ファクタリングは請求書のみで利用できるのでしょうか?
ファクタリングとは、法人等が持つ売掛債権を回収期日より前にファクタリング会社に譲渡して現金化する資金調達方法です。
ファクタリングの利用に際しては、業者の審査に通過する必要がありますが、そのときに提出を求められるのが売掛金の存在を示す請求書や売掛先等の信用力を判断するための各種資料です。
日頃の業務で忙しい法人や代表者にとって、売掛金を証明する書類である請求書のみを提出することでファクタリングを利用できればとても便利ですよね。
しかし本当に請求書のみでファクタリングは利用可能なのでしょうか?
本記事では、その疑問点を中心に、必要書類で正しく理解しておきたい点、提出書類を少なくすることによるメリットやデメリット、おすすめのファクタリング会社や利用上の留意点など、詳しく解説します。
ファクタリングは原則、請求書のみでは利用できない
結論から先に述べると、基本的にファクタリングを請求書のみで利用できるケースはほとんどありません。
特に新規で利用の場合、ほぼ全てのファクタリング会社で請求書や納品書等、売掛金の成因資料と他の資料を合わせて提出を求められます。
その理由は、ファクタリングが一種の債権譲渡契約であるため、仮に取引先が倒産して後払いの代金をファクタリング会社が回収できなかった場合、そのリスクを業者が負わなければならないからです。
一般的なファクタリングでは、償還請求権(売掛先が支払できない場合、代金をファクタリング利用者に請求する権利)が原則存在しないため、未回収リスクを下げる点から、業者は利用者と契約を行う前に様々な調査を行います。
具体的には、利用者と売掛先が実際に取引を行ったこと、売掛先の信用度、利用者の信用度などです。
その調査のために請求書等を含む複数の書類の業者への提出が必要になります。
ファクタリングを請求書のみで利用できるケースもある
ただし上記で「原則」と但し書きしたように、実際の取引では、請求書のみでファクタリングが利用できるケースがあります。
それはファクタリングの利用者が以下の条件を満たしている場合です。
- 継続して同じファクタリング会社を利用している
- 譲渡する請求書の売掛先が同じ
- 譲渡する請求書の金額も毎回同額か同水準
繰り返し継続して同じファクタリング会社を利用していれば、既取引先(おなじみ)として自然と双方に信頼関係ができてきます。
そのようなケースなら新規利用時に審査は完了しているので、次回から提出資料は請求書のみで利用できることもあります。
ただし請求書のみで利用できる場合、前回利用からあまり日が経っていない(3~6カ月以内)など、条件が限定されることもあるので注意が必要です。
法人ファクタリングの利用で提出が必要な書類
では、上記の前提を踏まえて、ファクタリングを利用する場合に提出が必要な書類を詳しく解説します。
なお、本記事では、ファクタリングの利用者を法人に限定しています。
個人事業主やフリーランス等は対象から除いているのでご注意下さい。
請求書
請求書は実際の商取引が行われた後、商品・サービス等の提供者側から取引先に発行される書類なので、売掛金を証明するために重要な書類です。
そのため業者としてファクタリングの利用を依頼された場合、利用者に真っ先に提出を求めます。
ただし業者によっては、請求書なしで発注書、納品書、契約書等で代用できる場合もあります。
一方で発注書など書類によっては、請求書のような確定債権でないため、売掛金の実在が十分説明できないことから、複数の書類の提出を求められることもあります。
通帳の写し(入出金明細)
通帳の写し(入出金明細)もファクタリングの利用に際し、ほぼ全ての業者において提出が必須の書類です。
その理由は、通帳の出入りの内容をチェックすれば、「売掛金は定期的に振込されているか」「売掛金の未払いはないか」「支払に遅延はないか」などの重要な動きが確認できるからです。
通帳の写しの確認で、売掛金の存在、利用者と売掛先の関係、取引度などが分かります。
同時に売掛金の未回収リスクも判断できるため、業者にとっては必須の必要書類といえます。
一般的に、通帳の写しは直近3~6ヶ月分の内容の提出を求められることが多いです。
商業登記簿謄本
利用者が法人の場合、商業登記簿謄本の提出が求められることもあります。
商業登記簿謄本には、会社の本店所在地、設立年月日、業務内容等が記載されており、いわゆる法人の身分証明書であることから業者によっては提出を求めてきます。
商業登記簿謄本を取得するには、直接管轄の法務局に出向いて申請するほか、郵送やオンラインでの申請・取得も可能です。
決算報告書
決算報告書(貸借対照表、損益計算書等)も、利用者が法人の場合、業者によっては提出を求めてくる書類です。
提出の主な目的は利用者の財務状況を確認するためです。
また業者によっては前期分だけでなく、過去数期分の書類提出を求めてくる場合もあるので、詳しくは申込する業者へ確認して下さい。
取引基本契約書
取引基本契約書も法人がファクタリングを利用する際、業者によっては提出が求められる書類です。
取引基本契約書とは、継続して取引する先と、予め共通した内容について、契約の範囲、支払方法、契約期間等を記載して締結する書類のことです。
事前に取引基本契約書を交わしておけば、実際の取引において、発注書と請負書を交わすだけで簡単に契約が成立させられるので双方に便利でよく利用されています。
また取引基本契約書が存在することで、利用者と取引先の継続的な取引があることが証明できるので、ファクタリング会社としても確認のため提出を求めてきます。
印鑑証明書
ファクタリング契約では、契約において署名と実印による押印を行います。
その際、実印が本物かどうかを証明するため、提出を求められるのが印鑑証明書です。
印鑑証明書は、利用者が法人の場合、法務局で手に入れられるため予め用意しておきましょう。
本人確認書類(法人代表者)
ファクタリングの利用者が法人だった場合、法人代表者の本人確認書類の提出も求められることが多いです。
法人の身分証明書として上記の商業登記簿謄本がありますが、その法人を経営している代表者の身分(存在)を確認することも、業者にとってはリスク回避の点から重要になります。
最近は法人の開設もかなり簡単になってきており、法人と代表者だけ(従業員ゼロ)という会社組織もあるため、業者にとっても代表者の身分確認がより必要な手続きになってきています。
主な本人確認書類としては、運転免許証、マイナンバーカードなどがあります。
ファクタリングで必要書類が少ないことによるメリット
次にファクタリングの利用で必要書類が少ないことによるメリットを上げます。
主なメリットは以下の2つです。
審査や入金までに掛かる時間を短くできる
必要書類が少ないファクタリング会社を利用するメリットとしては、審査に掛かる時間を短くできる点が上げられます。
書類が多いとチェックに要する時間も増えて審査に時間が掛かりますが、必要書類が少ないと最短即日で審査を完了させることもできます。
審査に掛かる時間を少なくできれば、その分、売掛金を買取りして代わり金を口座に入金する時間も短くできます。
必要書類が少ないネット業者の増加で利用の選択肢が増える
最近の傾向として、従来の対面(窓口)応対を基本としてきたファクタリング会社から、インターネット経由WEB対応へと営業方針を変更する業者が増えてきています。
ネット経由でのファクタリング手続きは必要書類の少なさと親和性が高いので、その取扱い業者の数が増えるのは、様々な特徴を持った業者が利用できるという点で利用者にも大いにメリットがあります。
さらに手続きで必要書類の少ない業者が増えることは、利用者に取って書類を用意する手間が減ることや、オンライン完結で審査や入金までの時間が短くなるなどのメリットも発生します。
また書類に不備があっても、ネット対応業者ならすぐに間違いを訂正できるのも少ない数の必要種類で済むメリットです。
ファクタリングで必要書類が少ないことによるデメリット
一方、ファクタリングで必要書類が少ないことによるデメリットもあります。
しかしデメリットを事前に把握してきちんと対策していけば、たとえ必要書類が少ない業者を選んでも対応は可能です。
主なデメリットは以下の2つになります。
審査が簡素化される一方で手数料が高くなる
必要書類が少ない業者に申込すると、たしかに審査は簡素化できますが、一方で利用手数料が高くなるリスクがあります。
必要書類が少なくなることは審査を行うファクタリング会社の未回収リスクが上がることを意味するので、そのリスクが手数料の高さに転化される可能性が高いです。
ただし2社間取引に比べて3社間取引は、手続きは複雑ですが手数料は低い傾向にあるので、申込する業者が2つの取引形態をサービス提供しているなら、できれば3社間取引を選んで利用するのもデメリットを少なくする対策になります。
審査通過率が下がる可能性がある
必要書類が少ない業者を利用すると、審査通過率が下がる可能性があります。
一般的にファクタリングでは、審査に要する必要種類が多い業者ほど正確な判断ができ、その結果、利用者の信用力が高くなる傾向が強いので、提出する書類の数が少なくなると信用が得られにくくなるデメリットも発生します。
売掛先が公的機関とか大企業の場合なら、それ自体信用力の証明になりますが、中小企業等、信用力に乏しい売掛先だと、必要書類が少なければ審査の通過率に悪く影響を及ぼすことも予想されます。
審査通過率を上げる対策として、業者の要求する必要書類は余すことなく全て提出することが大事です。
必要書類が少ない法人でも利用できるファクタリング会社と必要書類一覧
この章では安全に利用できるファクタリング会社のうち、提出する必要書類が少なく、法人が利用できる業者をその提出書類とともに一覧にまとめています。
以下がおすすめのファクタリング会社5社です。
業者名 | 必要書類 |
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ビートレーディング |
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一般社団法人日本中小企業金融サポート機構 |
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QuQuMo online |
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PAY TODAY |
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JBL |
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いくら必要書類が少なくても利用者がやってはいけないこと
法人の利用者を対象に、必要種類についての概要、提出書類の少なさでのメリットやデメリット、おすすめの業者など紹介してきましたが、いくら必要書類が少なくても利用者がやってはいけないことがあります。
その留意点に関し、2つの重要書類、請求書と通帳写しについて解説します。
請求書の偽造や変造
利用者が絶対やってはいけない1つ目は請求書の偽造や変造です。
請求書の偽造や変造は犯罪として詐欺罪に問われるリスクがあるので注意しましょう。
詐欺罪とは「人を欺いて財物を交付させた」場合に成立します。
請求書を偽造や変造しファクタリング会社に提出して代わり金を受け取れば利用者は詐欺罪に問われます。
詐欺罪で立件され判決で執行猶予がつかなければ10年以下の懲役刑が科されます。
請求書の偽造や変造は重罪だということをくれぐれも認識しておきましょう。
通帳写し明細の偽造・変造
請求書同様、通帳写し明細の偽造・変造も詐欺罪に問われるリスクがあることを利用者は肝に銘じておきましょう。
近年は闇社会における偽造や変造の技術水準も高まっているため、お金さえ闇業者に払えば、通帳コピーの入出金明細の内容を作り替えることなどかなり容易です。
ありもしない売掛金の入出金記録の改ざんも簡単でしょう。
だからといって、いくら資金の必要性に駆られても、書類の偽造や変造に手を染めて良いという理屈にはなりません。
闇社会の犯罪集団とは一切関わらないという強い決意がファクタリングの利用者には求められています。
まとめ
ファクタリングにおいて、法人は請求書のみの提出で利用できるのかという点を中心に、必要書類やその少なさによるメリット・デメリット、利用上の留意点など、詳しく解説してきました。
必要書類の判断は業者や買取内容によって異なりますが、原則、ファクタリングは請求書のみのでは利用できません。
ただし継続利用先など、すでにファクタリング会社に一定の信用を得ている先なら請求書のみで利用が認められているケースもあります。
一般的には、業者が要求する必要書類を整えて提出することで、ファクタリングに係る審査や入金手続きがスムーズに進められます。
ファクタリング利用時には、易きに流れず、業者の求めてきた必要書類をきちんと用意して審査に臨みたいものです。
本記事もその判断の参考になりますのでぜひご活用下さい。