クラウドファクタリング、資金調達に関心のある方なら、よく目にしたり聞いたりする名前ですよね。
ではクラウドファクタリングとは、一体どのような仕組みでどんな特徴を持った方法なのでしょうか?
クラウド(インターネット)+ファクタリング(売掛金譲渡)は、その組み合わせからおおよそイメージできると考えますが、その通り、クラウドファクタリングはオンライン完結型の債権売却による資金調達の方式をいいます。
本記事においては、クラウドファクタリングについて、その活用の仕方や利用上のメリット・デメリット、注意点など詳しく解説します。
クラウドファクタリングとは?
クラウドファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に譲渡する際、ネット完結、面談不要で申込みから審査・契約まで一貫して行えるサービスのことをいいます。
近年は従来の対面型ファクタリングに加えて、その利便性からWEB完結型のオンラインファクタリングの利用が広まっていますが、じつは「クラウドファクタリング」は一般的な通称ではありません。
クラウドファクタリングは、OLTA株式会社というネット完結型のファクタリング会社が2017年に商標登録した名前で、他社が「クラウドファクタリング」という商標を使って商品やサービスに使うことができないようになっています。
参照先:TORERU商標検索|商標情報|クラウドファクタリング
しかし「クラウドファクタリング」を他社のオンライン完結型のファクタリングと比較したときに、異なるのは審査に係る必要書類や手数料程度で、サービス内容や入金までのスピード等に際だった差はありません。
そのため本記事では、便宜上、以下の解説でも、オンライン完結型のファクタリングをクラウドファクタリングと称して解説していきます。
なお、クラウドファクタリングの場合、業者と利用先の取引形態は2社間ファクタリングがほとんどであり、3社間ファクタリングに対応中の業者は少ないという認識で以下読み進めて下さい。
クラウドファクタリングの主な特徴
クラウドファクタリングの主な特徴は以下の2点です。
申込や審査・契約までオンラインで完結
クラウドファクタリングの特徴の1点目は、申込から審査・契約までオンラインで完結できるという点です。
クラウドファクタリングの手続きの流れを示すと以下のようになります。
- 申込…ネット経由で公式サイトにアクセス、申込フォームへ必要事項を入力
- 審査書類の提出及び審査…紙の書類(決算書、通帳の入出金明細等)をPDF等の電子データに転換後、WEB上にアップロード。その後、AI審査やオンライン面談等
- 契約…電子署名等を用いてオンライン上で契約
- 入金…審査完了後、買取り金を即日または数日以内に振込み入金
以上のように、申込みから契約締結まで全てオンライン上で完結するのがクラウドファクタリングの特徴です。
一般的なファクタリングのように、店舗への来店を要したり、書類を郵送やFAXで送付したりするなどの手続きは一切必要ありません。
対面なし・最短即日で振込入金
クラウドファクタリングの特徴の2点目は、面談不要かつ最短即日で振込入金ができる点です。
クラウドファクタリングでは、一切誰にも会わずに非対面で資金調達ができます。
資金が足りないということを表立って人に知られるのは何かと嫌ですし、資金調達のためにわざわざ業者の窓口に出向くのに億劫さを感じる方は多いでしょう。
その点、クラウドファクタリングを利用すれば、全ての手続きがオンラインで完結しますし、ファクタリング会社へわざわざ時間を掛けて足を運ぶ手間も省けます。
またクラウドファクタリングには、最短即日で振込入金ができるという特徴もあります。
オンライン完結でファクタリングサービスを提供できる業者の多くは、すでに審査もシステム化されており、中にはAIを積極的に活用している業者もいて、審査時間も効率化・短縮化されています。
さらに契約時の書類の締結や署名捺印なども、クラウドサインなど電子契約サービスを利用してネット上で完結し、来店なしで対応できるようシステム化されています。
そのため店頭での通常の契約等と比較しても、かなり手続きに掛かる時間を短縮できます。
クラウドファクタリングを利用すれば、審査や契約に時間が掛からないので、その分、短時間での資金調達が可能なのです。
クラウドファクタリングのメリット
クラウドファクタリングの主な利用メリットは以下の4つです。
振込入金までの時間が早い
クラウドファクタリングを利用すると、入金までの時間が早く、特に資金調達を急いでいる事業者にはとても便利です。
ファクタリングに伴う審査も自動化・システム化されており、申込みから数十分、遅くても数時間以内には終わります。
契約も全てネット上で完結できるので、この手続きにもそれほど時間を要しません。
またクラウドファクタリングは、専業者だけでなく、現在では一般的なファクタリング会社でも従来サービスと併せてクラウドファクタリングに対応している先が増えています。
クラウドファクタリングを利用すれば最短即日で入金されるため、資金を急ぐ先から時間的に余裕のある先まで、利用者の実情に合わせて様々なファクタリングサービスが受けられるようになってきたのは良い傾向です。
対面型に比べて手数料が安い
ファクタリングにおいて、対面型に比べ手数料を安く払って利用できるのがクラウドファクタリングのメリットです。
クラウドファクタリングの提供会社は、オンラインで全ての手続きを完了させ、実店舗を持っていないので、店舗の維持コストやそれに係る人件費も掛かりません。
その分、効率的に事業経営ができるので、コストの浮いた分を手数料の引下げに回せます。
クラウドファクタリングの手数料は平均して2%~9%と一桁台ですが、店舗型業者の手数料は、2社間取引の場合だと、10%~20%以上とかなり高くなります。
そういう点では、融資金利と比較したときはファクタリングの手数料は割高になりますが、同じファクタリングで比較した場合には、クラウドファクタリングの手数料は安いといえます。
審査の必要書類が少ない
クラウドファクタリングでは、一般的なファクタリングの審査に比べて、必要書類を少なくできるというのも利用者のメリットです。
ネット上で必要書類を送付する必要があるため、業者としても必要最低限だけ申込者に求め、必要以上の書類を要求しません。
クラウドファクタリング業者の中には、初回は請求書と通帳のコピーだけ、2回目の利用以降は請求書のみという会社が多くあります。
これが一般的な店舗型業者だと、決算書や確定申告書、資金繰り表、納税証明書等に加え、経営者や個人事業主の本人確認書類まで要求する先もあるので、申込の前に書類の準備に相当時間が必要です。
仕事が忙しく時間がなかなか取れない事業者にとって、必要書類が少なくてもファクタリングの申込ができるクラウドファクタリングはメリットの多いサービスといえるでしょう。
地方に住む事業者でも気軽に利用できる
クラウドファクタリングを利用すれば、地方に住む事業者で近くに利用できるファクタリング業者がなくても、多くの選択肢の中で適切なクラウドファクタリング業者を選んで気軽に利用できます。
日本にあるファクタリング会社のおよそ9割が、本店が東京に集中しているといわれています。
したがって地方都市、とりわけ田舎で事業を行っている事業者にとって、ファクタリングを利用するには様々なハードルがありますが、その点、クラウドファクタリングだと申込から契約締結まで全てオンラインで完結するので、日本国内であれば、所在地や登記に関係なく利用可能です。
クラウドファクタリングであれば、場所を選ばずスムーズに資金調達できて、手数料等の利用条件も同じで利用できるのでメリットは大いにあります。
クラウドファクタリングのデメリット
一方、クラウドファクタリングにも少なからずデメリットはあります。
クラウドファクタリングの利用に係るデメリットは主に以下の3つです。
対面型に比べて審査が厳しく融通が利きにくい
ファクタリングの審査においては、店舗で審査が行われる対面型に比べて、クラウドファクタリングの方がやや厳しめの傾向があります。
加えてその厳しめの傾向のため、利用先の状況に応じて融通を利かした審査や対応ができないのが難点です。
クラウドファクタリングの審査はコンピューターによるシステム審査が基本であり、売掛金の内容や売掛先・利用先の信用等を数値化して、一定以上のスコアを取った先を審査通過させるスコアリングという方式を採用しています。
そのため利用先のスコアが、業者が予め設定した基準点に届かないと、その時点で審査落ちしてしまいます。
しかし対面型の審査においては、多少基準点に達していなくても、面談時の担当者の利用先に対する印象や個別事象が加点されるので、融通が利いて審査に通ることもあります。
ただしその分、対面型ファクタリングは手数料が高くなることは受け入れざるを得ません。
ネット以外の申込方法がない
クラウドファクタリングは全てインターネットを介して行う手続きです。
そのため、利用先のネット環境が充実してなかったり、利用先に操作に必要な知識が乏しかったりすると、申込みから書類のアップロード、契約までそのやり取りに苦労します。
これが対面型の申込だと、業者担当者の様々なサポートが受けられるので、手続きの面で感じるストレスも少ないです。
インターネットに慣れてない方には、クラウドファクタリングはむしろ利用しにくい資金調達方法になってしまうでしょう。
3社間ファクタリングの利用に向いていない
クラウドファクタリングは3社間ファクタリングの利用に向いていません。基本的に2社間ファクタリングのみの利用に限られます。
その理由は、3社間ファクタリングでは契約の当事者に売掛先が加わり、売掛金の譲渡が売掛先に通知されるという手続きがあるので、資金化までに時間が掛かるからです。
一方2社間ファクタリングなら、取引の当事者は利用先と業者だけなので、契約の合意さえできるならクラウドファクタリングは利用する価値があります。
クラウドファクタリングを利用する際の注意点
最後にクラウドファクタリングを利用する際の注意点を4つ解説します。
利便性が高くても過度な利用には注意
クラウドファクタリングはパソコンやスマホから簡単に申込して利用できるので利便性がとても高いです。
しかし簡単に利用できるゆえ、必要性も特に高くないのに過度に利用したり、他の安い資金調達方法があったりしても、クラウドファクタリングを優先して使うこともあります。
しかしファクタリングは他の資金調達方法と比較しても手数料は高く付きます。
過度に利用すると、ファクタリングは資金繰りの工面を通じて会社の収支を圧迫するリスクが高いです。
クラウドファクタリングは、あくまで一時的な資金繰りを緩和する手段として活用し、無計画かつ過度に利用するのは控えましょう。
ケースによっては対面型より手数料が割高になるときもある
クラウドファクタリングの場合、ケースによって対面型より手数料が高くなることもあるので注意しましょう。
クラウドファクタリングの審査の場合、システムによるスコアリング審査が行われるので、判定次第では信用度が低いと判定され、クラウドファクタリングの中でも高めの手数料が設定されるリスクがあります。
一方対面型ファクタリングの審査では、クラウドファクタリングに比較して、多めの審査資料を出すので、担当者の判断次第では信用力を高めに評価されて、安い手数料を適用してくれるかもしれません。
すると同じ売掛金を売却するのにもかかわらず、対面型ファクタリングの手数料の方がクラウドファクタリングの手数料より低くなるという逆転現象が起こってきます。
最終的に従来の対面型を利用するか、クラウド型を利用するかは利用先次第です。
諸条件を比較しながらベストの選択をしましょう。
クラウドファクタリングの利用が向かない事業者もあるので注意
クラウドファクタリングは便利ですが、実際のところ、そのクラウドファクタリングの利用が向かない事業者もあるので注意して下さい。
具体的に利用が向かない事業者というのは以下のような方をいいます。
- 時間的に余裕があって、業者との面談の機会など比較的自由に作れる事業者
- 大都市に住んでいて、事業所の近くにいつでもファクタリングの利用や相談ができる業者がいる事業者
- ファクタリングの利用以外にも、業者の提供している他の資金調達サービスの相談や専門的コンサルティングを期待している事業者
上記のような状況にある事業者、あるいは要望のある事業者は、クラウドファクタリングを利用するより、むしろ対面型のファクタリング会社を利用した方が活用メリットは大きいといえます。
違法・悪徳業者との取引リスク
ファクタリング業者の中にも、法を守らず営業している違法・悪徳業者が混じっている可能性があるので取引する際には要注意です。
対面型の業者と異なり、オンライン完結型のクラウドファクタリングでは、相手の顔が見えないだけに悪徳業者が入り込みやすいリスクがあります。
特に相場より異常に高い、または低い手数料を呈示する業者や、契約時に償還請求権ありの条件を出してくる業者は違法・悪徳業者の可能性が高いです。
このような業者と関わりを持ってしまうと、のちに大きな被害を受けてしまう可能性もあるので、クラウドファクタリング会社と取引する際には、一般的なファクタリング会社以上に綿密な事前調査を行って下さい。
まとめ
クラウドファクタリングは、対面による面接や契約もなく、オンライン上で全ての手続きが完結できて、早くかつ安い手数料で売掛金を現金化できることがとても魅力的です。
一方で2社間ファクタリングしか基本対応がないことや、ネット経由以外の申込方法がないことがネックとなっている点もあります。
そのような理由から、ネット慣れしていない一部の方には利用しにくいサービスかもしれません。
しかしクラウドファクタリングの専門業者だけでなく、一般のファクタリング会社でも、従来の申込方式を堅持しつつ、着実にオンライン完結方式にも対応してきています。
それだけクラウドファクタリングが、事業者間の資金調達方法として受け入れられ浸透しているという証拠でもあります。
本記事も参考に、クラウドファクタリングに関心を持ち、ぜひ新しい資金調達方法のひとつに加えて下さい。