破産の複雑な手続きをすべて任せられる
- 免責が許可されるよう全面的にサポートが受けられる
- 状況によっては自己破産以外の解決方法も提案してもらえる
まとめ
携帯契約は、自己破産によって直接的に影響を受けるわけではありません。
しかし、借金の支払いに追われていると、携帯・スマホの利用料金や端末代金の分割払いが滞っていることもあるのではないでしょうか。その場合には自己破産することで携帯契約が解除されたり、新規契約に支障をきたすこともあります。
そんなときでも弁護士・司法書士に相談すれば、自己破産後も携帯・スマホを使用できるようにサポートしてくれます。
債務整理の手続きに詳しい弁護士・司法書士の力を借りて、自己破産のデメリットを最小限に抑えつつ、借金からの解放を目指しましょう。