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注文書ファクタリングとは?仕組みからメリット・デメリット、使い方まで

「請求書によるファクタリングは便利だけどもっと早く資金調達する方法はないのか?」

ファクタリングの利用者ならとても気になる疑問ですね。近年、ファクタリングの種類の中で注目が集まっている方法があります。

それが注文書ファクタリングです。

ファクタリングは融資などに比べ早期に現金化を実現できる素晴らしい資金調達方法ですが、請求書ファクタリングだと、納品後など、請求書が手に入るまでに時間がかかるため、結果的にスピード調達が難しいという難点があります。

そこに新しく注目を受け始めたのが、売掛金の現金化スピードをより短縮できる注文書ファクタリングという方法です。

本記事においては、注文書ファクタリングについて、その仕組みから利用上のメリット・デメリット、使い方や利用上の注意点まで詳しく解説します。

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注文書ファクタリングとは?

注文書ファクタリングとは、事業者が案件を受注した時点で将来発生する予定の売掛債権(将来債権)を現金化できるサービスです。

案件に係る注文書を用いて、注文書に書かれた金額を業者に売却、本来の支払期日より早く現金化できます。

注文書ファクタリングの仕組み

注文書とは、製品の納品やサービスの提供において、自社と取引先の間で協議し事前の見積書の内容で納得した後、取引合意の意味を示すため、購入者から販売者に発行する書類です。

注文書ファクタリングはその注文書を利用して行う資金調達方法の1つになります。

注文書ファクタリングは以下の流れで行われます。(取引形態は2社間取引、取引の当事者は利用者とファクタリング業者です。)

  1. 注文書の発行(受注)…売掛先→利用者
  2. 注文書の買取り(売掛金の先払い)…業者→利用者
  3. 製品の納品・サービスの提供…利用者→売掛先
  4. 売掛金の支払…売掛先→利用者
  5. 売掛先からの入金確認後、業者に契約金額を振込み…利用者→業者

注文書ファクタリングの法的根拠と民法改正の流れ

注文書ファクタリングの基本的な流れはご理解頂けたと考えますが、ではこの譲渡契約は法的に見て合法なのでしょうか?

結論から先に述べれば、今日一般的に利用されている請求書ファクタリング同様、注文書ファクタリングも合法です。

ただし若干の説明が必要です。

以下で2020年4月1日より施行され、およそ120年ぶりになされた民法改正とも絡めて、注文書ファクタリングの動きをみていきます。

参照先:民法の一部を改正する法律(債権法改正)について|法務省

注文書ファクタリングは民法改正前から法的には認められていた

ファクタリングは売掛債権を第3者に譲る債権譲渡契約になりますが、これは民法第466条(債権の譲渡性)に規定されていて合法な契約になります。

また売掛金は動産という財産権であり、財産権の処理は自由であることが法律で認められています。

当事者間で自由な意思表示や合意ができれば、売掛債権の譲渡は問題なくできるのです。

そのような点から、請求書を譲渡するファクタリングだけでなく、注文書を譲渡するファクタリングも2020年4月1日の民法改正以前も合法でした。

民法改正で将来債権の譲渡が規定され利用しやすくなった

合法ではありましたが、請求書に基づく売掛債権は確定債権である一方、「注文書」に基づく売掛債権は「将来債権」であったため、金額が完全には確定していない将来債権を買取りするのはファクタリング会社にとってもリスクがありました。

それが請求書ファクタリングより、注文書に基づくファクタリングがあまり利用されてこなかった理由の1つになります。

しかし2020年4月1日からの民法改正でこの「将来債権」の譲渡についても法的なお墨付きが与えられました。

それが以下の条文です。

【将来債権の譲渡性】民法第466条の6

  1. 債権の譲渡は、その意思表示のときに現に債権が発生していることを要しない。
  2. 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は発生した債権を当然に取得する。

参照先:民法|E-GOV法令検索

この条文が民法に追加されたことで、業者の中に注文書ファクタリングを取扱いメニューとして加える先が増えてきました。

注文書を出す売掛先が信用性の高い公的機関や大企業等であれば、将来的に注文通り支払われる可能性も高く、注文書ファクタリングは成立することになります。

民法改正後の注文書ファクタリングの利用の動き

改正後の注文書ファクタリングの利用の動きですが、事業者間で利用が顕著に増えたかというとまだまだ発展途上という段階です。

注文書ファクタリングを取扱いしている業者もまだ10数社にとどまっているという話もあります。

たしかに注文書ファクタリングは、売主にとっては、仕事を受けた段階で資金調達できる便利な方法です。

一方で買取りする業者にとって、発注されても仕事が最後まで完了しないかもしれないという潜在的リスクのあるこの方法は、安定的に買取りするためにも、さらなるブラッシュアップが必要でしょう。

しかし注文書ファクタリングを必要している業種は多々あるので、これからも事業者による活用は広がっていくものと予想できます。

注文書ファクタリングと請求書ファクタリングの違い

ここで注文書ファクタリングと請求書ファクタリングの違いを一覧表にしてまとめてみます。

項目は以下の5つで比較しました。

注文書ファクタリング 請求書ファクタリング
買取対象 注文書 請求書
資金調達タイミング 仕事の受注時 仕事の納品、完了時
売掛債権サイト 1~6カ月(これ以上の場合もあり) 1~3カ月
手数料 請求書ファクタリングより高い 2社間ファクタリング:10~20%
3社間ファクタリング:1~9%
売掛先への通知 2社間取引がベースにあるので通知されない 2社間ファクタリング:通知されない
3社間ファクタリング:通知される

注文書ファクタリングの3つのメリット

注文書ファクタリングの主なメリットは以下の3つです。

注文をもらったタイミングでファクタリングが利用できる

注文書ファクタリングは注文書や発注書、売掛先からのメールなど含み、業者が受注を確認できる資料さえあれば申込して利用できます。

事業者も、仕事を始める前、つまり注文をもらったタイミングで資金調達が可能なので、その資金を受注案件の資材購入や必要人材の確保等に活用できます。

また従来、資金不足で諦めていた仕事も受注できるようになる可能性も上がってきます。

支払サイトが長い売掛債権でも現金化が可能

注文書ファクタリングは支払サイトが長い売掛金でも現金化できます。

請求書ファクタリングだと支払サイトは1~3カ月程度なので、3カ月以上の請求書を買い取ってもらおうとすると審査に通りづらくなります。

しかし注文書ファクタリングの支払サイトは請求書の支払サイト以上に長めなので、取扱業者に買取りしてもらえたら、いくら支払サイトが長くても無理なく現金化が可能です。

注文書ファクタリング会社は注文書の特性を把握して買取りしているので、審査に通りづらいなどのリスクは少なく買取りもスムーズに進みます。

2社間ファクタリングで取引先への通知や承諾が不要

注文書ファクタリングは2社間取引をベースに契約及び売買します。

売主とファクタリング会社という2社の間で契約が行われるため、取引先(売掛先)への通知も行われず承諾も必要としません。

その結果、売掛先からの取引停止などのリスクも減り、継続的な取引にも影響しないのです。

注文書ファクタリングの3つのデメリット

一方、注文書ファクタリングの主なデメリットは以下の3つになります。

メリットだけでなくデメリットも把握した上で、注文書ファクタリングが自社に合ったサービスかどうか判断する必要があります。

請求書ファクタリングの手数料より高くなる傾向がある

注文書ファクタリングの手数料は請求書ファクタリングの手数料より高い傾向があります。

注文書ファクタリングの契約は売主と業者の2社間取引です。

3社間取引は基本的にありません。

2社間取引は3社間取引より業者の回収リスクが高くなるので手数料も高くなる傾向が強いです。

さらに通常、買取りから売掛金の支払期日までが長いほど手数料は高くなり、注文書ファクタリングは請求書ファクタリングよりさらに支払サイトが長いため、手数料が高くなることは避けられません。

請求書ファクタリングより審査が厳しい

注文書ファクタリングは請求書ファクタリングより回収までの支払サイトが長いため、売掛金の未回収リスクが高いです。

そのため請求書ファクタリングより審査が厳しくなる傾向があります。

業者により審査基準は様々ですが、やはり最も重視されるのは売掛先の信用度でしょう。

回収前に売掛先が経営破綻や極度の売上げ不振に陥ってしまうと回収不能のリスクが上がるので、業者としても買取りには請求書ファクタリング以上に慎重にならざるを得ません。

売掛先が公的機関や上場企業・それに準ずる大企業等なら他の会社より信用度が高いので、回収リスクが下がって業者も安心して買取りしてくれます。

ただし売掛先の信用度が全てではないので、支払期日の長さ、取引実績、売主の信用度なども審査の対象となります。

注文書ファクタリングに対応している業者が少ない

注文書ファクタリングは「民法改正と利用の動き」の項でも触れたように、ここ最近広まった来たサービスであるため、従来からのファクタリングに比べて未だサービスを提供している業者の数が多くありません。

また売掛金の回収リスクの高さもあって、利用対象者や売掛先に制限を設定している業者も一定数存在します。

とはいえ、法的にはすでに整備されたので、今後は徐々に注文書ファクタリングに対応する業者も増えてきて、資金調達の選択肢が増すことが期待できます。

注文書ファクタリングの活用シーン・活用できる業種

注文書ファクタリングのメリット・デメリットが理解できたところで、ではどのようなときに利用するのがよいのか、気になる方も多いでしょう。

そこで注文書ファクタリングの利用ケースを取り上げてご紹介します。

注文書ファクタリングの利用ケース

注文書ファクタリングは会社が資金面で以下のような状態にあるときには、利用がおすすめです。

  1. 取引を受注した時点で資金が足りない
  2. 製品の納品・サービスの提供までの期間が長く、資金繰り上、早めに資金化したい

建設業など業種によっては、仕事を受注した時点で必要人員の確保、材料・機材の調達等の準備を必要とする会社もあるので、一般的にはすでに自社が保有している経営資源から調達します。

しかし創業からまだ間もなかったり、経営不振で資金繰りが厳しい、あるいは業界特有の慣行から支払が4~6カ月以上も先に延ばされたりする業種だと、自社の資金だけでは必要な人件費や機材調達の費用が賄いきれないケースもあるでしょう。

そこで注文書ファクタリングを利用することで、すぐに資金調達できて、人員や機材・資材の調達が可能になります。

活用できる業種

注文書ファクタリングは、特に以下のような業種にはおすすめです。

  • 建設業
  • 製造業
  • IT関連業(システム開発等)

建築工事、土木工事を含む建設業は、注文書ファクタリングの利用は特におすすめです。

この業界の仕事は工事期間が長期間に及ぶことが多く、着工から完成までの間に多くの運転資金を必要とします。

注文書ファクタリングを利用することで、受注時点で資金調達が可能となり、円滑な工事の進行につながるでしょう。

製造業も同様で、発注を受けた時点で原材料の仕入れや人員確保に多くの資金を必要とします。

加えて製造の各工程でも追加で資金の確保に迫られます。

注文書ファクタリングの利用ですぐに資金が確保できて、安定した生産活動に入れるのです。

IT業界、特にシステム開発はその特質が建設業に似ていて、プロジェクトの規模が大きくなればなるほど開発期間も長くなって、その分、運営資金を多く必要とします。

一方で支払は開発後や納品後となる可能性が高く、その間の資金繰りは厳しくなる傾向が強いです。

これもまた注文書ファクタリングをうまく利用すれば、開発期間中の資金調達が容易になり、プロジェクトを円滑に進められるようになります。

注文書ファクタリング利用の注意点

最後に注文書ファクタリングを利用する際の注意点を2つ紹介します。

売掛先は法人限定が多い

すでに述べたように現状では注文書ファクタリングを取扱いしている業者はそれほど多くありません。

加えて売掛金の買取り条件に、売掛先は「法人に限定」している先もあります。

自社が保有する売掛金に係る発注者の売掛先が「個人事業主」だと、注文書を買取りしてくれないことも起こりますので、買取り依頼をする前にその業者の公式サイトを確認するなど、注意が必要です。

売主が個人事業主の場合、取扱い対象から除外している業者がいる

注文書ファクタリングの取扱いでは、売主が個人事業主の場合、取扱い対象から除外しているファクタリング会社があるので、こちらも注意して下さい。

注文書ファクタリングは請求書ファクタリングより回収サイトが長いので、その分、回収リスクが上がります。

加えて注文書ファクタリングは2社間取引のみに限られているため、回収時に売主が個人事業主のとき、売掛先から入金された代金を個人事業主がファクタリング会社に振込みする前に自分の事業の資金繰り等に使ってしまうリスクもあります。

業者にとってそのようなリスクも回収リスクの1つなので、注文書ファクタリングにおいては、業者が個人事業主を利用者の取扱い対象から除いて、法人に限定している先もあるのです。

まとめ

本記事では、注文書ファクタリングについて、請求書ファクタリングとの違いを解説しつつ、その仕組みからメリット・デメリット、使えるシーンや活用できる業種まで詳しく解説しました。

注文書ファクタリングは注文書を取引対象としており、仕事を受注した時点で現金化が可能なサービスです。

請求書ファクタリングより早めに資金調達ができ、支払サイトを大幅に短縮した現金化の点からも大変魅力的な資金調達方法ともいえます。

一方で、請求書ファクタリングに比べた手数料の高さや審査の厳しさもあるため、誰でも簡単に利用できるわけではない面もあります。

またサービス提供の歴史も浅く、全体的な業者の数も少ないことから、まだまだサービスの質の向上が求められています。

しかし法務面でも整備され、ファクタリング種類の選択肢が広がったことから、これからも注文書ファクタリングの利用者は増えていくことが予想できます。

注文書ファクタリングに関心ある方は、本記事も参考にして、ぜひ活用にもチャレンジしてみて下さい。

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