比較的新しい資金調達方法であるファクタリング、その金利は一体どのくらいなのでしょうか?
ファクタリングの利用を検討されている方にはとても気になる項目ですね。
じつはファクタリングは融資でないため、費用として表示されるのは金利でなく手数料になります。
本記事では、ファクタリングの手数料を金利に置き換えた場合の比較や融資との違い、手数料の相場と安くするコツなど、詳しく解説します。
ファクタリングの手数料について詳しく知りたい方はぜひ参考にして下さい。
ファクタリングは金利でなく手数料
ファクタリングは売掛債権を売却し現金化して資金調達を行う方法です。
そのため金利は発生せず、売買に係る手数料が発生します。
一方金利とは、金銭の貸借でお金を借りた側から貸した側に支払う賃借料(利息)を決める際の元金に対する割合をいい、年利○%で表します。
そのため通常、金利は融資・ローン等で使い、ファクタリングでは手数料を使用するのです。
また売買手数料はファクタリング会社が各々独自の審査で決めています。
金利は融資、ファクタリングには手数料を使う理由
ファクタリングは売掛債権の売買であり融資ではないので、仕組みが根本から違っており、通常、金利という用語は使いません。
業界ではファクタリングに手数料という用語を共通して使用しています。
また金利の場合は年率で計算しますが、手数料は月利で計算し顧客に表示しています。
これは売却の対象である売掛債権が支払までの長さが通常1~3カ月と短いこととも関係しています。
ファクタリングの手数料を金利換算すると
前段で説明したように、ファクタリングと融資はその仕組みが違っています。
しかし融資金利における年利表示(年○%)は多くの事業者にはなじみがあり、ファクタリングの手数料は月利表示されているものの、手数料を年利換算して金利と比較することも意味がないわけではありません。
そこで手数料を金利換算してみます。
たとえば手数料が5%となっていたサイト1か月の売掛債権の場合、年利に直すには単純に12倍すればいいので年利60%となります。(サイト2カ月の売掛債権なら月利は2.5%となるので年利30%です。)
銀行や消費者金融の融資金利が年利で2%~18%程度なので、単純比較すると手数料はいかにも高そうに見えますね。
でも実際、ファクタリングは多くの事業者の間で盛んに利活用されています。
なぜでしょう?
次章では、手数料が金利ベースでは高くてもよく利用されている理由を詳しく解説します。
手数料を金利に直すと高いがそれでもファクタリングを使う理由
ファクタリング手数料は金利換算したら高いものの、それでも多くの事業者が利用している理由は以下の7つです。
金利には厳しい規制があるが手数料にはない
じつは金利には利率の上限を規制している2つの大きな法律があります。
利息制限法と出資法です。(法律で保護する対象とか、各法の経緯とか細かい点はありますが、今回は詳細な解説は省略します。また現在は利息制限法と出資法も上限金利は20%で統一されています。)
参照先: 高金利の処罰|出資法|E-GOV法令検索
資金を融資する側は上記の各法を意識して金利で上限を超えないよう貸付けしないと、その金利を否定されるばかりか、ケースによっては刑事罰まで受けてしまいます。
一方、ファクタリング取引で使用する手数料には上記のような法律はありません。
当事者間の自由な意思によって手数料を決め合意したら取引できます。
これが、手数料が年率では高くてもファクタリングが利用されている理由の1つです。
融資よりハードルが低く資金調達のスピードが早い
融資の場合、事業者が障害としてまずぶつかるのがその審査の高さです。
特に銀行融資は起業して間もない会社や事業不振の会社には厳しくなかなか審査に通りません。
しかしファクタリングの場合、そのような心配は少なくなり審査ハードルは下がります。
なぜならファクタリングで重視されるのは、売主の信用でなく売掛先の信用度だからです。
売掛先の信用度が高ければ業者も買取りしてくれるのでスムーズに資金調達できます。
さらに融資なら審査が下りて実行されるまで長ければ1カ月もかかることもありますが、ファクタリングでは早ければ申込して即日現金化も可能です。
償還請求権がない
償還請求権がないこともファクタリングがよく使われる理由の1つです。
償還請求権とは、ファクタリングが行われた後、期日が来て売主から業者に決済代金の入金がなされないとき、業者がさかのぼって代金の返済を請求できる権利のことをいいます。
これが買取り条件に含まれていると売主には大きなリスクになりますが、通常、ファクタリングには償還請求権がありません。
ファクタリング会社が債権回収のリスクを背負っています。
償還請求権がないことで売主は安心してファクタリングを利用できるのです。
担保や保証人が不要
担保や保証人が不要なこともファクタリングが利用されている理由の1つです。
最近は融資でも担保や保証人不要の案件も増えていますが、それでも借りる金額によっては担保の設定や保証人の提供は一般的です。
一方ファクタリングは貸付でなく債権の売買取引なので、担保の設定や保証人の提供は必要ありません。
これがファクタリング利用の垣根を低くするとともに、担保にする不動産等を持たない事業者でもより気軽にファクタリングを利用できる理由にもなっています。
取引先に利用実績が知られない
取引先にファクタリングを利用していることを知られないのも利用メリットの1つです。
ただしこれは2社間取引限定のメリットになります。
取引先(売掛先)に利用実績を知られることで、「あの会社は資金繰りが苦しいのでは?」という懸念を持たれるリスクもあり、利用者としてもできれば内緒で資金調達したいものです。
2社間取引では取引先への通知がないのでこれを可能にします。
一方2社間取引では、業者の回収リスクが上がるため手数料が割高にはなります。
しかし取引先との長期的な取引を考えれば、2社間取引のメリットは十分あるでしょう。
会社が赤字や債務超過でも利用できる
会社が赤字や債務超過の状態でも、売掛金さえあればファクタリングを利用できるのは大きなメリットの1つです。
これが融資だと、赤字や債務超過の状態に陥っていると、審査ハードルがかなり上がり、最悪の場合、貸付が受けられません。
しかしファクタリング会社が審査するのは売掛先の信用なので、信用度の高い売掛金さえ確保していれば、売主の経済状態に関係なくファクタリングが利用できます。
負債が増えない
ファクタリングはお金の貸付でなく債権の譲渡です。
これは会社の持つ売掛金が単に現金に変わるだけの話なので、会計上の「負債」は増えません。
一方融資を受けると負債が増えるので、決算上の見た目も悪くなる上に、外部への信用情報にも影響してきます。
ファクタリング利用で負債の記録が残らないことは、以後の各種の資金調達でも有利に働きます。
ファクタリングの手数料相場
ファクタリングの手数料相場は業者や契約形態によってかなりの差があります。
ファクタリングに関心のある方ならとても気になりますね。
そこで融資の金利なども参考にしつつ、手数料の相場を見ていきましょう。
2社間取引及び3社間取引
ファクタリングにおける2社間取引とは、ファクタリング会社と売主(利用者)の間で取引が完結する契約形態です。
一方、3社間取引とは、ファクタリング会社と売主に加え、売掛先が取引に参加してくる契約形態になります。
2社間取引及び3社間取引は立場によってメリットデメリットが異なります。
そしてそのメリットや回収リスクが手数料の高さに反映されているのです。
各取引における手数料相場は以下のようになります。
- 2社間取引…売掛債権額の10~20%
- 3社間取引…売掛債権額の1~9%
一方融資における金利相場を紹介すると、銀行や消費者金融で差はありますが、概ね年利2~18%程度です。
ファクタリングの手数料は月利表示なので、たとえば、ファクタリングの譲渡債権の期間が3カ月、手数料が10%とすると、年利は40%(10%×4)とかなりの高さになってしまいます。
ただし融資とファクタリングでは利用期間が質的に異なるので一概に比較はできません。
事例のようにファクタリングは売掛債権の期間に沿って短期(1~3カ月)で利用することが大半で、利用メリットも多く、それらの要素も考慮すれば必ずしも手数料相場が融資金利より高いともいえないのです。
手数料には基本手数料以外に別途手数料があるので注意!
上記のように必ずしも高いと言い切れない手数料ですが、手数料にも業者が提示する基本手数料以外に別途手数料がありますので注意して下さい。
別途手数料の項目には以下のようなものがあります。
- 債権譲渡登記費用
- 印紙代
- 振込手数料
- 交通費
- 調査費
各項目の詳細な説明は省略しますが、この別途手数料についても、業者によって、基本手数料に含んでいる先もあれば、別途要求してくる先まであり対応は様々です。(基本手数料を含み実質手数料と表記している業者もあり)
したがっていくら基本手数料が安く見えても、別途要求される手数料が高額であれば、トータル的には手数料が高くなりますので、契約前にはきちんと確認することが重要になります。
ファクタリングの手数料を決める要素
ファクタリングを利用する際、業者に支払う手数料は様々な要素によって決められますが、どの要素を重視するか会社によって異なる部分はありつつも多くは共通しています。
以下、それぞれの要素を詳しく説明します。
売掛先の信用力
売掛債権の支払を保証している売掛先の信用力が高ければ高いほど、手数料は安く抑えることができます。
ファクタリング会社が審査で最も重視する点は、期日には買取りした売掛金の代わり金がきちんと入金されるかどうかという点です。
代わり金が入金されなければ、それはそのままファクタリング会社の損失となってしまいます。
特に設立間もない会社が発行した売掛金などは売掛先の事業も不安定ですし、回収リスクも高いのでその分手数料を高く設定せざるを得ません。
売掛先の信用力がそのまま手数料の高さに反映されるのです。
利用実績・利用回数
利用実績もまた手数料を決める重要な要素です。
過去に業者での利用実績があり、利用回数が多ければ多いほど、手数料を引下げることができるでしょう。
過去の利用実績は、その利用者が売掛金の売却から決済までの流れを繰り返し滞りなくできているという証明です。
買取り業者もそのような信頼できる利用者に対しては手数料を安くしてサービスします。
売掛債権額
ファクタリング会社に売却する売掛債権額が高ければ高いほど、業者は手数料を安くできます。
1つの例をあげます。
仮に売掛金60万円に対する手数料を10%に設定すると、手数料は6万円です。
売掛金300万円に対する手数料を2%に設定すると、手数料は6万円となって業者の手取りは同じになります。
一方でファクタリングの手続きでは、売掛金の買取りに係る手間やコストは、売掛債権の金額の大きさにあまり関係なくほとんど一定という特徴があります。
そうなると業者としたら、売掛金300万円に対する手数料を10%にしたら手数料は30万円も取れるので、買取りに係るコストが一定としたら、利益幅の範囲内でその分大口の利用先には手数料を引下げてもよいという動きが予測できます。
交渉で大口債権先の方が少額債権先より手数料を引き下げてもらいやすいというのは上記の理由があるのです。
契約の形態
ファクタリングには2社間取引と3社間取引がありますが、どちらの契約形態を取るかによっても、手数料が大きく変わってきます。
ファクタリング会社が負担する回収リスクがそれぞれの契約形態で大きく異なるからです。
利用者としたら、自社がどのような契約形態のファクタリングを利用したら便利か、手数料は許容範囲かなど、色々な要素を比較検討して適切な契約形態を選ぶ必要があります。
ファクタリングの手数料を押える方法
前章のように、ファクタリングの手数料は様々な要素が絡み合って最終的に決定されますが、それはあくまでファクタリング会社側から見た視点です。
一方で利用するのはあくまで売掛債権を持つ売主です。
そこで本章では売主側から見た手数料を抑える方法を5点紹介します。
できれば3社間ファクタリングを使う
手数料を抑えるためには、できるだけ2社間取引を使わず、3社間取引を使うことをおすすめします。
2社間取引と3社間取引の手数料を比較したとき、仕組み上、安いのは間違いなく3社間取引です。
売主にとって利用前に売掛先に売却の承認を求めるというハードルはありますが、了解さえ得られたら手数料は格段に安くなります。
売掛債権額を大きくする
売掛債権額は手数料決定の重要な要素の1つです。
そのため売掛債権の金額を増やすことで手数料を低く抑えることができます。
ファクタリング会社にとっても、少額案件を数多くこなすより、高額の案件を受けた方が処理経費も抑えられ利益を上げやすくなります。
当然その効果は手数料を安くできる対応にも表われてきます。
支払期日まで短い売掛債権を売却する
支払期日までできるだけ短い売掛債権を選んで買取りを依頼するのも手数料を抑える方法です。
業者が引き受けた売掛債権の支払期日が長いと、支払までの間に売掛先が倒産したり差し押さえのリスクが上がったりして、回収できなくなるリスクも上がります。
そのリスクは手数料に反映されて高くなりがちなので、売主に支払期日の短い売掛債権があるのなら、できるだけ優先的に売却に活用することで、相手のリスクを下げて手数料を節約できます。
複数のファクタリング会社から相見積もりを取る
ファクタリング会社によって手数料の相場は異なっています。
なぜなら審査基準は業者によって様々だからです。
手数料を抑えるため、複数の業者から相見積もりを取れば、比較したり色々な質問を行ったりすることで、自ずと適正な相場の手数料を把握できるようになり、最終的に手数料も安くすることができます。
同じファクタリング業者を利用する
同じファクタリング業者で取引実績を積むことも手数料を安くできるテクニックです。
業者としても、毎回新規顧客を獲得して一から審査に手間をかけるより、すでに問題なく利用実績を積んでいる利用者の方がコストもかけず買取りができます。
毎回一定の利益も確保できるので、その分、手数料も安く対応できるのです。
ファクタリング手数料には消費税は含まれる?
最後にファクタリング利用者にとって気になる話題を取り上げます。
ファクタリング手数料には消費税は含まれるでしょうか?
結論から先に述べれば手数料には消費税はかかりません。
その根拠は国税庁の公式サイト「金銭の買取り等に対する課税関係」の中で、「金銭債権の譲受対価として手数料は非課税となる」と表記されています。
参照先: 金銭の買取り等に対する課税関係(回答要旨)|国税庁
にもかかわらず、契約前に手数料に係り消費税を要求されたら、それは悪質な違法業者であることを疑った方が適切です。
まとめ
この記事では、ファクタリングの手数料を金利に換算するときの方法や融資との比較、利用のメリットや手数料を安くするコツなど、詳しく解説しました。
手数料を金利換算すると100%を越えることも珍しくありません。
しかしファクタリングには融資にはない様々なメリットがあります。
ファクタリングは融資の金利と単純に比較するのでなく、その利便性も踏まえて利用を検討すべきでしょう。
繰り返しますが、ファクタリングは金利でなく手数料表示です。
比較の際には、手数料の中身をよく理解して、決して単純比較しないよう注意を払って下さい。