ファクタリングは、資金調達の手段として中小企業を中心に利用されています。
また、中小企業だけでなく、個人事業主にとっても、ファクタリングは重要な資金調達手段です。
この記事では、ファクタリングの売掛先が個人事業主・個人でも利用可能かどうかを解説するとともに、ファクタリング利用が難しい理由や利用できるポイントなどについても解説します。
ファクタリングの売掛先は法人と個人事業主のケースがある
ファクタリングの売掛先には、法人と個人事業主のケースがありますが、正確には次の3つに分けられます。
- 法人
- 個人事業主
- 個人
それぞれについて、解説します。
法人
法人とは、法律上の人格があり、権利や義務を認められた団体のことです。
法人を設立するには、法律上の手続きを行う必要があり、法務局で登記することにより法人の設立手続きは完了します。
法人には営利法人、非営利法人、公法人の3種類があります。
ファクタリングの売掛先として、最も多いのは営利法人である株式会社となります。
一般的にファクタリングの売掛先が株式会社の場合は、個人事業主よりも信用が高いため、ファクタリングの審査に通りやすいです。
ただし、売掛先が株式会社であっても、ファクタリングの審査に通らないこともあります。
個人事業主
個人事業主とは、個人で事業を営んでいる人で、税務署に開業届を提出した人のことです。
開業届については、所得税法（第229条）に定められており、事業を始めてから1ヶ月以内に税務署に提出する必要があります。
ただし、罰則がないため、開業届を提出しなくても確定申告はできます。
ファクタリングの売掛先が個人の場合、開業届を提出しているかが、ファクタリングを利用できるかどうかのポイントになります。
つまり、開業届を提出している個人事業主が売掛先の場合、ファクタリングを利用できる可能性があるのに対し、開業届を提出していない個人は、ファクタリングを利用するのは難しいです。
個人
個人とは、開業届を提出せずに事業を営んでいる人のことです。
つまり、個人事業主と個人の違いは、税務署に開業届を提出しているか否かです。
開業届を提出していない個人が売掛先の場合、ファクタリングを利用するのは難しいと言えます。
| ファクタリングの売掛先 | ファクタリング利用の可能性 |
|---|---|
| 個人事業主 | あり |
| 個人 | 難しい |
そのため、ファクタリングの売掛先が個人事業主であれば、ファクタリングを利用できる可能性があります。
売掛先が個人事業主の場合、ファクタリング利用は難しい
一般的に売掛先が個人事業主の場合、ファクタリングを利用することは難しいです。
ファクタリング会社の中には、売掛先が個人事業主の場合はファクタリングを申し込めない会社もあります。
売掛先が個人事業主の場合にファクタリングの利用が難しい理由として、次の2点が挙げられます。
- 個人事業主の信用が低い
- 存在確認や活動実態が把握しにくい
それぞれについて、解説します。
個人事業主の信用が低い
売掛先が個人事業主の場合、ファクタリング利用が難しいのは、法人よりも個人事業主の信用が低いからです。
法人よりも個人事業主の信用が低いのは、法人は登記簿謄本などで法人の詳細を知ることができるのに対し、個人事業主は調べる手段がないからです。
さらに、個人事業主より法人のほうが資金力があることも、個人事業主の信用が低い原因となっています。
実際、個人事業主向けのファクタリングサービスが増えているものの、売掛先が個人事業主の場合、利用できないファクタリング会社が多いのが現状です。
というのも、ファクタリングの審査対象は売掛先になるため、売掛先の支払能力や信用力が重視されるからです。
存在確認や活動実態が把握しにくい
存在確認や活動実態が把握しにくいことも、売掛先が個人事業主の場合にファクタリング利用が難しい理由の1つです。
個人事業主の信用が低いのは、法人と違い存在確認や活動実態が把握しにくいからです。
個人事業主の存在確認や活動実態が把握しにくいのは、法人の設立に登記が必要なのに対し、個人事業主は税務署に開業届を提出するのみだからです。
法人の詳細は、登記簿謄本や名称や所在地、法人番号などの条件により法人の情報を検索できる国税庁の「法人番号公表サイト」から調べることができます。
一方で、個人事業主の詳細を調べる手段がないため、信用が低くなっているのです。
売掛先が個人事業主でもファクタリングは利用できる
売掛先が個人事業主でも、ファクタリングは利用できます。
売掛先が個人事業主でも、ファクタリングの利用が可能なファクタリング会社があるからです。
しかし、売掛先が個人事業主でもファクタリングを利用できるファクタリング会社は限られているのが現状です。
一方、個人事業主向けのファクタリング会社は多いため、利用者として個人事業主はファクタリング会社の利用が可能です。
法人と比べ信用が低い個人事業主が売掛先の場合、売掛金を回収できないリスクがあるため、ファクタリング会社の多くが売掛先が個人事業主のファクタリングを認めていないのです。
売掛先が個人事業主でもファクタリングが利用できるポイントとは
売掛先が個人事業主の場合、ファクタリングを利用することは難しいと言えます。
では、売掛先が個人事業主でもファクタリングを利用するには、どうすればいいのでしょうか。
売掛先が個人事業主でもファクタリングが利用できるポイントとして、次の4点が挙げられます。
- 売掛先との継続した取引実績がある
- 売掛先が個人事業主でも利用可能なファクタリング会社を利用する
- 知名度の高い個人事業主
- 固定電話や自社サイトを所有している
それぞれについて、解説します。
売掛先との継続した取引実績がある
売掛先が個人事業主でもファクタリングが利用できるポイントとして、売掛先との継続した取引実績があることが挙げられます。
売掛先から継続して売掛金が入金されていれば、継続的な取引実績があると見なされ、売掛金が回収できる可能性は高いと判断されるからです。
また、売掛先の個人事業主の事業実績も、売掛先が個人事業主でもファクタリングが利用できるポイントになります。
事業実績が長ければ長いほど、個人事業主の信用が高くなるからです。
一般的には3～5年程度の事業実績があれば、信用される傾向にあります。
売掛先が個人事業主でも利用可能なファクタリング会社を利用する
売掛先が個人事業主でも利用可能なファクタリング会社を利用することも、売掛先が個人事業主でもファクタリングが利用できるポイントの1つです。
売掛先が個人事業主の売掛債権を譲渡する場合、まず見るべきは、売掛先が個人事業主でも利用できるファクタリング会社であるか否かだからです。
そもそも、売掛先は法人のみとしているファクタリング会社は、売掛先が個人事業主の売掛債権を買い取ってくれません。
しかし、売掛先が個人事業主でも利用可能なファクタリング会社は、限られているのが現状です。
知名度の高い個人事業主
知名度の高い個人事業主も、売掛先が個人事業主でもファクタリングが利用できるポイントです。
知名度の高い人物は、社会的信用があることから、売掛金を支払わないリスクは低いからです。
ファクタリング会社としても、知名度の高い人物が売掛先であれば、ファクタリングに応じてくれます。
場合によっては、法人よりも知名度の高い個人事業主のほうが信用が高いかもしれません。
固定電話や自社サイトを所有している
売掛先が個人事業主でもファクタリングが利用できるポイントとして、固定電話や自社サイトを所有していることが挙げられます。
固定電話や自社サイトを所有していることで、個人事業主の信用度が上がるからです。
スマホではなく、固定電話を所有していることで、事務所で事業をしていることが推測されるため、信用が上がります。
一方、自社サイトを持っていて、連絡先や住所などを掲載しておけば、ファクタリング会社は個人事業主の情報を手に入れられます。
法人には登記簿謄本がありますが、自社サイトを持っていれば、法人の登記簿謄本の代わりになります。
そのため、固定電話や自社サイトを所有していれば、ファクタリングを利用できる可能性が上がります。
個人事業主がファクタリングを申し込む際の注意点
売掛先が個人事業主の場合、ファクタリングを利用することは難しいと解説してきました。
では、個人事業主がファクタリングを申し込む際には、どのような点に注意すればいいのでしょうか。
個人事業主がファクタリングを申し込む際の注意点として、次の3点が挙げられます。
- 「償還請求権なし（ノンリコース）」になっているか
- 手数料が高すぎないか
- 悪徳業者に注意する
それぞれについて、解説します。
「償還請求権なし（ノンリコース）」になっているか
個人事業主がファクタリングを申し込む際の注意点として、「償還請求権なし（ノンリコース）」になっているかどうかが挙げられます。
償還請求権とは、ファクタリング会社が売掛金を回収できなかった場合に、ファクタリングの利用者に弁済するよう請求する権利のことです。
償還請求権がないことをノンリコースと言います。
原則として、ファクタリングは「償還請求権なし（ノンリコース）」ですが、「償還請求権あり（ウィズリコース）」のファクタリング会社もあります。
そのため、個人事業主がファクタリングを申し込む際には、ファクタリング会社が「償還請求権なし（ノンリコース）」かどうかを確認する必要があります。
手数料が高すぎないか
手数料が高すぎないかを確認することも、個人事業主がファクタリングを申し込む際の注意点の1つです。
手数料が高いか、低いかでファクタリングにより入金される金額が、大きく違ってくるからです。
手数料はファクタリング会社によって違いますので、ファクタリング会社を選ぶ際は手数料を比較検討することをおすすめします。
また、手数料が相場より高すぎる場合、悪徳業者の可能性がありますので、この点についても注意が必要です。
ファクタリング手数料の相場は、次のとおりです。
| ファクタリングの種類 | 手数料 |
|---|---|
| 2社間ファクタリング | 10～20% |
| 3社間ファクタリング | 1～9% |
悪徳業者に注意する
個人事業主がファクタリングを申し込む際の注意点として、悪徳業者に注意することが挙げられます。
ファクタリング会社の中には、悪徳業者が存在するからです。
悪徳業者の主な特徴は、次のとおりです。
- 手数料が高すぎる
- ファクタリングではなく、融資をしようとする
- 会社の詳細が公式サイトに掲載されていない
- 契約書を渡さない
ファクタリング会社を装ったヤミ金業者が存在するため、融資をしようとする業者は要注意です。
また、公式サイトに会社概要など会社の詳細を掲載していない場合も、悪徳業者の可能性があります。
ファクタリング契約をする場合、一般的な契約と同様、契約書を作成し契約者双方で1通ずつ保管します。
そのため、契約書を渡そうとしないファクタリング会社も、悪徳業者の可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
この記事では、ファクタリングの売掛先が個人事業主・個人でも利用可能かどうかを解説するとともに、ファクタリング利用が難しい理由や利用できるポイントなどについても解説しました。
売掛先が個人事業主の場合、ファクタリングの利用は難しいです。
というのは、法人よりも個人事業主の信用が低く、存在確認や活動実態が把握しにくいからです。
売掛先が個人事業主でもファクタリングを利用するには、売掛先が個人事業主でも対応可能なファクタリング会社を選ぶ必要があります。
また、売掛先との継続した取引実績を示し、固定電話や自社サイトを所有することなどにより、ファクタリング会社からの信用度を上げることも重要です。
この記事が、売掛先が個人事業主のファクタリング利用を検討する際の参考になれば幸いです。