- 男女間のお金の貸し借りでは借用書がないなどの事情でトラブルになりやすい
- 金銭トラブルを放置すると感情的な対立がエスカレートしやすく危険である
- 男女間の金銭トラブルを解決するには返済額と返済期限を明確にする必要がある
- 相手と直接話し合うのが難しい場合は専門家に交渉を任せた方がよい
交際中の男女間でお金の貸し借りをして、金銭トラブルに発展するケースは非常に多いです。
順調に交際している間は「返せるときに返してくれればいい」と言われていたのに、別れ話になると「今すぐ全額を返せ」などと迫られ、困っている方もいるのではないでしょうか。
一般的に個人間の借金では感情的な対立が発生しやすいですが、男女間の金銭トラブルでは特にその傾向が強いといえます。適切に解決するためには、法律上のルールを正しく知っておくことが大切です。
この記事では、男女間でお金を借りた側の方に向けて、金銭トラブルを放置するリスクや解決するための注意点などについて、わかりやすく解説します。
男女間で金銭トラブルになりやすいケース
男女間におけるお金の貸し借りには以下の特徴があるケースがあり、それが原因で金銭トラブルに発展しやすいです。
借用書がない
お金を貸し借りするときに、借用書を作ることは少ないでしょう。借用書がなければ、いくら借りたのかが不明確になり、双方の認識に食い違いが生じがちです。
そのため、貸した側が「貸していた10万円を返せ」と主張するのに対して、借りた側は「5万円しか借りていない」と反論するケースのように、当事者の主張が対立し、解決に至らないトラブルが起こりやすくなります。
「借りた」のか「もらった」のかが曖昧
男女間では、デート代や生活費などを一方が支払う場合に、「借りた」のか「もらった」のかが曖昧なケースが非常に多いです。
しかし、一方が「もらった」と認識しているのに対して、相手が「貸した」と認識しているケースも多く、別れた後などに返済を迫られることもよくあります。
返済期限を決めていない
お金を借りた場合でも、いつまでに返さなければならないのかを決めていないことも多いものです。
その場合、貸した側は「いつでも返済を請求できる」と考えていることが多いのに対して、借りた側は「それなりの期間は返済を待ってもらえるはず」と考えていることが多いでしょう。
このような場合に、貸した側が「すぐに返してほしい」と主張しても、借りた側がすぐにはお金を用意できず、「返せ」「待ってほしい」といった言い合いが起こりがちです。
別れ話などで感情的になってしまう
別れ話で双方が感情的になってしまうのはやむを得ませんが、お金の問題を抱えていると特に、感情的な対立がエスカレートしやすいです。
順調に交際している間は、貸した側が「返さなくていい」「返済はいつでもいい」などと言っていた場合でも、別れ話がこじれると態度を翻し、「やっぱり返してほしい」「すぐに返せ」などと迫ることもよくあります。
男女間のお金の貸し借りで注意すべきこと
ここでは、男女間の金銭トラブルを適切に解決するために、知っておくべき法律上のルールをご説明します。
口約束でも借金の契約が成立する
お金の貸し借りをすることを「金銭消費貸借契約」といいますが、この契約は原則として口約束だけで成立します。
つまり、返す約束の下にお金を出してもらった時点で、金銭消費貸借契約が成立するのです。したがって、借用書がなくても、借りた側は返済義務を負います。
利息は合意がなければ支払う必要がない
返済条件は、借りたときの合意内容に応じて定まります。利息については、いくらの利率で支払うのかについて合意していない限り、支払う必要がありません。
したがって、貸した側から「借金には利息がつきものだ」などと言われて利息を請求されても、利息の支払いに応じる必要はないのです。
ただし、返済が遅れた場合の遅延損害金は、請求された場合には法定利率にしたがって支払う必要があります。法定利率は、現在のところ年3%(2020年3月31日以前の借金については年5%)です。
返済期限を決めていない場合は請求から1週間後に支払う必要がある
返済期限を決めていない場合、貸主はいつでも「相当の期間」を定めて返済を請求できることとされています。「相当の期間」とは、一般的に1週間程度と考えられています。
したがって、返済期限を決めていない借金について、貸主から突然、返済を請求された場合は、そのときから1週間以内に返済しなければなりません。
長期間が経過すると時効が成立することがある
借金を返さないまま以下の期間が経過すると、消滅時効が成立します。
- 返済期限を決めた場合…返済期限の翌日から5年
- 返済期限を決めていない場合…借入日の翌日から5年
- 一部を返済した場合…最後の返済日の翌日から5年
ただし、2020年3月31日以前の借金については、時効期間が5年ではなく10年となります。
消滅時効が成立した場合は、「時効援用」をすることで返済を拒否することが可能です。
契約の成立を証明する責任は貸した側にある
「借りた」のか「もらった」のかで意見が対立する場合は、貸主が「貸した」ことを証明しなければ、返済の請求は認められないのが法律上のルールです。
また、借入額や返済期限、利息支払いの要否などで意見が対立した場合も、貸主が自分の主張を通すためには、貸主側でその主張内容どおりの契約が成立したことを証明しなければなりません。
ただし、借用書がない場合でも、次のような証拠によって契約の成立を証明される可能性があります。
- 領収書
- 銀行通帳の履歴
- 振り込み明細書
- メールやLINE、SMSなどでのやりとり
- 当事者の会話を録音したデータ
- 第三者の証言
男女間の金銭トラブルを放置するリスク
男女間の金銭トラブルを放置すると、以下のように深刻なトラブルに発展するおそれがあります。
感情的な対立がエスカレートする
別れ話に伴い金銭トラブルが発生した場合に、放置することで感情的な対立がエスカレートすることは、容易に想像できるでしょう。感情的な対立により、双方が大きなストレスをかかえてしまいます。
順調に交際していた場合であっても、お金の問題が原因で感情的なしこりが生じ、別れにつながることがあります。夫婦でも、金銭問題が原因で離婚に発展するケースは多いです。
平穏な生活を取り戻すためには、早期に金銭トラブルの解決を図ることが大切です。
脅迫的な請求や嫌がらせを受けることがある
感情的な対立がエスカレートすると、貸した側が次のような言動をとることもあります。
- 連日の電話やメール、LINEなどで頻繁に返済の催促をする
- 大声で返済を迫る
- 「殺すぞ」「家族に請求するぞ」など脅迫的な台詞で返済を要求する
- 別れたのに自宅へ催促に来て居座る
- つきまといや待ち伏せをする
- 殴る、蹴る、突き飛ばすなどの暴力を振るう
男女間の金銭トラブルが原因で傷害事件や殺人事件に発展したケースも、時折、報道で見聞きするところです。金銭問題を軽く考えてはいけません。
給料や預金を差し押さえられることも
貸主が法律上のルールに則って請求手続きを進めた場合、放置していると裁判を経て、強制執行の手続きに進むことがあります。
強制執行とは、確定判決などの債務名義に基づき、裁判所へ申し立てることにより、債務者の財産を差し押さえて、強制的に債権の回収を図る手続きのことです。
裁判を起こされても放置していると、ある日突然、給料や預金を差し押さえられる可能性があるので注意しましょう。
男女間の借金で返済を迫られたときの解決方法
実際に金銭トラブルが生じ、借りたお金の返済を迫られたときは、次のように対処していきましょう。
返済すべき金額と期限を確認する
まずは、いくらを、いつまでに返済しなければならないのかを確認しましょう。
確認する際には、できる限り客観的に契約内容を明らかにすることが大切です。記憶だけに頼っていると、相手と主張が食い違う場合には平行線となってしまいます。
借用書がない場合は、手元にある資料(領収書や通帳、メールなど)を探してみましょう。
返済条件について話し合う
返済額や返済期限について相手と主張が食い違う場合には、当事者間の話し合いによって返済条件を新たに取り決めることが基本です。感情を抑えて誠実に話し合えば、減額や返済期限の延期に応じてもらえる可能性もあるでしょう。
この話し合いがまとまれば「準消費貸借契約」が成立し、以後は、合意した内容を超える請求を受けても応じる必要はなくなります。
準消費貸借契約が成立した場合には、合意内容を証拠化するためにも、合意書を作成して取り交わしておくことが大切です。
債務不存在確認訴訟を提起する
話し合いがまとまらない場合には、「債務不存在確認訴訟」という裁判手続きを利用して解決を図ることも考えられます。
債務不存在確認訴訟とは、相手に対して債務を負っていないことを裁判所に認めてもらうための裁判手続きです。具体的には、以下のようなことを主張することになります。
- お金を借りていない場合…「原告の被告に対する債務は存在しない」
- 相手が過大な請求をしている場合…「原告の被告に対する債務は○○円を超えて存在しない」
債務整理を検討する
相手から借りたお金を返す余裕がなく、減額や返済猶予の話し合いにも応じてもらえない場合は、債務整理による解決を検討しましょう。
債務整理とは、法律上のルールに則った手続きにより、借金を減免できる制度のことです。
自己破産や個人再生の利用条件を満たせば、裁判所の決定をもって強制的に借金が減免されます。
任意整理では相手との合意が必要ですが、弁護士や司法書士を通じて話し合うことで、返済可能な条件で合意できる可能性もあります。
男女間の金銭トラブルの解決を弁護士・司法書士に依頼するメリット
男女間で金銭トラブルが発生したら、早期に弁護士または司法書士に相談し、必要に応じて解決を依頼することをおすすめします。法律の専門家によるサポートを受けることで、以下のメリットが期待できます。
- 返済義務の有無や内容を確認する方法についてアドバイスが受けられる
- 証拠の収集をサポートしてもらえる
- 状況に応じた最適な解決方法が分かる
- 相手との交渉を代行してもらえる
- 自分で相手と直接やりとりする必要がなくなるため、感情的な対立を回避できる
- 債務整理の複雑な手続きを一任できる
難しいことは弁護士や司法書士に任せて、労力や精神的な負担を軽減しつつ、満足できる形での解決が期待できるのです。
まとめ
男女間の金銭トラブルを解決するためには、まずは落ち着いて、返済義務の有無や内容を明らかにすることが重要です。その上で、話し合いや裁判、債務整理など、状況に応じて適切な解決方法を検討していきます。
しかし、専門的な法律の知識が不足していると時間だけが過ぎていき、トラブルが深刻化することにもなりかねません。困ったときは一人で抱え込まず、弁護士・司法書士に相談して専門的なアドバイスを受けた方がよいでしょう。
解決方法は必ずありますので、早めに一度、弁護士・司法書士に相談してみましょう。

